公開 2023.01.02 更新 2023.01.02
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【獣医執筆】犬のフィラリア予防薬はいつから飲ませる?予防期間を地域別に解説

【獣医執筆】犬のフィラリア予防薬はいつから飲ませる?予防期間を地域別に解説

フィラリア予防薬は、蚊がいるシーズン中、毎月1回投与することが必須です。

しかし、飼い主さんの中には、

「いつからいつまで飲ませたらいい?」
「大阪や、東京の具体的な投薬時期はいつだっけ?

など、毎年フィラリア予防薬の予防期間で悩まれる方も多いと思います。

本記事では、居住地域別に犬のフィラリア予防薬はいつからいつまで飲ませるべきかの具体的な目安を獣医が解説しています。

この記事を最後まで読むと、飼い主さんは、フィラリアの予防期間やフィラリア薬について理解を深めることができ、より確実に愛犬をフィラリア感染から守れるようになりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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【地域別:犬のフィラリア予防はいつから?】蚊が出始めてから1ヶ月以内に投薬を始めよう! 

犬 薬

犬のフィラリア予防期間は、地域によって蚊の出現時期に差があるため、「◯月から与え始めて、◯月まで投薬を続けてあげましょう」という日付による明確な基準はありません。

そのため、飼い主さんは混乱してしまいますが、居住地域別に具体的な目安が定められています。

ここからは、蚊の出現時期によるフィラリア予防期間の決め方地域別の予防期間の目安について詳しく解説していきます。

蚊が出始めてから1ヶ月以内〜蚊がいなくなって1ヶ月後まで予防が必要

フィラリア予防期間は、「蚊が出始めてから1ヶ月以内〜蚊がいなくなって1ヶ月後」まで予防が必要です。

例えば、5月初旬〜11月末まで蚊が出現してた場合、フィラリア予防期間は、6月初旬までには与え始めて、12月末まで与える必要があります。

飼い主さんの中には、自己判断で投薬開始を遅らせたり、投薬を終了させたりする方がいますが、フィラリア感染リスクを上昇させてしまうため、おすすめできません。

フィラリア薬は決められた予防期間の中で、毎月1回投薬することで予防効果を発揮します。

そのため、飼い主さんは、「蚊が出始めてから1ヶ月以内〜蚊がいなくなって1ヶ月後」までというフィラリア予防期間を厳守するようにしてください。

投薬期間は、お住まいの地域の気温などにも関係していますので、次の章の地域別の予防期間を参考にしてみてください。

地域別:犬のフィラリア予防期間

お住まいの地域の気温や地形などによって蚊の出現期間は変化するため、犬に必要なフィラリアの予防期間も地域によって変わってきます。

下記では、HDUという指標を元に算出した、お住まいの都道府県別にフィラリア予防期間を記載していますので、ぜひ参考にしてみてください(*1)

【HDUとは】
HDUとは、犬フィラリアを媒介する蚊の体内でフィラリア幼虫(ミクロフィラリア)が成熟するために必要な積算温度の単位です。
HDUを算出することによって、犬フィラリア症が感染する期間を推定することができます。

  住友ファーマアニマルヘルス株式会社 疾病解説シリーズ|犬フィラリア症全国犬のフィラリア感染期間の目安

地域別:犬のフィラリア予防期間 1
九州地方・沖縄

【福岡・長崎・大分・佐賀・宮崎・熊本】
▶︎5月初旬〜12月末

【鹿児島】
▶︎4月末〜1月初旬

【沖縄】
▶︎通年投与

地域別:犬のフィラリア予防期間 2
中国・四国地方

【鳥取・島根】
▶︎5月上旬〜12月中

【山口・岡山・広島・香川・徳島・愛媛・高知】
▶︎5月上旬〜12月末

地域別:犬のフィラリア予防期間 3
近畿地方

【滋賀・京都・奈良】
▶︎5月中旬〜12月中旬

【大阪・兵庫・和歌山】
▶︎5月上旬〜12月末

地域別:犬のフィラリア予防期間 4
北陸・東海地方

【新潟・富山・福井】
▶︎5月末〜12月中旬

【石川・静岡・愛知・三重・岐阜】
▶︎5月中旬〜12月末

地域別:犬のフィラリア予防期間 5
関東・甲信地方

【東京・千葉・神奈川】
▶︎5月中旬〜12月末

【茨城・栃木・群馬・埼玉・山梨】
▶︎5月中旬〜12月上旬

【長野】
▶︎5月末〜11月末

地域別:犬のフィラリア予防期間 6
東北地方

【青森・岩手】
▶︎6月下旬〜11月下旬

【宮城・秋田】
▶︎6月中旬〜11月下旬

【山形・福島】
▶︎5月下旬〜11月下旬

地域別:犬のフィラリア予防期間 7
北海道

【札幌・函館・旭川】
▶︎6月下旬〜11月中旬

【北見枝幸】
▶︎7月中旬〜11月上旬

居住地域の気温や地形、湿地、雨の多さなどによって、フィラリアの予防期間の目安は変わってきます。

上記の地域別のフィラリア予防期間の注意点としては、あくまで目安であるという点です。

以下のような生活環境や異常気象などの原因によって蚊の長期生存、異常増殖が起こることもあります。

■蚊が長期生存、異常増殖する環境原因

  • 家の周りに草むらがある
  • 河川敷を散歩する
  • 豪雨や都市部のヒートアイランド現象

飼い主さんは、こうした不測の事態も考え、お住まいの地域でのフィラリア予防を行うようにしてあげてください。

犬のフィラリア薬は、寄生したフィラリアを駆虫する駆虫薬

犬 病院

飼い主さんの中には、犬のフィラリア薬は予防薬と思っている方も多いですが、実は、フィラリア薬は投薬時点で寄生しているフィラリアを駆虫する「駆虫薬」です。

フィラリア薬は、血管に侵入する前の皮下に存在するフィラリア幼虫を駆虫できますが、フィラリア幼虫が血管に侵入してしまうと駆虫できなくなってしまいます。

フィラリア幼虫が感染してから、血管に入るまでが約2ヶ月(*2)、最短で50日と言われていますので、飼い主さんは、蚊が出始めてから1ヶ月以内にフィラリア薬の投与を開始すると安心です。

また、フィラリア薬の最終投薬のタイミングが非常に重要です。

フィラリア薬の最終投薬の後に、蚊に刺され、フィラリアに感染してしまった場合、フィラリア幼虫が駆虫されないまま体内で育ってしまうことがあります。

そのため、フィラリア薬の最終投薬は、蚊がいなくなったことを確認し、その1ヶ月後までは投薬を続けるようにしてください。

もし投薬のスタートが遅れた場合や、早めにフィラリア薬投与を終えてしまった場合、途中で飲ませ忘れてしまった場合などは、フィラリア感染のリスクが上昇してしまいますので注意しましょう。

【注意】犬のフィラリア薬を開始する時には、フィラリア検査が必要

病院

フィラリア感染犬にフィラリア薬を投与すると重大な副作用が起こることがあるため、フィラリア薬の投与を開始する場合には、必ずフィラリア検査を行いフィラリアに感染していないことを確かめてから、毎月1回のフィラリア薬を与えていくようにしましょう。

この重大な副作用は、フィラリア薬によって一気に大量のフィラリアの子虫(ミクロフィラリア)が駆虫されてしまうことにより発生します。

重大な副作用とは、以下の2つが考えられます。

■感染犬に投薬すると起こる重大な副作用2つ

  1. アナフィラキシーショック
  2. 毛細血管での塞栓症

アナフィラキシーショックは、ミクロフィラリアの死体に異物反応を起こし、意識消失、低血圧などの激しい症状が引き起こされます。

また、死亡した虫体が肺や臓器の毛細血管に詰まってしまうと臓器障害を起こすこともあります。

上記2つの症状によって、命を落とす可能性は十分にあります。

飲ませ忘れがあったり、フィラリアの予防期間を厳守できなかったりした場合には、絶対にフィラリア検査を行うようにしましょう。

【いつからいつまで投薬すべきかお悩み方へ】フィラリア薬は通年予防もおすすめ

飼い主 犬

犬のフィラリア予防は、「蚊が出始めてから1ヶ月以内〜蚊がいなくなって1ヶ月後まで」と解説してきました。

しかし、飼い主さんの中には、「冬場、フィラリア薬を飲ませないのは不安」「暖かすぎて蚊が出てきた場合、フィラリア予防をもう始めてもいい?」などの悩みを持つ人も多いです。

近年の温暖化や異常気象により、蚊の生息地や生存期間が増加傾向にあるため、飼い主さんは不安になりますよね。

そういった方には、フィラリア薬での予防をより確実に行うためにも、フィラリアの通年予防がおすすめです。

アメリカの犬のフィラリア症ガイドラインでは、フィラリアの通年予防を推奨しており(*3)、日本でも、これを受けてフィラリアの通年予防を行う病院が増えてきているのが現状です。

フィラリアの通年予防とは、以下の2つの手段で行うことが多いです。

  1. フィラリアの内服薬を1年中、毎月1回飲ませる
  2. フィラリアの注射薬を1年に1回の頻度で接種する

それでは、通年予防のメリットとデメリットについて紹介します。「フィラリアの注射薬について」は次の章で詳しく説明します。

フィラリアの通年予防のメリット

■通年予防のメリット

  • フィラリア予防がより確実に行える
  • 飲ませ忘れを防ぎやすい
  • フィラリア薬投与を「いつから開始するか」「いつまで飲ませるか」で悩まなくなる

フィラリアを通年予防するメリットとしては、フィラリア予防がより確実に行えることが大きいです。

毎月飲ませてあげることにより、予防シーズン最終投薬後のフィラリア感染や冬場の感染を防ぐことができるようになります。

また、毎月の習慣として継続できるので、フィラリア薬の飲ませ忘れを防げたり、フィラリア薬を投与すべきか否かで悩む必要がなくなったりします。

フィラリアの通年予防のデメリット

通年投与のデメリット

  • 通年予防分のフィラリア薬購入のコストがかかる

通年予防のデメリットとしては、基本的には、予防しない冬季のフィラリア薬の購入コストがかかってしまうことです。

東京在住の体重5kgの犬に5月~12月の期間で予防する場合と通年予防する場合でかかるコストを比較してみましょう。

フィラリア薬1個の値段は、おやつタイプで880円、ノミ・マダニ・寄生虫・フィラリアの全てを駆虫できるオールインワンタイプで2750円で計算してみます。(*4)

フィラリア薬の
種類と単価
5月〜12月の期間
(8ヶ月)で予防での価格
通年予防(12ヶ月)差額
おやつタイプ:880円880×8=7040円880×12=10560円+3520円
オールインワン
タイプ:2750円
2750×8=22000円2750×12=33000円+11000円

通年予防にすると、おやつタイプの場合およそ3500円、オールインワンタイプの場合11000円も多くコストがかかってしまうことが分かります。今回は5kgの犬を例に表にしてみましたが、体重が大きくなるにつれてかかるコストもさらに増加していきます。

飼い主さんは、購入コストと愛犬の暮らす生活環境、投薬にかかる手間を考えた上で、フィラリアをより確実に予防するために通年予防を行なってあげるようにしましょう。

フィラリア注射薬の副作用について

前章では、通年予防ができる方法としてフィラリアの注射薬があることを説明しました。

フィラリアの注射薬は、動物病院で1年に1回、注射をすることで体内に侵入したフィラリアの幼虫を駆除し続ける予防法で、効果は約12ヶ月間持続します。

注射薬の相場価格は5kgの犬で約7,500円(*5)おやつタイプのフィラリア薬とあまり変わらない値段設定であり、愛犬にフィラリア内服薬を飲ませる手間なく通年予防を行えるといった点がメリットです。

  • フィラリアの内服薬を飲めない犬
  • 内服薬をよく吐き戻す・下痢してしまう犬
  • 薬の飲ませ忘れや投薬が不安な方
  • フィラリア薬の投薬に手間を感じる方

などに該当する場合、フィラリア注射薬を利用している飼い主さんが多いです。

しかしフィラリア注射薬は、まだまだフィラリア予防の主流ではなく、副作用の発生確率や他の薬との飲み合わせなどわかっていない部分も多いため、接種をおすすめしていない動物病院も中にはあります。

そのため、飼い主さんが安全性を重視して通年予防をする場合には、よりリスクの少ない内服薬がおすすめです。

犬のフィラリア薬でよくあるQ&A

Q&A

ここからは、犬のフィラリア薬についてよくある質問についてお答えしていきます。

フィラリア薬の投薬やフィラリア症について疑問をお持ちの飼い主さんはぜひ参考にしてみてください。

フィラリア薬の飲み忘れでよくあるQ&A

    室内飼育だから予防しなくて大丈夫?

    A.室内で飼育している犬でも、必ず予防してあげるようにしましょう。

    フィラリア感染した犬のうち、室内飼育犬におけるフィラリア感染の確率は3.1%であり、室外飼育犬におけるフィラリア感染の確率は、96.8%だったと報告されています(*6)

    室外飼育と室内飼育の犬を比べると圧倒的に室外飼育犬のフィラリア感染率が高いですが、室内飼育犬でも3.1%は感染してしまっているので、絶対に安心というわけではありません。

    飼育環境においても、お家への蚊の侵入を完璧に防げるというわけではなく、蚊が人間の服や持ち物に紛れている場合や、網戸のちょっとした隙間から入ってくる場合があります。

    室内・室外に関わらずフィラリア予防は行うようにしてあげましょう。

    予防をしないと、フィラリアに感染する確率はどれくらい?

    犬 病気

    A.予防を行なっていない犬のフィラリア感染確率は、予防せず一年間経過した場合38%、2年目では89%、3年目では92%であると報告されています(*7)

    予防しない年数が増えれば増えるほど、フィラリアの感染確率も上昇していることが分かります。

    また、神奈川県や東京都などの首都圏において、予防を行なっていない保護犬のフィラリア感染率を調べたデータでは感染率は23%前後と報告されています(*8)

    この結果からも、フィラリア予防を行なっていないと、4頭に1頭はフィラリアに感染してしまう可能性が高いということが分かります。

    フィラリア予防は、愛犬の身を守るために必ず行うべきことですので、しっかりと予防を行うようにしましょう。

    フィラリア薬の投与を嫌がる場合はどうしたらいい?

    動物病院を怖がる犬

    A.粉薬、錠剤、お肉タイプなど薬の種類を変えて挑戦してみて、それでも難しい場合は、注射薬スポットタイプでフィラリア予防をしてあげるようにしましょう。

    フィラリア薬の内服を嫌がる犬もいます。

    その場合、フィラリア薬の内服には、お肉タイプ、錠剤、粉薬などの薬がありますので、いろんな種類の薬に挑戦して合うものを見つけてあげましょう。

    自分から食べなくても、粉薬を水で溶かしてお口の中に入れれば飲み込んでくれる子もいます。

    どうしても難しい場合や、あまりストレスをかけたくない場合は、注射薬やスポットタイプの薬で予防してあげるのも良いでしょう。

    まとめ

    犬 まとめ

    本記事では、犬のフィラリアの予防はいつからいつまでなのかという予防期間について解説してきました。

    犬のフィラリア予防期間は、「蚊が出始めてから1ヶ月以内〜蚊がいなくなって1ヶ月後まで」です。

    それぞれのお住まいの居住地の気温や地形などで、いつ始めるべきかいつまで投与すべきかの目安もありますので、ぜひ参考にしてみてください。

    また、フィラリア薬の通年予防は確実なフィラリア予防を行うためにおすすめです。

    飼い主さんは、本記事で解説した犬のフィラリア予防期間の目安や通年予防のメリットなどを参考に、愛犬にあった方法でフィラリア予防を確実に行っていきましょう。

    参考文献
    (*1)全国犬のフィラリア感染期間の目安
    (*2)フィラリア症の予防について
    (*3)犬における犬糸状虫感染症の予防・診断・治療最新ガイドライン(2018年改訂)
    (*4)ペット予防医療センター|料金表
    (*5)セラピー動物病院|料金表
    (*6)北盛岡地区における犬糸状虫感染率の現状
    (*7)フィラリア症とはどんな病気?|ルナ動物病院
    (*8)犬糸状虫の感染源

     

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    獣医師 入江 悠

    執筆者

    獣医師
    入江 悠
    獣医師国家資格

    宮崎大学農学部獣医学科卒業。関西の動物病院に勤務。大学では、循環器内科を専攻し現在の勤務先でも循環器を得意分野として診察を行う。実家では、愛犬である柴犬「たま」を飼っている。柴犬好きな獣医師です。獣医師として、飼い主さんの悩みに寄り添い、信頼できる正確な情報を多くの人にお届けできたらと思いライター活動を行なってます。保有資格:獣医師国家資格

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