くしゃみと逆くしゃみの違いって?
犬のくしゃみについて調べていると、「逆くしゃみ」という言葉もよく登場します。
それぞれの特徴を以下にまとめました。
■通常のくしゃみの特徴
…通常のくしゃみは鼻や口から空気を吸って激しく外に吐き出す。
■逆くしゃみの特徴
…逆くしゃみは鼻から空気を激しく吸い込み続ける現象。とくに小型犬や短頭種に多くみられる。
結論からいうと、逆くしゃみは病気ではありません。
逆くしゃみの場合、突然ブーブーと大きな音を立てて反り返るほどの姿勢をするのでびっくりする飼い主さんが多いですが、焦る必要はありません。症状は数秒~1分ほどで治まり、その後は何事もなかったかのように元気にしています。
重度の心臓や呼吸器、神経の持病をもっていなければ、受診する必要はありません。
むしろ通常のくしゃみこそ「もしかして風邪?病気?」と注意深く観察する必要があります。
では、病気が潜んでいるかもしれないくしゃみとは一体どのようなものなのでしょうか?次の章で詳しく紹介します。
病気が疑われるくしゃみの原因と対策法
病気のくしゃみなのかそうでないのか見分けるには、そのときの愛犬の様子をよく観察することが大切です。
下記のような症状がみられた場合は、病気を発症している恐れがあります。
■病気が疑われるくしゃみの症状
・くしゃみの回数が多い
・くしゃみが連続的に出る
・くしゃみと一緒に鼻血が出る
・くしゃみと一緒に黄色い鼻水が出る
・くしゃみをするときに首を振る
このようなくしゃみの症状に加え、食欲不振や嘔吐、呼吸が苦しそうなどの症状がみられた場合は命に関わる恐れがあるため、すぐに動物病院で診てもらいましょう。
上記に概要しない場合は「様子を見てもOK!通常のくしゃみの原因と対策法」をチェックしてくださいね!
くしゃみが多い場合に疑われる病気は以下です。
それぞれの病気について、詳しくご紹介します。
疑われる病気①ケンネルコフ
別名「犬伝染性気管支炎」ともよばれ、ウイルスや細菌感染により発症する病気です。
連続的なくしゃみや乾いた咳が症状としてあらわれ、悪化すると高熱が出たり、粘り気のある膿のような鼻水が出ます。
くしゃみや咳などの飛沫感染により、ペットショップやペットホテル、ドッグラン、ドッグショー、多頭飼いなどの高密度の環境において犬同士で感染が広がりやすいことが特徴です。
ケンネルコフにかからないようにするには、ワクチンの接種が効果的です。他の犬からウイルスや細菌をもらわないように、または自分から感染を広げないようにするには、ワクチンの接種はとても重要になります。
とくに免疫力が弱い子犬はケンネルコフにかかりやすく重症化する傾向にあるため、愛犬に異変を感じたらすぐに動物病院へ行きましょう。
疑われる病気②歯周病
歯周病は、歯石や歯垢に蓄積によって起こる炎症のことです。
炎症が悪化すると歯の根元にまで細菌が侵入し、口と鼻をつなぐ骨に穴を開けてしまいます。
そのためくしゃみや膿のような鼻水、鼻血が出るようになり、その他に口臭がきつくなる、歯茎が腫れるなどの症状があらわれます。
歯周病の根本治療は、全身麻酔による手術を行います。
症状の進行度合いによっては抜歯が必要なこともあり、重度になると肺炎や敗血症といった重症化の恐れもありますので、歯周病にならないよう日頃からハミガキをしましょう。
疑われる病気③鼻腔内腫瘍
鼻の中(鼻腔内)に腫瘍が発生したことで、くしゃみや鼻水、鼻血などの症状があらわれます。
悪化すると、眼球や脳を圧迫するため眼球が突き出したり、腫瘍が大きくなって顔が変形することもあります。
発見しにくい場所なので腫瘍を見つけたときにはすでに悪化しているケースが多く、残念なことに命を落とす恐れがあります。
鼻腔内腫瘍の原因ははっきりと解明されていませんが、ダックスフンドやコリーなどの長頭種やシニア犬が発症しやすいといわれています。
初期症状はケンネルコフや歯周病と似ていますが、悪化すると鮮血が出ることが特徴的です。
命に関わる重大な病気であるため、異変を感じたらすぐに動物病院へ行きましょう。
病院に行く時は、くしゃみの回数や症状を詳細に伝えよう!
愛犬のくしゃみに異変を感じたら、すぐに動物病院へ行きましょう。お家での愛犬の様子を獣医さんに伝えることで、早期治療に役立ちます。
写真や動画を撮って、下記のものを記録しておきましょう。
・くしゃみの回数(1日に〇回、〇時間に〇回など)
・くしゃみをした日や時間(朝に多いのか、昼に多いのか、夜に多いのか)
・くしゃみをするタイミング(外だと出ないが家の中だとくしゃみをするなど)
様子を見てもOK!通常のくしゃみの原因と対策法
ここでは、「病気が疑われるくしゃみの症状」で当てはまらないかった場合の様子を見てもいいくしゃみの原因ついてご紹介します。
ここで注意なのは、「様子を見てもいい」というのは「放置してもいい」という意味ではありません。
くしゃみをしているということは、体になんらかの異変が生じているということです。
とくに③「アレルギーによるもの」に関しては、どんどん治療が困難になる恐れがあります。
くしゃみの原因をきちんと突き止めるには飼い主さんの普段からの愛犬とのコミュニケーションがとても大切です。
①ホコリや砂、草花、食べ物のカスなど「鼻への異物混入によるもの」
人間と同じく、鼻に異物が入ると体が異物を排除しようと反射的に反応し、大きくくしゃみをします。
1回もしくは数回くしゃみをしたとしても、その後の体調や様子に変化がない場合は、生理現象なので心配する必要はありません。
くしゃみをする原因としては、下記のものを吸い込んだことが考えられます。
・掃除が不十分な部屋のホコリ
・散歩中に嗅ぐ砂や草花
・食事のあとの食べ物のカス
あまりにも連続でくしゃみをしている場合は、鼻の中に異物が残ったままの可能性、またはアレルギーの発症として体が危険信号を出している可能性があります。この場合は動物病院を受診することをおすすめします。
②タバコやお香、殺虫剤など「刺激の強いニオイによるもの」
犬ははるかに嗅覚が優れている動物であるため、少しのニオイだけでも敏感に反応します。
人間も鼻がムズムズするとくしゃみをしますが、犬はそれを誘発するものが多いので注意が必要となります。
犬に近づけてはいけない刺激物と対策法は下記の通りです。
・タバコ:犬の前で吸わない。
・お香:犬が出入りする部屋では焚かない。
・殺虫剤:使用する際は部屋から犬を出し、使用後は窓を開けて換気を行う。
・香水:犬と一緒のときは付けない。付ける場合は少量にする。
・香辛料:料理中は犬をキッチンに近づけない。
これらの刺激物は犬に近づけない、また目や手が届く範囲に置かないようにしましょう。脱臭や消臭の機能が付いた空気清浄機を設置するのもオススメです。
対策をしてもくしゃみが止まらない場合は、すぐに動物病院で相談してみましょう。
③花粉、ハウスダストなど「アレルギーによるもの」
アレルギーの原因となるもの(アレルゲン)と接触すると、くしゃみだけでなくさまざまな症状があらわれます。
このような環境性のアレルギーを発症すると、下記のような症状があらわれます。
・くしゃみが連続で出る
・くしゃみの回数が多い
・鼻水が出る
・皮膚に赤みや発疹がみられる
・皮膚に痒みが生じる
・体や顔、耳を異常に掻いたり、床にこすりつける
・抜け毛が多い、皮膚の一部が脱毛している
・目ヤニが普段より多い
花粉、ハウスダストなどのそれぞれの対策法についてご紹介します。
「花粉」によるくしゃみの対策法
・散歩中は、アレルゲンが皮膚に付かないよう服を着せる
・散歩中は、アレルゲンとなる草花に近づかない
・散歩後は、ブラッシングをすることで体に付いた花粉を落とす
「ハウスダスト」によるくしゃみの対策法
・常に部屋を清潔に保つ
・普段使っているベットなどを洗う
自宅でできるくしゃみ対処法まとめ
①鼻の異物を取ってあげる
鼻の中に異物が残っている可能性がある場合は、飼い主さんの手で取ってあげましょう。ティッシュや綿棒などを40℃程度のぬるま湯で湿らせ、きれいに拭き取ります。
②部屋をキレイに保つ
ハウスダストは、人や犬の動きですぐに舞い上がり空気中を浮遊する、とても小さくて軽いホコリです。そのため念入りに掃除することが重要となります。
一番ハウスダストが溜まりやすい場所は、飼い主さんが寝る寝室や愛犬の寝床です。こまめに掃除や換気を行い、常に部屋をキレイに保ちましょう。
③ハミガキをする
歯周病を予防するには、ハミガキが有効的です。歯周病は再発率が高い病気なので、動物病院で歯石を全て除去したとしても油断はできません。
ハミガキが苦手な子や、口の中に指を入れられるのが苦手な子が多いため、無理強いせずに少しずつ慣らしてあげることが大切です。
まとめ
犬のくしゃみは健康のバロメーターのひとつといえるほど、犬の体調が顕著にあらわれます。
愛犬の普段の行動をよく観察し、「あれ?くしゃみが多いな」と異変を感じたら、すぐに動物病院で相談しましょう。
飼い主さんのその最初の気付きが、愛犬の命を救うことになるかもしれません。
執筆者
- ライター
-
古川 菜々
- 愛玩動物飼養管理士2級 / ペットセラピスト / ペット看護士 / 愛犬飼育スペシャリスト