ドッグフードの賞味期限と消費期限の違い
賞味期限は「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」で、消費期限は「安全に食べられる期限」のことです。
名前は似ていますがそれぞれ意味が違うので、どのような違いがあるか解説していきます。
賞味期限は「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」
袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のことです。カップ麺、缶詰、ペットボトル飲料など、消費期限に比べ、傷みにくい食品に表示されています。この期限を過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではありません。
ドッグフードの場合、ドライフード、セミモイストフード、ウェットフードの種類によって賞味期限が異なり、またパッケージの種類によっても変わってきます。そして、開封後は保存管理によって大きく差が出るので、品質の劣化を防ぐためにも正しい保存方法で保管することが大切です。特に必須脂肪酸を多く含むフードは酸化がしやすい傾向があるため、より注意が必要です。
また、賞味期限の表記の仕方はフードによって異なり、「Best By ◯月◯年」のように書かれていたり、製造国によって年月日の記載順が違っていたりするので、購入する際はパッケージをよく確認するようにしましょう。
消費期限は「安全に食べられる期限」
袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで「安全に食べられる期限」のことです。お弁当、サンドイッチ、生麺、ケーキなど、傷みやすい食品に表示されています。こちらは、期限を過ぎたら食べない方がいいとされています。
ドッグフードの場合、水分含量が少ないドライフードには消費期限はありませんが、ウェットフードなど開封後は傷みやすく保存条件が厳しいものには消費期限が設定されているものもあります。特に保存料が少ないフードや水分含有量が高いフードの場合は、微生物の繁殖リスクが高く、酸化や腐敗などの品質変化がドライフードよりも早い為、より注意が必要です。
また、消費期限の表記もフードによって異なり、「Use By ◯月◯年」のように書かれていたりするので、購入する際はパッケージをよく確認するようにしましょう。
賞味期限と違い、消費期限が切れている場合は必ず破棄し、愛犬には与えないようにしてくださいね。
賞味期限も消費期限も、袋や容器を開けないで、書かれた通りに保存していた場合の安全やおいしさを約束したものです。食品は表示されている保存方法を守って保存しておくことが大切です。そして、一度開けてしまった食品は、期限に関係なく早めに食べるようにしましょう。
※参考:農林水産省,消費・安全,食育の推進,子どもの食育,注目しよう!食べ物のこと,消費期限と賞味期限
ドッグフードの賞味期限が切れたら?品質が劣化する!未開封でも与えない方がいい4つの理由
前述した通り、賞味期限とは「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」と説明しましたが、未開封だとしても食品である以上は品質の劣化が進んでしまいます。
賞味期限が過ぎ、品質が劣化したフードをあげることで、愛犬が体調不良を起こしてしまう可能性があるので、健康を第一に考えるのであれば、賞味期限が切れたらドッグフードはあげない方が良いでしょう。
賞味期限が切れたドッグフードをあげない方がいい理由には、主に下記の4つがあげられます。
■賞味期限が切れたドッグフードをあげない方がいい理由
酸化が進み、品質や味が変わっている
酸化とは、ドッグフードに含まれる油脂が空気中の酸素と反応して変化する現象を指します。これにより鮮度が落ち、品質や味が変わってしまいます。
酸化が進んだフードは美味しさが損なわれるだけでなく、栄養バランスも崩れてしまいます。そのため、酸化したフードを与え続けると犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、さらに食欲を失う犬も出てくることがあります。
【獣医師監修】ドッグフードの酸化って何?酸化について注意点を解説
水分が原因で、カビが発生している可能性がある
湿度が高い場所で保存している場合は、ドッグフードに含まれる水分などが原因でカビが発生する可能性があります。カビは湿った環境で繁殖しやすいため、ドッグフードの水分がカビの栄養源となります。
特に冷蔵庫で保存している場合、出し入れの際の温度変化による結露が原因で、カビの発生がさらに促進することがあるので注意しましょう。
保存方法により、虫が混入している可能性がある
きちんと密封保存できていない場合など、袋や保存容器の隙間から虫が入り込んでしまう場合もあります。虫にとってもドッグフードは最高のエサとなってしまうので、フードを食べ荒らしてしまうだけでなく、フード自体に卵を産んでしまうこともあります。
ドッグフードに湧きやすい虫としては、タバコシバンムシ、 ノシメマダラメイガ、 ヒラタチャタテがいます。
- タバコシバンムシ:この虫は穀物や乾燥食品を好み、ドッグフードにも侵入することがあります。体長は約2~3mmで、赤褐色の小さな甲虫です。
- ノシメマダラメイガ:このガの幼虫は乾燥食品や穀物を食害し、ドッグフードに穴を開けて侵入します。成虫は約10~15mmの茶色い蛾で、幼虫は白っぽい色をしています。
- ヒラタチャタテ:この小さな虫は湿気の多い環境を好み、カビの生えた食品や有機物に集まります。体長は約1~2mmで、淡褐色の柔らかい体を持っています。
缶の場合、金属成分が溶け出している可能性が高い
缶に入ったウェットフードの場合は、賞味期限が過ぎてしまうと缶の金属成分がフード内に溶け出ている可能性があります。(金属中毒を起こす原因となる)
ドッグフードに使われている缶は、安く耐久性が低い缶を使用している場合もある為、人間の食品に使われている缶よりそのリスクが上がってしまうのです。
このように賞味期限が切れたドッグフードは、開封前でも品質が劣化していたり、カビが発生している可能性があるので、賞味期限が切れたドッグフードは、愛犬にはあげないようにしましょう。また、ドッグフードを開封した際は、出来る限り早めに与えきることも重要です。
参考:【専門家監修】衛生的で正しいドッグフードの保存方法とは?
賞味期限が切れたドッグフードが体に与える悪影響は?
賞味期限が切れて品質が劣化したドッグフードを食べ続けると、下痢や嘔吐、腹痛の原因になります。
また、ドッグフードの酸化は進行するにつれてさらに毒性が強くなる為、肝臓や腎臓にダメージを受けたり、老化が進む、動脈硬化が起きる※参考こともあります。
他にも、ドッグフードに混入した虫を食べてしまった場合、前述で紹介した虫の種類であれば深刻な病気に陥ることはありませんが、食べ物に虫が湧いてしまっていること自体が衛生的にも良くない状態なので、そのドッグフードは捨てるようにしましょう。
愛犬がこのような体調不良を起こしてしまわないように、ドッグフードができるだけ劣化しないよう種類にあった保存をして、賞味期限が過ぎた場合は、新しいフードへ変更するようにしてくださいね。
種類別の「ドッグフードの正しい保存方法」は、記事後半で紹介しています。
愛犬がフードを食べ飽きしやすい、皮膚がデリケート、うんちがゆるくなりやすいなどの場合、ドッグフードの酸化や劣化が原因であるという可能性もゼロではありません。賞味期限を守り、フードの品質をできるだけ維持するよう務めることは、健康管理のひとつと考えましょう。
※参考:市販ドッグフードの脂質に対するα-トコフェロールの抗酸化効果
※参考:東京都保健医療局,食品・医薬品の安全,食品の安全,東京都食品安全FAQ,食中毒に関すること,金属製の水筒に飲み物を入れる際の注意点はありますか?【食品安全FAQ】
ドッグフードの酸化について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【獣医師監修】ドッグフードの酸化って何?酸化について注意点を解説
ドライ・ウェット・セミモイストフードの賞味期限【開封前・開封後】
ドッグフードは、使用されている材料や保存方法が異なるため、種類によって設定されている賞味期限も変わってきます。
ここでは開封前と開封後の賞味期限の違いを、フードの種類別に解説していきます。
ドライフードの賞味期限
開封前:約1年
開封後:約1か月(理想は2週間以内)
ドライフードは、他のフードに比べて水分含量が12%以下と少ない為、開封後も約1か月ほど品質を保つことができます。
ただし、前述した通り、開封後は開封前と比べてフードの酸化がどんどんと進んでしまう為、出来る限り早めに与えきることが大切です。(理想としては2週間以内にあげきる)
セミモイストフードの賞味期限
セミモイストフードは、ドライフードに比べ水分含量が25~35%と多く、柔らかく食べやすい半生タイプのドッグフードです。ドライフードより嗜好性が高いのも特徴です。
パウチに入っているものが多い為、開封前は約2年と賞味期限が長く設定されていますが、開封後は劣化が早いので、約2週間であげきるようにしてください。
ウェットフードの賞味期限
ウェットフードは、フードの中でも一番水分量が多く、水分含量は75%以上となっています。嗜好性も一番高く、食欲不振の犬にもオススメです。
缶詰に入っているものが多く、未開封であれば長期間保存できるメリットがあります。ただし、開封後はどのフードよりも劣化が早く進むので、約1日で与えきるようにしてください。
参考:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~」
無添加のフードの場合は特に賞味期限に気を付ける!
無添加として販売されているドッグフードでも、賞味期限は未開封で半年〜1年程度であることが多いです。但し、他の添加物入りのドッグフードと違って保存料を使用していないので、賞味期限が短く酸化しやすい傾向があるため保存管理に注意が必要です。
無添加ドッグフードは高価格帯のものが多いので、ついお得な大袋を選びたくなりますが、割高でも愛犬が2週間以内に食べ切れるサイズを購入するほうが無添加のメリットを感じやすいはずですよ。
愛犬の健康のために無添加にこだわってフードを選びたいという方は、賞味期限と保存方法にもこだわり、与える際には香りに変化がないかを日々気にしておきましょう。酸化していたり、傷んでいるフードを与えることは、添加物入りのドッグフードを与えることよりも健康の負担となります。
無添加ドッグフードについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
無添加ドッグフードおすすめ人気ランキング19選!国産やグレインフリーなど111商品比較【獣医監修】
ドッグフードの正しい保存方法
ドッグフードの種類毎に理想の保存方法は異なるので、各種類別に解説していきます。
ドライフードの保存方法
袋をしっかり閉じて、直射日光の当たらない、温度・湿度が低い所で保存する
(専用ストッカーや密封タッパーに入れるのもオススメ)
冷蔵庫で保存すると、出し入れの際にフード表面に結露が生じ、カビ発生の原因になることがあるので、常温で保存してください。また、食器に出した後は時間と共に香りや食感が失われるので、食べ残しは放置せずに速やかに片付けるようにしましょう。
また、ドライフードの場合は大袋で買う方も多いと思いますが、開封後は酸化など品質の劣化がどんどんと進んでしまう為、数食分を小分けにしてジップロックなどで密封保存するなど、なるべく空気に触れさせないように保存することが大切です。美味しく新鮮なドッグフードをあげることが理想なので、犬の健康を考えるのであれば、大袋で買うより1ヶ月で使い切れる小袋などで購入することをオススメします。
セミモイストフードの保存方法
開封後は袋をしっかり閉じて冷蔵庫で保管し、あげる分だけ冷蔵庫から取り出すようにしましょう。
密閉できる袋や容器に入れて冷蔵保存するのも有効ですよ。
ウェットフードの保存方法
未開封の場合は、直射日光の当たらない、温度変化の少ない場所で保存する(開封したらすぐに与える)
未開封の缶詰やレトルトフードは、直射日光の当たらない、温度変化の少ない場所で保存しましょう。開封後に余ってしまった場合には、別の容器に移し替えて冷蔵庫で保存し、その日のうちに与えきるようにしてください。(専用の保存用シリコン蓋の利用もオススメ)1日以上保存する場合は冷凍保存して、与える際に解凍する方法もありますが、その際に食味などを損なう場合があります。
また、食器に出した後の酸化や腐敗などの品質変化がドライフードよりも早い為、20分程度を目安に片付けるようにしてください。
参考:環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン~犬・猫の健康を守るために~」
ドッグフードを飽きずに美味しく食べてもらうためにも、できるだけ酸化を防ぐ保存方法を心がけましょう。また、食べ残しは衛生的に破棄しなければならないため、少食の愛犬には少量ずつ与えるなどの工夫をしてみてください。
ドッグフードの賞味期限に関するQ&A
ドッグフードの賞味期限などに関する疑問をまとめてみました。
こちらもぜひ参考にしてくださいね。
賞味期限の見方は?
国内で販売されるドッグフードのパッケージには、賞味期限の表示が義務づけられています。原材料表記の近くか、パッケージ上の方または下の方に賞味期限が表記されていることが多いです。
また輸入商品の中には、製造された国で賞味期限の刻印をしている商品もあり、賞味期限の表記は商品ごとに異なっています。賞味期限の表記が分かりづらい場合は、下記の表記例に記載してある原産国を確認してみてくださいね。
【表記例】
- 日本
…2024年6月15日(年/月/日) - アメリカ合衆国、カナダなど
…6/15/2024(月/日/年) - イギリス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、フランスなど
…15/6/2024(日/月/年)
賞味期限が長いフードは、添加物が多く体に悪いの?
添加物はさまざまな種類があり、それぞれ理由があって使用されています。添加物は基本的には犬の健康に害を及ぼすことはありません。多量に摂取すると健康に影響を及ぼす恐れのある添加物については、ペットフード安全法の中で使用する量の上限が定められているため、必要最低限しか配合されていないのが一般的です。
また、添加物には化学合成して作られた「人工(合成)添加物」と植物や動物、鉱物などから作られた「天然由来の添加物」があります。
■人工添加物と天然由来の添加物の違い
【人工添加物】
・質や効果に安定が期待できる
・使用量に上限のある強力なものもある
【天然由来の添加物】
・質や効果にバラつきがある
・強力な効果は期待できない
一般的には、保存期間が他のドッグフードよりも極端に長いものや、価格が安く設定されているものに人工添加物を使用していることが多いです。
添加物が気になる飼い主さんは、自然由来成分のみを使用しているフードを選んだり、犬の健康には役立たない「着色料」を避けるようにすれば良いでしょう。
添加物について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
犬のおやつやドッグフードに含まれる添加物は危険?涙やけやアレルギーの原因になるって本当?【添加物一覧付き】
賞味期限が切れたフードを安く買えるところはあるの?
近年、ペットの世界でも食品ロス=「ペットフードロス」が起き、ニュースになったりと注目されています。その為、賞味期限が近いドッグフードやパッケージが破損したドッグフードなどを、「訳あり品」として販売している通販サイトも存在します。
但し「ペットフードロス削減」として、理念などをしっかり掲げて営業している会社もあれば、ただ売れればいいと賞味期限が切れているフードを安く仕入れて、安く販売している業者もあります。
もし、このような通販サイトから購入する場合は、下記にまとめた注意事項を確認し、愛犬に与えても問題がないのかきちんと判断してから購入するようにしましょう。与えた後も愛犬の体調を日々確認することを忘れないようにしてくださいね。
【購入する際の注意事項】
- どのくらい賞味期限が切れているのか、どれくらいで切れそうなのか
- なぜ賞味期限切れ(または賞味期限間近)を販売しているのか
(例:ペットフードロス削減、在庫処分のためなど) - 正規品かどうか
- 販売会社の信頼性(しっかり管理や保管がされているのか)
フードが大量に余ってしまった場合はどうしたらいい?
愛犬が病気で今まで食べていたドッグフードを食べなくなったり、不幸がありドッグフードが大量に余ってしまった場合などは、動物愛護団体や保護施設へ寄付することも可能です。
愛護団体や保護施設では常に物資が足りず、支援物資の寄付を望んでいるところが多くあります。また、希望している物資は施設毎に異なり、それぞれ公式サイトなどで詳細を確認することができるのですが、ドッグフード以外にも寄付できる物がある場合はそれも一緒に送ってあげると喜ばれますよ。
ここで注意が必要なのは、必ず施設が望んでいるもののみ寄付するということと、賞味期限が切れていないドッグフードを寄付するということです。施設によっては、ドッグフードは開封後のものでもOKの場合がありますが、基本は未開封のドッグフードを寄付するようにしてくださいね。
寄付したものがかえって施設の迷惑にならないように、各施設の注意事項をしっかりと確認してから寄付するようにしましょう。
まとめ
今回は、ドッグフードの賞味期限が切れても問題ないかについてご紹介しました。
賞味期限とは「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」であり、もし未開封だとしても食品である以上は品質の劣化が進んでしまいます。賞味期限が過ぎ、品質が劣化したドッグフードをあげることで、愛犬が体調不良を起こしてしまう可能性があるので、健康を第一に考えるのであれば、賞味期限が切れたらドッグフードはあげないようにしましょう。
また、ドッグフードは正しい保存方法で保存していないと、劣化が早く進んだり、カビが発生したり、虫が混入してしまう可能性があります。ドッグフードは正しい保存方法を守って保存し、一度開封したものは出来る限り早めに与えきることが大切です。