AWGsとは?
「AWGs(Animal Welfare Goals)」は、アニマル・ドネーションさんが2021年8月に立ち上げた、わんちゃん猫ちゃんのために当たり前の幸せを作っていこうというプロジェクトです。
プロジェクトでは、わんちゃん猫ちゃんのことを考え、現状解決していかなければいけない13のゴールが設定されています。
この当たり前のように思えることができていないわんちゃん猫ちゃんのために、「広く知ってほしい」「みんなで考えたい」「アクションを起こしてほしい」という願いが込められています。
わんちゃんの飼い主さんであっても、ペットショップや繁殖業者の事情や、わんちゃんの殺処分がどのように行われるかなど知らない人はたくさんいるのですから、わんちゃんと暮らしたことのない人はもっと知らないでしょう。
AWGsプロジェクトは多くの人にわんちゃん猫ちゃんのことを理解してもらい、日本をトップレベルの動物福祉先進国にするための取り組みです。
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AWGsの13のゴール
AWGsプロジェクトが現在ゴールの目標としているのは、13個のわんちゃん猫ちゃんにまつわるさまざまな問題です。
■AWGs13のゴール
1、犬猫に快適な生活の場を
2、本能的欲求を満たそう
3、秘めた能力を開発させよう
4、いつもあなたと一緒に
5、すべての犬猫に人の温もりを
6、犬猫の社会性を向上
7、ありのままの姿を愛そう
8、殺処分をゼロに
9、飼育放棄をなくそう
10、虐待死をゼロに
11、健やかな一生を
12、「命」の展示に終止符を
13、地域猫を生み出した責任・守る責任
AWGsプロジェクトは13個のゴール達成に向けて厳選された21個のテーマがあり、わんちゃん猫ちゃんの目線に立って、みんなで社会を変えて行くための問題提起がなされています。
わんちゃんの飼い主さんだけでなく、日本全体が変わらなければ今のわんちゃんが置かれている現状は変わりません。
AWGs専用サイトでは、これらのテーマに署名できるほか、アンケートに参加したり掲示板で意見を発信することができます。
SNS上には可愛らしいわんちゃんの投稿が数多くあり、かわいい子犬の姿や飼い主さんの愛情を一心に受けているわんちゃんの姿を見ることができます。
しかし、その裏で捨てられてしまったり繁殖のみでお散歩にも出たことがないわんちゃんなど、悲惨な状況にいるわんちゃんたちがたくさんいることにも目を向けなければいけないのではないでしょうか。
公益社団法人アニマル・ドネーションについて
アニマル・ドネーションは、寄付をしたい人と寄付を必要とする動物福祉活動に力を入れている団体を繋いでくれる中間支援組織です。
寄付を受ける認定団体は面談や視察を重ねたのち、外部の有識者による審議委員会の承認後に初めて決定されるというもので、寄付がどのように使われているかも発信してくれます。
動物のために何かをしてあげたいけど、どこに寄付したらいいかわからないといった人のために、気持ちが込められた大切な寄付をどこに届けるべきかを真剣に考え、確実に届ける仕組みを作っている団体です。
AWGsを立ち上げたきっかけを直撃!
INUNAVIはアニマル・ドネーションさんにAWGsプロジェクトを立ち上げたきっかけや、どのような思いで活動しているかをインタビューさせて頂きました。
今回お話を伺ったのは、AWGsプロジェクトリーダーである、アニマル・ドネーションの望月 舞さんです。
望月 舞さんのプロフィール
株式会社リクルート入社、営業とネット系のメディアプロデュースで働いたのち、二人目の出産を機に退社。4年前からアニドネに参加し、ボランティア組織「クラブアニドネ」でボランティア活動をしたのちAWGsプロジェクトに携わる。
AWGsプロジェクトを立ち上げたきっかけ
辻:本日は宜しくお願いします!まず、そもそもなぜAWGsを立ち上げようと思ったのか、そのきっかけをお聞かせください。
望月さん:ペットについては、みなさんご存知と思いますが、「動物福祉」とか、「そもそも動物福祉がなんなのか」というところは、本当に認知度が低いです。
SDGsなど、環境に対する意識が高まっていることもあり、若い世代にもAWGsを広めていき、少しずつでも日本における動物福祉の状況が改善すると嬉しいという気持ちで立ち上げました。
辻:全ての企画が素晴らしいものだと思いました。優先度の高いものや特に力をいれたいと考える取り組みはありますか?もしあればその理由も教えて下さい。
望月さん:ゴールは横並びで、優先順位はつけていませんが、社会課題のように時間がかかるゴールもあれば、知ることができたらすぐにでも変えられる(外飼いで繋ぎっぱなしなど)ものもあります。できることから少しずつやっていきたいというのがスタンスです。
辻:ペットを飼っていない人、動物が好きではない人の理解や協力が必要になる企画も多いと感じました。市民の理解醸成もテーマのひとつとされていますが、ペットを飼っていない人、動物が好きではない人をメイン対象としたアプローチなどは検討されていますか?
望月さん:もちろん、その必要がありおっしゃる通りなのですが、段階としてペットが好きな人にも認知がない状態なので、まずはそこからのアプローチを取りたいと思っています。ペットが好きな人の中から、一人ずつでも共感してくださる人を増やしたいと思っている段階です。
ゆくゆくは、ペットを飼っていない人や動物が好きではない人にもアプローチをしていきたいです。
辻:ペットの職場への同伴についてお伺いします。 取材にてポジティブな効果を聞くとありますが…
実際、編集部スタッフが前職で同伴出勤していた際、ポジティブな効果と同じくらいネガティブな効果(相互依存により逆に分離不安、犬同士のトラブル、通勤中のトラブル、業務への影響、犬への身体的ストレス等)があったと聞きました。
ペットのために同伴可能な職場を少しでも増やすことを目指すのであれば、ネガティブな効果も公表する必要があるのではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか?
望月さん:いいことばかり、かわいいことばかりを伝えるというよりは、真実に基づいて記事を出していきたいと考えていますので、ネガティブな面も伝えられたらと思います。
■SDGsとは
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年の国連サミットにおいて加盟国の全会一致で採択された、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことです。
地球上の誰一人取り残さないことが誓われています。
日本はペット後進国であるという現状
望月さん:世界と比べると、日本はまだ遅れていて、色々な意味で底上げをしていかないと動物にとって優しい国とは言えないかなと思っています。
辻:そうですね。世界のペット先進国と比べると、日本はまだまだ先進国ではないと感じます。
望月さん:難しいと思うところは、一部のペットショップが無理に繁殖した犬を販売するなどの問題があり、解決したいゴールの一つですが、 日本ではペットショップからお迎えしている人もすごく多いので、心情として受け入れ難いとこともあるだろうなと考えています。
ペットをお迎えする先として、ブリーダーさんや保護施設、保護ボランティア団体など他の選択肢もあることを伝えていく必要もあります。
辻:つい最近、INUNAVIでも「ペットショップでの生体販売について」や「子犬の価格高騰について」のアンケートを実施し、発信したばかりです。
ペットショップがなくなればいいという回答が多くあったんですが、ペット先進国ではない現状でベースができていないのにペットショップがなくなったらって危惧する声もありました…。
望月さん:コロナ禍で「癒しだから」と突発的な感情や無計画にお迎えしてまった方もいて、保健所などに捨てられているわんちゃんが増えているという声があります。
コロナが落ち着きを見せると在宅ワークではなく通常勤務に戻る人たちが増えてきて、そういうところの弊害が今ひずみとして出てきてしまっているので、次にこういう状況になった時に、そんな状況にならないようにちゃんと知った上で飼ってもらいたいと思っています。
あと、もし飼うのであれば保護犬という選択肢を第一に検討してもらえる世の中になるといいなと思います。保護犬の良さをポジティブに伝えていって、一般の人の視線が保護犬に集まるといいな、と考えています。
ペットショップ事情を考える!売れ残った子犬がどうなるか知ってる?子犬の販売価格に疑問を持つ犬の飼い主さんは3割以上【飼い主389人アンケート】
保護犬のイメージを変えたい
辻:個人的になんですけれども、保護犬や里親など一般的に呼ばれていると思うのですが、「保護犬」という名前自体が他に変えられないかなと?と思っています。
望月さん:確かにそうですね。
辻:私としては違う言葉を考えてもいいのかなと。わんちゃんはわんちゃんなので。
望月さん:確かに!今ふと思いついたのですが、座談会をしてその内容を発信してもいいかもしれませんね。
重いテーマではあるんですが、ポジティブに考えて行ける方向にしていけたらいいなと思います。
断尾・断耳問題も知ってほしいが、難しい現実も…
望月さん:AWGsのゴールの1つである「ありのままの姿を愛そう」というのは断尾・断耳も、食パンのおしりのコーギーちゃんが「すごいかわいい」という捉え方をされていて、それは人間の決めた「かわいい」「美しい」という感覚であって、犬は生まれたそのままでも、愛すべき対象だと思います。
その辺りの現状も認知をしてほしいですが、今飼われている人はそれを見たらいい気分はしないですよね、初めはそういう課題があるという認知でもいいと思っていて、少しずつでも広めていけたらいいなと思ってます。
辻:そうですね。
望月さん:急いですぐやっても結果がすぐに返ってくるものではないので、INUNAVIさんと一緒に何かに取り組んで世に出したり、一緒に歩んでいただければと思います。
辻:こちらこそよろしくお願いします。
■断尾や断耳をされている犬種
トイプードル(断尾) / ヨークシャーテリア(断尾) / シュナウザー(断尾、断耳) / ミニチュアピンシャー(断尾、断耳) / ボストンテリア(断尾、断耳) / ジャックラッセルテリア(断尾) / ウルシュコーギーベングローブ(断尾) / コッカースパニエル(断尾) / ドーベルマン(断尾、断耳) / ボクサー(断尾、断耳) / エアデールテリア(断尾) / グレートデン(断耳)など
AWGsの解決したいゴールは時代に合わせて
辻:INUNAVIでアンケートを実施していて、特に認知拡散して欲しい問題を中心に発信しています。その中でも「子犬の値段の高騰」とか「犬の防災グッズの知名度」などは世間から話題として取り上げられやすいのですが…
「ワクチンの副作用」や「動物病院のトラブル」、「火葬でのトラブル」、「ペットロス」などの表立って出てこないトラブルなだけに、いっときの話題になってしまっているという悩みもあります。
望月さん:表に出ない問題もたくさんありますよね。
AWGsのゴールに関しても、今は13ですが、解決したいゴールは時代や課題感とともに固定化せずに、ゴールやテーマを増やしていけばいいと思っているので、問題に思っていることや飼い主さんの本音などぜひ教えてください!
辻:INUAVIでもお手伝いできることはさせて頂きます!お忙しいところありがとうございました。
アニドネのセミナーに実際に参加してみた
素晴らしい取り組みをしているアニマル・ドネーションさんは、セミナーなども開いて認知活動を行っています。
今回、初の一般人向けのセミナーが行われるということで、いぬなび編集部のたかだなつきが、アニドネのセミナーに実際に参加してみました。
■セミナーの概要
日時:2021年12月12日(日) 10:30~12:00
内容:はじめての保護犬猫セミナー〜里親を考えているあなたへ〜
主催: 公益社団法人アニマル・ドネーション
参加者数:56人
アニドネはこれまで、企業や大学などでセミナーを行っていましたが、今回は一般の人向けの初のセミナーとあり、保護犬猫に興味のある人やわんちゃん猫ちゃんの飼い主さんが参加していました。
セミナーの流れ
■セミナーの流れ
1、はじめに
2、アニドネについて
3、はじめての保護犬猫セミナー
4、質問タイム
5、アンケートのご案内
セミナーでは、わんちゃん猫ちゃんのために日本の殺処分の現状や、日本のわんちゃんに対する法律がまだ十分ではないことなどを一般の人にもわかりやすく教えてくれていました。
また、今回のテーマである保護犬猫が愛護センターや保護団体に持ち込まれる理由や、保護団体の見極め方、実際に保護犬や保護猫をお迎えした飼い主さん直接の経験談など、保護犬猫に興味があるないに関わらずとっても有意義な内容でした。
質問タイムであがっていたのは、殺処分の中には安楽死が含まれているのかといったことや、保護犬猫をお迎えするときのトライアル期間など、参加したみなさんが保護犬猫のことを真剣に考えていることがよくわかりました。
セミナーで印象的だったこと
実際に私は寝たきり老犬の介護を2年ほどした経験があり、老犬の飼育放棄や遺棄の問題をどうにかかしたいと思ってました。そんな自分にとって印象的だったのは「動物ふくし」の言葉でした。
アニマル・ドネーションの掲げている動物福祉とは「普通に暮らせる幸せ(ふつうにくらせるしあわせ)」。
まさにその通りだと感じました。動物福祉と聞くとざっくりしすぎてイメージが掴みにくく、難しいと考えてしまう飼い主さんも少なくないでしょう。
しかし、普通に暮らせる幸せと考えたら、難しいことではありませんね。
年齢も犬種も何もかも関係なく、すべてのわんちゃんが幸せに暮らせる世の中になってほしいと改めて感じるセミナーでした。
INUNAVIとしての取り組み
INUNAVIでは、企業サポーターとして動物福祉の向上を目的に活動を行うアニマル・ドネーションさんを支援していきます。
INUNAVIとしての寄付はもちろん、AWGsが設定する13のゴールを実現するためにも、今の日本のわんちゃんの置かれている現状などの情報を発信し、少しでも多くの人に知ってもらえるようにしていきます。
【お願い】INUNAVIの読者様に協力してもらいたいこと
INUNAVIをいつも読んでくださり、ありがとうございます。
ここで1つお願いがあります。アニマル・ドネーションさんの取り組みに賛同していただける人はぜひ、AWGs専用サイトやアニマルドネーションさんのサイトを覗いてみてください。
そして、自分ができそうなものがあれば協力して頂けたら幸いです。
■個人がアニドネに協力できること
・AWGsに署名する
・アニドネのボランティアに参加する
・お金を寄付する
・+イイコト商品を購入する
・コラボレーション寄付に参加する
・本や衣服など使わなくなった物品の買取寄付
・募金箱を置く
・寄付付き自動販売機を置く
・チラシパンフレットを置く
・拡散やクリックするだけで寄付になるサービスを利用する
・アニドネのSNSに参加する
わんちゃんの飼い主さん一人一人できることは、まずそばにいる愛犬に目一杯の愛情を注ぎ、快適で穏やかで幸せな犬生を送ってもらうことです。
そして、さまざまな問題があることから目をそらさず、現在の日本のわんちゃん猫ちゃんの置かれている現状に疑問を持ってください。
わんちゃんの飼い主さん一人一人が意識を変えていくことで、それが波紋を広げるきっかけとなるでしょう。
1人でできることは限られていますが、1人が10人、10人が100人といつしか日本全体に広がっていきます。
まとめ
■AWGsプロジェクトのポイントまとめ
・わんちゃん猫ちゃんの目線に立って世の中を変えていく
・わんちゃん猫ちゃんの現状を多くの人に理解してもらう
・日本をトップレベルの動物福祉先進国にすることが目標
・みんなで考え、アクションを起こしていくための第一歩
アニマル・ドネーションさんの「日本をトップレベルの動物福祉の先進国にしたい」という思いは、多くのわんちゃんの飼い主さんも感じていたことでしょう。
これまでもずっと言われ続けてきた動物福祉問題ですが、AWGsプロジェクトのように一般の人が参加できる署名やアクションする専門サイトまではありませんでした。
年々、わんちゃんに対する飼い主さんの意識も高まり、多くの飼い主さんが何とかしたいと思う気持ちはあっても、一個人ではどうすればいいかわからず、そのままズルズルときてしまったというところもあるでしょう。
日本には解決すべき問題がたくさんあり、道のりは遠く険しいものですが、すべてのわんちゃん猫ちゃんが安心して幸せに暮らせるように、私たち飼い主も行動を起こすときなのかもしれません。
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー