公開 2024.05.10 更新 2024.05.11
【獣医師監修】犬はイカを食べられる?生はダメ!食べてしまったときの症状や対処法

【獣医師監修】犬はイカを食べられる?生はダメ!食べてしまったときの症状や対処法

ヤリイカやスルメイカ(真イカ)、剣先イカや紋甲イカ(カミナリイカ)など、さまざまな種類があるイカですが、どのイカであっても生のイカはわんちゃんに与えないほうがいいでしょう。

今回は、獣医師でペット食育上級指導士の藤井ちひろ先生監修のもと、犬に生のイカを与えるリスクや食べてしまったときの症状や対処法について解説します。

加熱したイカの与え方についてもご紹介しているので、食べさせる前の参考にしてください。

獣医師 藤井ちひろ

監修者

獣医師
藤井ちひろ
獣医師国家資格 / 日本ペット栄養士 / ペットフード販売士 / ペット食育上級指導士

北海道帯広畜産大学畜産学部獣医学科卒業。首都圏の中堅動物病院、大学病院を経て「健康寿命を延ばしてめざせ20歳!」「治らない病気に最期まで向きあう」動物病院、ローズローズアニマルクリニック院長。 ペットの食と栄養のお悩みに一生応えるための食育セミナーやシニアペットセミナーを定期的に開催中。(所属学会:ペット食育協会獣医麻酔外科学会獣医神経病学会など)

犬はイカを食べても大丈夫?生のイカはダメ!加熱したものも少量にとどめて

わんちゃんは少量であれば加熱したイカを食べても大丈夫ですが、生のイカは与えないようにしましょう。

生のイカには「チアミナーゼ」というビタミンB1(チアミン)を分解してしまう酵素が含まれており、多量に摂取すると体内のビタミンB1が欠乏する恐れがあります(※1)

わんちゃんは体内でビタミンB1を作ることができず、食事などで摂取しても毎日尿と一緒に排出されてしまうので、生のイカは与えるべきではないとされています。

どれくらいの量を摂取したらビタミンB1欠乏症になるかは個体差があるため明確に示すことはできませんが、生のイカには筋肉(身)の部分であっても寄生虫の「アニサキス」が潜んでいることがあり、その場合は少量でもアニサキスによる食中毒を起こす可能性があるので、わんちゃんのためにも生のイカは控えたほうが安心でしょう。

加熱したイカの与え方は?細かく刻む、ミキサーでペースト状して筋繊維を断ち切る

犬はイカを食べても大丈夫?生のイカはダメ!加熱したものも少量にとどめて

わんちゃんは、加熱したイカであれば食べることはできますが、イカは全体の筋繊維が多いため、細かく刻む、ミキサーでペースト状にするなど筋繊維を断ち切る工夫が必要です。

加熱することでチアミナーゼが失活するのはもちろん、アニサキスも死滅するので中までしっかり火を通しましょう。

アニサキスによる食中毒の予防のポイント(※2)
・-20℃で24時間以上冷凍
もしくは
・中心温度60℃で1分以上の加熱

また、イカは栄養豊富な食べ物ですが、積極的に与える必要はありません。与えたい場合は、栄養バランスの偏りを防ぐためにも愛犬の1日に必要なカロリーのうちの10%程度にとどめてください。

1日に必要なカロリーについては、以下の記事で詳しく解説しています。

ドッグフード
【獣医師監修】ドッグフードの正しい与え方!パッケージの給餌量はあくまで目安

スルメやアタリメ、燻製、さきいかなどは与えない

スルメやアタリメ、燻製、さきいかなどは与えない

スルメやあたりめ、燻製、さきいか、のしいかなど、イカの加工品はわんちゃんに与えないようにしましょう。

スルメやあたりめはとても硬く、食道を傷つける、喉や胃腸に詰まらせる、消化不良を起こすなどの可能性があります。

また、イカの加工品はどれも塩分が多く含まれているため、わんちゃんに与えることはおすすめできません。

犬が生のイカを食べるとどうなる?症状と症状が現れる時間を解説

犬が生のイカを食べるとどうなる?症状と症状が現れる時間

では、わんちゃんが生のイカを多量に食べるとどのような症状が見られるのでしょうか。

ここでは、症状や症状が現れる時間について解説します。

生のイカを多量に食べてしまったときに見られる症状

わんちゃんが生のイカを多量に食べてビタミンB1欠乏症になった場合、症状が現れる時間は食べた量やわんちゃんの体質、体調などにもよって異なるため一概に言えませんが、急性アレルギーとして短時間で現れることもあれば、長期に欠乏症として数日~数週間後ということもあるので愛犬よく観察することが大切です。

■犬のビタミンB1欠乏症の主な症状

  • ふらつく
  • 同じ場所をウロウロと旋回する
  • 足が立たない
  • 瞳孔が開く
  • 食欲がなくなる
  • 嘔吐
  • 後ろ足が動かない
  • 痙攣
  • 昏睡

ビタミンB1欠乏症は、重篤化してしまうと命にかかわることもある注意が必要な病気です。

また、生のイカを多量に食べていなくても、チアミナーゼを豊富に含む食材を長期にわたって摂取したり、栄養バランスの偏った食事、食事量の低下などでビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性もあるので注意しましょう。

アニサキスによる食中毒が起きたときに見られる症状

量に関係なく、アニサキスによる食中毒(アニサキス症)が起きた場合は、摂取後数時間~数十時間後に以下のような症状が見られます。

犬のアニサキス症の主な症状

  • 激しい腹痛
  • 一定の間隔で腹痛を繰り返す
  • 吐き気
  • 嘔吐

アニサキスは寄生虫で、わんちゃんの体内では数日~1週間程度しか生きられませんが、死滅するまで症状は続き、場合によっては消化管に穴が開いてしまったり炎症が重症化してしまうこともあるため、動物病院の受診が必要です。

また、アニサキスは食物アレルギーを引き起こす可能性も高く、皮膚の赤みや痒み、発疹などが見られることもあります。

犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】

生のイカだけでなくエビやタコにも注意!

生のエビや生のタコも、生のイカと同様に多量に摂取すればビタミンB1欠乏症を引き起こす恐れがあるため、与える際はしっかり加熱して細かく刻んでください。

また、エビは甲殻類アレルギーを起こす可能性もあるので、注意が必要な食材です。

犬が生のイカを食べてしまったときの対処法

わんんちゃんが生のイカを食べてしまった場合、個体差もありますが少量であった場合(一口や一切れ)はチアミナーゼの心配をする必要はなく、基本的には様子を見ていて問題はありません。しかし、アニサキスによる食中毒を起こす可能性はあるので、摂取後数時間~十数時間は様子を観察することが大切です。

では、生のイカをたくさん食べてしまったときや症状がある場合はどうしたら良いのでしょうか。

動物病院を受診する

動物病院で診察を受けるダックスフンド

わんちゃんがイカを食べてしまった後にふらつきや嘔吐などの症状が見られた場合や、たくさん食べてしまったときは動物病院を受診してください。

特に症状がある場合では、早急な受診が必要です。

その際、わんちゃんに嘔吐や下痢などがあった場合では、排泄物を動物病院に持参することをおすすめします。

自分では絶対に吐かせない

NG 否定している様子

わんちゃんを吐かせる方法として、ネット上には塩やオキシドールを飲ませるといった方法が紹介されていますが、どれも危険なことなので絶対に行わないでください

飼い主さんが愛犬を吐かせるリスク

  • 嘔吐が止まらなくなる

  • 水中毒や塩中毒などの命に係わる重篤な障害

  • オキシドールによる胃や食道粘膜の重度な障害

  • 誤嚥性肺炎

自宅でできることはないため、早急に動物病院を受診することが大切です。夜間などの場合では、救急診療を行っている動物病院に電話をして、指示を仰ぎましょう。

まとめ

生のイカにはビタミンB1を分解してしまう「チアミナーゼ」が含まれているほか、アニサキスが寄生している恐れもあり、わんちゃんに与えないほうがよい食材です。

加熱したイカを少量であれば問題はありませんが、イカは全体の筋繊維が多いため、細かく刻む、ミキサーでペースト状にするなど筋繊維を断ち切ってから与えるようにしてください。

与えてはダメなことを認識していても、少し目を離した隙に食べられてしまったり、食事中に落としたものを取られたりする例は少なくありません。

生のイカを食べてしまったときはしっかり愛犬を観察し、前章の対処法を参考に必要に応じて動物病院を受診してくださいね。

<参考文献>

※1:ペット栄養学会誌「禁忌食(その4)ー魚介類(チアミナーゼ)」
※2:農林水産省「海の幸を安全に楽しむために ~アニサキス症の予防~」

ペットライター たかだ なつき

執筆者

ペットライター
たかだ なつき
JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー

17歳のチワックスと1歳のチワックス、ポメチワ、0歳のチワックスの4匹と暮らしています。これまで愛犬チワワと2匹のミニチュアダックスたちの闘病・介護生活の経験から、犬の健康や介護について学びを深めペットにまつわる様々な資格を取得し、老犬のトータルケアサロン開業に向けて準備中です。

【保有資格:ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー / JKC愛犬飼育管理士

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