ワンちゃんの病気に腎不全と言うものがあります。腎不全は腎臓病の1つで、不要になった老廃物や毒素を尿として排出する機能を持った腎臓が、なんらかの原因で正常に機能しなくなることで起きる病気です。
「愛犬のおしっこの量が多い」「おしっこが薄い」「水をよく飲む」
…などの症状が見られたら、腎臓が悪くなってしまっている可能性があります。腎不全の種類や症状によってはすぐに獣医師に相談する必要がある場合もあります。今回は犬の腎不全について解説いたします。
ワンちゃんの病気に腎不全と言うものがあります。腎不全は腎臓病の1つで、不要になった老廃物や毒素を尿として排出する機能を持った腎臓が、なんらかの原因で正常に機能しなくなることで起きる病気です。
「愛犬のおしっこの量が多い」「おしっこが薄い」「水をよく飲む」
…などの症状が見られたら、腎臓が悪くなってしまっている可能性があります。腎不全の種類や症状によってはすぐに獣医師に相談する必要がある場合もあります。今回は犬の腎不全について解説いたします。
※本記事は2024年10月までの情報を参考に作成しています。※本記事はINUNAVIが独自に制作しています。メーカー等から商品の提供や広告を受けることもありますが、コンテンツの内容やランキングの決定には一切関与していません。※本記事で紹介した商品を購入するとECサイトやメーカー等のアフィリエイト広告によって売上の一部がINUINAVIに還元されます。
目次
腎臓は、体に不必要なった老廃物や毒素を尿として排出する機能をもっています。その腎臓の約75%以上の機能が何らかの原因によって障害され、様々な症状が出ている状態を腎不全といいます。
腎不全には大きく分けて急性腎不全、慢性腎不全に分けられます。急性と慢性では腎不全になる原因や症状が変わってきます。
ワンちゃんの症状 | チェック |
急に元気がなくなった | |
食欲がなくなった | |
下痢・嘔吐がある | |
水を飲む量が極端に増えた | |
尿の色が薄くなっている | |
尿の量が極端に増えた | |
尿の量が極端に減った |
2点以上チェックが入ると腎不全の疑いがあります。特に気をつけたいのが、
…この4点です。腎臓は体に溜まった老廃物や毒素を尿として排出する機能を持った臓器です。この腎臓が何らかの原因で正しく機能しなくなると、大量に水を飲んだり尿に異常が出るようになります。
腎不全は「急性腎不全」と「慢性腎不全」と大きく分けて2つに分類されます。まずは急性腎不全になる原因について見てみましょう。
急性腎不全とは、腎臓の機能が数時間から数日のうちに急激に低下することで症状が出る病気です。その原因は大きく3つに分けられます。
急性腎不全の原因
…などが原因で急性腎不全を発症することがあります。
体の中に循環している血液量の減少、心臓の問題などによって腎臓に流れる血流が減ることで起こります。
腎前性の原因:
などがあげられます。
腎臓そのものが様々な原因によって障害されることによって起こります。
腎性の原因:
などがあげられます。
腎臓で作られた尿の排泄路の障害されることで起こります。
腎後性の原因:
などがあげられます。
慢性腎不全とは数年以上にわたる長い経過で次第に腎機能が低下し、障害が出る病気です。腎臓を障害するさまざまな原因が長期にわたり腎臓へ負担をかけ、徐々にその機能が失われていきます。
急性腎不全の原因として、よく動物病院で診られるのがブドウやレーズンなどの有害物質の誤食です。
腎毒性のある物
…などが腎毒性があり危険です。
ご家族が知らずに与えてしまう場合もありますが、よく盗食をしてしまうワンちゃんで起こる事が多いです。また慢性腎不全については、現在10頭に1頭が起こるといわれており、高齢になるにつれ増加していきます。そのため、高齢のワンちゃんは定期的な健診を行い、腎不全を早期に発見し、治療に進みましょう。
腎不全になりやすいワンちゃんの特徴
高齢のワンちゃんの場合は定期的な検診を受けることをおすすめします。
腎不全はどのような症状が出るのか、「急性」「慢性」によりそれぞれ下記のような症状が考えられます。
腎不全は本来排出されるはずの毒素が血液中で増え、様々な症状が発現します。
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、多飲多尿などの症状や、重篤になると乏尿という尿が減る状態になり、無尿という尿が出なくなる状態になってしまいます。
原因の治療がなされないと最悪の場合死に至ります。
慢性腎不全は4つの時期に分けて考えられます。その時期が進むにつれ様々な症状が現れます。
慢性腎不全の1期は多くが無症状で元気な状態です。ご家族が気づかれることは少なく、健康診断などで偶発的に発見されることがあります。
2期になると飲水量の増加、尿量の増加が見られます。
尿量の増加により、おしっこの失敗などが起こることもありますが、ワンちゃんが高齢の場合ご家族は年齢のせいと考え、他に症状がないため治療が遅れてしまう場合もあります。
3期になると食欲の低下、体重減少、貧血などの症状が見られるようになります。
4期は嘔吐、下痢や神経症状、舌の潰瘍などがあらわれます。食欲、元気がなくなり、状態が悪化し、死亡する場合もあります。
ご自宅のワンちゃんに急性腎不全を疑う症状が出た場合や、原因となる食物や植物を摂取してしまった場合はすぐに動物病院に向かいましょう。獣医師に症状や摂取した物とその量などを詳しくお伝えください。
これらの症状が見られた場合は急性腎不全の可能性が考えられます。
腎不全の診断をする方法は血液検査、尿検査、画像検査などを行い、いくつかの検査を組み合わせて複合的に判断します。
ワンちゃんの状態を把握するためにも、腎臓以外の項目の血液検査を行うこともありますが特に腎不全について血液検査で注意する項目としては、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、リン、カルシウム、電解質などがあります。
血液検査で注目する項目
…などを検査で診ていきます。
血中尿素窒素とは、食べた食事中に含まれるたんぱく質が身体で代謝されたあとの燃えカスのようなもので、本来であれば尿中に排泄されますが、腎臓の機能が落ちてしまうと身体に溜まってきてしまい毒となります。
腎臓が悪くなくても、食後や高たんぱく食を食べていると血中尿素窒素は高くなる傾向があるので解釈には注意が必要です。
クレアチニンは身体についている筋肉の栄養源であり、筋肉の多い子ではその分クレアチニンは高くなり、高齢などで筋量が少ないと低く出ます。メスよりオスの方がクレアチニンは高い傾向があります。
尿素窒素と同様に尿中に排泄されますが、腎機能が落ちてしまうと数値が高くなります。他にも激しい運動の跡や肉食の後に数値が高くなることがあります。
リンは、体の構成成分であり、ATPというエネルギーとなるものの必須元素で腎臓はその体内の量の調節の一端を担っています。そのため、腎機能が落ちてしまうと数値が高くなってしまいます。また、リンが多く血中に存在するとカルシウムと結合したものが腎臓に沈着し腎臓に負担をかけ、腎不全をより進行させてしまいます。
カルシウムは、リンと同様に身体に必要な必須元素であり腎臓がその調節の一端を担っています。しかし、カルシウムが多いとリンと同様腎臓に沈着し、腎臓を傷めてしまうので注意が必要です。
電解質はナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロール(Cl)の3つの元素のバランスを見る項目で、腎不全の子はその症状によってバランスが崩れることが多いです。そのため、必要に応じてその値を正すように治療していく必要があります。
尿は濃さやその量から腎不全の状態を把握する上でとても重要です。特に注意する項目として尿比重、尿量、尿たんぱく、尿沈査などがあります。
尿検査で注目する項目
…などを検査で診ていきます。
腎不全が進行すると腎臓が尿を濃くする機能を失っていき、薄い尿が大量に出るようになってしまいます。そのため、尿の比重を測定することで腎臓の機能をおおまかに把握することができます。
しかし、尿の濃さは1日の中でも飲水などの影響を受けて変動するので解釈には注意が必要です。一回の検査ではなく、朝の一回目の尿などと決め、継続して複数回測定していくと数値の正確性が増していきます。
腎不全が進行するとまず尿は増加します。しかし、腎臓の状態が末期になると腎臓は尿を生成することができなくなるため、尿量が減ったり(乏尿)、作れなくなったり(無尿)します。
また、尿量が減ったワンちゃんでも、治療によって腎機能が改善されると一過性に尿量が増加することもあります。
尿中のたんぱく質は、運動や発熱などで一過性に出る場合もありますが、腎臓の機能不全などの時も増加します。またその蛋白の量は腎不全の病期や腎不全の原因の検討に重要です。
尿沈査は尿を遠心機にかけて、作られた沈査を顕微鏡で確認する検査です。その沈査に含まれる物質によっては腎臓の疾患やその原因を検討するのに役立つ場合があります。例えば腎不全の子の尿に結晶を見つかった場合、その結晶に由来する結石が腎疾患に関連していることを推測することができます。
レントゲンや超音波検査では腎臓の構造に異常が出ていないか、腫瘍ができていないかなどを検査します。特に腫瘍が原因になっている場合は注意が必要です。
画像検査で注目する項目
…などを検査で診ていきます。
急性腎不全において、レントゲンによって腎臓から尿の排泄部位までの間に結石が見つかる場合があります。その場合腎後性の腎不全を疑い、その除去を行うことが重要となります。しかし、結石の種類によってはレントゲンに移らないものもあるので解釈には注意が必要です。
超音波検査によって腎臓の形態や腎臓の血流量などを見ることで、腎不全の原因や状態を検討することができます。例えば、腎臓や膀胱に腫瘍が見つかり、「それが原因となっている場合」などはその治療を行わなければ、多くの場合進行していってしまう可能性が高くなります。
慢性腎不全の定義は血液検査や尿検査などで、腎臓の障害が少なくとも3か月続いてみられた場合とされています。
慢性腎不全で注目する項目
…などの検査を行っていきます。
その中で腎不全がどの程度悪い状態なのかを次に考えなければいけません。それをステージ分類と言い、クレアチニンを用いた分類は下記のものとなります。
急性腎不全と同様に原因の特定に上記の検査を行い、他に血圧測定や尿中のたんぱく質の量(尿蛋白/クレアチニン比)測定も腎不全の状態を把握するうえで重要となるので定期的に行います。
【クレアチニンによる病期の分類】
ステージ1 | 1.4 ㎎/dl未満 |
ステージ2 | 1.4~2 ㎎/dl |
ステージ3 | 2.1~5 ㎎/dl |
ステージ4 | 5 ㎎/dl~ |
SDMAは比較的新しい血液検査項目で、たんぱく質が分解される過程で分泌され、ほとんどが尿中に排泄されるため腎臓の機能を確認するうえでとても有用な検査です。そして、SDMAは腎不全の早期発見のマーカーとして使うことができます。
通常よく測定されるクレアチニンは腎臓の機能が残り25%を下回らないと数値が上がってこないですがSDMAは残り60%程度のところで上がり始めます。また、クレアチニンは筋肉の量に影響されますがSDMAは影響されません。
SDMAを用いた腎不全のステージ分類としては下記のものとなります。
【SDMAによる病期の分類】
ステージ1 | 18 μg/dl未満 |
ステージ2 | 18~35 μg/dl |
ステージ3 | 36~54 μg/dl |
ステージ4 | 54 μg/dl~ |
腎不全の治療は原因やステージなどによって異なります。
急性腎不全の場合
少しでもワンちゃんに異常が見られたらすぐに獣医さんに相談しましょう。
急性腎不全の治療はまずその原因を特定することが重要です。そして可能であれば、その原因の除去を行います。
例えば結石などで腎不全に陥ってしまっている場合は、その除去を優先します。急性腎不全に対しての治療は最も効果的なものは輸液療法になります。状態に合わせてその量を調節します。
また必要に応じて、利尿薬などを用いて尿の排泄を助けます。また。輸液に反応しない場合透析を行う場合もあります。
急性腎不全はあっという間に進行してしまうことが多く、ご家族が気づかれる時にはかなり厳しい状態になっていることが多々あります。そのため、治療が奏功せずなくなってしまう場合もあります。
早期に発見、治療することで腎機能が正常に向かい、通常の生活を送れるようになる場合もあります。
慢性腎不全の場合
10頭に1頭は慢性腎不全と言われています。動物病院で定期的に検査を行う事をおすすめします。
慢性腎不全の治療も原因が確定できればその治療を行います。また腎不全の治療は病期や症状によって追加、変更されていきます。そのため定期的な検査を行っていくことが必要になります。
血圧測定で高値の場合が見られた場合は抗血圧療法、尿蛋白/クレアチニンで高値が見られた場合は抗蛋白療法を実施します。定期的なモニタリングを行い、投薬量を検討します。
尿毒症による嘔吐や食欲不振が起こるようであれば制吐薬や食欲増進剤などの投与を行います。
自力での食事が難しくなるようであればカテーテルを用いた強制給餌を行います。透析や腎移植などの選択もありますがリスクも高く、ご家族と獣医師での相談が必要となるでしょう。
腎不全の治療は、特に慢性腎不全の場合治療は長期に渡ることが多く、治療費用も継続して出ていきます。
病期が進行するにつれ、より輸液をこまめに行う必要が出てくる場合も多くご家族の負担は大きくなります。そのためワンちゃんの治療に必要な費用面について、獣医とよく相談のうえ治療を行う必要があります。
腎不全を起こす中毒物質を避けることはもちろんですが、その他にもミネラルの高い食物や水を避けることや過度な高たんぱくな食事を避けることも必要です。
また慢性腎不全の一番の予防は定期的な検査によって早期に発見し、食事を変更するなどして病気をなるべく進行させないことが重要です。
腎不全は、腎臓の状態を指す単語でありその原因、状態などによって治療内容や予後が大きく異なります。
急性腎不全の場合、数時間から数日のうちに腎臓の機能が低下する場合があるので、食欲不振や嘔吐、多飲多尿などの症状が見られた場合すぐにかかりつけの動物病院へ相談しましょう。ブドウなどの有害物質の誤食も急性腎不全を誘発する可能性があります。
ワンちゃんの腎不全の診断には血液検査や尿検査、画像検査など様々な検査が必要になります。治療には輸液療法を用いる事もあります。
特に慢性腎不全の治療は生涯にわたることが多く、獣医との二人三脚の治療となりますので、信頼できる動物病院や獣医師を病気になる前に見つけておくといいでしょう。
急性腎不全の場合
慢性腎不全の場合
※記事で紹介されている商品を購入すると、売上の一部がINUNAVIに還元されることがあります。メーカー等の依頼による広告にはPRを表記します。
※掲載されている情報は、INUNAVIが独自にリサーチした時点の情報を掲載しています。掲載価格に変動がある場合や、登録ミス等の理由により情報が異なる場合がありますので、最新の価格や商品の詳細等については、各ECサイト・販売店・メーカーよりご確認ください。
執筆者
2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会・比較歯科学研究会所属)