カニはさまざまな栄養を豊富に含み、加熱したカニを少量であればわんちゃんが食べても大丈夫です。しかし、生のカニを与えてはいけないことや、甲殻類アレルギー、与え方など注意が必要なこともたくさんあります。
今回は、獣医師でペット食育上級指導士の藤井ちひろ先生監修のもと、犬にカニを与える際の注意点や与え方について解説します。
1日に食べてもいい量や、生のカニを与えるリスクや食べてしまったときの対処法についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
カニはさまざまな栄養を豊富に含み、加熱したカニを少量であればわんちゃんが食べても大丈夫です。しかし、生のカニを与えてはいけないことや、甲殻類アレルギー、与え方など注意が必要なこともたくさんあります。
今回は、獣医師でペット食育上級指導士の藤井ちひろ先生監修のもと、犬にカニを与える際の注意点や与え方について解説します。
1日に食べてもいい量や、生のカニを与えるリスクや食べてしまったときの対処法についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
わんちゃんは少量であれば加熱したカニを食べても問題はありませんでが、生のカニは与えてはいけません。
生のカニには「チアミナーゼ」というビタミンB1(チアミン)を分解してしまう酵素が含まれており、多量に摂取すると体内のビタミンB1が欠乏する恐れがあります。(※1)
また、多量に摂取しなくても、チアミナーゼを豊富に含むものを長期にわたって摂取することでビタミンB1欠乏症を引き起こす可能性もあり、リスクを冒してまでわんちゃんに生のカニを与える必要はないと言えるでしょう。
わんちゃんは体内でビタミンB1を作ることができず、食事などで摂取しても毎日尿と一緒に排出されてしまうので、生のカニは与えるべきではありません
チアミナーゼは加熱すると失活するため、わんちゃんにカニを与える際は必ず加熱してください。
わんちゃんが生のカニを食べた場合、少量(1口など)であればチアミナーゼの心配をする必要はなく、元気食欲があれば基本的には様子を見ていて問題はありません。
しかし、毎日のように食べたり、多量に食べた場合ではビタミンB1欠乏症を引き起こす恐れがあり、ビタミンB1欠乏症は重篤化してしまうと命にかかわることもある注意が必要な病気なので、たくさん食べてしまったり、以下のような症状が1つでも見られる場合は早急に動物病院を受診してください。
■犬のビタミンB1欠乏症の主な症状
ビタミンB1欠乏症は、食べてすぐではなく数日後や数週間後に症状が現れることがほとんどです。
また、甲殻類アレルギーを引き起こした場合では、急性のアレルギー症状として短時間で嘔吐や下痢、痒みなどの症状が見られることがあります。
きれいな川や湖などに生息する日本固有のサワガニには寄生虫がいることがあるため、アウトドアに行くわんちゃんや田舎の方で比較的自由にしているわんちゃん、淡水カニを生食する習慣のあるアジア系の飼い主さんが飼っているわんちゃんなどは注意が必要です。
サワガニは体長が2~3ⅽmほどと小さく、わんちゃんが誤って食べてしまう恐れがあります。
わんちゃんが生のサワガニを食べてしまうと肺吸虫に寄生される可能性があり、肺に寄生して増殖し、発咳、血痰、気胸、呼吸困難など、わんちゃんの健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
肺吸虫は人獣共通寄生虫で、人間でも生食はNGとされているので、十分に注意しましょう。
カニはスーパーフードと言われることもある、栄養価の高い食べ物です。カニの主な栄養素は以下になります。
■カニの主な栄養素
カニは高タンパク、低脂肪、低カロリーです。ビタミンやミネラル、アミノ酸なども豊富に含み、旨み成分である「グルタミン酸」も多く含まれているので、わんちゃんの食いつきも良く、少量をトッピングなどに利用してもいいでしょう。
栄養価が高いカニですが、与え過ぎは肥満や栄養バランスの偏りを招くため、与える量は愛犬が1日に必要なカロリーの10%内にしましょう。
また、体質によって合う合わないもあるので、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整してください。
■犬が1日に食べていいエビの目安量(毛がに 茹での場合:78kcal / 100g(※6))
※避妊・去勢済みの標準体型の成犬で算出
体重 | 1日の最大目安量 |
1kg | 14g |
3kg | 32g |
5kg | 48g |
7kg | 61g |
9kg | 74g |
12kg | 92g |
15kg | 109g |
20kg | 135g |
25kg | 160g |
30kg | 184g |
一般的に多く流通している毛がにで算出しましたが、ずわいがにを茹でた場合は69kcal、たらばかにを茹でた場合は77kcalと、カニの種類によって若干異なります。
もっと正確に愛犬に与えていい量を知りたい場合は、以下の記事のカロリーの計算の仕方を参考にしてくだい。
カニは栄養価が高い食べ物ですが、わんちゃんに食べさせるときは注意しなければいけないこともあります。
ここでは、わんちゃんにカニを与える際の注意点を見てきましょう。
■犬にカニを与える際の注意点5つ
①食物アレルギーに注意する
②生のカニを購入して必ず加熱する
③殻やカニ味噌は与えない
④消化しやすいように細かく刻む
⑤持病がある犬は獣医師に確認してから与える
※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りが赤くなる、目の下の脱毛、涙が出ている愛犬
カニは甲殻類アレルギーを起こす恐れがあり、初めてカニを与えるときは少量から始め、食べた後は48時間ほど様子を見てあげることが大切です。
わんちゃんがカニに食物アレルギーがある場合は、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られます。
■犬の食物アレルギーの主な症状
食物アレルギーの症状は個体差がありますが、上記のような症状が見られた場合はそれ以上与えるのを控え、獣医師に相談してください。
また、甲殻類のアレルギーの原因となるタンパク質「トロポミオシン」は熱に強く、加熱してもアレルギー性は残るので、加熱すれば大丈夫というわけではありません。
わんちゃんのアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
生のカニや調理済ではない冷凍カニを購入し、チアミナーゼ対策に70℃以上の熱でしっかり中まで加熱してから与えるようにしてください。(※与えるときは人肌程度に冷ましてから)
市販されている加熱済みのカニは塩茹でされていたり、味付けされているものがほとんどのため、わんちゃんには塩分が多くなりすぎてしまいます。
カニの調理方法は。焼いても茹でても蒸してもいいですが、油を大量に使用しないのはもちろん、味付けもしないようにしましょう。
カニの殻や足の爪、スジなど、カニの身以外は与えないようにしてください。
カニの殻はとても硬く、食べてしまえば喉や食道、胃腸粘膜などを傷つけてしまったり、刺さってしまうこともあります。
また、カニ味噌には有害な重金属である「カドミウム」が高濃度で含まれ得る(※7)という報告もあり、人では長期間の暴露により腎臓、肺、肝臓に障害を生じたり、カルシウム代謝を阻害するなど(※8)健康への影響が懸念されているものなので、人よりも身体が小さなわんちゃんには与えないほうが安全と言えるでしょう。
カニの身は消化率は高いですが、筋繊維が多いため細かく刻んだりすり潰す、ペースト状にするなど、わんちゃんの消化に負担がかからないようにしてあげましょう。
身の部分をそのまま丸呑みしてしまえば喉に詰まらせてしまうリスクもあり、危険なので注意してください。
エビはタンパク質が豊富なほか、さまざまな栄養素が含まれているため、持病がある犬では獣医師に確認してから与えたほうが安心です。
特に病気で栄養素の制限を指示されている場合では、必ず獣医師に確認してください。
ここでは、わんちゃんにカニを与えるときによくある疑問をQ&A形式でご紹介します。
A.わんちゃんはカニカマを食べても大丈夫ですが、調味料や添加物が使用されていることも多く、また塩分もそれなりに多いので与える場合はほんの少量にとどめておきましょう。
塩抜きすれば塩分量は減りますが、熱や水に弱い栄養素は失われます。
近年は犬用カニカマなども販売されているので、できれば人間用ではなく犬用のものを与えたほうが安心です。
A.カニ缶は塩茹でされているものがほとんどで、塩分量もかなり多いため、与えないようにしてください。
生のカニはビタミンB1欠乏症のリスクがあるため、わんちゃんにカニを与えるときは必ずしっかり加熱して、身の部分だけを細かく刻むなどして与えてください。
また、甲殻類アレルギーの心配もあるため、初めて与えるときはほんの少量にとどめ、その後体調に変化がないかしっかり観察しましょう。
カニは栄養価が高い食べ物ですが、無理してまで与える必要はないほか、与える場合は与える量や与え方の注意点を守り、愛犬に負担がかからないようにしてあげることが大切です。
<参考文献>
※1:ペット栄養学会誌「禁忌食(その4)ー魚介類(チアミナーゼ)」
※2:厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質」
※3:厚生労働省 e-ヘルスネット「タウリン」
※4:健康長寿ネット「ビタミンEの働きと1日の摂取量」
※5:FUJITILM からだサイエンスラボ「アスタキサンチンの効果・効能」
※6:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※7:内閣府 食品安全委員会「食品安全関係情報詳細」
※8:環境省「カドミウムに関する物質情報」
執筆者
18歳のチワックスと1歳のチワックス、ポメチワ、0歳のチワックスの4匹と暮らしています。これまで愛犬チワワと2匹のミニチュアダックスたちの闘病・介護生活の経験から、犬の健康や介護について学びを深めペットにまつわる様々な資格を取得し、老犬のトータルケアサロン開業に向けて準備中です。
【保有資格:ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー / JKC愛犬飼育管理士 / YMAA薬機法・医療法適法広告取扱個人認証規格】