結膜炎は人間と同様、犬でもなる病気です。愛犬の目が赤くなっていたら、大丈夫なのか不安になりますよね。また、犬の結膜炎が人にもうつるのか気になっている飼い主さんもいるかもしれません。
この記事では、犬の結膜炎について、症状や原因、治療法などについて解説します。「犬の目が赤いけど結膜炎なの?」「愛犬の結膜炎はいつ治るの?」とお悩みの飼い主さんはぜひ参考にしてみてください。
結膜炎は人間と同様、犬でもなる病気です。愛犬の目が赤くなっていたら、大丈夫なのか不安になりますよね。また、犬の結膜炎が人にもうつるのか気になっている飼い主さんもいるかもしれません。
この記事では、犬の結膜炎について、症状や原因、治療法などについて解説します。「犬の目が赤いけど結膜炎なの?」「愛犬の結膜炎はいつ治るの?」とお悩みの飼い主さんはぜひ参考にしてみてください。
目次
結膜炎とは、まぶたの裏側のピンク色の部分や、白目の表面にある結膜が炎症を起こしている状態をいい、レッドアイとも呼ばれます。感染性と非感染性のタイプに分かれ、犬では非感染性の結膜炎が多く見られます。結膜炎は片目だけのこともあれば、両目ともなる場合があるので、愛犬の目をチェックするときは両目とも見るようにしましょう。
■犬の結膜とは
結膜は、まぶたの裏側(眼瞼結膜)、白目の表面(眼球結膜)、瞬膜(瞬膜の結膜)を覆う薄い膜のこと。涙の成分である粘液を分泌し、目の乾燥を防ぐなどの役割があります。
結膜の表層と深層に血管があり、炎症が起こると充血が見られるようになります。
では、犬に結膜炎が起こるとどのような症状がみられるのでしょうか。次章から、犬の結膜炎の症状や原因、病院に行く目安について解説します。
犬の結膜炎の症状では、白目が赤くなる、目やにが増える、結膜が浮腫む(白目やまぶたの裏がブヨブヨになる)、目をかく・壁にこすりつけるなどが現れます。症状は1つではなく、複数出ることもあるので、愛犬の様子をよく観察することが大切です。犬の白目の部分は人間と異なり見えづらいため、まぶたを引き上げたりめくったりして状態を確認しましょう。
■犬の結膜炎の主な症状
また、似たような症状が緑内障やぶどう膜炎などでも見られます。どちらも痛みを伴い早期治療が重要な病気なので、愛犬の目に何らかの症状が見られたら動物病院を受診することをおすすめします。
犬が結膜炎になったときに、すぐに病院に連れていくべき目安は、目の赤みがひどくなっている、目が開けられない、目が腫れている、激しく目をかくなど、目の状態が悪化しているときです。目をかくことで角膜にキズができる心配や、結膜炎以外の病気が隠れている可能性もあるため早めに受診してください。
■すぐに病院に連れていくべき目安
ここまでの症状でなくとも、犬の目が赤い状態が続いていたり、目ヤニが増えていたりする場合は、一度獣医師にチェックしてもらうとよいでしょう。
犬の結膜炎の主な原因は、細菌やウイルス、寄生虫などの感染症、アレルギー、涙液減少などです。また、物理的な刺激や他の目の疾患から二次的に結膜炎が起こることもあります。
■犬の結膜炎を引き起こす主な原因
ただし、安易な自己判断は治癒を遅らせる可能性があるので、少しでも不安があれば獣医師に確認してもらいましょう。
ここでは、犬の結膜炎の主な原因について解説します。
犬の結膜炎の原因が細菌で起こった場合、細菌性結膜炎と呼ばれ、感染性結膜炎です。
犬の細菌性結膜炎の原因は黄色ブドウ球菌などが主で、特徴的な症状として膿性眼脂(黄緑色の目ヤニ)がよく見られます。犬では細菌感染が一次的原因となる結膜炎は少ないとされていますが、川遊びの後などに急性細菌性結膜炎を発症することがあるため、注意が必要です。
また、まぶたの異常や乾性角結膜炎(KCS)などから二次的に細菌感染が起こるケースも多く見られます。
犬の結膜炎の原因がウイルスで起こった場合、ウイルス性結膜炎と呼ばれ、感染性結膜炎です。
犬のウイルス性結膜炎の原因は、イヌジステンパーウイルスやアデノウイルスなどが挙げられます。ウイルス性の場合は、両目とも結膜炎になることが多く、他の症状と合わせて全身症状の一つとして見られます。ワクチン未接種の犬では、感染する危険性があるので注意が必要です。
犬の結膜炎の原因が寄生虫で起こった場合、寄生虫性結膜炎と呼ばれ、感染性結膜炎です。
犬の寄生虫性結膜炎の原因は、東洋眼虫(寄生虫)によるものが一般的です。
メマトイという小さなハエが媒介となり、犬の涙を吸う瞬間に東洋眼虫(体長8~16mmほどの小線虫)を寄生させます。以前は西日本など温かい気候の地域に多く見られましたが、現在は温暖化の影響で東日本でも見られるようになってきました。とくにフィラリア予防シーズン前やフィラリア予防をしていない犬に多く見られます。
犬の結膜炎の原因がアレルギーで起こった場合、アレルギー性結膜炎と呼ばれ、非感染性結膜炎です。
犬のアレルギー性結膜炎は、免疫が関与する結膜炎の代表としても挙げられます。
犬のアレルギー性結膜炎は、全身性のアレルギーやアトピー性皮膚炎から起こるケースが多いです。目の周りが赤くなる、粘液性眼脂(ネバネバの目ヤニ)が出る、かゆみなどの症状が見られます。アレルギーとなる原因は、ハウスダストや花粉など環境によるものや、食べ物などさまざまです。
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬の結膜炎の原因が涙液減少で起こった場合、乾性角結膜炎(KCS:Keratoconjunctivitis Sicca)といい、人ではドライアイと呼ばれているもので、非感染性結膜炎です。
犬の涙は油層・水層・粘液層の3つから構成されており、どれかに異常がおこると結膜炎につながります。乾性角結膜炎は水層が病的に減少することで発症し、二次的な細菌感染の原因にもなります。慢性的に目ヤニが出ていたり、白目が赤かったりする場合は、乾性角結膜炎の可能性が高く、重度の乾性角結膜炎では、目の表面の光沢がなくなり濁ったように見えます。
犬の結膜炎の原因が物理的な刺激によるものの場合があります。
原因として、異物(ゴミ、毛、ほこり、花粉など)、シャンプーなどの化学物質による刺激が挙げられます。物理的な刺激で結膜炎が起こった場合、片目だけに症状が現れることが一般的です。散歩やトリミング後などに結膜炎になったときは、これらの原因が関係している可能性が高いでしょう。
また、逆さまつげや眼瞼内反症などにより、まつげや毛が目にあたることで結膜炎になることもあります。
犬の結膜炎は他の目の病気が原因となって起こることもあります。
その場合、結膜充血だけでなく、眼瞼が腫れたり、角膜にキズができていたりするなど別の所見も見られることがあるので、愛犬の目をよく観察しましょう。
結膜炎はどの犬種でもなる可能性がありますが、とくに目が大きい犬種は異物が入りやすかったり、まばたきがうまくできなかったりするため結膜炎になりやすいといえます。また、涙液減少が起こりやすい犬種は、目が乾燥し細菌にも感染しやすいことから結膜炎になりやすいといえるでしょう。たとえば、パグ、イングリッシュブルドッグ、シーズー、キャバリアキングチャールズスパニエル、ヨークシャーテリア、ウエストハイランドホワイトテリアなどの犬種が挙げられます。
■結膜炎になりやすい犬種
犬の結膜炎を診断するために、問診や視診、眼科検査(スリットランプ検査・シルマーテスト・フルオレセイン染色・眼圧検査・結膜の細胞診など)が行われます。
■犬の結膜炎の診察および検査法
それぞれの診察および検査法について解説します。
まず犬の年齢や犬種、ワクチンやフィラリアの予防歴などをチェックし、いつから犬の目が赤いのか、どんな目ヤニが出ているのか、家庭での犬の様子を飼い主さんに確認します。目だけでなく全身にもかゆみがある、川遊びやトリミングのあとから目が赤いなど、症状や原因として思い当たるものは獣医師に伝えるようにしましょう。また、愛犬が服用中の薬や現在使用している目薬などがあれば、事前に知らせることが重要です。
獣医師が犬の目やまぶたの状態を見て、結膜の充血や浮腫、眼脂の性状、流涙、眼瞼痙攣などの症状や、まぶたや瞬膜の裏側に異物や寄生虫がいないかなど細かくチェックします。
眼科用の顕微鏡で細い光(スリットランプ)を犬の目にあてて、結膜や角膜、水晶体などに異常がないか確認します。
シルマーテストとは犬の涙の量を測る検査で、涙液が減少していないかチェックするものです。専用の試験紙を犬の下まぶたに差し込み、1分間の涙液量を測定します。シルマーテストで15㎜/min以下の値を示した場合は涙の量が少ないため、乾性角結膜炎と診断されます。
フルオレセイン検査とは、角膜表面を染色しキズがないかチェックする検査のことです。角膜にキズがある場合は緑色の蛍光色に染まり、結膜炎だけでなく角膜炎も発症している可能性があります。
眼圧検査では、眼圧計を使用し犬の眼圧を測定します。正常眼圧の目安は犬で25mmHg未満とされており、高眼圧の場合は緑内障の併発が疑われます。
結膜を綿棒や専用ブラシで軽くこすり、採取した結膜の細胞を顕微鏡で観察します。細胞の性状や細菌が出ていないかチェックします。
結膜炎の治療は原因に合わせた治療が重要ですが、主に目の洗浄・異物除去のほか、点眼薬を処方されることが一般的です。また、犬が目をかいてしまう場合は、角膜にキズができるのを予防するためにエリザベスカラーを装着する必要があります。
ここでは、治療法についてもう少し詳しく解説します。
犬の目に異物がある場合は、異物の除去および洗浄をおこないます。無麻酔でできることが主ですが、犬の性格や状態によって鎮静が必要になる場合もあります。
また、犬の結膜炎の原因が東洋眼虫の場合は、目に表面麻酔を施した後に虫体を摘出し、補助的に駆虫薬を使用します。
点眼薬にはさまざまな種類があり、犬の結膜炎の原因に合わせて使い分けられます。
■結膜炎の原因に合わせて処方される点眼薬の種類
眼瞼炎や角膜炎、逆さまつげ、眼瞼内反症など、他の目の病気が結膜炎の原因となっている場合は、それぞれの治療が行われます。また、何らかの基礎疾患によって結膜炎が引き起こされている場合は、基礎疾患の治療を行う必要があります。
大手ペット保険会社アニコムの調査によると、犬の結膜炎の治療費の中央値は6,480円~15,120円です。
■眼および付属器の疾患の年齢別年間診療費
年齢 | 中央値 | 平均値 |
---|---|---|
0歳 | 6,480円 | 16,340円 |
1~4歳 | 7,600円 | 19,910円 |
5~8歳 | 10,594円 | 31,859円 |
9~12歳 | 15,120円 | 40,592円 |
ただし、犬の結膜炎の原因や状態により、治療費は上下するためあくまで目安と考えましょう。また、継続治療が必要な場合も珍しくなく、トータルの治療費が高くなることもあります。対症療法のみ行っていると、結膜炎を繰り返すケースもあるため、動物病院で原因をチェックしてもらうことが大切です。
結膜炎を完全に予防することは難しいものの、できる限り愛犬が結膜炎にならないようにするための予防方法を紹介します。
具体的には、日頃から愛犬の目をよく観察する、目を清潔に保つ、シャンプー剤が目に入らないようにする、ワクチン接種やフィラリア予防をする、部屋を掃除するなどが挙げられます。
■犬が結膜炎にならないための予防法
目ヤニや涙の量、目の周りの毛が目に入っていないかなどチェックしましょう。毛の長い犬は目のまわりの毛をカットし、刺激となり得る毛を目に入らないようにすることが大切です。
水遊びのあとや目が汚れているときは、洗眼用の点眼で目の汚れを洗い流し清潔に保つようにしてください。また、目ヤニが出ているときは、水で湿らせたコットンやガーゼで優しくふき取りましょう。
シャンプーのあとに結膜炎になることがあるので、犬の目にシャンプーが入らないように洗いましょう。シャンプー後のドライヤーの風も犬の目にあたると角膜の乾燥を招くので、目にあてないようにして乾かすことが大切です。
犬のウイルス性結膜炎の原因となるジステンパーウイルスなどは、ワクチン接種することで予防が可能です。また、フィラリア予防をすることで東洋眼虫の予防も期待できます。
部屋の掃除をこまめに行い、犬が使うベッドやブランケットは洗濯するなどキレイな環境づくりを心がけましょう。
ここからは、犬の結膜炎についてよくある質問についてお答えしていきます。
細菌やウイルスなど感染性の結膜炎は、他の犬にうつる可能性があります。同居犬がいる場合は、隔離する、タオルなどの共有を避けるといった工夫が必要です。人にはうつらない場合が多いですが、感染性結膜炎が疑われる犬のケアをした後はよく手を洗いスキンシップに気を付けましょう。
非感染性結膜炎で、ごく軽度の結膜炎であれば、自然治癒することもありますが、そのまま放置すると重症化することがあります。飼い主さんが感染性か非感染性なのか判断はできないため、愛犬の目に異常が表れたら動物病院を受診してください。
軽度の結膜炎であれば、適切に治療を受けることで1~2週間もすればよくなるでしょう。目薬が処方されている場合は、決められた回数や日数に従い点眼を行うことが早期回復につながります。
乾性角結膜炎など継続的に治療が必要な場合もあるので、自己判断で治療をやめず獣医師に確認することが大切です。
結膜炎だけで失明することは少ないですが、結膜炎を放置したことによって目の状態が悪化すれば、視力に影響する可能性はあります。また、緑内障やぶどう膜炎といった別の目の疾患が隠れている場合、失明するリスクがあるため早期に動物病院を受診することが重要です。
今回は、犬の結膜炎について解説しました。結膜炎は、単に白目が赤くなるだけでなく、目ヤニが増える、涙が出る、前足で目をかくなどの症状が見られます。結膜炎の原因は多岐にわたるため、自己判断せず動物病院で診てもらうことが大切です。
また、ワクチン接種をする、目を清潔に保つなどの予防により防げる結膜炎もあるので、愛犬の目を守るために適切に対策を行いましょう。
とくに目の大きい犬種は結膜炎になりやすいので注意が必要ですが、 どの犬種でも結膜炎になる可能性はあるので、日頃から愛犬の目をよくチェックしてあげてください。