犬が卵を食べるメリット
卵は完全栄養食とも呼ばれるほど栄養価が高いため、少量で効率よくさまざまな栄養素を摂取できます。
また、食欲が落ちた犬の栄養補給にも役立てることができるでしょう。
■犬が卵を食べるメリット
・効率よく栄養を摂取できる
・嗜好性が高い
・栄養補給に役立つ
・健康維持のサポートになる
卵は犬にとって嬉しいメリットがありますが、卵を常備している家が多いように、いつでもすぐに使うことができたり、いろいろなレシピに利用できる、コストが抑えられるなど、飼い主さんにとってもメリットはたくさんあると言えます。
卵に含まれる主な栄養素
卵は、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がすべて含まれていますが、主な栄養素は以下の通りです。
■卵の主な栄養素【鶏卵 全卵 生】(※1)
カロリー:142kcal / 100g
- たんぱく質
100g中:12.2g
…体を構成する重要な栄養素。不足すると成長障害、体力や免疫機能の低下などが起こる(※2)
- 脂質
100g中:10.2g
……重要なエネルギー源。ホルモンや細胞膜、核膜の構成や脂溶性ビタミンの吸収を促すなど重要な働きを担う(※3)
- ミネラル類
…生きていく上で身体の構成・調整に欠かすことのできない栄養素。体内で合成できないことから食事などで摂り入れる必要がある(※4)
- ビタミンA
100g中:210㎍
…脂溶性ビタミン。目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがある(※5)
- ビタミンK
100g中:12㎍
…血液凝固に大きく関与。丈夫な骨づくりにも不可欠(※6)
- ビタミンB群
…水溶性ビタミン。あらゆる種類の酵素の補酵素。代謝ビタミンとも呼ばれ、生きるためのエネルギーを作るのに必須(※7)
卵はアミノ酸スコアが100と、たんぱく質を構成する必須アミノ酸のバランスがとても優れており、体内での利用効率が高く余分な老廃物となるものが少ないため、良質なたんぱく質と言えます。
また、上記のような犬の健康に役立つ栄養素がさまざま含まれているので、上手に活用することで愛犬の健康維持をサポートしてくれるでしょう。
犬が1日に食べていい卵の量
栄養価が高い卵ですが、犬に適切な栄養バランスというわけではありません。そのため、与え過ぎは肥満や栄養バランスの偏りを招くため、おやつやトッピングで与える場合は愛犬が1日に必要なカロリーの10%程度(多くても20%以内)にしましょう。
また、体質によって合う合わないもあるので、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整してください。
■犬が1日に食べていい卵の目安量(ゆで卵の場合:134kcal / 100g)
※避妊・去勢済みの成犬で算出
体重 |
1日の目安量(10%量の場合) |
Mサイズの卵(50g)の場合 |
1kg |
8g |
約1/5個 |
3kg |
19g |
約2/5個 |
5kg |
27g |
約1/2個 |
7kg |
36g |
約2/3個 |
9kg |
43g |
約3/4個 |
12kg |
53g |
約1個 |
15kg |
63g |
約1.2個 |
20kg |
79g |
約1.6個 |
25kg |
93g |
約1.8個 |
30kg |
107g |
約2個~ |
もっと正確に愛犬に与えていい量を知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
【獣医師監修】ドッグフードの正しい与え方!パッケージの給餌量はあくまで目安
犬に与えていい卵の調理方法
卵は生でも加熱した状態でも食べることができ、加熱しても栄養素量があまり変わりません。(※油を使用しない場合)
そのため、愛犬にさまざまな与え方ができます。
■犬に与えていい卵の調理方法の例
- 生卵
- ゆで卵
- 目玉焼き
- ポーチドエッグ
- スクランブルエッグ
- 玉子焼き
- オムレツ
- 玉子スープ
- 茶碗蒸し
- プリン
卵の調理方法は「生(そのまま)」「茹でる」「焼く」「炒める」「蒸す」と、バリエーションが豊富です。
愛犬の好みに合わせたり、犬が食べても大丈夫な食材を利用して簡単な卵料理を作ってあげてもいいですね。ただし、調味料などは使用しないようにしましょう。
また、卵の殻は表面についた汚れをしっかり落とし、茹でたりオーブンで空焼きするなど加熱してから細かく砕いて粉状にしたり、すり潰して粉状にすれば犬に与えても大丈夫です。殻にはカルシウムが豊富に含まれていますが、カルシウムは歯や骨の健康維持だけでなく体内でさまざまな働きをしてくれるので、少量の摂取は愛犬の健康維持に役立ってくれるでしょう。
完全栄養食の「卵」とお手軽食材で栄養満点オムレツ作り【犬の手作りごはん】
【獣医師監修】犬が食べていいもの一覧!野菜・果物・肉類など与えるメリットと注意点
犬に卵を与えるときの注意点8つ
犬の健康に役立つ栄養素が豊富に含まれている卵ですが、与えるときには注意してあげなければいけないこともあります。
ここでは、犬に卵を与えるときの注意点を見ていきましょう。
①食物アレルギーに注意する
※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りが赤くなる、目の下の脱毛、激しい痒みが出た愛犬
愛犬に初めて卵を与えるときは少量から始め、食べた後は48時間ほど様子を見てあげましょう。
卵に食物アレルギーがある場合は、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られます。
■犬の食物アレルギーの主な症状
・皮膚の赤みや痒み
・目の周りや口の周り、耳を痒がる
・脱毛する
・足先や皮膚を執拗に舐めたりかじる
・下痢や軟便
・嘔吐
食物アレルギーの症状は個体差がありますが、上記のような症状が見られた場合は食べさせるのを控え、獣医師に相談してください。
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】
②賞味期限に注意する
日本では卵の生食文化があるため、一般に流通している卵がサルモネラ菌に汚染されている可能性はほとんどありません。仮にあったとしても、一定期間内は常温でも繁殖することがないので食中毒などを起こす心配はないのですが、その一定期間を過ぎると菌が急激に増えて食中毒を起こす可能性があるため、卵には生食できる期限として「賞味期限」が表示されています。(※8)
そのため、生で卵を与える場合は、食中毒のリスクを避けるためにも賞味期限内の卵を与えるようにしましょう。
また、賞味期限が過ぎた卵は「75℃以上で1分間以上」、もしくは「65℃で5分間以上」加熱することでサルモネラ菌は死滅する(※9)ので、必ず加熱してから与えてください。
③生卵を与えるときは黄身と白身を一緒に与える
生卵の白身には「アビジン」が含まれ、長期にわたって大量に摂取するとビタミンB群の1つである「ビオチン」の吸収を阻害しますが、黄身と一緒に食べることで黄身に含まれる豊富な「ビオチン」によってアビジンの影響は少ないと言えます。
また、生卵の白身だけを継続的に大量に与え続けるということは現実的ではなく、全卵で適量を与える分には白身の影響を心配する必要はないでしょう。アビジンは加熱することで不活性化するので、心配な場合は加熱して与えてください。
④子犬やシニア犬は加熱した卵を与える
消化器官や免疫機能が整っていない子犬に生卵を与えると、食中毒や食物アレルギーの発症リスクが高まるため加熱した卵を与えましょう。
また、消化機能や免疫機能が低下するシニア犬や、病気などで免疫力が落ちている犬も食中毒のリスクが高まるので、加熱した卵を与えたほうが安心です。
⑤まるごと与えない
ゆで卵などまるごとあたえるのはもちろん、大きくカットした状態で与えるのは、犬がのどに詰まらせる可能性があり危険なので、必ず細かく刻む、薄くスライスするなど、切り方にも工夫してあげましょう。
⑥味付けはしない
卵はさまざまな調理方法がありますが、どんな調理方法であっても調味料などで味付けすることはやめましょう。
犬にとって塩分や糖分が過剰になってしまうのはもちろん、濃い味に慣れてしまうとドッグフードを食べなくなってしまう恐れもあります。
⑦加工食品は与えない
卵を使用した人間用の加工食品は、犬が口にしてはいけない食材を使用していたり、塩分や糖分が多く使用されている、脂質が多く含まれているなど、犬の体調不良や肥満を引き起こす可能性があるため与えないようにしてください。
⑧持病がある犬は獣医師に確認してから与える
卵にはたんぱく質や脂質をはじめ、さまざまな栄養素が豊富に含まれているため、持病がある犬では獣医師に確認してから与えるようにしましょう。
特に病気で栄養素の制限を指示されている場合では、必ず獣医師に確認してください。
まとめ
卵は、犬の健康に役立つさまざまな栄養素が含まれている栄養価の高い食べ物です。
だからと言って与え過ぎは肥満や栄養バランスを乱す原因となるため、適量にとどめておくことが大切です。最後に注意点をおさらいしておきましょう。
■犬に卵を与えるときの注意点まとめ
・与え過ぎない
・食物アレルギーに注意して最初は少量から与える
・生卵を与える場合は賞味期限内のものを与える
・賞味期限が過ぎた卵は必ずしっかり加熱する
・子犬やシニア犬には生卵を与えない
・のどに詰まらせないように刻んだり薄くスライスする
・卵は味付けをせず、加工食品も控える
・持病がある犬は獣医師に確認してから与える
卵はおやつやトッピングとしてだけでなく、シニア犬や食欲が落ちている犬の栄養補給にも役立ってくれる食材で、調理方法も自由自在!
きれいに汚れを落として、茹でたりオーブンで空焼きにしてから粉末状にすれば殻も食べられるという優れた食材なので、注意点に気をつけながら上手に活用してみてくださいね。
<参考文献>
※1:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※2:厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質」
※3:健康長寿ネット「三大栄養素の脂質の働きと1日の摂取量」
※4:分子生理科学研究所「身体の調整に欠かせない栄養素~ミネラル~」
※5:大塚製薬 栄養素カレッジ「ビタミンA」
※6:健康長寿ネット「ビタミンKの働きと1日の摂取量」
※7:一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所「ビタミンB群」
※8:日本卵業協会「表示とタマゴの安心」
※9:株式会社東邦微生物病研究所「卵とサルモネラについて」
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー