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クッシング症候群とは
クッシング症候群は、別に副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)ともいいます。この病気は副腎という腎臓の近くにある小さな臓器から出されるコルチゾールというホルモンが過剰に分泌されることによって起きる内分泌疾患です。
コルチゾールは、脳の下垂体という部位から分泌される副腎皮質刺激ホルモンが副腎に働きかけ分泌されます。分泌されたコルチゾールは全身に働き、食欲増加や活動性の亢進、消化器その他の状態を整え、ストレスに対応できる状態にすることができます。
クッシング症候群は下垂体もしくは副腎に異常が発生しコルチゾールが過剰に分泌されることで様々な症状が起こる病気です。
クッシング症候群…副腎からホルモンが過剰に分泌される事で起きる病気
ワンちゃんにこんな症状はありませんか?
ワンちゃんの症状 |
チェック |
水を飲む量が極端に増えた |
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尿の量が極端に増えた |
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急激な食欲増加 |
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若い頃より食欲が増加した |
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お腹が張っている |
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痒みがなく毛が抜け始めた |
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傷が治りにくくなった |
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運動をしていないのに苦しそうに呼吸をする |
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2点以上チェックが入る場合、クッシング症候群もしくは別の病気である疑いがあります。クッシング症候群の症状としてよく見られる症状は
- 多飲多尿
- 多食(特に若い頃より食べる量が急に増えた場合は注意が必要)
- 腹部肥満(お腹が張っている)
- 痒みもなく毛が抜ける
- その他(突然発作を起こすなど)
…などがあり、特に多飲多尿や腹部の張り、抜け毛などの症状がクッシング症候群の疑いが強い症状となります。
クッシング症候群の原因
クッシング症候群は、
- 脳の下垂体の腫瘍
- 副腎の腫瘍
- 薬剤の過剰摂取
の3つのパターンによって発症します。
①と②を合わせて自然発症副腎皮質亢進症と呼び、①は全体の約85%、②は約15%程度の発症率です。
③の薬剤の過剰摂取によるクッシング症候群は、医原性のクッシング症候群と呼びます。これはアレルギーなどの皮膚疾患で長期間にわたるステロイド治療を行っている場合におこることがあり、クッシング症候群と同じような症状が現れます。この場合はステロイド治療を見直すことで治療することができますので下記には割愛いたします。
クッシング症候群の原因
- 脳の下垂体の腫瘍で発症するパターンがほとんどの事が多い
- 副腎の腫瘍で発症するパターンは約15%程度
薬物の過剰摂取の場合は治療を見直すことで改善することができます。
クッシング症候群になりやすいわんちゃん
クッシング症候群になりやすい犬種
- プードル
- ダックスフンド
- ボクサー
- ボストンテリア
…などがクッシング症候群になりやすい犬種。ほとんどが7歳以上のシニア犬で起こる可能性がある病気です。
クッシング症候群は比較的多く見られる内分泌疾患で、猫ちゃんに比べてワンちゃんに多い病気です。
クッシング症候群になりやすいワンちゃんとしては、プードル、ダックスフンド、ボクサー、ボストンテリアなどがあげられます。ですが、すべての犬種でみられますので注意が必要です。
ほとんどは7歳以上のシニアで起こってきます。この年齢のわんちゃんが下記のような症状が出た場合は動物病院に向かいましょう。
クッシング症候群の症状
クッシング症候群で見られる症状
- 多飲多尿
(おしっこを大量に出すため沢山の水を飲む)
- 急激な食欲増加
(若い頃より食欲が増加した場合注意が必要)
- 肥満
(お腹が張ってる状態、この病気の特徴的な症状)
- 抜け毛
(痒みがなく毛が抜ける場合要注意)
- その他
(傷が治りにくくなった・苦しそうに呼吸をする・突然発作を起こすなど)
これらの症状が見られた場合、クッシング症候群を起こしている可能性が考えられます。早めに動物病院での診察を受ける事をおすすめします。
クッシング症候群はコルチゾールによって、様々な特徴的な症状がみられます。
多飲多尿
この病気で最もよく見られる症状で、全体の80%~85%で発生します。
多飲多尿とは、正確には多尿多飲であり、たくさんのおしっこが出てしまうためにそれを補うために水を大量に飲むようになります。
基準となる量として正常なわんちゃんの飲水量は20~90ml/㎏/日、尿量は20~45ml/㎏/日です。これらの量は、個体によって異なりますし、食べているものや気候によっても異なりますので、普段からその子の基準の量を調べておくと良いでしょう。
量の測り方をどうするか、悩まれる方が多いのですが、私がオススメする方法としては、おしっこシートやオムツを用いて、使用した前と後の重さの差から尿量が大まかに測れます。ぜひ試してみてください。
多食
この病気により60%~90%のわんちゃんが食欲が増加していきます。一見すると元気に見えるのでご家族はそれを健康な状態と誤認してしまい、病気の発見が遅れることがあります。
若い頃よりご飯を多く食べるようになった場合は注意が必要です。
腹部膨満
腹部膨満とはお腹が張っている状態でこの病気に特徴的な症状です。コルチゾールの作用により筋肉の萎縮、肝臓の腫大、膀胱の腫大、腹腔内の脂肪増加などが重なりお腹が張ってしまうことが原因です。
やはりこれもご家族は多食から来る肥満と考えてしまい、なかなか病気と認識しにくい症状です。もし、食事の量などを増やしていないにも関わらずお腹が大きくなっている場合は注意が必要です。
脱毛
コルチゾールの作用によって毛根の萎縮が起こり、頭や手足の先を残して左右対称に毛が抜けていくことがあります。ご家族は老齢によるものと考えますが、これもこの病気の特徴です。痒みがなく、毛が抜ける場合は要注意です。
その他
上記がよく起こる症状ですが、この病気はその他にも多くの症状が見られます。
- 皮膚が弱くなり、感染症にかかったり、傷が治りずらい
- 口を開け、ハーハーと苦しそうに呼吸する
下垂体性の場合、脳が圧迫されることにより発作、行動変化、四肢麻痺、盲目などの神経症状を起こす場合もあります。
クッシング症候群の併発疾患
クッシング症候群で発症する疾患
…など。クッシング症候群でこれらを発症している場合は治療が困難になる場合もあります。
クッシング症候群は多くの併発疾患を起こします。例えば、血糖値をコントロールするためのインスリンが不足したり正常に作用できなくなる事で糖尿病や膵炎を引き起こすことがあります。
他にもホルモンが過剰に分泌されることにより、高血圧、血栓塞栓症、感染症、腎不全などを発症することがあります。これらの疾患を発症している場合、時に致死的であり、治療が困難となることもあります。
クッシング症候群の診断
7歳以上の年齢のワンちゃんに上記のような症状が見られた場合、いくつかの検査を行い、この病気の可能性を検討します。
クッシング症候群で行う診断
- 血液検査⇒血液の数値が高値になっていないか
- 尿検査⇒尿の濃さを調べる
- 超音波検査⇒副腎が大きくなっていないか
- ACTH刺激試験⇒下垂体から出るホルモンに異常がないか
- CT検査とMRI検査⇒1つの診断材料となる、必須項目ではない
…をそれぞれ検査を行います。
CTとMRIはワンちゃんに麻酔をかけての検査になるため必須項目ではありません。検査を行う場合は獣医師と十分に相談を行いましょう。
血液検査
一般的に行われる血液検査のみでは、この病気を診断することはできません。疑いを強めてから詳しい検査をすることで、無駄な検査を省くことができます。
ワンちゃんの全身の状態を把握することができるので、まずは血液検査を行います。最も特徴的な値はALP(アルカリフォスファターゼ)の高値です。
クッシング症候群の85%~90%の子で上がっており、多くが著しく高い値になります。その他にも高コレステロール血症、高血糖、高リン血症などが見られる場合があります。
尿検査
この病気でよく見られる多飲多尿の症状は、薄い尿を大量に出します。この多飲多尿という症状を診断するために飲水量と尿量を測定することの他に、尿の比重、つまり濃さを調べることが重要になります。
犬の基準となる尿比重は1.018~1.045程度です。この値より低い値が続く場合は尿が薄くなるなんらかの疾患を疑います。
しかし、普段よりたくさん水を飲んでおり、尿も多くなっていても十分に高い比重であれば多尿ではない可能性があります。また多飲多尿の症状が出る病気にはクッシング症候群以外にも下記のものがあげられ、これらの中から鑑別していく必要があります。
その他にもクッシング症候群の子では尿路感染が起こっている場合が多くあるため、この病気と確定された後でも定期的に確認しておくと良いでしょう。
多飲多尿の原因となる病気
- 糖尿病
- 腎不全
- 子宮蓄膿症
- 甲状腺機能亢進症
- 肝不全
- 副腎皮質機能低下症
- 医原性
- 心因性多飲
- 尿崩症
- 高カルシウム血症
- 低カリウム血症
などがあります。それぞれ病気によって治療法は異なりますので、もし多飲多尿の症状が出た場合、上記の病気を診断するために血液検査や画像検査などを行う必要があります。
超音波検査
超音波検査はクッシング症候群を診断するうえでとても重要です。この病気は腫瘍性の病気のため、副腎が両側ないし、片側で大きくなっているのが確認できれば症状と合わせてこの病気の可能性が高まります。
また副腎の腫大が両側か片側かによっても、そのクッシング症候群が下垂体からなのか副腎からなのかを診断するうえで重要になります。しかし、この病気でも副腎の大きさが変わらない場合もあるので注意が必要です。
また副腎が大きくなっていても非機能性というホルモンを過剰に分泌していないタイプの場合もあります。
ACTH刺激試験
クッシング症候群を診断するためにはいくつか方法がありますが、その中でよく行われているのがACTH刺激試験です。
ACTHとは下垂体から出されるホルモンのことで副腎皮質刺激ホルモンといいます。このホルモンが副腎に働き、コルチゾールが副腎から分泌されます。この副腎皮質刺激ホルモンの薬液を注射し、その後に血液検査を行いどの程度コルチゾールが分泌されているかを調べることで副腎の異常を診断することができます。
クッシング症候群のわんちゃんでは副腎からホルモンが大量に分泌される状態になっているため副腎皮質刺激ホルモンに刺激されると通常よりも高い値になります。しかし、この検査でもさまざまな要因により確実に診断がつくわけではないので、その他の検査と合わせてクッシング症候群の可能性を検討します。
CT検査とMRI検査
CTやMAIなどの画像検査は、この病気を診断するうえでは必ず必要というわけではないですが、それらの検査を行うことでより詳しい情報が得られ、下垂体性か副腎性かの診断や予後の判定、治療の選択に役立つ可能性はあります。
特に治療法として放射線療法や外科療法を選択する場合はより多くの情報が必要になりますので必要となるかもしれません。しかし、検査を行う場合は麻酔をかけての検査になりますので担当の獣医師と十分に相談して選択しましょう。
クッシング症候群の治療
クッシン症候群の治療の目標は、症状そのものを改善し生活の質を高めることと致死的な併発疾患を防ぐことにあります。
そのため、治療がうまくいっているかを考えるうえでは、ACTH刺激試験などの検査数値も確認しますが何よりその子の症状が改善しているかが大切です。
クッシング症候群の治療には内科療法、外科療法、放射線療法があります。それぞれの治療法について解説いたします。
クッシング症候群の治療について
- 内科療法⇒トリロスタンという薬物を使い治療を行う
- 外科療法⇒問題のある部位の切除を行う
下垂体性の場合は腫瘍化している部分の切除
副腎性の場合は肥大している副腎の切除
- 放射線療法⇒下垂体性が肥大し神経症状が出ている場合に行う
内科療法の場合、薬の副作用として副腎皮質機能低下症(アジソン病)という別の病気になる可能性があり、その場合は投与量を再調整する必要があります。
外科療法の場合、成功すれば薬物投与の量を減らす、もしくは行う必要がなくなりますが、どちらの手術もリスクが高いので獣医師と十分に相談してから行うようにしましょう。
放射線療法の場合、全身麻酔が必要になるので外科療法と同じく獣医師と十分な相談が必要になります。
内科療法
内科療法で私がよく用いるのはトリロスタンという薬です。この薬は体内でこの病気の原因となるコルチゾールなどが作られるのを阻害することで治療効果を発揮します。
トリロスタンはカプセルの薬で1日1回から始め、臨床症状や副作用の発現がないかをよく観察しながらACTH刺激試験などを参考に投与量を検討していきます。多くの場合薬の投与は生涯にわたります。
薬の副作用としては、過剰にコルチゾールなどのホルモンの分泌を阻害してしまった場合に副腎皮質機能低下症(アジソン病)という別の病気になってしまうことがあります。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)の特徴としては食欲の低下、活動性の低下、虚脱、震え、嘔吐や下痢などが出ます。これらの症状が出た場合は、薬の投与を中止し、投与量を再検討する必要があります。
トリロスタン薬を使う上での注意点として基本的にカプセルのまま投与するようにしてください。万が一、カプセルを開け何かのはずみでご家族がそれを摂取してしまうと妊娠中の女性では流産や妊娠障害を起こしてしまう可能性があるので注意してください。
薬の副作用として副腎皮質機能低下症(アジソン病)という別の病気になる場合もあります。
食欲の低下・活動性の低下・虚脱・震え・嘔吐や下痢などを起こした場合、薬の投与を中止、投与量を調整する必要があります。
外科療法
下垂体性の場合は、脳外科手術を行い過剰分泌している部位の切除を行います。また副腎性の場合は、腫大している副腎を切除します。
これらの手術が成功した場合は内科療法の投薬を減らす、もしくはなくすことができる可能性があります。しかし、どちらの手術もリスクは高く、こちらも選択する場合は獣医師との十分な相談が必要になるでしょう。
手術が成功した場合は、薬物投与の量を減らす・無くす事ができますがリスクは高くなっています。
放射線療法
放射線療法は、下垂体性のクッシング症候群で下垂体が大きく腫大することで神経症状が出ている場合などで検討します。しかし、この治療を行える施設は限られており、全身麻酔も必要となるため選択には獣医師と十分に相談しましょう
下垂体性のクッシング症候群で神経症状(発作・行動変化・四肢麻痺・盲目など)が出た場合放射線での治療が行われる場合があります。
クッシング症候群の治療費
クッシング症候群の治療費について
- クッシング症候群の治療費は高額になる可能性が高く、外科と放射線治療は手術を行える施設が限られます。
- 診療費や治療費は、動物病院の設備・地域性・立地などによっても変わります。
- 動物病院は独占禁止法によって、獣医師団体が協力して基準料金を定める事が禁止されているため、治療費用は病院によって異なります。
治療内容や、治療費については獣医師としっかりと相談をし途中で治療を断念することのないようにしましょう。
クッシング症候群の治療費は内科、外科、放射線のどれを選択しても総合的には高額になる可能性が高いです。それは、外科と放射線は行える施設は限られておりその多くは大学などの二次施設になることや、内科療法は副作用のコントロールに定期的なモニタリングが必須なため治療薬代と検査代が長期的に必要なためです。
また併発疾患によっては、さらに費用がかかってしまう場合があるでしょう。そのため費用面についても獣医師と相談し、途中で治療を断念することがないように金銭的な計画をたてる必要があるかもしれません。
クッシング症候群の予防
クッシング症候群は腫瘍性疾患であり、予防することができません。
しかし、クッシング症候群は良好なコントロールができ、併発疾患を予防できれば生存期間は十分に延長することができるでしょう。どの治療を選択した場合も獣医師とのコミュニケーションと日々の観察を行って病気と付き合っていくよう考えましょう。
まとめ
クッシング症候群は、腎臓の横にある副腎からホルモンが過剰に分泌されて起きる、ホルモン異常の病気です。糖尿病や高血圧などといった病気を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
愛犬の多飲多尿、多食(特に若い頃よりも食べる量が急激に増えた時)、毛が抜けるなどの症状があった場合は一度動物病院で検査を受けたほうが良いでしょう。
クッシング症候群は、正確な診断と綿密な治療計画が長期に渡り必要になる難しい病気となります。治療は信頼できる獣医師としっかりと相談をし、治療を途中で中断することのないよう計画を立てて下さいね。
クッシング症候群
- 腎臓の横にある「副腎」からホルモンが過剰に分泌されることで様々な病気を発症する病気
- 多飲多尿、多食、腹部の肥満、抜け毛などの症状がある
- クッシング症候群の治療はどの治療法を選択しても高額になる可能性が高い
- クッシング症候群は予防することはできないが治療を行う事で生存期間を伸ばす事ができる
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