寄生虫と聞くと、うちのワンちゃんは家の中で飼ってるし、大丈夫だろうと思ってはいませんか?
家の中でも、まだ小さい子犬でも寄生虫は、意外と身近に見られます。
時に命にも関わることがある寄生虫の症状と治療法について勉強して、寄生虫の予防を徹底しましょう。
今回は、フィラリア(犬糸状虫)症、消化管内寄生虫、ノミとマダニについて詳しく解説していきます。
寄生虫と聞くと、うちのワンちゃんは家の中で飼ってるし、大丈夫だろうと思ってはいませんか?
家の中でも、まだ小さい子犬でも寄生虫は、意外と身近に見られます。
時に命にも関わることがある寄生虫の症状と治療法について勉強して、寄生虫の予防を徹底しましょう。
今回は、フィラリア(犬糸状虫)症、消化管内寄生虫、ノミとマダニについて詳しく解説していきます。
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現代のワンちゃんは、一昔前と比べて多くの子が家の中で暮らし、ドックフードや手作り食などを食べるようになり、かなり衛生的な環境にいます。
しかし、周囲の環境には未だ多くの寄生虫がおり、時にワンちゃんに感染して問題となってしまいます。
寄生虫は、身体の外に寄生する外部寄生虫と身体の中に寄生する内部寄生虫に分けられ、多くの種類がいます。
今回は、その中でもワンちゃんに多く見られる寄生虫について紹介します。
フィラリアは、別名犬糸状虫といい、ワンちゃんの心臓に寄生する寄生虫です。以前は、多くのワンちゃんがこの虫に寄生されてフィラリア症となって亡くなってしまっていました。
今では、多くの飼い主さんが予防薬の投与を行ってくれており、結果として寄生される可能性はかなり低くなった寄生虫です。
しかし、予防が徹底されていない、特に都市部から離れたところでは今でも確認されるため、要注意な寄生虫です。
この寄生虫の恐ろしいところは血管の中に寄生することです。皮膚や耳の中、腸管の中などは外部と接しているため、寄生虫を退治するとその死骸は外へと出されます。
しかし、血管の中の寄生虫は死亡すると血管を流れてどこかの部位の血管を詰まらせることになります。
そのため、感染してしまった段階で治療することにもリスクが伴うため、まず感染させないことが大切になります。
フィラリアの感染は、蚊によって引き起こされます。フィラリアに感染したワンちゃんの血を蚊が吸う時に一緒にフィラリアの子虫(ミクロフィラリア)が蚊の体内に入ります。
そして、次に蚊の体内で成長したミクロフィラリアは、蚊が別のワンちゃんを刺すと同時にそのワンちゃんの体内に入ってしまいます。
ワンちゃんの体内に入ったフィラリアは、半年程度かけて成虫になり、心臓などに寄生して、オスとメスが出会うとフィラリアの子供を増やしていきます。また、時にフィラリアは人や猫の体内にも侵入することがあり、注意が必要です。
ワンちゃんがフィラリアに感染し、その親虫が心臓に大量に寄生してしまうと下記のような症状を示します。
などの症状が見られ、死亡してしまうこともあります。
フィラリアの診断は、一般的にはミクロフィラリアの血液からの検出と成虫の抗原検査、そして、心臓の超音波検査等が行われます。
ミクロフィラリアの血液からの検出は、まずワンちゃんから血液を少量採取し、直接顕微鏡を用いて確認したり、細いガラスの管に血液を入れて遠心分離機にかけてその上澄みを顕微鏡で確認したりします。
成虫の抗原検査とは、多くの場合特殊な検査キットを用いて行います。
ワンちゃんから採血を行い、その検査キットに垂らすことで短い時間でフィラリアの成虫の確認を行うことができます。
超音波検査は、直接心臓にいるフィラリアの成虫を確認し、その数などを大まかに推測するのに用います。
フィラリア症の治療法は、いくつかありそのワンちゃんの状態や寄生しているフィラリアの成虫の数によって検討します。
虫の数が少なければ、ショックなどに注意しながら、飲み薬で徐々に駆虫を行う方法を用います。また、虫の数が多い場合は、麻酔をかけて特殊な器具をもちいて直接心臓から虫を取り出す方法などを用います。
フィラリア症の治療費は、成虫の数などによってどの治療法を用いるかによって異なります。
飲み薬による治療であれば月当たり数千円からで検査が陰性になるまで長いと数年かかる場合もあります。
また外科による摘出は、私自身は経験がなく、行っている二次施設などに問い合わせていただければと思います。
フィラリアの予防は、錠剤タイプ、おやつタイプ、背中に垂らすタイプ、注射タイプなどがあります。
注射タイプを除いて多くの場合は、月に一回の駆虫を行います。駆虫の期間は地域にもよりますが5~12月に行います。(プロハートという注射タイプのものは、一回で一年間の予防が可能です)フィラリアの予防薬は、予防薬と言いながら駆虫薬です。
つまり、その効果はフィラリアの感染を防ぐのではなく、体内に入ったミクロフィラリアを殺す薬です。
もし感染があった場合、駆虫を行うと死んだ虫が血管に詰まってしまい最悪死亡してしまう可能性もあるため、投薬の前には検査を行う必要があります。
消化管内寄生虫とは、胃や腸管に寄生する寄生虫の総称で、回虫などの線虫類やコクシジウムなどの原虫類がいます。
回虫などの線虫は、白っぽい糸状の生き物で成虫は肉眼で確認できるサイズです。コクシジウムなどの原虫は、極めて小さい寄生虫で肉眼では確認できず、顕微鏡によって観察されます。これらは、それぞれ様々な方法で消化管に侵入し、そこで繁殖します。
多くの場合、家に迎えられるワンちゃんでは、それらの寄生虫はペットショップやブリーダーなどで周囲の環境や母犬から感染してしまいます。
回虫の感染経路は、主に感染したワンちゃんから出た大便の中に含まれる卵が口から入ってしまい、感染が成立します。他にも母犬のお腹にいるときや出産後の乳汁から感染することもあります。
そして、卵は腸内で孵化し、体内をめぐり、成熟した成虫は腸管でまた次の代の卵を産みます。時に回虫は、人にも感染する人獣共通感染症のため注意が必要です。
コクシジウムは、オーシストというコクシジウムの卵に当たるものが大便から排出されて、それを接種したワンちゃんの腸管内に寄生して、発育し、再びオーシストを排出します。
消化管内寄生虫の症状としては
などです。感染していても症状が出ない子がいることに注意が必要です。
そのような子の場合でも、便の中には寄生虫がおり、卵やオーシストを排出しているため気づくと他の子に移してしまっている場合があります。
消化管内寄生虫の診断でもっとも大切なことが糞便検査です。糞便検査中に虫卵やオーシストを確認することができれば、感染している証拠となります。
しかし、糞便検査をするうえで、私がご家族によく注意してお伝えすることとして、糞便検査は、一度の検査ではわからないことが多いという点です。
というのも、糞便検査で用いる便は便全体のごく一部であり、また、寄生虫は常に卵やオーシストを排出し続けているわけではないということです。
そのため、何回か検査を行うことで、診断価値を高めることができる場合があります。
消化管内寄生虫の治療は、それぞれに合った駆虫薬の投与をすることです。
効果のある薬剤を投与したのち、寄生したものにもよりますが2~3週間程度でもう一度便を検査する必要があります。
それは、時に効果が不十分であったり、寄生虫の発育段階の中で薬が効きづらいときがあったりするためしっかり駆虫されたか確認します。
消化管内寄生虫の治療は、診断から投薬までで多くの場合数千円程度でかかるでしょう。
また、時に子犬で下痢がひどく状態が悪くなってしまった場合は、点滴などの補助的な治療が必要になる場合は追加で治療が必要な場合もあります。
多くの場合、これらの寄生虫感染は子犬が感染していることが多いです。そのため、ワンちゃんを飼い始めたら特に症状がなくても一度動物病院で検査する必要があるでしょう。
また、不特定多数のワンちゃんが集まる場には、その環境中に卵が落ちている場合もあります。特に回虫などの卵は、ワンちゃんの体内でなくとも長期的に生きることができるため注意が必要です。
また、ノミダニ予防の駆虫薬の中には、回虫などの線虫を排除するものがあるため予防としてノミダニ予防とともに行っておくといいでしょう。
ノミは、屋外だけでなく、屋内にも多くいる寄生虫で、ワンちゃんなどの哺乳類の血を吸って成長します。ノミには、イヌノミとネコノミがいますが犬につくノミのほとんどがネコノミです。
ノミは、発育しやすい温度があり、だいたい温度20~30度、湿度70%以下と言われています。そのため、日本ですと夏~秋に増えやすく、そのような発育しやすい環境ですと約21日間程度で卵が孵り、卵が産める親が育ちます。一匹のメスノミが一回で約20~50個の卵を産むため、放っておくとあっという間に大量増えてしまいます。
ダニは、多くの種類がおり、ワンちゃんで問題となるのはマダニやニキビダニ、疥癬、ミミヒゼンダニなどがいます。それぞれ住む場所や生活サイクルが異なりますがどれも皮膚に寄生し、痒みを起こします。
中でもマダニは、ノミと同様ワンちゃんの生活環境に多く潜伏しており、ワンちゃんの血を吸って、脱皮を繰り返し繫殖します。
ノミに噛まれ吸血されるとその部位に赤みや腫れが起こり強い痒みを起こします。また、ノミに噛まれるとノミアレルギーを起こしてしまう場合もあります。
ノミアレルギーは、ノミに噛まれることによってその唾液に対してアレルギーが生じてしまいます。この場合、痒みが出る箇所は、その部位だけでなく、広い範囲に生じます。
マダニも同様に吸血された部位に強い痒みを起こします。しかし、それだけではなく多くの数のマダニが寄生した場合、貧血を起こしてしまうほど吸血される場合もあります。
また、マダニの恐ろしいところは、マダニが吸血する際に他の病原体を媒介することがある点です。そのいくつかの病気は人にも感染することがあるため注意しなければいけません。
ノミの診断を行うには、実際にノミがワンちゃんについているかを調べることが確実です。しかし、ノミは、小さく素早くかつワンちゃんの毛の間にとても上手に隠れます。そのため、ノミがいたとしても見つけられない場合が多いです。
そこで、ノミ取り櫛という先が細かく分かれた櫛を用いて、全身をくまなくブラッシングして、集めた毛を白い紙の上に乗せてから探しましょう。もしノミそのものが見つからなくても紙の上に小さくて水に溶ける黒い粒があれば、それはノミの糞です。ノミの糞があればそこにノミがいたもしくはいる可能性が高まります。
また、ノミアレルギーの診断は、その痒みがおこる身体の部位がヒントになります。ノミアレルギーが起こりやすい箇所としては、腰や後ろ足の周辺に生じることが多いです。
そして、痒みのおこる箇所は、赤くなり、毛が抜け、黒っぽくなったりしていきます。
ノミアレルギーは、ノミが寄生する数には関係しないため、少数のノミに噛まれただけでも起こり、実際にノミが寄生していることが確認できないことも多いので、疑われる場合は予防的にノミダニの駆虫薬を使うことがあります。駆虫薬を使い症状が改善され、再発しなければノミアレルギーだった可能性があります。
ダニは、幼ダニ、若ダニ、成ダニと脱皮を繰り返し成長していきます。春から夏の時期には、成ダニが多く、秋から冬は、幼ダニ若ダニが多くなります。成ダニの大きさは、3~8mm程度ですが吸血すると1㎝以上となり、肉眼で容易に確認できるようになります。そのため、この時期のダニは、ワンちゃんの身体についていれば確認しやすいです。しかし、幼ダニと若ダニは、小さくて毛などに隠れていると肉眼での確認が難しい場合もあります。
ノミの治療は、駆虫薬の投与とワンちゃんの生活空間の清掃することです。ノミの駆虫薬には、現在スポットタイプで月に一回背中につけるものがよく使われていますが、他にもおやつタイプのものや一回投与で長期効果のあるものがあります。
どれも効果はそれほど変わりませんので、ワンちゃんの状態やご家族が投薬しやすいものを考慮して選びましょう。
また、ノミがワンちゃんにいた場合は、その生活環境にも多くのノミがいると考え、毛などをよく除去し、部屋に用いられる殺虫剤などを散布して環境中のノミも駆虫しましょう。
ノミのアレルギーを併発しており、痒みが強くある場合は、病院で痒み止めなどの内服薬や外用薬にて治療を受けるようにしましょう。
マダニの治療は、ノミと同様に駆虫薬と生活空間の清掃が大切です。また、ダニは、ワンちゃんに噛みついている状態で見つかることが多くその場合は、慎重にダニをワンちゃんから取り除かなければいけません。
不用意に噛みついているダニを引っ張ってしまうとダニの顎の部分が残ってしまい、痒みが続いたり感染が起きたりしてしまう場合があります。
ノミの駆虫薬は、同時にダニの駆虫もできるので、ついているダニの駆除をしたら再び感染しないようにしっかりと予防してあげましょう。
ノミとマダニの治療費は、駆虫薬のみですむ場合は、選択する薬の種類やワンちゃんの大きさにもよりますが一回数千円以内に収まるでしょう。しかし、できれば、その後も予防的に駆虫を行うことがお勧めです。
一度感染したということは、いくら室内を綺麗にしても、室内以外のその子の散歩コースなどの生活環境には、ノミやマダニがいる可能性が高いためです。
ノミ、マダニの予防は、治療に用いられる駆虫薬の定期的な投与が最も効果的です。スポットタイプや飲むタイプのものを投与すると皮膚全体にノミマダニに対する駆除成分が行きわたり、吸血しようと噛みついたノミやダニを駆虫できます。ワンちゃんに合ったものを選び、定期的に行いましょう。
ノミは夏から秋の気温、湿度で増えやすいですが、現在では空調によって一年を通して室内が適度な温度に保たれているため、生活環境には常にいると考え、投与はできる限り一年を通して行うことをお勧めいたします。
マダニは、主に屋外の草木でワンちゃんが通るのを待っており、その草木にワンちゃんが触れる際に移って寄生します。そのため、お散歩の際はなるべく、ワンちゃんを草木の茂みの中に入らせないように注意することが予防となります。
ここ数年でワンちゃんを取り巻く環境は以前と比べかなり改善され、それとともに寄生虫の感染数も主に都市部では減少傾向のようです。
しかし、今でも予防が不十分であったり、若い子犬の間では存在しており、注意が必要です。寄生虫は、時に人にも害を及ぼすものもあるので、ワンちゃんを飼われているご家族は、よく気を付けていかなければいけません。
※記事で紹介されている商品を購入すると、売上の一部がINUNAVIに還元されることがあります。メーカー等の依頼による広告にはPRを表記します。
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執筆者
2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会・比較歯科学研究会所属)