ワンちゃんが何度もおしっこにいくようになった、血尿が出たということがあれば、それは膀胱炎かもしれません。
膀胱炎は、様々な原因で膀胱の粘膜に炎症が起こっている状態をいいます。炎症とは、感染や障害に対しての身体の反応であり、その反応が起こっている際、その部位に痛みや発熱がおこります。
ワンちゃんでも、人と同じように膀胱炎が起こる場合があります。今回はワンちゃんの膀胱炎について解説いたします。
ワンちゃんが何度もおしっこにいくようになった、血尿が出たということがあれば、それは膀胱炎かもしれません。
膀胱炎は、様々な原因で膀胱の粘膜に炎症が起こっている状態をいいます。炎症とは、感染や障害に対しての身体の反応であり、その反応が起こっている際、その部位に痛みや発熱がおこります。
ワンちゃんでも、人と同じように膀胱炎が起こる場合があります。今回はワンちゃんの膀胱炎について解説いたします。
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ワンちゃんにこんな症状は見られないですか?チェックリストでチェックしてみましょう。
症状 | チェック |
普段よりトイレに行く回数が増えた | |
トイレに行ってもおしっこが出ない | |
おしっこをする時に鳴く | |
落ち着きがない | |
尿が濁っている | |
血尿をしている |
2つ以上チェックが入ると、膀胱炎の疑いがあります。
血尿と頻尿は、特に症状としてよく見られます。普段の散歩で排尿をしているワンちゃんでは血尿などに気付きづらく、マーキングをよく行うわんちゃんでも、頻尿との区別がつかず発見が遅れてしまうこともあるので注意が必要です。
軽度なものであれば症状は排尿に関するものですが、症状が重篤化してしまうと、食欲不振や元気がなくなるなどの症状が起こる場合があります。
また、結石や腫瘍で尿が出せない状態になってしまい急性の腎不全などの別の疾患を併発した場合や感染が重篤化し全身性となってしまった場合、最悪死亡してしまう可能性もあります。病気に早く気付くためにも、自宅のワンちゃんの通常の尿の臭いや色、ペットシーツに砂のようなものがないかや普段の尿の回数などにも注意をしておきましょう。
尿の回数が極端に増えた場合、残尿感による回数増加が考えられます。また、落ち着きがなくなるなどの行動が目立つ場合もあります。
オムツをさせている老齢のワンちゃんやマナーベルトをしているワンちゃんでは、それらをこまめに変えるようにし、その匂いや重さに注意しましょう。
膀胱炎を見逃さないために
などを普段からチェックしておきましょう。
感染性の膀胱炎は、メスの方がオスよりも発症率が高く、避妊去勢を行ってないワンちゃんの方がより発症率が低い傾向にあります。
メスの方が発症率が高くなるのは、外部と膀胱の距離がオスとメスではメスの方が近いため感染を起こしやすいためと言われています。その他に寝たきりの子やマナーベルトをしている子では、感染が起こりやすくなります。
一部の膀胱結石には、遺伝的に発症しやすい犬種がおり、例えば、ミニチュアシュナウザー、ヨークシャテリアなどはシュウ酸カルシウム、ダルメシアンは尿酸塩尿石、ダックスフンド、ブルドックはシスチン尿石が作りやすいです。このような犬種の子は、尿石由来の膀胱炎になるかもしれないので注意が必要です。
膀胱結石が発症しやすい犬種
【シュウ酸カルシウム結石】⇒ミニチュアシュナウザー、ヨークシャテリア
【尿酸塩尿石】⇒ダルメシアン
【シスチン尿石】⇒ダックスフンド、ブルドッグ
…などの犬種が遺伝的に膀胱結石を発症しやすいと言われています。
ワンちゃんの膀胱炎の主な原因
【感染】⇒下部尿路感染症と言い、おしっこを完全に排出できない・カテーテルの挿入などによる傷・糖尿病などの病気で感染症の膀胱炎になることがあります。
【膀胱結石】⇒結石が原因で膀胱内に傷が付く、おしっこが出なくなるなどが原因で膀胱炎になることがあります。
【腫瘍】⇒膀胱内に腫瘍ができることでおしっこが出なくなる、感染症を引き起こすなどが原因で膀胱炎になることがあります。
【特発性】⇒原因不明の膀胱炎ですが、ストレスなどが原因で膀胱炎になることがあります。
ワンちゃんの膀胱炎は、時にそれらの原因が複合的に起こる場合もあり注意が必要です。
また、水分の接取不足や尿を我慢してしまう子でも起こりやすいと言われています。
感染による膀胱炎を下部尿路感染症といい、ワンちゃんは約10頭に1頭が生涯に一度は感染性の膀胱炎になると言われています。下部尿路感染症は、時に上部尿路感染症という尿菅や腎臓にまで感染が波及すると、重篤化し死亡する可能性もあり注意が必要です。
膀胱内の感染は、ほとんどが大腸菌やブドウ球菌などの細菌であり、まれに真菌というカビなどの感染もおこります。
感染性膀胱炎の原因は、本来備わっている膀胱の感染防御能が破綻することによっておこります。破綻してしまう原因としては、
⑴ 排尿不全…膀胱は、排尿することで膀胱内を洗浄します。そのため、完全に排尿することができない場合、尿のうっ滞を起こし、細菌感染が起こりやすくなります。排尿ができなくなる原因としては、膀胱内に結石や腫瘍などができ、物理的に排尿困難になる場合やヘルニアなどによって神経的障害による場合、膀胱憩室などの奇形があげられます。
(2)膀胱粘膜の傷害…カテーテルの挿入、結石、腫瘍などが粘膜を傷害することでおこります。
(3)全身性の疾患がある場合…糖尿病や副腎皮質機能亢進症などの潜在的な疾患がある場合、尿が細菌感染をおこしやすくなります。
感染症による膀胱炎は上記などの原因があげられます。
膀胱結石とは、様々な原因により膀胱内にミネラルなどが沈殿し結晶となり、それが集まって生じたものです。結石は膀胱内を傷害したり、排尿困難を起こさせ膀胱炎を発症させることがあります。結石にはいくつかの種類があり、その種類によって治療法が異なります。
膀胱内に発生した腫瘍によって、膀胱炎が起こる場合があります。膀胱内の腫瘍によって、物理的に排尿障害が起こる場合や、感染防御能が落ちることで感染性の膀胱炎を起こる場合があります。
ねこちゃんでは、比較的よく起こるのが特発性膀胱炎です。特発性膀胱炎は、原因が不明な膀胱炎のことで、細菌や結晶などがなく、ペットホテルのお預かりや気候変動などのストレスなどによって起こります。
膀胱炎の診断
【尿検査】⇒自宅で採取、もしくは病院でカテーテルや超音波検査機を使い尿を採取、尿試験紙を使い検査を行う
【レントゲン検査】⇒必須項目ではありませんが、尿に結晶があり結石を疑う場合レントゲンを使う事がある
【超音波検査】⇒結石や腫瘍を確認する検査、結石がある場合はカテーテルを使う場合もある
【細菌培養感受性検査】⇒尿検査で細菌が検出された場合、効果のある抗生剤を調べる事ができる
膀胱炎を調べるためには尿を調べることが最も大切です。病院で行う尿検査について方法と注意点について解説します。
1) 尿の採取法…ご自宅でご家族に採って来てもらう方法と病院で採る方法があります。
ご自宅で採る場合は、ペットシーツを裏返してそこにのった尿を採ったり、他には、お散歩中などに料理で用いるおたまなどを使い、採取する方法があります。
病院では、カテーテルを膀胱に入れて採る方法や超音波検査機を用いて、膀胱を確認しながら直接針を刺して採る方法があります。細菌性の膀胱炎を疑う場合は、病院で直接膀胱に針を刺して採る方法が最も膀胱炎の原因となった細菌を調べるうえでは確実です。
しかし、腫瘍などが疑われる場合は、穿刺は大変危険な行為となります。なぜなら、膀胱内の腫瘍を刺してしまうとその針を抜く際に他の部位に腫瘍が波及してしまう可能性があるためです。
尿路閉塞などで膀胱炎が起きている場合は、カテーテルを入れることで膀胱までの間に何か妨げるものがないか調べることができるかもしれません。採った尿は、病院に行くまでの間時間がかかる場合は、冷蔵庫などに保管すると尿の性状の変化を遅らせることができますが、可能であれば早くに検査した方が良いでしょう。
2) 尿検査…尿検査は、尿試験紙を用いた検査と尿を遠心機にかけてその沈査を見る検査を主に行います。
尿の試験紙の検査は、尿を直接試験紙につけて、その色の変化から尿中に含まれる赤血球や血糖、酸性かアルカリ性かなど確認します。尿沈査の検査は、遠心分離機を用いて沈んだ尿の内容物を顕微鏡で確認します。沈査中に白血球や赤血球、細菌、結晶などがないかを調べ、診断します。
レントゲン検査は膀胱炎を調べるうえでは必須ではありませんが、例えば、尿中に結晶があり、その結晶由来の結石が腎臓や尿管、膀胱などにないかを確認することができます。しかし、一部の結石はレントゲンには映らない場合も解釈には注意が必要です。
超音波検査は、採尿の際に役立つうえ、膀胱内に結石や腫瘍などがないかを確認するうえで有用です。膀胱内に炎症や結晶がある場合、膀胱の壁が分厚くなったり、膀胱内に超音波画像上で砂粒のように映ることもあります。
何度も排尿しているという症状の子で膀胱に大量の尿が確認された場合は、結石などで尿路閉塞が起こってしまっている可能性があります。その場合は、カテーテルを用いて、閉塞の解除をしなければなりません。
尿検査で細菌が検出された場合、その尿を培養することで、その細菌の種類や効果のある抗生剤など調べることができます。現在、多くの抗生剤に耐性を示す多剤耐性菌が人医療の領域でも問題となっており、やみくもに抗生剤を使用せず、培養検査によって効果のある薬剤を調べることでより早く適切に抗生剤を選ぶことが重要となっています。
膀胱炎の治療
【細菌性膀胱炎】⇒再発を繰り返す場合があり、抗生剤を使用し治療を行う。再発を繰り返す場合は他の要因が考えられるため、さらに検査が必要になる場合もある
【結石】⇒結石の種類によって治療が異なる
【腫瘍】⇒切除可能な位置にある場合は外科療法、内科療法は薬剤で進行を遅らせる・緩和させる事が目的となる
【突発性】⇒ストレスが原因の場合は生活習慣や環境改善を行う
細菌性の膀胱炎が確認された場合は、抗生剤を使用します。培養検査を行わない場合や結果が出るまでの間に、獣医の経験に基づいた抗生剤を使用しますが、可能であれば培養検査を行い、不要な抗生剤の使用を避けることが望ましいです。
細菌性膀胱炎は、難治性となり、再発を繰り返す場合もあります。
その原因としては…
などがある場合などがあります。
もし、繰り返し膀胱炎が起こる場合は、全身の血液検査とともにレントゲン検査や超音波検査を行い、膀胱以外に異常がないかを十分に検査をする必要があります。異常が見つかった場合は、膀胱の治療とともにそちらへの対処も行います。
オムツやマナーベルトなどを使用する場合は、そこから細菌が入り込み膀胱炎を起こさないようにこまめにそれらを変えて、またその周囲を清潔に保つようにしましょう。
膀胱炎を繰り返す場合、膀胱以外にも異常がないか検査を行う必要がある
結石による膀胱炎の場合、その結石の種類によって治療が異なる場合があります。
例えば、ストルバイト結石の場合、ストルバイトを溶かす療法食に変更することで治療することができます。また、細菌感染によって尿がアルカリ化し、それが原因でストルバイト結石ができてしまう場合があります。その場合は、感染の治療を行うことで療法食を与えないでも完治する場合もあります。
他に、シュウ酸結石の場合、食餌の変更によって結石が大きくなることを予防することはできますが、それらを溶かすことはできないため、必要に応じて手術によって摘出しなければならなりません。
結石が膀胱内ではなく、尿道にあり閉塞している場合は、カテーテルを用いて閉塞を解除します。結石を予防する上で重要なこととして結石を膀胱内に貯めないように水分を積極的に摂取させ、こまめな排尿を促すようにしましょう。
犬種によって遺伝的に膀胱結石を発症する場合がある
腫瘍による膀胱炎の場合は、その種類によって治療は異なります。
例えば、膀胱の腫瘍で多い移行上皮癌の場合は内科療法と外科療法があります。腫瘍が切除可能な位置にある場合切除によって根治する場合もありますが、再発率も高く注意が必要です。
内科療法については、使われる薬剤にもよっても異なりますが、進行を遅らせることと症状を緩和させることが目的となる場合が多く、予後は厳しいことが多いです。
ストレスなどによって膀胱炎を起こしている可能性がある場合は、状態によって消炎剤などを使用することもありますが、何より原因を特定し、その生活習慣や環境改善を行うようにしましょう。
原因を特定しても対処が難しい場合は、L-トリプトファンなどのストレス緩和に役立つ成分を含むサプリやフードがあるため試してみるといいでしょう。
膀胱炎の治療費は、その原因によって異なります。一過性の感染性の膀胱炎や特発性の膀胱炎などでは、短期的な検査と抗生剤のみで治療が終了することが多く費用も数千円内で済む場合が多いです。
結石が原因となる場合は、療法食を食べ続けなければならず、また定期的な検査が必要になり、継続的に費用がかかるかもしれません。腫瘍の場合、外科や化学療法が選択される場合はやはり高額になることが多いです。
膀胱炎の予防
膀胱炎の予防は定期的な尿検査を行い、結晶が出ていないかを確認したり、膀胱を超音波検査することで、腫瘍が疑われる場合は早期に診断治療を行うことが重要です。
普段から水分摂取量が少ないワンちゃんでは、ドライフードに水を混ぜて与えたり、缶詰食などのウェットフードを与えることで積極的に水分を与えるように心がけましょう。
また、ミネラル豊富な野菜や硬水などを与えている場合は、結石を作りやすいため、与える量は気を付けるべきでしょう。室内では尿をしない子の場合はこまめに散歩に行くようにするか、室内での排尿をトレーニングさせてあげてください。
もし膀胱炎の症状が出た場合も、早期に検査を行い治療が始まったら獣医の指示に従い、症状のみで自己判断で治療を中止したり、検査を怠らないようにすることも悪化や長期化を防ぐうえで重要です。
何度もおしっこに行くなど落ち着きがない、尿の色や量が違う、食欲不振で元気がなくなった…ワンちゃんのその行動、もしかすると膀胱炎によるものかもしれません。
このような症状が見られる時は、早めに動物病院へ受診することをおすすめします。ワンちゃんの膀胱炎はオスよりもメスの方が発症率が高い傾向があり、また遺伝的な要因で膀胱炎になりやすい犬種もいます。
膀胱炎の予防方法としては
などがあります。
いずれにせよ、膀胱炎の症状が出た場合は早めに動物病院へ行き診断を受けることが大切です。
※記事で紹介されている商品を購入すると、売上の一部がINUNAVIに還元されることがあります。メーカー等の依頼による広告にはPRを表記します。
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執筆者
2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会・比較歯科学研究会所属)