愛犬が飼い主さんの手を噛む理由は?主な10の理由
愛犬が飼い主さんの手を噛む理由もさまざまですが、そもそも「噛む」という行為はわんちゃんにとって当たり前の行動であることを理解してあげることが大切です。
ここでは、愛犬が飼い主さんの手を噛む理由について見ていきましょう。
①自分の意思を通すために噛む|自己主張性攻撃行動
わんちゃんにとって、かまってほしい、撫でてほしい、おやつがほしい、やめてほしいなど、何か要求したいことがあると飼い主さんの手を噛むことがあります。
これは、自己主張性攻撃行動によるもので、わんちゃんが自分の意思を通すために起こすものです。
恐怖や不安は伴わず嫌だと主張するときにも生じ、動物病院で処置のために保定されるときなどに「束縛されたくない、自由を奪われたくない」といった理由で反射的に噛んでしまうこともあります。
また、動物病院で痛い思いをして恐怖を感じている場合では、次にご紹介する「恐怖/防御性攻撃行動」で噛む場合も考えられるでしょう。
②怖いことから身を守るために噛む|恐怖/防御性攻撃行動
わんちゃんが怖いと思っている人や物が近づいたときに、自分を守るために噛むことがあります。
これは、恐怖/防御性攻撃行動によるもので、例えば手で叩かれた経験がある場合では手が恐怖対象となり、急に手で触られそうになって怖いと感じて噛むといったことが起きます。
③縄張りを守るために噛む|縄張り性攻撃行動
寝ているときや休憩しているときに愛犬に近づいたり、触ろうとしたときにに愛犬を触ったり触ろうとしたときに噛むことがあります。
これは、縄張り性攻撃行動によるもので、わんちゃんが自分の縄張りだと認識している場所に近づいてくる人や動物に対して見られます。
④食べ物を守ろうと噛む|食物関連性攻撃行動
おやつやご飯を食べているときに、取られないようにと守るために、近づいたり近くに手を伸ばしたときに噛むことがあります。
これは、食物関連性攻撃行動で、食事中のわんちゃんに近づく、犬用ガムや食器に近づく、食器を片付けるなどすることに対し、唸ったり噛んだりします。
⑤物を守ろうと噛む|所有性攻撃行動
お気に入りのおもちゃで遊んでいるときなどに、取られないようにと守るために、近くに伸ばした手を噛むことがあります。
これは所有性攻撃行動によるもので、自分が所有していると認識しているものに対し、近づいたり取り上げたりしようとすると生じます。おもちゃに限らずそのわんちゃんにとって価値の高いもので発生しやすいため、注意が必要です。
わんちゃんの本能的な行動ですが本気で噛むことが多いため、取られる心配がないことを教えてあげるほか、根気よく「ちょうだい」のトレーニングも行うことをおすすめします。
⑥どうすればいいか迷ったときに噛む|葛藤性攻撃行動
「眠い」けど「寝たままかまわれるのは嫌」など、2つ以上の感情が同時に起こることで葛藤状態となり、イライラを解消するために噛むことがあります。
これは、葛藤性攻撃行動と呼ばれ、しつこく撫でられたり、寝ている愛犬を撫でようとしたり、やきもちを焼いたりといった場面でも見られます。
また、家族内で愛犬に対して一貫性のない接し方などは、葛藤性攻撃行動を助長する可能性があるため、注意が必要です。
⑦遊びがエスカレートして噛む|遊び関連性攻撃行動
引っ張り合いなどをして遊んでいるときに興奮して、遊びがエスカレートして噛むことがあります。
これは遊び関連性攻撃行動と呼ばれ、飼い主さんが愛犬をより興奮させるような対応をしてしまうと、ますますエスカレートしてしまうため、対応は慎重に行う必要があるでしょう。
⑧やつあたりで噛む|転嫁性攻撃行動
本来の攻撃対象に攻撃できないときに、近くにいる人をやつあたり的に噛むことがあります。
これは転嫁性攻撃行動と言い、愛犬が散歩中にほかのわんちゃんに対して吠えたり威嚇したときに制止しようとしたり、窓の外にいる人や動物に縄張り意識から吠えるといったようなときに、たまたま近くにいた飼い主さんや、近づいた飼い主さんを噛んでしまうのです。
⑨痛みがあって噛む|疼痛性攻撃行動
体にどこかに痛みや違和感があったり、抱っこの仕方が悪く痛みを感じさせている場合に噛むことがあります。これは、疼痛性攻撃行動というもので、痛みや違和感がある部分を触られたくない気持ちが「噛む」という行動に表れます。
これまで大丈夫だったのに急に噛むようになったという場合では、病気やケガの可能性も考えられるため獣医師に相談しましょう。
⑩歯の生え替わりで口の中に違和感があって噛む
子犬が飼い主さんの手を噛む場合、歯の生え替わりで口の中に違和感があったり、むず痒いことも考えられます。
乳歯から永久歯に生え変わる時期は生後4~6ヶ月頃ですが、個体差もあり、1歳頃まで噛む場合も珍しくありません。
飼い主さんの手を噛むのは手近にあるからなので、噛み応えがあり興味を引きそうな子犬対応のおもちゃを用意してあげましょう。
このとき、ぬいぐるみやラテックスなど壊れやすいおもちゃでは誤飲してしまう恐れがあります。
実際、こちらは牛革でできたおもちゃですが、噛んでいるうちに糸がほつれて周りの飛び出している部分の1つを愛犬が飲み込んでしまい、獣医師に大きさを伝えるために取り出したのが右側のものです。
内視鏡か開腹手術かと話していたところ何とかうんちと一緒に出てきてくれましたが、飲み込んだものはうんちの半分以上を占め、腸に詰まる可能性もあったので、飲み込む心配のない知育玩具など一人遊び用のおもちゃを用意してあげることをおすすめします。
ドッグトレーナーに聞いた!愛犬が人の手を噛むときのやめさせ方
では、愛犬が人の手を噛むときは、どうやってやめさせたらいいのでしょうか。甘噛みで悩む飼い主さんは多く、噛み癖がつく前に対処したいと気になっているのではないでしょうか。
そこでいぬなび編集部では、効果的なやめさせ方はあるのか、やめさせるコツはあるのか、ドッグトレーナーの三井さんにお話をお聞きしました。
今日はよろしくお願いします。早速ですが、甘噛みのやめさせ方はどんなことをしたらいいのでしょうか?
甘噛みをやめさせるときには、遊びを教えてその中で
噛んでいいものと噛んでいけないもの(手、おもちゃ以外)を教えます。
おもちゃはロープ状のものなど、人が持つところとワンちゃんが噛むところが離れているものがおすすめです。
おもちゃを噛んでいるときは遊び続け、人の手などおもちゃ以外を噛んだときは大きな声で「痛い」と言って(愛犬がびっくりするような感じ)でおもちゃを隠し、20~30秒ほど放っておきます。
そうすると犬としては、自分が手を噛むと遊んでくれない、びっくりするし、暇になってつまらないと感じます。おもちゃ以外を噛むと自分にとって嫌なことが起こると学んでもらうことが大切です。
「今は甘噛みしていいよ」「今はダメだよ」は犬に伝わりにくいため、どういう場合でも「歯が当たったらダメ」を統一しておきましょう。メリハリを持つのが一番のポイントです。
せっかくなので、もう少し詳しくやめさせ方を教えてもらいました。
■この章でわかること
・甘噛みのやめさせ方|ステップ①まずはリードをつけて遊んでもらう
・甘噛みのやめさせ方|ステップ②20~30秒経ったらもう一度遊ぶ
・甘噛みをやめさせるときの注意点
・甘噛みは成犬になったら自然に直る?
甘噛みのやめさせ方|ステップ①まずはリードをつけて遊んでもらう
室内で遊ぶときに、愛犬にリードをつけて一緒におもちゃで遊びます。もし手を噛むようなことがあれば、「痛い!」とびっくりさせるように言ってリードを踏んでほかに行けないようにしましょう。
リードをつけることで、ほかのものを噛みに行ったり、ほかのもので遊んでしまうことを防げます。
甘噛みのやめさせ方|ステップ②20~30秒経ったらもう一度遊ぶ
リードを踏んだまま何もせず、20~30秒経ったらもう一度おもちゃで遊び、再び手などおもちゃ以外を噛むようならばリードを踏んで20~30秒放っておきます。
これを何度も繰り返すことで、おもちゃなら噛んでいい、手は噛んではいけないということをわんちゃんは学習します。
手を噛まれたときに遊びをやめるだけでは何が正解なのか(どうやって遊ぶことが正しいことなのか)ワンちゃんが気づく機会がありません。何度も繰り返し、なぜ遊びが中断するのか、またどうすれば遊び続けられるのかワンちゃんが試行錯誤して正解を見つけることが大切です。
甘噛みをやめさせるときの注意点
そもそも、遊ぶときは手で遊ばないようにすることが大切です。
また、わんちゃんは動くものを追いかけたくなるのが本能です。例えば手を噛まれた後に飼い主さんが「やめて」と手をヒラヒラと払い除けるようにすると、遊んでくれていると勘違いする子もいるため、手を噛んだら手は隠すを徹底してください。
甘噛みは成犬になったら自然に直る?
よく、甘噛みは成犬になったら自然に直ると見聞きしますが、本当に何もしなくても成犬になれば直るものなのでしょうか?
確かに、成犬になるにつれて遊びの欲求が減ってきますので甘噛の頻度は減るかもしれませんが、人が助長するような行動をしていたら直りません。経験上、甘噛みの相談はとても多いです。
そもそも、どうして甘噛みで相談するかについては、飼い主さんが許容できなくなったことが考えられます。
小さいときは噛まれてもそこまで痛くなく許容できますが、大きくなると筋力がつき歯も立派になるため、わんちゃんは同じ感覚で噛んでいても人が我慢できなくなってしまうのです。
甘噛みは成犬になっても自然に直るわけではないため、小さなうちから手を噛まないように教えてあげることが大切です。とは言え、ほかに問題がなければ、成犬でも前章のステップで直すことは可能ですよ!
対処法は子犬でも成犬でも変わりません。ただ、他の問題が生じる可能性はあります。
おもちゃを隠すと怒る、リードを踏むとイライラして吠えるなどの場合は飼い主の対応が難しくなる可能性もあり、専門家に相談することをおすすめします。
愛犬が自分の手(前足)を噛む理由は?ストレスや病気などさまざま
愛犬が自分の手(前足)を噛む理由は、以下のようなことが考えられます。
■愛犬が自分の手(前足)を噛む理由
・暇つぶしをしている
・癖になっている
・ストレスを感じている
・グルーミング(お手入れ)をしている
・手(前足)に違和感がある
・手(前足)に痛みがある
本能的な行動や正常な行為から病気が隠れている可能性があるものまでさまざまで、執拗に噛み続けたり、頻繁に噛む場合では特に注意が必要です。
噛むことで手(前足)に炎症や感染症を起こし、それが気になってまた噛むことでさらに悪化させてしまい、場合によっては痛みや腫れて地面に手(前足)をつくことができなくなってしまうこともあります。
愛犬が手(前足)を執拗に噛み続けたり、頻繁に噛む場合では動物病院を受診しましょう。
愛犬が自分の足を噛む理由や対策については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
まとめ
愛犬が手を噛む理由はさまざまで、噛むことはわんちゃんにとって当たり前のことですが、人間と一緒に暮らす上で噛み癖をつけないようにすることが重要です。
もちろん、わんちゃんも生きものなので、噛むつもりがなくてうっかり噛んでしまったということもありますが、噛んでいいものとダメなものを教えてあげることで、必要以上に噛むようなことはないでしょう。
■愛犬が手を噛むときのやめさせ方のポイント
・噛んでいいものと噛んではいけないものを何度も繰り返し教える
・リードを使って動ける範囲を制限する
・愛犬が噛んだら手を隠す
・「歯が当たったらダメ」を統一する
やめさせ方を参考に、噛むことを叱るだけではなく、愛犬と向き合い一緒に解決してあげてくださいね。
執筆者
- ペットライター
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たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー