公開 2024.06.18 更新 2024.06.18
【獣医師監修】犬はエビを食べても大丈夫!ただし与え方には注意が必要

【獣医師監修】犬はエビを食べても大丈夫!ただし与え方には注意が必要

エビは栄養価が高い食材で、加熱したエビを少量であればわんちゃんが食べても大丈夫ですが、甲殻類アレルギーや与え方など注意が必要なこともたくさんあります。

今回は、獣医師でペット食育上級指導士の藤井ちひろ先生監修のもと、犬にエビを与える際の注意点や与え方について解説します。

1日に食べてもいい量や、生のエビを与えるリスクや食べてしまったときの対処法についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。

犬はエビを食べることができるが生のエビは食べてはダメ!

犬はエビを食べることができるが生のエビは食べてはダメ!

わんちゃんは少量であれば加熱したエビを食べても大丈夫ですが、生のエビは与えてはいけません。

生のエビには「チアミナーゼ」というビタミンB1(チアミン)を分解してしまう酵素が含まれており、多量に摂取すると体内のビタミンB1が欠乏する恐れがあります(※1)

また、多量に摂取しなくても、チアミナーゼを豊富に含むものを長期にわたって摂取することでビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性もあり、リスクを冒してまでわんちゃんに生のエビを与える必要はないでしょう。

わんちゃんは体内でビタミンB1を作ることができず、食事などで摂取しても毎日尿と一緒に排出されてしまうので、生のエビは与えるべきではないとされています。

チアミナーゼは加熱すると失活するため、愛犬にエビを与える際は必ず加熱してください。

生のエビを食べてしまったときの対処法

病院でチェックを受けるトイプードル

生のエビを舐めたり、少量(一口や一切れ)を食べてしまったくらいではチアミナーゼの心配をする必要はなく、基本的には様子を見ていて問題はありませんが、エビは甲殻類アレルギーを起こす可能性があるので摂取後30分~48時間は愛犬の様子を観察することが大切です。

ただし、ふらつきや後ろ足が動かない、嘔吐があるなど、何らかの症状が見られる場合や多量に食べてしまった場合は夜間であっても早急に動物病院を受診してください。

ビタミンB1欠乏症は重篤化してしまうと命にかかわることもある注意が必要な病気なので、注意しましょう。

生のイカやタコなどもダメ

生のイカやタコなども犬に与えてはダメ

ホタテやイカ、タコやカニなど、生の魚介類にはチアミナーゼが含まれているため、与えないようにしましょう。

マグロやサーモン、真鯛などのお刺身であっても、チアミナーゼはもちろん、アニサキスによる食中毒やヒスタミン中毒のリスクがあるため、積極的に与えるべきではないと言えます。

わんちゃんが食べてはいけないものや注意が必要なものについては以下の記事をご覧ください。

犬が食べてはいけないものを徹底解説!症状や対処法、加熱調理が必要な食材も紹介
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イカ
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エビの主な栄養素

エビの主な栄養素

エビはタンパク質が豊富で低脂肪、低カロリーな食材です。さまざまな栄養素を含みますが、タウリンが豊富なことが特徴にあげられます。

■エビの主な栄養素

  • タンパク質
    …体を構成する重要な栄養素。不足すると成長障害、体力や免疫機能の低下などが起こる(※2)
  • タウリン
    …魚介類や軟体動物に多く含まれるアミノ酸に似た物質。心臓や肝臓の機能を高める、コレステロールの吸収を抑える、視力の回復などの効果があると言われている(※3)
  • ビタミンE
    …生体膜の機能を正常に保つ。強い抗酸化作用がある。血管を健康に保つ、赤血球の破壊を防ぐ、過酸化脂質の生成を抑制などの働きも(※4)
  • ビタミンB12
    …酵素をサポートする成分。赤血球の形成を助ける栄養素でもある。神経を修復する作用や造血作用、脳の発達を助けるなどの働きがある(※5)

一般的にスーパーなどで流通しているブラックタイガーやバナメイエビはカルシウムが多め、甘エビはビタミンB12が多めなど栄養素の数値に違いはありますが、どのエビも高タンパクでタウリンやビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれる栄養価の高い食材です。

犬が1日に食べてもいいエビの量

犬が1日に食べてもいいエビの量

エビは栄養価が高い食材ですが、与え過ぎは肥満や栄養バランスの偏りを招くため、愛犬が1日に必要なカロリーの10%内にしましょう。

また、体質によって合う合わないもあるので、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整してください。

犬が1日に食べていいエビの目安量(ブラックタイガーの場合:77kcal / 100g(※6)
※避妊・去勢済みの標準体型の成犬で算出

体重 1日の最大
目安量
エビの尾数目安
(可食部14gとして)
1kg 14g 中サイズ1尾
3kg 33g 中サイズ2尾
5ⅼg 48g 中サイズ3尾
7ⅼg 62g 中サイズ4尾
9kg 75g 中サイズ5尾
12kg 93g 中サイズ6尾
15kg 110g 中サイズ7~8尾
20kg 137g 中サイズ9~10尾
25kg 162g 中サイズ11~12尾
30kg 186g 中サイズ13尾

もっと正確に愛犬に与えていい量を知りたい場合は、以下の記事のカロリー計算を参考にしてください。

ドッグフード
【獣医師監修】ドッグフードの正しい与え方!パッケージの給餌量はあくまで目安

エビを与える際の注意点

エビを犬に与える際の注意点

エビは栄養のある食べ物ですが、与える際には注意してあげなければいけないこともあります。

①食物アレルギーに注意する

食物アレルギーの愛犬

※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りが赤くなる、目の下の脱毛、激しい痒み、涙が出ている愛犬

エビは甲殻類アレルギーを起こす恐れがあり、愛犬に初めてエビを与えるときは少量から始め、食べた後は48時間ほど様子を見てあげましょう。

エビに食物アレルギーがある場合は、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られます。

■犬の食物アレルギーの主な症状
・皮膚の赤みや痒み
・目の周りや口の周り、耳を痒がる
・脱毛する
・足先や皮膚を執拗に舐めたりかじる
・下痢や軟便
・嘔吐

食物アレルギーの症状は個体差がありますが、上記のような症状が見られた場合は食べさせるのを控え、獣医師に相談してください。

また、甲殻類のアレルギーの原因となるタンパク質「トロポミオシン」は熱に強く、加熱してもアレルギー性は残るので、加熱すれば大丈夫と思わないようにしましょう。

わんちゃんのアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。

犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】

②必ず加熱する

犬にエビを与える場合は必ず加熱する

わんちゃんにエビを与えるときは、必ず加熱してから与えるようにしましょう。

茹でる、蒸す、焼くなど、加熱はどんな方法でも問題はありませんが、チアミナーゼを失活させるためにも70℃以上の熱でしっかり中まで火を通すことが大切です。

その際、油を大量に使用するのは肥満や体調不良の原因となるので注意しましょう。

③頭や殻、尻尾は与えない

犬にエビの頭や殻、尻尾は与えない

エビの頭や殻、尻尾は消化しにくいほか、喉に詰まらせたり口内や消化器官を傷つける恐れもあるので、与えないようにしてください。

桜エビなど殻を取り除くのが難しい小さなエビはそのままで問題ありませんが、できれば細かく刻むなど配慮してあげたいところです。

④消化しやすいように細かく刻む

犬が消化しやすいようにエビは細かく刻む

エビの身は消化率は高いですが、筋繊維が多いため細かく刻んだりすり潰す、ペースト状にするなどわんちゃんの消化に負担がかからないようにしてあげましょう。

身の部分をそのまま丸呑みしてしまえば、喉に詰まらせてしまうリスクもあります。

⑤持病がある犬は獣医師に確認してから与える

動物病院で診察を受けるダックスフンド

エビはタンパク質が豊富なほか、さまざまな栄養素が含まれているため、持病がある犬では獣医師に確認してから与えたほうが安心です。

特に病気で栄養素の制限を指示されている場合では、必ず獣医師に確認してください。

犬にエビを与えるときによくあるQ&A

Q&A

ここでは、わんちゃんにエビを与えるときによくある疑問をQ&A形式でご紹介します。

よくあるQ&A

    犬にえびせんを与えてもいい?

    A.わんちゃん用のえびせんなら与えても問題ありませんが、人間用に作られたえびせんは油分や塩分が多く含まれるため与えないようにしましょう。

    お寿司のエビを食べさせて大丈夫?

    A.お寿司のネタのボイルしたエビの身を細かく刻んであげる分には問題ありませんが、生のエビやわさびや醤油がついたエビは食べさせないようにしましょう。

    犬は桜エビを食べられる?

    A.生ではなく、乾燥や加熱処理をされた、味つけされていない桜エビであればわんちゃんも食べることができます。

    桜エビはわんちゃん用のサプリメントやおやつに使用されていることもあります。

    まとめ

    【獣医師監修】犬はエビを食べても大丈夫!ただし与え方には注意が必要のまとめ画像

    生のエビにはビタミンB1を分解してしまう「チアミナーゼ」が含まれているため、エビを与える際は必ずしっかり加熱して、殻やしっぽなどを取り除き、細かく刻んでから与えましょう

    また、甲殻類アレルギーの心配もあるため、初めて与えるときはほんの少量にとどめ、その後体調に変化がないかしっかり観察してあげることも忘れてはいけません。

    エビは栄養価が高い食材ですが、無理してまで与える必要はないほか、与える場合は与える量や与え方の注意点を守り、愛犬に負担がないようにしてあげてくださいね。

    <参考文献>

    ※1:ペット栄養学会誌「禁忌食(その4)ー魚介類(チアミナーゼ)」
    ※2:厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質」
    ※3:厚生労働省 e-ヘルスネット「タウリン」
    ※4:健康長寿ネット「ビタミンEの働きと1日の摂取量」
    ※5:大正製薬「ビタミンB12とは?その働きと多く含まれる食材」
    ※6:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」

    ペットライター たかだ なつき

    執筆者

    ペットライター
    たかだ なつき
    JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー

    18歳のチワックスと1歳のチワックス、ポメチワ、0歳のチワックスの4匹と暮らしています。これまで愛犬チワワと2匹のミニチュアダックスたちの闘病・介護生活の経験から、犬の健康や介護について学びを深めペットにまつわる様々な資格を取得し、老犬のトータルケアサロン開業に向けて準備中です。

    【保有資格:ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー / JKC愛犬飼育管理士 / YMAA薬機法・医療法適法広告取扱個人認証規格

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