犬がにんじんを食べるメリット
にんじんは、「ただ美味しい野菜」というだけでなく、犬に与えるメリットもあります。
■犬がにんじんを食べるメリット
- 健康維持に役立つ栄養素が摂取できる
- 水分補給のサポートができる
- 低カロリーでダイエット中のおやつにもなる
- フードのかさま増しに利用できる
にんじんは意外にも水分が多い野菜のため、夏場やあまり水を飲まない犬の水分補給に役立てることができます。
また、健康に役立つ栄養素も含まれているため、おやつやトッピング、手作りご飯の食材などに活用しましょう。
次章では、にんじんの「ちょっと凄い」栄養素について解説します。
にんじんの栄養素
にんじんは89.1%が水分ですが、犬の健康維持に役立つ栄養素が含まれています。にんじんに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
■にんじんの主な栄養素【皮つき 生】(※1)
カロリー:35kcal / 100g
- β-カロテン
100g中:8600μg
…体内で必要な量だけビタミンAとなる。体内でほかの栄養素の働きを促進するほか、抗酸化作用で体内の活性酸素を除去する働きなど(※2)
- 食物繊維
100g中:2.8g
…腸内環境の改善や排便をスムーズにする働きがある。不溶性食物繊維は有害物質を吸着させて便と一緒に体の外に排出する働きも(※3)
- カリウム
100g中:300mg
…ナトリウム(塩分)の排出を促す。細胞の浸透圧維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節など重要な働きも(※4)
にんじんの注目すべき栄養素は、β-カロテンでしょう。β-カロテンは体内に入ってビタミンAになり、皮膚や被毛を健康に保つ、粘膜の健康を保つといった働きが期待できます。
また、ビタミンAに変換されなかったβ-カロテンは、体内で増えすぎてしまった活性酸素を除去し、酸化の働きを抑えてくれるため、細胞や組織を酸化ダメージから守ることに繋がります。
活性酸素が蓄積されると老化を早めてしまうのはもちろん、さまざまな病気を引き起こす可能性があるため、意識して摂り入れたいのが抗酸化物質です。
β-カロテンの含有量が多い野菜をランキングにしてみると、にんじんは3位にランクイン!にんじんは使う頻度が高い身近な野菜ですが、実は優秀な野菜なんですよ!
■β-カロテン当量(※1)
野菜名 |
β-カロテンの量 |
しそ(葉 生) |
11000μg |
モロヘイヤ(茎葉 生) |
10000μg |
にんじん(皮つき 生) |
8600μg |
とうがらし(果実 生) |
7700μg |
パセリ(葉 生) |
7400μg |
ヨメナ(葉 生) |
6700μg |
バジル(葉 生) |
6300μg |
あしたば(葉茎 生) |
5300μg |
犬に与えていい野菜一覧!野菜の健康効果は?注意点やダメな野菜も【獣医師監修】
犬が1日に食べてもいいにんじんの量
にんじんはβ-カロテンが豊富に含まれているとはいえ、与え過ぎは栄養バランスの偏りや体調不良の原因になるため、おやつやトッピングでにんじんを与える際は犬が1日に必要なカロリーの10%程度にしましょう。
とは言え、にんじんのカロリーは100gあたり35kcalと低く、計算上では体重5kgの犬で約110gとかなりの量になってしまいます。にんじんは水分が多く食物繊維も含まれているため、食べ過ぎは下痢や嘔吐を起こしたり、にんじんでお腹がいっぱいになってごはんが食べられないといったことになってしまう可能性があるので、以下の量を目安にしてください。
■犬が1日に食べてもいいにんじんの目安量
体の大きさ |
1日の目安量 |
超小型犬(体重4kg未満) |
5~15g |
小型犬(体重4~10kg未満) |
15~30g |
中型犬(体重10~25kg未満) |
30~60g |
大型犬(体重25kg以上) |
60~90g |
また、犬の体質に合う合わないもあるため、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整しましょう。
犬ににんじんを与える際の注意点
にんじんは犬の健康維持のサポートに役立つ野菜ですが、食べさせるときには注意しなければいけないこともあります。
ここでは、犬ににんじんを与える際の注意点を解説します。
食物アレルギーに注意する
※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りの赤みと目の下の脱毛、痒みが出た愛犬
にんじんにもわずかですがたんぱく質は含まれているため、初めて与えるときはほんの少量にして、食べた後は48時間ほど様子を見てあげましょう。
また、シラカバやヨモギなどの花粉にアレルギーがある犬では、にんじんに交差反応して症状を起こす可能性があるので注意してください。
にんじんに食物アレルギーがある場合、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られます。
■犬の食物アレルギーの主な症状
・皮膚の赤みや痒み
・目の周りや口の周り、耳を痒がる
・脱毛
・足先や皮膚を執拗に舐めたりかじる
・下痢や軟便
・嘔吐
犬によって症状は異なりますが、上記のような症状が見られた場合は獣医師に相談してください。
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】
にんじんの葉や皮はよく洗う
にんじんは、根の部分(身)だけでなく葉も皮も犬に与えて大丈夫ですが、葉や皮を食べさせる場合はよく洗いましょう。
皮には細菌が含まれている土、葉には農薬が残っている可能性があり、そのまま犬が食べてしまうと体調不良を引き起こしてしまう可能性があります。
葉や皮は根の部分より栄養が多く含まれているので、より栄養を摂り入れたい場合はよく洗ってから与えてくださいね。
食べやすいように切り方や調理方法など工夫する
犬はにんじんを生でも加熱でも食べることができますが、喉に詰まらせたり消化不良を起こさないためにも、切り方や調理方法を工夫しましょう。
生で与える場合は、すりおろしたりミキサーにかけることで消化に負担がかかりにくく、さらににんじんの細胞が壊れることで栄養をより吸収しやすくなります。
また、加熱する場合では細かく刻んだり薄くスライスするなど、愛犬が食べやすいようにしてあげてください。
子犬やシニア犬ではすりおろしたり加熱する
消化器官が未発達な子犬や、消化機能が低下するシニア犬では、加熱して柔らかくしてから細かく刻んであげたり、ペースト状にする、生のにんじんをすりおろすなど、消化に負担がかからないようにしてあげましょう。
もちろん、ミキサーでジュース状にしてあげても大丈夫です。
にんじんの簡単レシピ
にんじんは、そのままでも甘みを感じられるため喜んで食べる犬も多いですが、せっかくなら一工夫してみましょう。
ここでは、にんじんを使用した簡単なレシピをご紹介します。
にんじんとひき肉炒め
■材料
にんじん…30g(3センチほど)
鶏むねミンチ…50g
オリーブオイル…適量
■作り方
- にんじんを細かく刻む(皮あり・皮なしどちらでも)
- フライパンにオリーブオイルを少量ひく
- にんじんと鶏むねミンチを炒めて火が通ったらひと肌に冷まして完成
にんじんは、油と一緒に摂取することでβ-カロテンの吸収率が良くなるため、油を使用して炒めることで効率的に摂り入れることができるでしょう。
鶏むね肉なので油を使用していますが、もともと脂の多い豚ひき肉などを使用する場合は油なしでOK!ひき肉ではなく、卵で作ることもできますよ!
にんじんヨーグルト
■材料
・にんじん…5g(5mmの輪切り1枚程度)
・無糖ヨーグルト…30g
■作り方
- にんじんをすりおろす(皮あり・皮なしどちらでも)
- 無糖ヨーグルトに混ぜて完成
犬にヨーグルトを与える際は、冷えたものではなく常温に戻したものにしましょう。
また、ヨーグルトを1日に与えていい量は以下の記事で詳しく解説しています。
【獣医師監修】犬はヨーグルトを食べてもOK!与える量や効果、注意点まで
犬ににんじんを与えるときによくあるQ&A
ここでは、犬ににんじんを与えるときによくある疑問を解決していきましょう。
A.無塩や無糖のにんじん100%のにんじんジュースであれば、犬に与えても大丈夫です。
ただし、液状で飲みやすいことから、与え過ぎには注意しましょう。
A.すりおろしたりジュース状、ペースト状のにんじんであれば消化に負担が少ないため、生後3ヶ月以降なら与えても問題はありませんが、固形のにんじんを与える場合は消化器官が整う生後6ヶ月以降にしましょう。
その際も、生でにんじんを与えるのではなく、加熱したにんじんを細かく刻むなどの配慮が必要です。
また、与える場合は少量にとどめてくださいね。
A.にんじんの皮を食べても大丈夫です。ただし、皮は硬いため、皮ごとすりおろしたりミキサーにかけるようにしましょう。
加熱して与える場合では、細かく刻むなど消化の負担への配慮が必要です。
また、皮には細菌が含まれた土や農薬などが残っている可能性があり、下痢や嘔吐を引き起こす原因となってしまうため、皮ごと与える場合はしっかり洗ってくださいね。
まとめ
にんじんは、生でも加熱でも犬に与えることができ、切り方や調理方法を少し工夫するだけで、より栄養を摂りこみやすくなります。にんじんは犬の健康維持に役立つ栄養素や水分が豊富に含まれており、普段の食事やおやつタイムにうまく取り入れたいですね。
とは言え、どんなに体に良いものでも、与え過ぎは逆効果です。
与え方や与える量、注意点に配慮しながら、愛犬に美味しくにんじんを食べてもらいましょう。
<参考文献>
※1:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※2:わかさの秘密「β-カロテン」
※3:健康長寿ネット「食物繊維の働きと1日の摂取量」
※4:健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー