犬のインフルエンザは人からうつる?症状や対策・予防法について獣医が解説
病気
2023.02.01
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犬のインフルエンザは人からうつる?症状や対策・予防法について獣医が解説

犬のインフルエンザは日本ではあまり馴染みが無い病気ですが、2022年12月ごろから2023年1月現在に至るまで、アメリカでは犬のインフルエンザが流行しています。

飼い主さんは、そうしたニュースを聞くと

「犬にもインフルエンザってあるの?」
「人のインフルエンザは犬にもうつる?」
「何かできる対策はある?」

などと疑問に感じ、不安になりますよね。

この記事では、犬インフルエンザの症状や治療法などをこれまでの感染事例を含め獣医師が解説していきます。

飼い主さんは、本記事を最後まで読んで、犬インフルエンザについてしっかり理解し、愛犬が感染しないような対策・予防法を行ってあげるようにしましょう。

獣医師 入江 悠

執筆者

獣医師
入江 悠
獣医師国家資格

宮崎大学農学部獣医学科卒業。関西の動物病院に勤務。大学では、循環器内科を専攻し現在の勤務先でも循環器を得意分野として診察を行う。実家では、愛犬である柴犬「たま」を飼っている。柴犬好きな獣医師です。獣医師として、飼い主さんの悩みに寄り添い、信頼できる正確な情報を多くの人にお届けできたらと思いライター活動を行なってます。保有資格:獣医師国家資格

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犬のインフルエンザについて

犬 病院

犬も、人間や他の動物と同じようにインフルエンザにかかります。

犬のインフルエンザは、獣医療において、まだメジャーな病気ではないです。しかし、2004年のアメリカでの発見(*1)から、今日まで多くの感染が報告されています。

近年でも2022年の12月、アメリカにおいて犬のインフルエンザが流行しており、1000頭以上の犬が感染しています(*2)

この原因としては、新型コロナウイルスの規制緩和により、人間が旅行や移動を頻繁に行うようになったことが考えられますが、明確には分かっていません。

飼い主さんが旅行時に愛犬をペットホテルに預けることによって、犬インフルエンザがペットホテル内で集団感染を引き起こしていることも考えられます。

日本でも新型コロナウイルスによる規制が緩みつつある状況ですので、今後犬インフルエンザの流行に注意する必要があるでしょう。

人のインフルエンザは犬にもうつる

人 マスク

人のインフルエンザウイルスは、確率は低いですが、犬にもうつると報告されています。

しかし、今のところ犬の集団発生例や人からうつったインフルエンザが犬の中で蔓延したという報告はありません。

一般的に犬に人のインフルエンザが感染しても病原性は低いとされていますが、インフルエンザウイルスに感染した犬が肺炎まで起こしてしまったという事例もあります(*3)

また、H1N1pdmと呼ばれる 新型インフルエンザウイルスの型の犬への感染事例もあり、日本でも感染が確認されています(*3)

■H1N1pdm(パンデミック)ウイルスの犬への感染事例

  • 中国とアメリカでH1N1pdmウイルスが人から犬に感染(肺炎までに進行したい)
  • イタリアでも、H1N1pdmウイルスの犬への感染が確認されている(感染のみで病原性無し)
  • 2009年、日本においても、H1N1pdmウイルスの犬への感染を確認している(感染のみで病原性無し)

このように、人のインフルエンザは犬にも感染していく可能性があります。

場合によっては、肺炎まで発症し重症化することもあるので、もし飼い主さんがインフルエンザに感染した場合は、念の為、なるべく愛犬に触れない方が良いでしょう。

インフルエンザの犬から人への感染事例はない

犬から人への感染事例は未だ報告されていません。

そのため、犬からインフルエンザウイルスが感染してくることを過剰に心配しなくても大丈夫です。しかし、突然変異により、病原性や感染力が高まり、人間にも犬インフルエンザが感染してしまう可能性もあります。

飼い主さんは、犬インフルエンザに対してしっかりとした予防と対策を行っておく必要があるでしょう。

犬インフルエンザの症状

犬 病院

犬インフルエンザに感染した犬には2〜4日の潜伏期間を経て呼吸器症状をはじめとするさまざまな症状がみられるようになります。

犬インフルエンザの症状としては、以下のようなものが考えられます。

犬インフルエンザの症状
・咳
・鼻汁
・くしゃみ
・発熱
・元気消失
・食欲不振

感染犬の多くは、軽症であることが多く、合併症がなければ2〜3週間以内に回復すると言われています。

しかし、細菌の二次感染や肺炎を伴い重症化した場合には、40度以上の発熱呼吸困難が認められるようになり命を落とすこともあるので注意が必要となります。

このような重症例になった場合の致死率は5~8%と言われていますが、2004年に起きたアメリカでの犬インフルエンザでの流行では、感染犬の死亡率は30%以上(*3)でした。

これには、犬種や感染するウイルスの型によっても重症度に差があるかもしれないと考えられていますがはっきりとした原因はわかっていません。

インフルエンザウイルスの種類と犬への感染事例

インフルエンザウイルスには、さまざまな種類があり、動物によっても流行している型が異なってきます。

以下がインフルエンザウイルスの犬への感染事例の代表例をまとめた表になります(*3)

インフルエンザ
の型
感染源場所流行
H3N82004米国
2007豪州
H3N2鳥・犬2007韓国
鳥・犬2006中国
2012タイ
2015米国
2022米国
H1N1pdm2009中国
2009米国
高病原性
H5N1
2004タイ

ここからは、犬が感染したインフルエンザの型と感染事例についてそれぞれ詳しくみていきます。

H3N8型(馬から犬へ)

2004年にアメリカ・フロリダ州のドッグレースに参加した犬22頭で咳などの呼吸器症状が見られ、近くで飼育されていた馬からH3N8型インフルエンザウイルスが感染した可能性が極めて高いと報告されました。

その後もインフルエンザウイルスはアメリカ本土に拡大して流行を引き起こしています。

また、2007年にオーストラリアでも同様にH3N8型ウイルスの馬から犬への感染も確認されています。

日本では、感染報告はありませんが、同じアジア圏である中国で感染報告(*4)があったことから、いつ日本に入ってきてもおかしくない状況です。

H3N2型(鳥から犬へ)

2007年以降、韓国、中国やタイなどのアジア圏内に鳥インフルエンザの型であるH3N2型のインフルエンザウイルスの犬への感染を認められていたと報告されています。

これは、犬がウイルスを混入した鳥の加工餌を食べたことにより感染したと考えられています。

また2015年でも、アメリカのシカゴで1000頭以上に呼吸器症状が認められ、H3N2型のインフルエンザウイルスの感染が確認されました。

この事例では、アジアから輸入された犬が感染源であったと考えられており、犬と犬の間でも感染が認められています。

H5N1型(高病原性鳥インフルエンザが犬へ感染)

2004年にタイで高病原性の鳥インフルエンザであるH5N1ウイルスに感染した犬が高熱、呼吸困難、昏睡状態に陥って死亡したと報告されています。

その後も、この型を持つ鳥の死体を食べた犬や猫が死亡する事例(*5)が生じています。

高病原性鳥インフルエンザは、犬だけでなく人も注意しなければいけません。死亡している鳥などをむやみに触らないようにして、愛犬にも近づけないようにしましょう。

ここまで代表的なウイルスの型を挙げましたが、他にもさまざまな型が存在し、犬への感染源になっています。

犬が新たな感染源となる可能性もあるので、飼い主さんは、犬インフルエンザを流行させないように対策、予防を行う必要があります。

犬インフルエンザの治療法

犬インフルエンザの治療法は、対症療法と栄養管理です。

人間のように、インフルエンザに効く抗ウイルス薬は犬では使えません。

そのため、対症療法と栄養管理で愛犬の免疫をしっかりと上げてウイルスに対抗していくことが大切です。

また、肺炎や気管支炎により重症化する場合もありますので、症状に合わせて、細菌の二次感染を予防するために抗生剤を投与します。

症状が治らず、重症化する場合には、入院し点滴、酸素吸入などを行う必要性もあリます。

治療費は、犬の状態によって様々ですが、以下のように考えられます。

■犬インフルエンザの治療費例(*)

  • 軽い呼吸器症状の場合
     ・・1万円程度
  • 肺炎や高熱など重症例
    ・・入院で1日あたり1〜2万円程度
     

(*犬の状態により治療費は上下します)
(*保険適用前の治療費。咳など呼吸器症状があれば保険適用です)

治療としては、点滴や抗生剤だけならば1万円程度で治りますが、肺炎や高熱がある場合は、入院になります。

入院すると1日あたり1~2万円かかり重症度により5日間の入院も必要になることが多いので、10万円程度の治療費はかかるでしょう。

かなり高額な治療費になってしまいますが、咳や発熱などの症状があれば保険適用になりますので、上記よりも治療費を抑えることが可能です。

犬インフルエンザの感染経路と対策・予防法

犬インフルエンザは現在日本では、流行していませんが、もし日本に入ってきた場合に流行させないためには、飼い主さんの正しい理解と対処が必要です。

正確な対処ができるように、インフルエンザの感染経路と対策・予防法を解説していきます。

犬インフルエンザの感染経路

犬インフルエンザの感染経路には主に飛沫感染と接触感染の2つの感染経路が考えられます。

飛沫感染は、感染している犬から排出される咳やくしゃみなどを吸い込むことにより起こる感染です。人間でも2m範囲にいる人にはインフルエンザウイルスは飛沫感染します。

飼い主さんは、咳やくしゃみなどをしている犬が近くにいる場合には注意してあげてください。

接触感染は、感染している犬の唾液や鼻水に接触し、病原体が目や口の粘膜に入ることで感染していきます。

特に犬は、自分の体や床などを舐めたりすることが多いでしょう。そのため、病原体の接触感染が非常に起こりやすいです。

インフルエンザウイルスは、非常に感染力が強いため、もし同居犬がいた場合には感染が広がっていきます。飼い主さんは、インフルエンザウイルスを蔓延させないための対策が必要です。

次の章では、インフルエンザウイルスに対しての予防法と対策についてお話ししていきます。

犬インフルエンザの対策・予防法4選

愛犬が犬インフルエンザにかからないようにするための対策や同居犬への予防策としては以下のようなものが考えられます。

■犬インフルエンザに対する対策・予防法4選

  1. 消毒
  2. 咳をしている犬とは隔離
  3. 異変があったら早めの受診
  4. ワクチン接種

それぞれについて詳しく解説していきます。

①消毒

インフルエンザウイルスは、接触感染でも感染するウイルスですので、身の回りのいつも使っている食器や服などはこまめに消毒してあげると良いでしょう。

インフルエンザウイルスは、アルコール消毒薬または、ハイターなどの塩素系消毒薬で消毒することができます。

普段使っているものは、こまめにアルコール消毒してあげるようにしましょう。また、他の犬を触った後も、しっかり手洗いとアルコール消毒をしてから愛犬を触ってあげた方が良いです。

もし食器や服などをちゃんと消毒できているかどうか不安な方は、ハイターなどの塩素系消毒薬に30分ほどつけおきしてあげると安心です。

消毒する際に、自分の手をハイターで消毒したり、アルコールを犬の体に振りかけたりすることは危険ですので控えてください。

②咳をしている犬とは隔離

咳をしている犬が近くにいたり、同居したりしている場合には、隔離しましょう。

インフルエンザウイルスに関わらず、呼吸器症状を引き起こすウイルスは飛沫感染で感染していきます。同居犬が咳をしている場合は、しっかりと隔離して近づけないようにしてください。

また、接触感染にも注意が必要です。飼い主さんは、飲み水や食器を共用せず、こまめな消毒を行うように心がけましょう。

③異変があったら早めに受診

愛犬に異変があったら、動物病院に連れていきましょう。

特に犬インフルエンザの症状である咳や発熱がある場合は注意が必要です。対処が遅れて重症化し肺炎や気管支炎を起こすと命を落とす可能性もあります。

早めに対処すると軽症ですむ場合もありますので、飼い主さんは日頃から愛犬の様子を観察して愛犬の異変があれば動物病院に連れて行くことを心がけてください。

④混合ワクチン接種

アメリカや韓国では、犬インフルエンザに対するワクチンがあり、流行状況などに合わせて接種が行われていますが、日本には犬インフルエンザに対するワクチンはありません。

しかし、もし犬インフルエンザや呼吸器の感染症が起こった時の二次感染を防ぐために混合ワクチンは接種しておきましょう。

特に、混合ワクチンで予防できる犬ジステンパー犬パラインフルエンザは呼吸器症状を引き起こす病気ですので、犬インフルエンザと混合感染した場合には、重症化する可能性が考えられます。

飼い主さんは、混合感染による重症化を防ぐためにも混合ワクチンを接種しておくようにしましょう。 

まとめ

犬 病院3

本記事では、犬インフルエンザについて症状や予防法、感染事例についてお話ししてきました。

犬インフルエンザは、まだ日本での流行が起こったことのない病気ですが、アメリカなどでは、流行が起こり命を落とす犬も報告されています。

もし日本に犬インフルエンザが入ってきたとしても、飼い主さんが予防や対策をしっかり行い、異変があったら早急に動物病院を受診することで、重症化や国内での流行を防ぐことができます。

飼い主さんは、しっかりと今後の犬インフルエンザの動向に注目し、愛犬の異変にすぐに気づけるように日々の体調管理を行なってあげるようにしましょう。

参考文献
(*1)犬及び猫のインフルエンザ
(*2)米国で犬インフルエンザが流行、ペットの親たちが取るべき対策は?
(*3)犬インフルエンザ
(*4)Seroepidemiological Evidence of Subtype H3N8 Influenza Virus Infection among Pet Dogs in China
(*5)Fatal Avian Influenza A H5N1 in a Dog

 

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