犬がコーヒーを飲んでしまったときはカフェイン中毒で命にかかわる場合も!
わんちゃんがコーヒーを飲んでしまったときは、コーヒーに含まれるカフェインによって中毒を起こす可能性があります。
カフェインは脳の中枢神経を刺激する作用があり、興奮、覚醒、集中力の維持、疲労感の軽減などを始め、利尿や薬理作用などさまざまな作用がありますが、人間でも摂取しすぎると中毒になって健康に悪影響を及ぼすことも。
わんちゃんは人間と比べてカフェインを分解する酵素が弱く、さらに体も小さいことからカフェイン中毒になりやすいです。カフェイン中毒は命にかかわる場合もあるため、わんちゃんにコーヒーを絶対に与えてはいけません。
実際、人間でも、2015年にエナジードリンクの大量摂取でカフェイン中毒を起こし、亡くなった人が出たことで、農林水産省でもカフェインの過剰摂取を注意喚起しています。(※2)
また、真実かどうかはわかりませんが、知恵袋ではコーヒー豆を食べてしまったわんちゃんの体調が夜に急変し、どうしたらいいか質問していた翌朝には亡くなっていたということもあったようです。(※3)
犬がカフェインを摂取したらどれくらいで抜ける?その後の影響は?獣医師に聞いてみた
人間の成人では、血中に摂りこまれたカフェインの量が半分に減少するまでの時間は2~8時間(※4)、完全に抜けるまでは1日以上かかるとも言われていますが、わんちゃんの場合はどうなのでしょうか。
さらに、気になるのはその後の影響です。
そこで、獣医師の藤井先生にお話をうかがいました。
犬ではカフェインの半減期は約4~5時間、後から出てくる症状として横紋筋融解やDIC(播種性血管内凝固症候群)などの重篤なものもあります。
犬がコーヒーを飲んでしまったときの中毒症状
わんちゃんが誤ってコーヒーを飲み、カフェイン中毒になってしまったときは、摂取後30分~2時間後くらいから以下のような中毒症状が見られます。
■犬のカフェイン中毒の主な症状
- 嘔吐
- 下痢
- 尿失禁
- 脈が速くなる
- 呼吸が荒くなる(速くなる)
- 落ち着きがなくなる
- 水をたくさん飲む
- ぐったりしている
- 不整脈
- 痙攣
- 筋肉が硬直する
- 呼吸不全
- 昏睡
摂取した量やわんちゃんにもよって症状は異なりますが、重度の場合では異常な興奮状態が続き、痙攣や筋肉の硬直、呼吸不全や昏睡など、最悪の場合は死に至ってしまうこともあります。
症状がない場合でも、口の中からコーヒーの匂いがして気づくという場合もあります。
どれくらいのコーヒーを飲んだら危険?犬のカフェインの致死量
個体差がありますが一般的には、体重1kgあたりカフェイン100mg~200mgがわんちゃんの致死量と考えられています。
コーヒー100mⅼ中に含まれるカフェイン量は60mg(※5)なので、計算上では体重4kgのわんちゃんがコーヒーカップ1杯(約150mⅼ)やマグカップ1杯(約200mⅼ)のコーヒーを飲んでも死に至ることはないということになりますが、あくまでも致死量であり、中毒症状を起こす量は別です。
わんちゃんに中毒症状が現れるカフェイン量は体重1kgあたり20mgと言われていますが、個体差があるのはもちろん、コーヒー豆の品種や焙煎度合い、抽出時間にもよってカフェイン量は変わるため、少ない量なら必ずしも大丈夫というわけではありません。
また、カフェインレスコーヒーやデカフェ、コーヒー牛乳などもカフェインは含まれているので注意してください。
■コーヒーのカフェイン含有量(100mⅼあたり)
・エスプレッソコーヒー:140mg
・ドリップコーヒー:135mg
・インスタントコーヒー:60mg
・コーヒー牛乳:5~15mg
※カフェインレスコーヒーは0.1%以下、デカフェは0.2%程度のカフェインが含まれている
上記にもあるようにコーヒーは液体のため正確な量を把握することは難しいです。必ずかかりつけの病院に連絡しましょう。
犬がコーヒーを飲んでしまったときの対処法
わんちゃんがコーヒーを飲んでしまったときは、慌てずに冷静に対処することが大切です。
「どんなコーヒー」を(ブラックなのかミルク入りなのか、飲料でない場合は粉末なのか豆なのかなど)「どれくらいの量」「いつ」摂取したかを獣医師に伝えられるようにしましょう。
少量を舐めたり飲んだりした場合では、まず獣医師に電話で相談してください。
動物病院を受診する
わんちゃんが普通に、もしくは大量にコーヒーを飲んでしまったら、症状の有無にかかわらず夜間や休日でも早急に動物病院を受診してください。
また、少量であっても愛犬にいつもと違う様子が見られた場合も早急な受診が必要です。
一般的にカフェイン中毒は摂取後30分~2時間後くらいに起こることが多いと言われていますが、48時間は注意が必要です。
カフェイン中毒に解毒剤はなく、動物病院では催吐処置や投薬、排泄を助けるための点滴、場合によっては入院治療や胃洗浄など、わんちゃんの状態に合わせた適切な処置が行われます。
わんちゃんがカフェインを摂取すると急速に吸収されてしまう(※6)ので、処置を受ける時間が早ければ早いほどわんちゃんの回復の見込みが高まるため、様子見や翌日まで待つといったことがないようにしてください。
コーヒー摂取後2~4時間以内に適切に除染が行われれば、ほとんどは予後良好です。
自分では絶対に吐かせない
わんちゃんの誤飲の対処法として、ネット上には塩やオキシドールを飲ませるといった方法が紹介されていますが、どの方法も危険なので絶対に行わないでください。
飼い主さんが愛犬を吐かせるリスク
- 嘔吐が止まらなくなる
- 水中毒や塩中毒などの命に係わる重篤な障害
- オキシドールによる胃や食道粘膜の重度な障害
- 誤嚥性肺炎
自宅でできることはないため、早急に動物病院を受診することが大切です。夜間などの場合では、救急診療を行っている動物病院に電話をして、指示を仰ぎましょう。
最近ではチャットでの相談サービスなどもあります。良かれと思って行ったことが悪化させることにつながってしまうことのないよう、自己判断は避けましょう。
コーヒー以外にも緑茶やウーロン茶などカフェインを多く含む飲み物はたくさんあるので注意
カフェインは、コーヒー以外にもさまざまなものに含まれています。
カフェインを含む主なもの一覧
カフェインを含むものは主に以下のものです。
玉露、抹茶、せん茶、ほうじ茶、玄米茶、番茶、マテ茶、ウーロン茶、紅茶、コーヒー、カフェインレスコーヒー、ココア、コーラ、マウンテン・デュー、エナジードリンク、栄養ドリンク、コーヒーゼリー、コーヒー牛乳、チョコレート、ココアパウダー、ブラックガム、風邪薬、鎮痛剤、眠気防止剤 など
これらのものは、わんちゃんに与えないようにしてください。
また、ドッグフードや犬用おやつ、歯磨きガムなどに「緑茶抽出物」が含まれているものもありますが、基本的にわんちゃん用のものはカフェインと分離された状態で使用されているので、心配しなくても大丈夫です。
生ごみの処理なども気をつけて!
カフェインを含むものは、生ごみの処理などにも注意する必要があります。
お茶の葉やコーヒーの粉カス・豆カスなど、わんちゃんがイタズラして食べてしまうことがないように、簡単に蓋が開かないゴミ箱を利用する、絶対に届かない場所に捨てるなど工夫しましょう。
また、例え使用後であってもコーヒー豆やコーヒーの粉を食べてしまった場合では、少量であってもカフェインをたくさん摂取している可能性があるので、早急に動物病院を受診してください。
まとめ
コーヒーは、わんちゃんにカフェイン中毒を起こす可能性がある危険な飲み物です。
近年は、愛犬への健康意識の高まりから何を与えてはいけないか気にする飼い主さんも増えてきましたが、注意していてもテーブルの上のコーヒーを舐められてしまったり、ゴミ箱に捨てたコーヒーカスをあさって食べてしまうといったこともあるでしょう。
コーヒーをほんの少量を舐めたり飲んだりした場合では問題がないことが多いですが、愛犬にいつもと違った様子が見られたり、大量に飲んでしまった場合は早急に動物病院を受診してください。
また、カフェインはさまざまなものに含まれているので、コーヒーだけでなく、お茶や炭酸飲料などもわんちゃんが舐めたり飲んだりしないように注意してあげてくださいね。
犬が食べてはいけないものを解説!36種類の症状や対処法、加熱調理が必要な食材も紹介
【獣医師監修】犬が食べていいもの一覧!野菜・果物・肉類など与えるメリットと注意点
<参考文献>
※1:PET POISON HELPLINE「IS CAFFEINE POISONOUS TO DOGS?」
※2:農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
※3:YAHOO!知恵袋
※4:東京福祉大学 短期大学部「日常生活の中におけるカフェイン摂取ー作用機序と安全性評価ー」
※5:全日本コーヒー協会「コーヒーの基礎知識」
※6:frontiers「Household Food Items Toxic to Dogs and Cats」
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー