犬が死んだら最初に何をする?バイタルを確認する
動物病院以外の場所で犬が死んだら、最初に必ずしなければいけないのがバイタルの確認です。呼吸はあるか、心臓は動いていないか、体温は下がっているかなど、もう一度確認してください。
犬は失神やショック、発作などによって仮死状態になることもあり、その場合はかすかなバイタルサインが見られることもあります。
■バイタルチェックのポイント
- 呼吸の確認
…1分間に数回見られることがある。わかりにくい場合は犬の顔の前に鏡を置いて1分間待ち、鏡が曇る場合は呼吸をしている
- 心臓の鼓動の確認
…犬の胸に顔をつけると、かすかにトクントクンという音が聞こえたり、弱い拍動を感じることができる
- 体温の確認(※犬用体温計がある場合)
…犬の正常時の体温は39~39℃前後だが、仮死状態や亡くなっている場合は室温前後まで体温が下がる
もし動かない、意識がない、ということだけで判断して火葬や埋葬してしまうと、後々、「もしかしたら愛犬は生きていたのではないか」と不安に襲われることも珍しくはないため、しっかり確認しましょう。
自分で確認することが難しい場合は、動物病院で確認してもらってくださいね。
犬が死んだら遺体はどうする?エンゼルケアをしてご遺体を安置する
犬が死んだら、葬儀のありなしに関わらず、犬が生前の姿で旅立てるようにエンゼルケアを行い、ご遺体を安置しましょう。
ここでは、エンゼルケアの方法やご遺体の安置の方法についてご紹介します。
エンゼルケアの方法
■エンゼルケアに用意するもの
・ガーゼやタオル数枚
・ブラッシング用ブラシ
・爪切り
・ハサミ
・脱脂綿(体液が出てこないように詰めたい場合)
エンゼルケアとは、ご遺体をきれいに整えるために行うものですが、体液や血液による感染症予防の意味もあります。ここでは、手順と注意点を見ていきましょう。
エンゼルケアの手順①身体の状態を整える
犬が死んだら、個体差はありますが亡くなった2~3時間後から死後硬直が始まります。頭や足といった先のほうから硬くなるため、その前に身体の状態を整えてください。
■犬が死後硬直する前にすること
・目を閉じる
・舌を口の中にしまい、口を閉じる
・突っ張っている手足の関節を優しく折り曲げて体につける
また、すでに硬直している場合では無理に折り曲げようとはせず、12~18時間後の硬直が解けてきたときに直すか、そのままにして葬儀会社の人にお願いしましょう。
エンゼルケアの手順②身体をきれいに整える
身体の状態を整えられた場合だけでなく整えられなかった場合でも、次に行うことはご遺体を生前の姿のようにきれいに整えてあげることです。
まず、お湯で湿らせたタオルやガーゼで鼻や口、お尻など体液や排泄物で汚れている部分を優しく拭きます。
その後、硬く絞ったタオルで身体全体を拭き、ブラッシングします。この時、足裏の毛や爪が伸びている場合はカットしてください。
出てくる体液や排泄物が気になる場合は、脱脂綿を詰めることで出てくる量を軽減することができます。
これらのことは、犬が動物病院で死んだら動物病院がある程度のエンゼルケアをしてくれますが、どこまでしてくれるかは動物病院によって異なります。
エンゼルケアをするときの注意点
犬のエンゼルケアをするときには、注意しなければいけないことが3つあります。
■エンゼルケアをするときの注意点3つ
- 死んだらすぐに行う
- 水分は腐敗の進行を早めるのであまり使用しない
- ご遺体は優しく扱う
当然のことですが、犬のご遺体は優しく扱い、死んだらすぐに行うことが大切です。
また、犬のエンゼルケアでシャンプーをしてあげたいと考える飼い主さんもいますが、シャンプーをする際の水分やドライヤーによる熱風はご遺体の腐敗を進めてしまうのでおすすめできません。
どうしてもシャンプーをしてあげたい場合はエンゼルケア専門のサロンにお願いするか、水のいらないシャンプー(ドライシャンプー)の使用にとどめましょう。
ご遺体の安置の方法
■ご遺体の安置に用意するもの
・棺(段ボール箱や木箱など)
・ペットシート
・タオル数枚
・バスタオル
・保冷剤やドライアイス
エンゼルケアができたら、ご遺体の安置です。ペットシートを敷いた上にタオルやおくるみ布団を敷いた棺にそっと寝かせてあげましょう。
そして、ご遺体の腐敗の進行を遅らせるために、タオルに包んだ保冷剤や袋に入れたドライアイスを以下の身体の部位にあてます。
ご遺体は外気に触れると腐敗が早く進んでしまうため、保冷剤をあてたらバスタオルなどで体を覆い、涼しい部屋に安置してください。
安置しているとご遺体の鼻や口、お尻から体液や排泄物などが出てきますが、その都度きれいに拭いてあげます。また、保冷剤はこまめに取り替えることがポイントです。
これらの方法を行うことで、自宅でも1週間程度安置することが可能になります。
犬が死んだら葬儀はどこでする?葬儀の種類によって場所は異なる
ご遺体を安置したら葬儀の手配をします。
犬が死んだらご遺体はどうするかも考えなければいけません。火葬にするのか土葬にするのかでも異なります。
自宅が自分や家族が所有する土地であれば自宅の庭に埋葬することも可能ですが、自宅での埋葬は条例やご近所トラブルなどいろいろ問題もあるため、自治体や民間の葬儀業者にお願いするのが一般的です。
ここでは、葬儀の種類や特徴について解説します。
自治体|安価だが燃えるゴミとして処理されることがほとんど
自治体でお願いする場合、ほとんどの自治体は燃えるゴミとして焼却処理するため、自治体への依頼はおすすめできません。
その分価格は安く、自宅に引き取りにも来てくれます。
■利用料金の例(※)
・10kg以上のもの:1匹につき2,800円
・5kg以上10kg未満のもの:1匹につき2,100円
・5kg未満のもの:1匹につき1,700円
自治体によってはきちんと火葬して返骨してくれるところもありますが、葬儀を行ってくれる自治体はごくごく僅かです。
ほとんどの自治体は焼却処理で、遺骨はもちろん遺灰の返しもないため、返骨や埋葬、供養を考えている場合では民間の葬儀会社や動物霊園などにお願いしたほうが安心でしょう。
(※)参考:大阪市「ペットなどが死んだ場合の引き取り」
民間の葬儀会社|業者が多いので価格や葬儀の方法・種類を選べる範囲が広い
ペット専門の葬儀会社でお願いする場合、業者が多いので価格はもちろん、葬儀の方法・種類を選べる範囲が広いというメリットがあります。
とは言え、一部の訪問火葬業者と利用者のトラブルも実際にあるため、価格だけで選ばず、口コミやGoogleの評価などを参考にすることが大切です。
■民間の葬儀会社の葬儀の方法や種類
葬儀の方法 |
・読経の有無
・セレモニーの有無 |
葬儀の種類 |
・立会い個別火葬
・一任個別火葬
・合同火葬
・剥製葬 |
葬儀の場所 |
・自宅に訪問
・セレモニー会場 |
葬儀の時間帯 |
・24時間対応もあり |
返骨 |
・合同火葬以外は返骨可能 |
埋葬 |
・納骨堂
・散骨
・ペット霊園 |
犬の葬儀は火葬が主流となっていますが、火葬と言っても個別に火葬するのか、合同で火葬するのかで大きな違いがあります。
■火葬の方法
- 立会い個別火葬
…1匹1匹個別に火葬。葬儀に立会い、お骨上げまで行う。その日に返骨される
- 一任個別火葬
…1匹1匹個別に火葬だが、お骨上げまですべて葬儀会社にお任せで行う
- 合同火葬
…ほかのペットと一緒に火葬。立会いはなくご遺体を預けて終了となることがほとんど
葬儀の費用は各火葬の方法で異なるほか、体の大きさで変わります。
寺院・ペット霊園|若干高めな価格だがしっかり葬儀を行ってもらえ火葬方法も選べる
寺院やペット霊園でお願いする場合、基本的にはその場に出向いて葬儀を行い、火葬の流れとなりますが、ペット霊園によっては訪問火葬を行ってくれることもあります。
ペット葬儀会社のように火葬方法が選べるようになっており、大きな違いは読経やセレモニーがついていて、それを合同や個別で行うことができます。
寺院やペット霊園での葬儀はペット葬儀会社に比べて価格は若干高めな傾向にありますが、2年分の納骨料が含まれていたり、三回忌までの法要が含まれていたりしているため、トータルで考えるとそこまで変わりはないかもしれません。
■犬の葬儀の料金相場一覧(※体重5kgの場合)
火葬の方法 |
ペット葬儀業者
参考料金 |
寺院・ペット霊園
参考料金 |
立会い
個別火葬 |
10,780~79,750円 |
55,000~62,000円
|
一任
個別火葬 |
10,010~46,200円 |
33,000~40,000円 |
合同火葬 |
8,500~29,700円 |
20,000~26,000円 |
葬儀会社の選び方
民間の葬儀会社はたくさんありますが、一部の訪問火葬業者は追加料金を過剰に請求したり、預かったご遺体を山中に不法投棄するなど、トラブルが絶えないのも事実です。
そのため、料金の安さだけで選ぶのではなく、口コミをチェックしたり知人が利用した葬儀会社を紹介してもらうなど、慎重に選ぶことが大切です。
■葬儀会社を選ぶポイント
・口コミをチェックする
・知人が利用したことのある葬儀会社を紹介してもらう
・イオンのペット葬が紹介している葬儀場を利用する
・料金が明確に表示されており追加料金がないと明記されている
イオンのペット葬が紹介している葬儀場は、すべて実際に足を運んで審査をしており、イオンのペット葬が独自に設けた品質基準をクリアした葬儀業者やペット霊園しか掲載していません。
また、直接申し込みをするよりもイオンのペット葬を通して依頼したほうが、品質基準が守られるという安心もあります。
愛犬が亡くなったら葬儀どうする?トラブルがあった人も…!?【犬の飼い主さん691人に大調査!】
犬が死んだら供養の方法は?手元供養や合同供養など選べる
犬が死んだら、供養についても考えなければいけません。供養の仕方によって葬儀の種類や火葬の方法も合わせる必要があるため、どの供養方法が一番自分に合っているのか、後悔のない供養方法はどれかを考えてみましょう。
供養の種類
犬の供養は、以下の8つの方法があります。
■犬の供養方法
- 自宅の庭にお墓をつくる
…自宅の庭にご遺体を土葬、火葬した遺骨を埋葬する。私有地以外は法律で罰せられるので注意
- 散骨する
…葬儀業者に粉骨してもらい、海などに散骨する。条例が定められている場合も多く、どこに散骨してもいいわけではない
- 自宅で手元供養する
…ご遺骨を自宅で供養する。いつかは納骨や埋葬が必要
- 剥製葬にする
…生前の姿のまま供養する。いつかは寺院に納めて供養してもらう必要がある
- 納骨堂に納める
…納骨堂に納めて供養する。一時的な保管先としていることが多くいつかは埋葬が必要
- 供養塔などに合祀する
…ほかのペットと一緒のお墓で供養する。個別火葬をした場合でも一度納めると返骨はできない
- ペット霊園にお墓をたてる
…個別のお墓で供養する。お墓を管理する人がいなくなると供養塔などに合祀となる
- 人間の霊園で飼い主さんと一緒に入る
…人間と一緒のお墓で供養する。お墓を管理する人がいなくなると供養塔などに別々に合祀となることが多い
注意しなければいけいのは、永代供養とうたっている納骨堂やお墓でも、期限が決められている場合も多く期限が切れたあとは供養塔などに合祀されるという点です。
また、お墓を管理する人がいれば、永代にわたって供養することができますが、管理する人がいなくなってしまった際はやはり供養塔などに合祀されるということは覚えておきましょう。
これは犬だけでなく、人間でも同様です。
犬の供養については、以下の記事でメリットやデメリットを詳しく解説しています。
愛犬の供養はどうする?供養の方法や初七日、四十九日などの行事について
愛犬のお墓はどうしたらいい?飼い主さんと一緒に入れるお墓もある!お墓参りについても
合同火葬にすると手元供養はできないので注意
合同火葬は個別火葬に比べて価格が安めに設定されていますが、ほかのペットと一緒に火葬され、そのまま一緒に供養塔に埋葬されることになります。後からやっぱり手元供養したいと思っても、ほかのペットのお骨と判別することができないため、返骨されないので注意が必要です。
実際、私の知人には、合同火葬をしたことを後悔している人もたくさんいます。
もちろん、ほかのペットと一緒で寂しくないというメリットはありますが、合同火葬を選ぶ際はよく考えて決めてくださいね。
犬が死んだら30日以内に市役所や保健所に届け出をする
犬が死んだら、亡くなった日から30日以内に住んでいる市区町村の市役所や保健所に死亡届を提出してください。死亡届を出さないのは「狂犬病予防法 第四条」の違反となり20万円以下の罰金が課されてしまうこともあります。(※)
また、毎年狂犬病予防接種のお知らせも届き、狂犬病予防接種を拒否しているとして罰せられる可能性も。
実際には、なかなか気持ちの整理がつかずに提出しないまま30日を過ぎてしまう飼い主さんもいますが、30日を過ぎても死亡届の提出は可能なので、最後の飼い主の役目として必ず提出するようにしてください。
ここでは、死亡届を提出するときに必要なものと流れをご紹介します。
※参考:e-Gov法令検索「狂犬病予防法」
準備するもの
■用意するもの
- 住んでいる自治体の犬の死亡届
…書類は自治体HPからダウンロードもしくは保健所の窓口でもらうことができる
- 犬鑑札
…なくした場合は死亡届の用紙に記載する
- 狂犬病予防注射済票
…届け出を出す年のものだけでいい。なくした場合は用紙に記載する
犬の死亡届を提出する際に、必要となるのは上記の3つです。
届け出の方法
犬の死亡届の提出方法は、自治体によって異なりますが、基本的には保健所の窓口への提出になります。
■犬の死亡届の提出方法
・直接窓口に提出
・郵送申請
・オンライン申請
必要事項を記入した死亡届の提出と、犬鑑札と注射済票を返却すれば手続きは完了します。
どうしても犬鑑札や注射済票を思い出として残しておきたい場合は、窓口で相談してみましょう。
血統書の返却も忘れずに!
血統書を発行されている犬では、自治体に死亡届を出すと同時に、登録団体に連絡して死亡手続きを行ってください。
一度血統書を送る必要がありますが、こちらも残しておきたい場合は相談すると返却してもらうことができます。
犬が死んだら動物病院に知らせる?どちらでもいい
犬が死んだら、お世話になっていた動物病院に知らせるべきか、お礼の品を持って行くべきか悩む飼い主さんもいるでしょう。
基本的に知らせる義務はなく、飼い主さんがしたいようにするのが一番です。
また、獣医師の指示で自宅で点滴や注射などをしていた場合では、針などは医療廃棄物にあたるため、動物病院に持って行って廃棄してもらう必要があるため、そのタイミングで亡くなったことを知らせてもいいですね。
お礼の品を持って行くことも義務はなく特に決まりはありませんが、お礼の品を持って行く際はその病院で働くすべてのスタッフに行き渡るよう、菓子折りなどにするのが病院側も気を遣わずに済みます。
■ペット保険を契約していた飼い主さんは解約手続きを忘れずに!
ペット保険の解約手続きを忘れてしまうと、保険料が発生します。動物病院で死亡が確認された日、葬儀を行った日(日付が記載されている領収書が必要)、ペット保険会社に連絡した日などが解約日となるため、早めに手続きしてください。
犬が死んだらどこにいく?虹の橋のたもと説が有名
犬が死んだら、どこに行くのかと疑問に思う飼い主さんも多いです。これは誰にもわからないことですが、近年は「虹の橋のたもと」という話が広く知られており、元気で楽しい毎日を送り、飼い主さんとの再会を待っていると考えられています。
本当にそんな場所があるのかはわかりませんが、再会できると信じることでペットロスが和らぐことも多いでしょう。
虹の橋については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
虹の橋とは?本当にあるの?犬や猫などのペットがいつ渡るのかも紹介
まとめ
犬が死んだら終わりではなく、亡くなってからもしてあげることはたさんあります。
■犬が死んだらすること5つ
・バイタルの確認
・エンゼルケアとご遺体の安置
・葬儀会社の手配
・供養
・死亡届の提出
愛犬が亡くなるとショックや悲しみが大きく、パニックになって何をすればいいかわからないということも珍しいことではありません。
また、実際に初めて見送ったときの愛犬で経験がありますが、その時になって焦っていろいろ調べるのは、せっかくの愛犬との最期の時間が台無しに…。
愛犬が死んだら…なんて考えたくはないことですが、いつかは訪れる別れのときに備え、愛犬が元気なうちからどこで葬儀をするのか、供養の方法はどうするのかなど考えておきましょう。
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー