公開 2020.01.17 更新 2020.06.29
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【獣医師執筆】犬の骨折とは?症状・治療・予防法|小型犬は要注意!

【獣医師執筆】犬の骨折とは?症状・治療・予防法|小型犬は要注意!

ワンちゃんが何気なく椅子からジャンプして降りたら、すごく痛がって前足をあげている…もしかしたら骨折してしまったかもしれません。

特に小型犬はちょっとした段差から飛び降りた衝撃でも骨折してしまう事もあります。

  • 骨折しやすい犬種は?
  • 骨折したらどんな症状が見られる?
  • 骨折は予防できる?

など、ワンちゃんの骨折の原因、症状、治療や骨折をしやすい犬種など、ワンちゃんの骨折について詳しく解説いたします

獣医師 高橋 渉

執筆者

獣医師
高橋 渉

2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会比較歯科学研究会所属

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犬の骨折とは

犬 レントゲン

ワンちゃんの骨折

  • 骨折には折れた部分、折れ方によって呼び方が違う
  • 骨折で皮膚が敗れると感染症を起こしやすくなり緊急性が高い

骨折とは骨が折れたり、ひびが入ってしまい、その連続性を失ってしまった状態のことです。骨折には、その折れた部位や折れ方により下記のように様々な呼び方あります。

① 骨折の分類

【閉鎖骨折】…骨折が皮膚の下で起こっており、骨折部位が外部と接していない骨折

【開放骨折】…強い衝撃によって骨が皮膚を破って露出している骨折。感染が起こりやすく緊急性が高い骨折

② 骨の折れ方による分類

【横骨折】…骨の軸から垂直に折れている骨折

【斜骨折】…骨の軸から斜めに折れた骨折

【らせん骨折】…骨の軸からねじれた方向におこる骨折

【粉砕骨折】…骨折がいくつもの骨片に分かれてしまった骨折

これらの折れ方の違いは、骨折のときに受けた力の程度や方向によって生じます。

犬の骨折の原因

犬 骨格

ワンちゃんの骨折の原因

  • 段差の着地に失敗する
  • 骨折で多いのは前足などの細い骨
  • 歯周病や腫瘍などの病気による骨折は病気の治療も必要になる

など、様々な原因が挙げられます。

骨折の多くは運動中や交通事故などの外部からの強い力によって生じます。ワンちゃんの骨折がよく起こる部位は、前足の橈骨と尺骨などの細い骨の骨折です。

なぜその部位に多いかというと、小型犬の場合もともとの骨の幅が狭いところだと1㎝にも満たず、極めて細く、強度も弱いためです。健康な小型犬の足の強度を表現するのに、筆者の場合は、割りばしに例えることがあるほどです。

そのため、体の大きさ程度の段差でさえも、着地に失敗してしまうと骨折の原因になる場合があります。また、外部からの圧力による骨折以外にも病的骨折というものもあります。それは、例えば歯周病や腫瘍などの他の病気によって骨がもろくなってしまい起こる骨折です。

これらの骨折の場合、通常の骨折とは異なり、折れた部位を治すだけでは治療にならないため、原因となった病気の治療を行わなければなりません。

骨折を起こしやすい犬種

犬 集合

骨折しやすい犬種

  • チワワやトイプードルのような活発な小型犬
  • 重度の歯周病を患っている小型犬
  • ダックスフンドなどの四肢が短い犬種

などの犬種が挙げられます。

骨折は、もちろんすべての犬種のすべての骨に生じえますが、特に診療の現場でよく見られるのが上記のような小型犬の前足の骨折です。

チワワやトイプードルなどの犬種は、とても活発な子が多く、椅子や階段から飛び降りてしまうことが多々あります。そして、前足から着地し、骨折してしまうというケースがもっとも多く感じます。

その他には、重度の歯周病を患っている小型犬の顎の病的骨折や、四肢が短いダックスフンドの骨盤などの骨折も比較的多いです。

歯の様子を見てもらっているゴールデンレトリバー
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犬の骨折の症状

犬 骨折2

骨折の症状

  • 強い痛みで折れた足をかばう
  • 骨折した部位の腫れ・熱を出す
  • まれに骨折しているにも関わらず痛がらない場合もある

といった症状が見られます。

ワンちゃんの骨折の症状は、折れた部位、折れ方などにもよりますが強い痛みが主訴です。足の骨折の場合、折れた足をかばってその足を挙げて、そのまま挙げ続けます。そして、折れた部位は腫れあがり、熱を持ちます。

まれに、足の先端の細い指の骨折や肋骨などでは、折れているにも関わらず、それほど痛がらない場合もあるので注意が必要です。その他にも肋骨や背骨など折れた部位や程度によって様々な症状がありますので、詳しい検査が必要になる場合があります。

犬の骨折の診断

犬 レントゲン

骨折の診断

  • レントゲン検査で診断
  • 骨折が確認されたら治療の方針を決める

といった診断を行います。

骨折の診断に有用なものは、レントゲン検査です。骨が折れている可能性がある場合は、まずは、その部位のレントゲンを最低でも2方向撮り、骨折の有無と部位、折れ方を確認します。

骨折の診断がされたら、今後のどのようにその骨折を治すのかという治療方針がおおよそたちます。また、近年では、CT検査を用いて、精密に骨の状態を確認することで、より細やかな治療計画を立てることもあります。

犬の骨折の治療

犬 骨折

ワンちゃんの骨折の治療

骨の自己修復⇒骨折部分の血管を傷つけない、血液を運ぶため新しく血管ができるように動かさない事が大切

ギブスでの固定⇒鎮痛剤を与えて安静にする。骨折の具合によってはギブスのみで治る場合もある

その他の手術方法⇒ギブスのみで治療ができない場合手術が必要になる。骨折部分に金属のプレートを当てて骨を固定、骨の移植など

術後⇒手術が終わったから治療終了ではありません

  • 手術後は骨折が治るまで安静にすること
  • 傷口から感染症を起こさないためにエリザベスカラーなどで対応する
  • 獣医師と相談の上リハビリを行う

などの治療方法があります。

① 骨の治り方について

骨には、自己を修復する力が備わっています。骨折の治療は、その修復力を損なわないよう助けることにあります。骨の自己修復について解説します。

【骨の自己修復】

  • 折れた部位に出血が起こり、その出血が固まった血の塊(血腫)が形成されます。同時にそこで起きた炎症が、その部位に血管の新生を促します。
  • 肉芽組織という結合組織が増殖おこります。
  • 結合組織から徐々に仮骨という仮の骨が現れます。
  • 仮骨は徐々にその部位が本来の固い骨と置き換わっていきます。

骨折の治療には、血液がとても重要です。そのため、それを運ぶ血管をいかに損傷しない、もしくは血管の新生が骨折部位に発達しやすいようにしつつ、その部位を動かないように安定化させることができるかによって、骨折の治癒速度は変わります。

② 骨折の手術法について

骨折が確認された場合、その状態からより骨折が悪化していかないようにギブスで固定します。骨の折れ方によっては、ギブス固定のみでも治る場合もあるため、とても重要です。

鎮痛剤を与え、安静にしてもらいます。次に必要に応じて、手術を検討します。手術の方法は下記のようにいくつかあり、時に複合して用います。どの方法を用いるかは、獣医師が状態により検討します。

ピンニング

折れた骨と骨を繋ぐように骨の髄に一本の長い金属製のピンを通して固定する方法です。この方法は、上腕骨や大腿骨などの骨折に用いられることが多い方法です。部位によっては皮膚をほとんど切らずに行うこともできます。

プレーティング

よく行われる方法で色々な形のプレートがあり、様々な部位の骨折に使用することができます。

プレーティングは、骨折した部位を一度露出させ、その部位をまたぐように金属製の板を当て、スクリューで固定します。

プレートを当てることで骨折した部位をしっかりと固定することができますが、年齢や状態によっては骨折の治癒後につけたプレートやスクリューをはずす必要があります。その際には、再度麻酔をかけ、皮膚を切開する必要があります。

プレートの種類や装着の仕方によっては、骨折部位の血管の新生を妨げ、仮骨が形成されづらくなる事もあるので注意が必要です。

創外固定

特殊な金属のピンを骨折した部位近くに何本か刺し、そのピンを皮膚の外から固定する方法です。骨折した部位を切ることなく装着でき、治癒後にそれを外すこともプレーティングと比較し簡便です。

骨折した部位に直接触れないため血管の新生を妨げずに行えるため治癒が起こりやすいです。

外側に装着するためついている間のワンちゃんの動きは、プレーティングなどに比べると制限されるかもしれません。また、ピンを挿入した部位に感染が生じないように注意が必要です。

海綿骨移植

骨が治るうえで重要なものの一つに、骨の中にある海綿骨という柔らかい骨があります。この海綿骨の中には、骨を作るうえで必要な成分が多く含まれています。そのため、プレーティングなどの皮膚を切開し、骨折部を露出するオペの際には、肩の骨や腰の骨の中からこの海綿骨を取り出し、骨折した部位の間に入れることで治癒を促進することができます。

皮質骨移植

皮質骨とは、骨の外側の固い部位のことです。粉砕骨折や腫瘍などによってどうしても多くの部分の骨を使うことができず欠損してしまう場合に、他の同種のワンちゃんやその子自身の肋骨のような他の部位から骨を持ってきて移植します。感染予防などが極めて大切であり、行える施設には限りがあります。

③ 術後

術後のケアも手術と同様にとても重要で、手術終了=治療終了ではなく、むしろ治る方向に修正しただけでそこから治療がスタートするということを十分に念頭においてください。術後のケアについて重要なこととして下記のことがあります。

安静

当然の事のように感じますが、人にとっては術後に安静にすることは当たり前でも、ワンちゃんにとっては痛みが徐々に消えていけば、普段通りの生活をしようとすることが当たり前です。

手術が終わり自宅に帰って、普通に生活をさせたところ、プレートが折れるほどの高さから飛び降りて再骨折してくることもよくあります。

骨が治るうえである程度の負重をかけることは大切なので、まったく動いてはいけないわけではありません。しかし良く注意して、どの程度の運動を行っていいかは獣医師と十分に相談をして行うようにしてあげてください。

感染予防

骨折の際にその部位に感染が起こることは極めて傷害を深刻化します。術中はもちろん、術後にも十分に感染予防に気をつけなければなりません。そのため、エリザベスカラーなどを用いて、ワンちゃんが術創をなめたりできないように注意しましょう。

傷口が膿んできたりした場合すぐに病院で適切な処置を受けるべきです。

リハビリ

近年、ワンちゃんでも術後のリハビリテーションの有効性が証明されてきています。ワンちゃんの中には、術後も痛みがなくなっていてもその足を使いたがらない子もいます。

例えばリハビリとして、屈伸運動や人の手によって足を地面につかせることをサポートしてあげることで、足の筋力や関節の動きを保ち、回復をサポートしてあげることができます。

リハビリについてもいつどの程度の運動を始めるかは状態によって異なりますので獣医師とよく相談して行いましょう。

骨折の手術後は安静にすることが重要

ワンちゃんは痛みが治まると普段どおりの生活をしようとするため、飼い主さんが安静にさせてあげることが大切です。

運動の再開やリハビリについては、獣医師と相談のうえ決定することをおすすめします。

犬の骨折治療の注意点

注意、ポイント

骨折治療の注意点

  • 感染症を起こすと、全身へも影響が出る場合がある
  • 足の骨折が原因で全身へ影響が出る場合切断する場合もある
  • うまく治らない場合再び骨折する場合もある

といった注意点があります。

ワンちゃんの骨折治療は、その折れた部位、折れ方、犬種、ワンちゃんの性格などによって難易度が全く異なります。

骨に感染が起きてしまい、それがコントロール付かない場合は、骨折が治らないばかりか全身への悪影響や最悪足の場合は断脚をしなければならない可能性もあります。

感染や骨折の治癒過程がうまくいかずに癒合不全となってしまった場合、骨がまったく繋がらないことや繋がっても強度が不十分なために再骨折してしまう場合もあります。

ワンちゃんの骨折は、常に元のように治るというわけではないということを念頭に置かなければなりません。

犬の骨折の治療費

犬 計算機

骨折の治療費

  • 骨折の具合、ワンちゃんの大きさ、治療方法、治療を行う施設によって違う
  • 治療費だけではなく、入院費は別になるので、先にどの程度の費用が必要になるのか確認しておく

治療費について、病院とトラブルにならないように確認しておくと安心です。

骨折の治療費は、その折れ方や使用する治療方法、行う施設、ワンちゃんの大きさなどによって大きく異なります。

もちろん、単純骨折と粉砕骨折では、骨折といっても全くの別の外傷であり、上記のように全く異なる治療法になります。

レントゲンでの所見と実際手術を行うときで、状態が異なり想定以上に困難なオペになる場合もあります。そのため、費用についても先に決めて行う病院もありますが、多くはある程度の幅を持ってお伝えすることになるでしょう。

また、手術の費用と入院の費用について分けて考えなければならないので、治療後に費用について病院とトラブルにならないように先にある程度の手術料の概算や入院費用は聞いておくようにしましょう。

犬の骨折予防

階段 ポメラニアン

骨折の予防

  • 高いところにあげない、段差をつけて落下を防ぐ
  • 床で滑らないよう足の裏の毛をこまめにカットする
  • 太らせないようにする
  • 人の言葉をよく聞くようトレーニングする
  • 歯周病の場合は早期発見できるようこまめに健診を受ける

などの予防方法があります。

骨折を予防するためには、骨折した原因を取り除かなければなりません。ワンちゃんにとっては、傷が治ればまた同じように振舞いますので再び骨折しないために注意が必要です。いくつかの例と予防法について解説します。

例①椅子や階段から自ら落ちて骨折してしまったワンちゃんの場合

【高いところにあげない、段差をつける】
小型犬であればなるべく椅子やソファーなどの高いところには乗せない、乗らないように注意しましょう。もしくは、その途中に段差などを作り、高い場所からの落下を防ぎましょう。

【足を滑らないようにする】
足の裏の毛をこまめにカットし、しっかり肉球が滑り止めとして機能するようにしましょう。同時にフローリングなどの滑りやすい床であれば、滑り止めのマットを敷き、着地の失敗を防ぐことも重要です。

【太らせないようにする】
以前は、平気で登り降りできていた高さでも肥満によって重くなってしまったため、その高さでも骨折してしまうこともあります。

肥満で普段から運動をしたがらない子が骨折してしまった場合、機能を回復させるのに時間がかかってしまうかもしれません。体重は、常に標準的に保つよう気をつけてください。

例②車にぶつかって骨折してしまったワンちゃんの場合

【コマンドの徹底で、飼い主さんの声をしっかり聴けるように】
不意に散歩中や、外で遊んでる際に道路に飛び出して、車にぶつかってしまうケースも多いです。

そのような場合、ご家族の声に反応せずに走り出してしまったということが多いです。そういったことを予防する上でも、人の言葉をよく聴く子になるように普段からトレーニングしましょう。

トレーニングの方法としては、お手、お座り、伏せなどの一般的なコマンドの徹底と普段からワンちゃんに話しかけるようにしましょう。筆者の主観も入りますがやはり普段からよくワンちゃんに話しかけているご家庭のワンちゃんは人の顔をよく見て、その話を聞こうとします。

そして、散歩のときもご家族の顔や動きを気にします。また、クリッカーと言われる音の鳴るトレーニング用品を用いて、音とご褒美をリンクさせるようにしてみてください。いざという時にその音を聞ければ、行動を抑え、走り出すのを止めることができるかもしれません。

例③歯周病での顎の骨の骨折や、腫瘍による骨折の場合

【病気的な骨折は家族のケアで予防しよう】
病的な骨折は、多くの場合病気の末期で起こることが多いので、根本の病気を早期発見できるようこまめに獣医の診察や健診を受けるようにお勧めいたします。口腔内の歯周病による骨折などは、ご家族のケアによって十分に予防ができます。

まとめ

犬 研究

以前は交通事故による骨折が多い印象でしたが、最近は飼育環境の変化やペットの小型化によって、その他の事故による骨折は以前より多くなっているようです。

ワンちゃんの骨折の原因には

  • ちょっとした段差でも、着地に失敗して骨折する
  • 特に小型犬は骨が細く骨折しやすい
  • 重度の歯周病になると顎を病的骨折する場合もある
  • 道路に飛び出して車にぶつかってしまう

などが挙げられます。小型犬は活発で骨が細く、椅子から飛び降りたりといったことでも前足を骨折してしまう事もあります。

ワンちゃんの骨折の治療は骨折の具合によってはギブス固定だけで治る事もありますが、手術が必要なこともあります。治療後は特に注意が必要で

  • 骨が再生、または修復するまでの安静
  • 感染症を起こさないようエリザベスカラーなどで予防をする

などの点が重要になります。また獣医師との相談の上、術後の経過を見ながらリハビリを行う事でワンちゃんの回復をサポートする事ができます。

骨折はワンちゃんに強い痛みとストレスを与え、治癒に時間のかかる怪我です。日々よく注意をして、うちの子危なそうだなと思うのであれば、先に予防を行ってみてください。

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獣医師 高橋 渉

執筆者

獣医師
高橋 渉

2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会比較歯科学研究会所属

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