犬はほうれん草を食べられるが尿路結石の原因となるシュウ酸に注意!控えたほうがいい犬は?
ほうれん草には犬の健康に役立つ栄養素が豊富に含まれ、犬が食べてもいい野菜ですが、すべての犬に大丈夫というわけではありません。特に、尿結石で治療中の犬や栄養素に制限がある犬では控えたほうがいい場合も。
ほうれん草には多くのシュウ酸が含まれ、環境省の「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」では、「注意が必要なもの」としてほうれん草の名前が挙げられています。(※1)
シュウ酸はほとんどの食品に含まれていますが、ほうれん草が注意喚起されるのはそのシュウ酸の多さでしょう。
■シュウ酸の含有量(※2)
※100gあたり
|
シュウ酸 |
ほうれん草 |
700mg |
キャベツ、レタス、ブロッコリー |
300mg |
さつまいも |
250mg |
なす |
200mg |
小松菜 |
50mg |
ほうれん草に含まれるシュウ酸は「シュウ酸ナトリウム」で、体内でカルシウムと結合して「シュウ酸カルシウム」となります。シュウ酸カルシウムは結石を形成しやすく、特に尿路系の結石を起こしやすいとされているため、人間でもほうれん草を生で食べるとリスクがあるとしてたくさん食べることに注意喚起がされています。(※3)
とは言え、ほうれん草にはたくさんの栄養が含まれており、与え方に注意をすれば犬の健康にメリットをもたらしてくれる野菜です。
ほうれん草の主な栄養と働き
ほうれん草に含まれる主な栄養素と働きは以下の通りです。
■ほうれん草の主な栄養素【葉 通年平均 茹で】(※4)
カロリー:23kcal / 100g
- カリウム
100g中:490mg
…ナトリウム(塩分)の排出を促す。細胞の浸透圧維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など重要な働きをする(※5)
- 鉄
100g中:0.9mg
…全身に酸素を運ぶ大切な働きがある。赤血球中や筋肉中にあるタンパク質の構成成分でもある。適量摂取は運動能力や学習能力の向上が期待できる(※6)
- β-カロテン
100g中:5400μg
…体内で必要な量だけビタミンAとなる。体内でほかの栄養素の働きを促進するほか、抗酸化作用で体内の活性酸素を除去する働きなど(※7)
- ビタミンC
100g中:19mg
…毛細血管、歯、軟骨などを正常に保つ。抗酸化作用で体内の活性酸素を除去する働きも。(※8)犬は体内で合成できるが、合成が追いつかないこともあり摂取するのが望ましい(※9)
- 食物繊維
100g中:3.6g
…腸内環境の改善や排便をスムーズにする働きがある。不溶性食物繊維は有害物質を吸着させて、便と一緒に体の外に排出する働きも(※10)
上記以外にも、ほうれん草には犬の健康に役立つ栄養素がさまざま含まれています。
あえて茹でたほうれん草の栄養成分の数値を乗せましたが、茹でるとシュウ酸も500mgまで減ります。シュウ酸を抑えた生で食べられるサラダ用のほうれん草も販売されていますが、犬に与える場合はしっかり茹でてシュウ酸を減らしてあげることが大切です。
シュウ酸には栄養素的な意味はなく、アクの素になっている成分で、逆にカルシウムや鉄分の吸収を阻害する働きをするため、安心して減らしてくださいね。
犬が1日に食べていいほうれん草の量
ほうれん草は犬の健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれていますが、与え過ぎは栄養バランスの偏りや体調不良の原因となってしまうため、おやつやトッピングで与える場合は犬が1日に必要なカロリーの10%程度にしましょう。
とは言え、ほうれん草のカロリーは100gあたり23kcal(茹で)と低く、計算上では体重5kgの犬で162g(約一束)とかなりの量になってしまいます。シュウ酸やβ-カロテンの過剰摂取を防ぐためにも、以下の量を目安にしてください。
■犬が1日に食べていいほうれん草の目安量(茹でる場合:23kcal / 100g)
体のサイズ |
1日の目安量 |
超小型犬(体重4kg未満) |
5g |
小型犬(体重4~10kg未満) |
25g |
中型犬(体重10~25kg未満) |
50g |
大型犬(体重25kg以上) |
90g |
また、犬の体質に合う合わないもあるため、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整することが大切です。
犬にほうれん草を与えるときの注意点
ほうれん草は、適量を守り上手に活用すれば健康維持のサポートが期待できる野菜ですが、犬に食べさせるときは注意が必要なこともあります。
ここでは、犬にほうれん草を与えるときの注意点を見ていきましょう。
食物アレルギーに注意する
※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りの赤み、目の下の脱毛、激しい痒みが出た愛犬
ほうれん草にも微量のたんぱく質が含まれているため、初めて与えるときはほんの少量にして、食べた後は48時間ほど様子を見てください。
ほうれん草に食物アレルギーがある場合、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られるでしょう。
■犬の食物アレルギーの主な症状
・皮膚の赤みや痒み
・目の周りや口の周り、耳を痒がる
・脱毛
・足先や皮膚を執拗に舐めたりかじる
・下痢や軟便
・嘔吐
症状には個体差がありますが、上記のような症状が見られた場合は獣医師に相談してください。
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】
たっぷりのお湯で茹でてあく抜き(シュウ酸抜き)をする
生食用にシュウ酸が抑えられたほうれん草も販売されるようになりましたが、犬に与えるときはたっぷりのお湯で茹でてシュウ酸を抜いてください。
ほうれん草の重量の3倍以上の水量で、沸騰水にほうれん草を入れて2~3分茹でることでシュウ酸がおおよそ半減するという報告もあり(※11)、シュウ酸を過剰に摂取させないためにもぜひ実践してみてくださいね。
水からほうれん草を入れて茹でる場合ではシュウ酸を半減させるまで10分以上必要になり、水溶性の多くの栄養素を失ってしまうこととなるので、「沸騰してからほうれん草を入れる」がポイントです。
もちろん、アツアツのままではなく、水分をしっかり絞って人肌程度に冷ましてから食べさせてあげてくださいね。
カルシウムと一緒に与えるとより安心
ほうれん草のシュウ酸は、カルシウムが多く含まれる食べ物と一緒に与えることでバランスがより保たれ、体内で結合して腸での吸収が抑えられて便と一緒に排出されるため、カルシウムを多く含む食べ物と一緒に与えるとより安心です。
■カルシウムを多く含む食べ物
・小松菜
・かつお節
・小魚
・豆腐
・納豆
・いりごま
・チーズ
・ヨーグルト
・ヤギミルク
・ひじき
・わかめ
・昆布
・栗
・キウイ(緑肉種) など
【獣医師監修】犬が食べていいもの一覧!野菜・果物・肉類など与えるメリットと注意点
細かく刻む
犬がほうれん草を消化しやすいように、細かく刻んでから与えましょう。大きいまま与えてしまうと、丸呑みし消化管に詰まらせてしまう可能性もあり危険です。
また、ほうれん草の根っこははしっかり洗って長めに茹でることで食べることができ、マンガンという犬の微量必須ミネラルが含まれますが、与える場合はよく刻み過剰摂取にならないように少量にとどめておくことをおすすめします。
持病がある犬は獣医師に確認してから与える
ほうれん草にはシュウ酸やカリウムが豊富に含まれるため、尿結石を起こしたことがある犬や尿結石で治療中の犬、腎臓病の犬などはもちろん、持病がある犬は獣医師に確認してから与えたほうが安心です。
ほうれん草に含まれる豊富な栄養素は、犬の状態によっては病状の悪化を招いたり、治療の妨げになることもあります。
愛犬のためにも、必ず獣医師に確認してくださいね。
まとめ
ほうれん草は、正しい与え方をすれば過剰にシュウ酸を怖がる必要はなく、犬の健康維持に役立ってくれる野菜です。
とはいえ、ほうれん草に限らずどんなものにも言えることですが与え過ぎはNG!
また、ほうれん草はあく抜きしてシュウ酸を減らすことが必須です。
■ほうれん草の与え方まとめ
①ほうれん草の重量の3倍以上の水を鍋に入れ火にかける
②沸騰してからほうれん草を入れる
③2~3分茹でる
④水を絞って人肌に冷ます
⑤細かく刻んで与える
電子レンジで調理することも可能ですが、その後水に晒したとしても茹でるほど多くはシュウ酸を減らすことはできないため、やはりたっぷりのお湯で茹でてあげる方法が一番です。
ほうれん草は犬の健康維持に嬉しい栄養がいっぱいなので、正しい与え方で上手に活用してくださいね。
<参考文献>
※1:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」
※2:あかばね腎・泌尿器クリニック「尿路結石」
※3:ふたばクリニック「ホウレン草(シュウ酸)と尿路系結石」
※4:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※5:健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」
※6:大塚製薬 栄養素カレッジ「鉄」
※7:わかさの秘密「β-カロテン」
※8:健康長寿ネット「ビタミンCの働きと1日の摂取量」
※9:ペット栄養学会誌「柴犬における血漿中ビタミンC濃度」
※10:健康長寿ネット「食物繊維の働きと1日の摂取量」
※11:日本家政学会誌「ほうれんそうのゆで調理におけるシュウ酸含量の変化と中学校家庭科教材への活用」
執筆者
- ペットライター
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たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー