犬にアボカドを与えてはいけないと賛否両論ある理由
結論から言うと、犬がアボカドを食べてしまっても、果肉部分なら大丈夫です。
犬にアボカドを与えてはいけないと言われているのは、皮や種、未熟な果肉に多く含まれる自然毒素の「ペルシン」を人間以外の動物が大量に摂取すると中毒を起こしてしまう可能性があることや、1994年に2頭の犬がアボカドで中毒を起こしたかもしれないという推定毒性の報告(※2)を受けてASPCA(米国動物虐待防止協会)やAKC(アメリカンケネルクラブ)が「犬にアボカドは危険」と発表したことが大々的に広まったためです。
しかし、この推論は物議を醸し、2012年の研究では40頭の犬にアボカドを6ヶ月間与えて調査し、犬の健康や安全性への懸念がないことが報告されています。(※3)
また、犬にペルシンが影響するという科学的根拠もなく、犬と猫はほかの動物に比べてペルシンの抵抗性がある、もしくは影響しないとASPCAの見解も変わっている(※4)ため、必要以上に心配する必要はありません。
とは言え、アボカドは脂質が多いので、大量に食べてしまった場合では消化不良や胃もたれで下痢や嘔吐を起こす可能性があるため、動物病院を受診したほうが安心です。
※ペルシンはウサギや鳥、馬、ヤギなどの一部の動物には有害なので、犬猫以外のほかの動物と一緒に暮らしている場合は注意してください。
アボカドの栄養素
アボカドは「世界一栄養価の高い果物」のギネス認定を受けているように、20種類以上のさまざまな栄養素が豊富に含まれています。
アボカドの主な栄養素と働きは以下の通りです。
■アボカドの主な栄養素(※5)
カロリー:176kcal / 100g
- 脂質
100g中:17.5g
…重要なエネルギー源。ホルモンや細胞膜、核膜の構成や脂溶性ビタミンの吸収を促すなど重要な働きを担う(※6)
- 食物繊維
100g中:5.6g
…腸内環境の改善や排便をスムーズにする働きがある。不溶性食物繊維は有害物質を吸着させて、便と一緒に体の外に排出する働きも(※7)
- カリウム
100g中:590mg
…ナトリウム(塩分)の排出を促す。細胞の浸透圧維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など重要な働きを担う(※8)
- ビタミンE
100g中:3.6mg
…生体膜の機能を正常に保つ。強い抗酸化作用がある。血管を健康に保つ、赤血球の破壊を防ぐ、過酸化脂質の生成を抑制などの働きも(※9)
- ビタミンK
100g中:21μg
…血液凝固に大きく関与。丈夫な骨づくりにも不可欠(※10)
- ビタミンB群
…あらゆる種類の酵素の補酵素。代謝ビタミンとも呼ばれ、生きるためのエネルギーを作るのに必須(※11)
アボカドは「森のバター」と言われるように脂質が豊富な果物ですが、アボカドの脂質のほとんどが不飽和脂肪酸で、リノール酸やオレイン酸、オメガ3のα-リノレン酸など健康に役立つ脂質が含まれています。
とは言え、脂質をたくさん摂取するのは、肥満や哀調不良の原因となるため、与え過ぎないことが大切です。
犬が1日に食べていいアボカドの量
おやつやトッピングとして与える場合、犬が1日に食べてもいいアボカドの量は、肥満や栄養バランスの偏りを防ぐためにも愛犬が1日に必要な摂取カロリーのうちの10%程度です。
とは言え、脂質や食物繊維が多いことから、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整しましょう。
■犬が1日に食べていいアボカドの目安量
※避妊・去勢済みの成犬で算出
体重 |
1日の目安量(上限) |
1kg |
6g |
3kg |
14g |
5kg |
21g |
7kg |
27g |
9kg |
33g |
12kg |
41g |
15kg |
48g |
20kg |
60g |
25kg |
71g |
30kg |
81g |
もっと正確に愛犬に与えていい量を知りたい場合は、以下の記事でカロリー計算について詳しく解説しています。
【獣医師監修】ドッグフードの正しい与え方!パッケージの給餌量はあくまで目安
犬にアボカドを与える際の注意点
アボカドには、健康維持に役立つさまざまな栄養素が含まれており、犬が食べることでメリットが得られる食材ですが、食べさせるときには注意してあげなければいけないこともあります。
ここでは、犬にアボカドを与える際の注意点を見ていきましょう。
食物アレルギーに注意する
※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りが赤くなる、目の下が脱毛、激しい痒みが出た愛犬
アボカドにもわずかにたんぱく質が含まれているため、犬にアボカドを初めて与えるときは少量を与え、食べた後は48時間ほど様子を見てあげるようにしてください。
アボカドに食物アレルギーがある場合は、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られます。
■犬の食物アレルギーの主な症状
・皮膚の赤みや痒み
・目の周りや口の周り、耳を痒がる
・脱毛する
・足先や皮膚を執拗に舐めたりかじる
・下痢や軟便
・嘔吐
食物アレルギーの症状は個体差がありますが、上記のような症状が見られた場合は食べさせるのを控え、獣医師に相談しましょう。
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】
与え過ぎない
アボカドは脂質や食物繊維が多く含まれているため、与え過ぎは消化不良や胃もたれなどで下痢や嘔吐を引き起こす可能性があります。
また、脂質が多い食事を続けてしまうと、内臓に負担をかけたり、肥満や膵炎、高脂血症などの病気のリスクも高くなるため、適量を守り与え過ぎないことが大切です。
皮や種は与えない
アボカドの皮や種は与えず、果肉だけを与えるようにしてください。
アボカドの皮や種は硬く、消化不良を起こしたり、種が喉に詰まって窒息、腸に詰まって腸閉塞といったことが起こる可能性があります。
また、皮や種にはペルシンも多く含まれるため、犬に影響は少ないとはいえ体質によっては体調不良になる可能性もあるため、避けておいたほうが無難です。
皮や種はゴミの処理などでも注意しましょう。
未熟なアボカドは与えない
未熟なアボカドはペルシンを多く含むのはもちろんですが、果肉が硬く犬が消化不良を起こす可能性があるため、与えないようにしましょう。また、未熟なアボカドはえぐみがあり、とても不味いので、与えるメリットもないと言えます。
持病がある犬は獣医師に確認してから与える
アボカドは脂質やカリウムなどが豊富に含まれているため、持病がある犬では獣医師に確認してから与えるようにしてください。
カリウムや脂質など、犬にとって必要不可欠な栄養素で健康な犬では過剰に心配する必要はありませんが、病気によっては栄養素に制限が必要となることもあるため、持病がある犬は必ず獣医師に確認してから与えましょう。
犬が未熟なアボカドや種を食べてしまったときの対処法
誤って犬が未熟なアボカドや種を食べてしまったときは、本当に食べてしまったのか確認し、食べたのならば「いつ」「何を」「どれくらいの量」食べたのかをメモしましょう。
そして、夜間であっても動物病院に電話をして情報を伝え、獣医師に指示を仰いでください。
口の中に種がある場合は無理に取ろうとしない
もし、まだ口の中にアボカドの種がある場合、「チョウダイ」がちゃんとできる犬ではいいですが、チョウダイができない場合は無理に取ろうとすると、取られまいと無理に飲み込んでしまうため、詰まらせてしまう恐れがあり余計に危険です。
おもちゃで気を反らして出してもらう、飽きて口から出したときに気を反らして取るなど、飲み込まないように対処しましょう。
また、普段から「チョウダイ」「出せ」ができるようしておくことをおすすめします。
自分では無理に吐かせない
犬が食べたものを吐かせる方法はネット上でいろいろ紹介されていますが、どれも危険で効果がないばかりか、逆に犬の状態を悪くしてしまう可能性があるため行わないでください。
■飼い主さんが自分で愛犬を吐かせるリスク
- 嘔吐が止まらなくなる
- 水中毒や塩中毒などの命に係わる重篤な障害
- 催吐剤として使用したオキシドールによる胃や食道粘膜の重度な障害
少量の未熟なアボカドを食べたり舐めたりした程度では、様子を見ていてもいいこともありますが、その際も自己判断ではなく獣医師に相談しましょう。
また、種を食べてしまった場合では、窒息や腸閉塞を起こす可能性があり危険なため、たとえそのときは愛犬が元気にしていても、最も早く診てもらえる動物病院を受診してください。
腸閉塞の症状
犬が腸閉塞を起こしたときの症状は、以下の通りです。
■腸閉塞の主な症状
・嘔吐を繰り返す
・げっぷを繰り返す
・嘔吐やげっぷから腐敗臭がする
・腹痛
・食欲がなくなる
・軟便、下痢
・便が出ない
腸閉塞は重度になると腸に穴が開いて腹膜炎になったり、詰まった腸の部分が壊死したり、敗血症を起こすなど命に係わることもあるため、早急に治療が必要です。
まとめ
アボカドは、犬に与えてはいけないと言われていますが、与え方や与える量に注意すれば、犬に与えても大丈夫な食材です。
世界一栄養価の高い果物と言われているように、犬の健康をサポートするさまざまな栄養素が豊富に含まれており、上手に活用すれば健康維持に役立てることができるでしょう。
しかし、アボカドに限ったことではありませんが、どんな食べ物でも与え過ぎは肥満や体調不良の原因になる可能性はあるので、適量にとどめておくことが大切ですよ!
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー