公開 2024.05.04 更新 2024.05.07
【獣医師執筆】犬が乾燥剤を食べたら危険?誤飲の対処法や受診の目安まで解説

【獣医師執筆】犬が乾燥剤を食べたら危険?誤飲の対処法や受診の目安まで解説

「愛犬が乾燥剤を食べてしまった!大丈夫なの!?」と慌てて、この記事に辿り着いた飼い主さんも多いはず。犬が誤飲することはよくありますが、乾燥剤という明らかに体に悪そうなもの・・・正直、焦りますよね?

結論から言うと、犬が食べた乾燥剤の種類によって危険度や対処法が異なります。

そのため、愛犬が食べてしまった乾燥剤の種類を把握して正しい対処をすることが必要です。

この記事では、乾燥剤の種類とそれぞれの対処法、動物病院への受診目安について獣医師が解説します。

この記事を読めば、今あなたが愛犬のために何をすれば良いかが分かるので、まずは焦らずに最後まで記事をご覧ください。

犬が乾燥剤を食べたけど平気?

乾燥剤

冒頭でお伝えした通り、愛犬が食べた乾燥剤の種類によって、危険性が異なります。

乾燥剤の種類と危険度

  • シリカゲル:ほとんど無害な場合が多い
  • 石灰石:少量であれば無害な場合もあるが、危険
  • 塩化カルシウム:少量であれば無害な場合もあるが、危険
  • 脱炭素剤(エージレス):ほとんど無害な場合が多い
    ※脱炭素剤は、乾燥剤ではないが間違いやすいため、本記事では乾燥剤として取り上げています

シリカゲルや脱炭素剤など無害なものでも、、大量に食べた場合や、袋ごと食べている場合は胃腸障害や腸閉塞のリスクがあるため、動物病院を受診するようにしてください。

次の章で、それぞれを誤飲してしまた場合の症状や対処法について解説します。

犬が乾燥剤を食べた時の症状と対処法

一般家庭で犬が乾燥剤を飲み込んでしまった場合は、先ほど紹介した4種類の乾燥剤(脱炭素剤含む)であることが多いです。

【よくある乾燥剤の種類】

ここでは、それぞれの乾燥剤を食べた時の症状と対処法について詳しく解説します。

犬が食べた乾燥剤の種類が分からない場合、中身だけ食べているときは乾燥剤の袋の表示を確認してください。

・透明→シリカゲル
・白い→生石灰や塩化カルシウム
・黒い→脱酸素剤(エージレス)

また、袋ごと食べてしまった場合はどの製品に入っていた乾燥剤なのかチェックし、メーカーに問い合わせすると判断できることがあります。

シリカゲル

シリカゲル

シリカゲルは二酸化ケイ素を原料にした乾燥剤で、お菓子の袋などに入っている透明のビーズのような見た目が特徴です。

毒性はなく、体内で吸収もされないので、そのまま便として排出されます。そのため、ほとんどの場合無症状で問題となることはありません

【シリカゲルを誤飲した場合の症状】

  • 吐き気がる
  • 下痢をする
  • 元気がない
  • ほとんどの場合、無症状

吐き気や下痢を催す場合もあるため、愛犬に異常がないか観察することが大切です。

【シリカゲルを誤飲した場合の対処法】

  1. まずは様子を見る
  2. 水を飲ませて便で出てくるのを待つ
  3. 異常があれば、すぐに動物病院を受診する

基本的に、シリカゲルを少量食べた程度であれば、様子を見つつ水を飲ませ、便で出てくるのを待って問題ありません。

ただし、袋ごと食べてしまった場合やタブレットタイプのシリカゲルを飲み込んだ場合は、胃腸の粘膜を傷つけたり腸閉塞などを起こす可能性があるため、すぐに動物病院を受診してください。

生石灰

石灰石

生石灰は酸化カルシウムを原料にした乾燥剤で、のりやおせんべいなどの袋に入っている白い粉状の見た目が特徴です。

吸湿性が高く水分と触れることで発熱する作用があるため、食べると口や食道、胃の粘膜がやけど(ただれ)状態になる危険性があります

【石灰石を誤飲した場合の症状】

  • 口のただれが見られる
  • 口の痛みがある
  • ヨダレがたくさん出る 
  • 食べ物が飲み込めなくなる
  • 少量であれば無症状のこともある

犬が生石灰を誤飲した場合の治療は、食道や口を再びダメージを与えないために吐かせることができないため、対症療法(苦痛を緩和させる)が中心となります。

【シリカゲルを誤飲した場合の対処法】

  1. 応急処置として水か牛乳を飲ませる
  2. すぐに動物病院を受診する

また、生石灰の粉が皮膚や目についた場合も、粘膜と同じように焼けてしまうのでよく洗い流して付着したままにしないようにましょう。

塩化カルシウム

塩化カルシウム

塩化カルシウムは、下駄箱やクローゼットの除湿に用いられることが多い乾燥剤で、白色の粒状のものが多いです。

生石灰ほどではありませんが同じように水との接触で熱をもち、食べた場合に吐き気や嘔吐、下痢などの症状が見られる場合もあります

【塩化カルシウムを食べた場合の症状】

  • 吐き気が見られる
  • 嘔吐や下痢をする
  • 少量であれば無症状のこともある

石灰石ほど重症になることは少ないですが、誤飲してしまった際はすぐに応急処置してあげることが大切です。

【シリカゲルを誤飲した場合の対処法】

  1. 応急処置として水か牛乳を飲ませる
  2. すぐに動物病院を受診する

塩化カルシウムを食べてしまった場合は、水や牛乳を飲ませて動物病院を受診するようにしてください。

脱酸素剤

脱炭素剤

脱酸素剤(エージレス)はマドレーヌやお饅頭などの袋に入っている、食品の酸化を防ぐ鮮度保持剤です。

乾燥剤ではありませんが、犬が誤飲しやすく、乾燥剤と勘違いする飼い主さんも多いので、合わせて注意しましょう。

脱酸素剤は鉄粉(黒い粉)とビタミンCでできているため、食べても危険なものではありませんが、鉄粉により便が黒くなる場合があります

【脱酸素剤を食べた場合の症状】

  • 少量であれば無症状のことが多い
  • 便が黒くなる

犬がエージレスの中身を食べただけであれば、水を飲ませ様子を見て便に出てくるのを待ちましょう。

【脱炭素剤を誤飲した場合の対処法】

  1. 水を飲ませて様子を見る
  2. 異常があれば動物病院に行く

ただし、袋ごと食べてしまった場合は胃腸を傷つける恐れがあるため、動物病院を受診するようにしてください。

無理に吐かせるのはNG

無理やりはかされた犬

犬が乾燥剤を食べてしまっても、自己判断で無理に吐かせないようにしてください。

特に生石灰の乾燥剤を食べた場合は、吐かせることで犬にさらなるダメージを与えてしまうリスクがあり大変危険です

中には様子を見るだけで済むケースもあるので、不安なときやどうすべきか分からない場合は獣医師に相談するようにしましょう。

乾燥剤を大量に食べた場合や袋ごと食べた場合などは、動物病院を受診し適切に治療を受けることが大切です。

犬が乾燥剤を食べないための予防法としつけ

犬が乾燥剤を食べないための予防としつけは、以下のような方法があります。

ここでは、それぞれの方法について詳しく解説します。

乾燥剤はすぐに捨てる

乾燥剤を捨てる

食品に入っている乾燥剤や使い終わった乾燥剤など、必要ないものはなるべくすぐに捨てるようにしましょう。

また、乾燥剤の入っている個包装のお菓子などを食べた後はすぐにゴミ箱に袋を捨てて、テーブルの上などに出しっぱなしにしないことが大切です。

ワンちゃんをしつけることも大事ですが、まずは飼い主さんが愛犬のためにできることをことを始めてください。

乾燥剤は犬が見えない場所に隠す

乾燥剤を見えないところに隠す

ジャーキーなど犬のおやつ袋にも乾燥剤は含まれているため、イタズラで食べられてしまわないように見えない場所にしまいましょう。

たとえば、棚の高いところや引き出しの中に入れて、犬が届かないようにすることが大切です。

隠していても留守番中に食べてしまう心配がある場合は、ケージに入れるなどの対策を行うようにしてください。

ゴミ箱の蓋をしっかりしめる

ゴミ箱の蓋を閉める

ゴミ箱に捨ててもゴミ箱の蓋がない場合は、犬が漁って乾燥剤を食べてしまうことがあります。

蓋つきのゴミ箱を利用し、物を捨てるとき以外はしっかりと蓋をしめておくことが大切です。

犬がゴミ箱を倒したり蓋を開けてしまったりする場合は、ゴミ箱のある場所に犬が入れないようにしてください。

口にくわえたものを出す練習をする

乾燥剤を食べないために、口におもちゃを加える犬

誤食を防ぐために、普段から口にくわえたものを出す練習をしておきましょう。

飼い主さんが「出せ」や「ちょうだい」といった指示で、口にくわえているものを自ら出すトレーニングのことです。

犬の好物やおやつを利用し、うまく出せたらご褒美として与えたくさん褒めてあげましょう。

乾燥剤に限らず、その他のものを口に入れてしまったときにも役立つ方法です。

まとめ

犬が乾燥剤を食べた場合は、その種類によって危険性は異なります。

シリカゲルや脱酸素剤(乾燥剤と似ている鮮度保持剤)は、食べても問題となることはほとんどないため、中身を少量食べた程度であれば様子を見て便として出るのを待ちましょう。

生石灰や塩化カルシウムを食べた場合は、消化器にダメージを与えるリスクがあるので牛乳や水を飲ませて動物病院に連絡するようにしてください。

乾燥剤は私たちにとって身近な物ですが、その分誤食の可能性が高いため犬が食べてしまわないように、乾燥剤の扱いや置き場に気を付けて生活していきましょう。

 

獣医師ライター 吉田 菜々子

執筆者

獣医師ライター
吉田 菜々子
獣医師国家資格

日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。その後、臨床獣医師として動物病院に勤務。現在は漢方や鍼灸など中医学にも興味を持ち学んでいます。これまで犬や猫、うさぎ、ハムスターなどさまざまな動物を飼育してきました。実家で雑種犬を飼い始めたのをきっかけに、今ではその可愛さに魅了されています。飼い主さんのお役に立てるよう、動物に関する情報を分かりやすくお届けします。保有資格:獣医師国家資格

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