犬の皮膚にかさぶたができる原因は?ケガやアレルギー、腫瘍などさまざま
※片側乳腺腫瘍切除の手術の縫合後に皮膚が裂け、血液や浸出液によってかさぶたができた愛犬
犬の皮膚にかさぶたができる主な原因は、外傷や病気です。
一度剥がれるとその下にある組織はきれいになっている外傷のかさぶたと違って、皮膚の病気のかさぶたは同じ場所に繰り返しできたり、なかなか剥がれず治りが悪いといった特徴があります。
かさぶたができる病気の種類も実にさまざまで、「犬のかさぶたで考えられる病気7つ」で詳しく解説しますが、アレルギーから腫瘍などがあり、「かさぶたができたからこの病気」と飼い主さんが特定することは難しいでしょう。
かさぶたの働き
※かさぶたが剥がれて新しい皮膚ができていた愛犬
かさぶたは、血液や滲出液(傷から出るジュクジュクした液体)、膿や壊死した組織が皮膚の表面で乾燥したものです。かさぶたはさまざまな働きをして、皮膚を正常に戻そうとします。
■かさぶたの主な働き
- 傷ついた皮膚の保護
- 傷を乾燥から守る
- 出血を止める
- 外から雑菌が入ってくるのを防ぐ
かさぶたには白色、黄色、赤黒色、茶色、黒色などさまざまな色があり、かさぶたを作る液体の種類や病気の種類によって異なります。
次章では、犬のかさぶたで考えられる病気について解説します。
かさぶたが痒い理由
かさぶたができると痒くてたまらないという経験をした飼い主さんもいると思いますが、かさぶたが痒いのは、傷ができたときに周囲にヒスタミンという物質が増えて神経に作用するためです。
痒みは傷を治す過程の副産物にすぎませんが、そもそも痒みは体を守るための防衛反応の1つで、「痒み」でそこに異常が起きていることを知らせています。
かさぶたの種類にもよりますが、この作用は犬にもあてはまるため、かさぶたを痒そうにしているときは剥がさないようにかさぶたを保護してあげましょう。
保護の方法は後にご紹介する「犬のかさぶたの対処法は?」をご覧ください。
犬のかさぶたで考えられる病気7つ
犬のかさぶたで考えられる病気とは、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、犬の皮膚にかさぶたができる可能性のある病気をご紹介します。
①アレルギー性皮膚炎|搔き壊しによるかさぶた
犬の主なアレルギー性皮膚炎には、「アトピー性皮膚炎」「食物アレルギー」「ノミアレルギー」があり、犬のアレルギーは体内の過剰な免疫反応と皮膚バリアの低下によって引き起こされます。
激しい痒みを伴うことも多く、ひどく搔きむしって皮膚を傷つけてしまいと、出血してかさぶたになります。
実際、私の愛犬は食物アレルギーを発症して目の下を流血するまで掻き続け、かさぶたができたことがあります。
■犬のアレルギー性皮膚炎の主な症状
・顔(眼・口・耳の周り)、肛門周囲、わきの下、背中、お腹、手先足先が赤くなる
・痒み
・脱毛
・消化器の不調
・掻き壊しによるかさぶた
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】
②膿皮症|輪のような形のかさぶたや黒いかさぶた
小野憲一郎・今井壯一・多川政弘・安川明男・後藤直彰, 『イラストで見る犬の病気』,講談社,2012,pp.128-141.
犬の膿皮症は、皮膚の常在菌であるブドウ球菌などの細菌が何らかの原因で過剰に繁殖し、皮膚に感染を起こす病気です。
膿皮症は「表面性膿皮症」「表在性膿皮症」「深在性膿皮症」の3つに分けられますが、犬でよく見られるのは、皮膚の表面や毛包のみに病変がある「表在性膿皮症」です。
■犬の膿皮症の主な症状
・部分的な赤みや痒み
・赤色や白色の発疹
・膿疱(膿が溜まったできもの)
・黒いかさぶた
・輪のような形のかさぶた
・円形の脱毛
・色素沈着
・フケ
③脂漏症|白いかさぶたや黄色いかさぶた
小野憲一郎・今井壯一・多川政弘・安川明男・後藤直彰, 『イラストで見る犬の病気』,講談社,2012,pp.128-141.
犬の脂漏症は、体質や乾燥などが原因で、皮膚のターンオーバーのサイクルに異常が生じ、皮膚から脂が過剰に分泌される病気です。
脂漏症で皮脂が過剰になっている状態は細菌や真菌などの常在菌が繁殖しやすいので、膿皮症やマラセチア皮膚炎など、ほかの皮膚病を併発してしまうこともあります。
■犬の脂漏症の主な症状
・痒み
・体のベタつき
・体臭が強い
・フケ
・皮膚の乾燥
・かさぶた
・皮膚の黒ずみ
④皮膚糸状菌症|カビを排除するためのかさぶた
小野憲一郎・今井壯一・多川政弘・安川明男・後藤直彰, 『イラストで見る犬の病気』,講談社,2012,pp.128-141.
犬の皮膚糸状菌症は、カビ(真菌)の一種である「皮膚糸状菌」に感染したことが原因で起こる病気です。
皮膚糸状菌は生活環境中に常在する菌ですが、基礎疾患や薬剤などで免疫力が低下している場合は感染しやすくなります。
適切な治療を行うとフケやかさぶたと一緒に皮膚糸状菌も排除されますが、排除できなかった場合は炎症が慢性化してしまいます。
■犬の皮膚糸状菌症の主な症状
・赤み
・白いブツブツ
・円形の赤み
・フケ
・かさぶた
また、皮膚糸状菌症は感染しているほかの犬との接触でうつったり、人から感染したり、人にうつすこともあるため注意してください。
⑤ニキビダニ(毛包虫)症|掻き壊しによるかさぶたも
小野憲一郎・今井壯一・多川政弘・安川明男・後藤直彰, 『イラストで見る犬の病気』,講談社,2012,pp.128-141.
犬のニキビダニ症は、毛穴の中に住んでいる常在寄生虫のニキビダニが、何らかの原因で免疫機能が低下すると過剰に増殖して皮膚に炎症や感染を起こす病気です。
どの年代の犬でも発症する可能性はありますが、皮膚免疫力が未発達な子犬や皮膚免疫力を低下させる基礎疾患があるシニア犬、ストレスの多い犬、栄養不足の犬などが発症しやすいと考えられています。
「局所性」と「全身性」があり、局所性ではそこまで痒みが強くないことが多いですが、全身性では激しい痒みを伴います。かさぶたは全身性の症状の1つですが、掻き壊しによってかさぶたができることもあります。
■犬のニキビダニ症の主な症状
・痒み
・赤み
・脱毛
・フケ
・かさぶた
⑥疥癬|黄色いフケや白いかさぶた
辻本 元・小山 秀一・大草 潔・中村 篤史,『犬の治療ガイド2012 私はこうしている』 エデュワード プレス,2012,pp.684-686.
犬の疥癬(かいせん)は、表皮内に寄生した「ヒゼンダニ」というダニによって引き起こされる伝染性の病気です。
激しい痒みが特徴で、症状が進行すると夜も眠れないほどの痒みが現れることもあります。
疥癬はすでに感染している犬やほかの動物との接触で感染しますが、直接接触しなくても、寄生されている犬が体をブルブルとしただけで拡散されてしまうこともあるため、ほかの犬が集まる場所によく行く犬や、外で暮らす犬では特に注意が必要です。
■犬の疥癬の主な症状
・激しい痒み
・赤い発疹
・皮膚が厚くなる
・脱毛
・黄色いフケ
・体臭が強い
・かさぶた
また、疥癬は人にうつる可能性がありますが、犬に寄生するダニは人間の皮膚上で繁殖することができないため、人に感染した場合は一過性だとされています。
⑦皮膚腫瘍|出血や浸出液によるかさぶた
犬の皮膚腫瘍にはさまざまなものがありますが、皮膚が腫瘍細胞により変化するだけでなく、腫瘍が大きくなって出血したり、炎症を起こしたり自壊して浸出液が出たりすることでかさぶたになることがあります。
ただし、悪性腫瘍だからかさぶたができる、良性腫瘍だからかさぶたができないというわけではないため、皮膚にしこりやいつもと違う変化が見られたら、早めに動物病院を受診するようにしてください。
犬の皮膚のかさぶたは取ってもいい?無理に剝がさないほうが治りが速い
犬の皮膚にできたかさぶたを見つけたら取りたくなってしまうところですが、無理矢理剥がすのはやめましょう。
実際、私は以前に膿皮症の愛犬のかさぶたを見つけて剥がしたことがあるのですが、そのせいなのか膿皮症が全身に広がってしまい、治すのに2年くらいかかったことがあります。
かさぶたは、傷口を保護したり治そうと働いてくれるもののため、自然に剥がれるのを待つのが一番です。
かさぶたを剥がすことは一時的にはきれいになったように見えても、新たなかさぶたができてしまうだけで治ったことにはなりません。
専門施設で薬浴を行う際、シャンプーの浸透をよくするためにごわごわした皮膚を柔らかくし浮かせて取り除くことはありますが、飼い主さんが気になるからと剥がすことは避けましょう。
犬のかさぶたの対処法は?エリザベスカラーや絆創膏で保護
犬の皮膚にかさぶたを見つけた場合、犬が自分で舐めたり噛んだりして剥がさないように、エリザベスカラーを装着したり、包帯を巻いたり、絆創膏などを貼って保護するようにしましょう。
愛犬の頭にイボができたとき、同居犬が噛んでかさぶたになってしまったことがありますが、そのかさぶたも舐めようとするため、結局治るまで絆創膏で保護していたことがあります。
犬が自分で舐められない場所であっても、同居犬がいる場合では、保護してあげたほうが安心です。
また、自己判断で消毒をしたり塗り薬をつける飼い主さんも少なくないようですが、かさぶたができた原因によっては症状を悪化させてしまうこともあるため、まずは動物病院を受診しましょう。
犬のかさぶたで動物病院を受診する目安は?基本的にかさぶたがあれば受診しよう
犬のかさぶたで動物病院を受診する目安は、以下の通りです。
■動物病院を受診する目安
・犬が自分で舐められる場所にかさぶたがある
・数日間様子を見ていても良くならない
・かさぶたのサイズが大きい
・何か所にもかさぶたがある
・脱毛がある
・フケがある
・痛みや痒みを伴う
犬の皮膚にかさぶたができるのは、外傷や皮膚病、腫瘍といった何らかの原因があるためで、そのままにしておくと悪化させてしまうことにもなりかねません。
明らかに外傷が原因で、傷が浅く傷口もとても小さいのであれば様子を見ていても問題ない場合もありますが、飼い主さんが判断するのは難しいため、できれば動物病院で診てもらうことをおすすめします。
犬の皮膚病の原因・症状を解説【画像付き】アレルギーやダニなど改善に役立つ6つの対策【獣医師監修】
まとめ
犬の皮膚にかさぶたができる原因は、主に皮膚に関する病気です。
かさぶたになっているからもうすぐ治るというわけではなく、何の病気が原因なのかを特定して、病気の治療を行うことが大切です。
皮膚の病気は痒みや嫌みを伴うものも多く、治療をしてあげなければ不快な状態がずっと続きます。
愛犬の皮膚にかさぶたができている場合は、自己判断せずに動物病院を受診するようにしてくださいね。
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー