イタリアングレーハウンドの特徴|華奢な体にエネルギーを蓄えた、古くから人に愛される犬
まずは、イタリアングレーハウンドがどのような特徴を持つ犬であるのかを、見た目や歴史から紹介します。
スレンダーな体型と運動能力の高さが特徴の小型犬
@ iggy_lino45(イタグレ リーノ☺︎)
イタリアングレーハウンドは小柄で華奢でありながらも引き締まった体つきをしており、狩猟犬の血を引いた犬種。犬種の管理・登録を行うJKC(ジャパン・ケネル・クラブ)で「視覚ハウンド」に分類されており(※2)、優れた視力や走力を持っています。体重は5kg以下が理想とされ、上品で優美な見た目が大きな特徴です。
「grey」は灰色の意味ではなく語源不明の言葉と言われており、それに猟犬を意味する「hound」が組み合わせられています。ちなみに、一般的に「グレイハウンド」と呼ばれるのは別の犬種であるイングリッシュグレイハウンドです(下の画像)。
毛色はグレー・黒・茶などさまざま。なめらかな短毛で臭いが少ない
イタリアングレーハウンドは毛色のバリエーションが多い犬種です。ブラック系はブラック・シール、グレー系はグレー・ブルー、ブラウン系はレッド・フォーン・イザベラなど、同じ系統でも色味や濃さが異なります。
ベースの単色に加えて足・胸などに白い斑点が入るパターンが多く見られ、上記のほかにブラックタン・ブルータン・ブリンドルなどのカラーがあります。しかし、JKCでは毛色を「ブラック、グレー及びイザベラ(ペール・イエローのようなベージュ)のいかなる色調における単色。ホワイトは胸と足のみ許容される」としており、正式なものとして認められていないカラーも見られる犬種です。
毛はとても短くなめらかで、紫外線や雨などから皮膚を守るための硬い毛のみが生えたシングルコートの犬種です。短いのであまり目立たないものの、換毛期にはある程度の量の毛が抜けます。臭いが少ないこともイタリアングレーハウンドの特徴です。
古代エジプトにルーツを持ち、イタリアに渡って貴族に愛された
@i_am_k0r0n(イタグレのコロン)
イタリアングレーハウンドの祖先は、古代エジプトの宮廷で飼育されていた小型のグレーハウンドであると言われています。紀元前5世紀初期にイタリアに渡り、ルネッサンス時代に貴族に愛されて犬種として発展していきました。
日本では江戸時代にはじめて輸入され、身分の高い者に飼われていたという説があります(※3)。狩猟犬として活躍する一方で愛玩犬として愛されてきた歴史も非常に長く、国によっては愛玩犬のグループに分類されています。
イタリアングレーハウンドの性格|明るくて温厚な性格!繊細で甘えん坊な面もある
イタリアングレーハウンドがどのような性格であるかを詳しく解説します。自分のイメージする犬の性格に合っており飼いやすいかどうかをチェックしましょう。
明るくて温厚な子が多い。繊細で神経質な部分も見られる
@ itagure_teo_kobe(イタグレTeO(テオ)神戸散歩🐾)
イタリアングレーハウンドは、基本的に明るくて温厚な性格です。人や犬に対しての警戒心・攻撃性が低く、強気に吠えたり噛みついたりという行動は比較的少ないでしょう。
一方で、繊細で神経質な面もあります。突然近づいて来た人・犬に驚いて固まってしまう、大きな声で怒られて萎縮してしまうという様子が見られることもあるでしょう。
なお、犬は基本的にオスよりもメスのほうが縄張り意識や警戒心が少ない生き物です。メスのほうがおとなしい性格になるケースが多いと考えられます。
甘えん坊で愛情深く、飼い主のことが大好き
@halo_0806(イタグレのハロとイル🐶🐶)
上品な見た目のイタリアングレーハウンドですが、愛情深く、飼い主のことが大好きな甘えん坊です。自分に対してはっきりと愛情を向けてくれる犬種がいいという人に向いているでしょう。
しかし、飼い主や同居の犬などと離れたときに不安を感じる「分離不安」の傾向はそれほど高くないと考えられます。
とはいえ寂しさは感じており、特に子犬の時期はしっかりと時間をとってトレーニングすることが大切です。やむを得ず長時間家を空ける日が続く家庭の場合は、預けるタイプのしつけ教室を活用するとよいでしょう。
研究データはありませんが、人気の小型犬であるトイプードルやチワワなどよりも分離不安は強くないように思います。
賢さは十分にあるが、おやつへの興味が薄いことがある
@ari.a0913(イタグレのアリア)
飼い主への興味が強く、狩猟犬として活躍していたこともあり、トレーニングは決して不得意ではありません。
しかし、食べることにあまり興味がない犬も多く、トレーニングに集中させることが難しいこともあります。目がないほど好きなおやつや、おやつに代わるご褒美になるおもちゃなどを探して上手にしつけを行いましょう。
視覚ハウンドに分類される犬種は、食への興味があまり少ない傾向があります。イタリアングレーハウンドは比較的温厚な犬が多いので攻撃行動は少ないと思いますが、繊細で神経質な面もある犬種です。よく吠える犬もいるためトレーニングは必須です。
イタリアングレーハウンドの飼い方|十分な運動が必要。骨折・寒さに注意してたっぷり遊ばせる
イタリアングレーハウンドを飼う際の主なポイントは、運動・骨折対策・寒さ対策です。以下で詳しく紹介します。
意外にも運動量が多い。いたずら防止のためにも散歩・遊びをたっぷりと
@ iggy._.gabu.pelo(イタグレ がぶぺろ)
猟犬としても活躍していたイタリアングレーハウンドは、華奢な見た目に反して多くの運動が必要な犬種です。散歩は1日2回、1回あたり20〜30分を目安に毎日行きましょう。
運動欲求を満たすためには、散歩で近所を歩くだけでは不十分です。安全に配慮したうえで公園でボールを追いかけさせたり、自宅でおもちゃの引っ張り合いをしたりと、遊びもしっかりと取り入れてください。
イタリアングレーハウンドは「いたずら好き」と言われることが多い犬種です。運動不足による欲求不満があると、イスの脚を噛む、ティッシュを取り出してボロボロにする、キッチンに入って盗み食いをするなどの問題行動が出る場合もあります。
首が細く弱い犬種ですので、引っ張り遊びは首に負担がかからないように力を加減してあげる必要があります。
骨折には要注意!しつけで興奮を防ぐのがポイント
イタリアングレーハウンドは骨折をしやすい犬種です。「アニコム家庭どうぶつ白書2023」では、イタリアングレーハウンドの骨折のオッズ比(起こりやすさ)が非常に高く出ています(※4)。
また、最も起きやすいのは0歳で、犬に落ち着きがない状態であるのはもちろん、飼い主が飼育に慣れていないタイミングで起きやすいとも考えられます。以下を参考に骨折を予防しましょう。
◼︎骨折が起きやすい状況の例
- 人間のベッドやソファから飛び降りる
- 人が抱っこしたから落ちる
- 散歩中にカートから落ちる
- 階段の着地で転ぶ
- ドッグランで他の犬にぶつかって転ぶ
◼︎骨折を防ぐための対策の例
- 高いところに乗せる習慣を作らない
- ペットゲート等を活用し階段を登らないようにする
- しつけをしっかりと行って飛び跳ねさせない
- しつけをしっかり行って他の犬を見ても興奮しないようにする
- サイズが大きく異なる犬とは遊ばせない
- 家の中にステップやカーペットを設置する
以下の記事ではおすすめのフローリングマットを紹介しています。
愛犬がフローリングで滑らない!おすすめの犬用滑り止めマット【ニトリ・無印・100均】
しつけ・トレーニングをしっかりとしておくと、興奮してカートから落ちる、抱っこ時に暴れて落ちるなどの事故を防げます。
寒さ対策を念入りに。服を着せるトレーニングも必要
@barcaonda(Csato)
体が小さく毛が少ないイタリアングレーハウンドは、寒さに弱い犬種です。冬は部屋を常に適温に暖めなければいけないうえ、散歩の際は洋服が必須です。震えて動けなくなってしまう犬や、伏せて地面にお腹をつけられない犬が多く見られます。
服を着るのが苦手だと外に出づらくなるので、小さな頃から洋服を着る練習を行ってください。おやつ・おもちゃなどのごほうびを使いながらまずは全身を触ることに慣れさせて、「洋服を着るとよいことがある」と覚えさせていきましょう。
なお、以下の記事では犬のしつけのすべてを詳しく解説しているので、こちらもぜひ参考にしてください。
犬のしつけの完全ガイド📕動画付きでわかりやすく基礎やコツを解説【トレーナー監修】
初めて服を着るときは、脚を通さずに着られるデザインからスタートすると良いです。マジックテープの音を嫌がる可能性があるのでその点は確認してください。
足を通すものでも袖ありとなしではありのほうが嫌がりますし、後肢も通す場合は倍の手間がかかります。なるべく、手間がかからないデザインからはじめることをおすすめします。
また、人間の配慮不足で服を着せるのに痛みや恐怖を伴うとどんどん嫌がるようになっていきます。不安定な抱っこや、関節の構造を無視した動作などをしないように心がけてください。
多頭飼いをする際は、さらにケガ防止に配慮する
@halo_0806(イタグレのハロとイル🐶🐶)
小型犬で、比較的温厚な性格のイタリアングレーハウンドは多頭飼いされることが多い犬種と言えます。多頭飼いをする場合は、子犬でお世話が大変な時期や介護の時期が重ならないように年齢を考慮したり、ケンカの確率を下げるためにできる限り異性を選んだりすることがポイントです。
多頭飼いしにくい犬種ではありませんが、犬同士で興奮して走り回るのを防ぐためにしつけが必須です。家具の配置もケガをしないように整えましょう。
散歩の際に複数頭を同じカートに乗せたい場合、興奮をコントロールできないともつれ合ったり落ちたりしてケガにつながることがあります。しつけができていても思わぬ事故が起こる可能性があるので、2頭以上を乗せることはそもそもあまりおすすめしません。
イタリアングレーハウンドの寿命・病気|平均寿命は14.6歳。骨折に備えて保険に入るのがおすすめ
犬と一緒に暮らすにあたって、寿命やかかりやすい病気を把握しておくことは必須です。イタリアングレーハウンドの寿命と病気を解説します。
2023年発表の平均寿命は14.6歳で、比較的長い
「アニコム家庭どうぶつ白書2023」によると、イタリアングレーハウンドの2021年度における平均寿命は14.6歳(※5)です。他の小型犬と比較して長めで、長生きしやすい小型犬と言えるでしょう。
あくまで平均でありもっと長く生きる可能性も十分にあるので、20年近くは一緒に暮らすつもりでお迎えしてください。
◼︎主な小型犬の平均寿命
犬種 |
平均寿命(2021年度) |
トイ・プードル |
15.3歳 |
ミニチュア・ダックスフンド |
14.8歳 |
イタリアン・グレーハウンド |
14.6歳 |
ジャック・ラッセル・テリア |
14.5歳 |
チワワ |
13.9歳 |
ポメラニアン |
13.8歳 |
マルチーズ |
13.6歳 |
ペキニーズ |
13.2歳 |
パグ |
12.8歳 |
骨折したら手術が必要な場合も。医療費の備えを十分に
「アニコム家庭どうぶつ白書2023」によると、他犬種に比べて起こりやすい疾患は骨折です。前足の骨折の場合、年間診療費の平均は276,645円と他の疾患に比べてかなり高い金額です。
重度の場合は手術・入院が必要な可能性もあり、完治するまでに数ヶ月かかることもあるでしょう。愛犬の体や心に負担をかけないためにまずは骨折を予防することが大事ですが、高額な治療費に備えてペット保険への加入も検討してください。
【犬のペット保険18選を徹底比較】私が本気で選ぶおすすめTOP3はこれ!
イタリアングレーハウンドの価格・お迎え先|平均価格は約28万円。信頼できるお迎え先を選ぶ
イタグレ飼うことを決めたら、どこからお迎えするかを検討しなければいけません。イタリアングレーハウンドの値段やお迎え先選びのポイントを紹介します。
2024年4月の平均価格は約28万円で、他の犬種と大きく変わらず
ペットショップポータルサイトの「petmi」によると、2024年4月に集計したイタリアングレーハウンドの平均価格は約283,244円(※6)です。
他の犬種と比較して特に高い・低いということはなく平均的で、毛色による大きな価格差も見られませんでした。なお、掲載頭数はブルー(グレー)系が圧倒的に多かったため、他の毛色の子犬には出会いにくいでしょう。
お迎え先選びは、情報の提供と子犬が育った環境がポイント
お迎え先を選ぶ際に「ペットショップは悪徳だからブリーダーがよい」ということはありません。ペットショップかブリーダーかが大きな問題ではなく、親犬・兄弟犬の性格や病気などをはじめとする子犬の情報をしっかりと持っていて、丁寧に教えてくれるかが大事と言えます。
そして発達段階に合わせたお世話がなされているか、他の犬との交流ができているかなどもあわせて確認しましょう。
十数年は一緒に暮らすことになるので、値段や子犬の見た目などだけで判断せず、いくつかを比較してじっくり検討してください。
◼︎イタリアングレーハウンドのブリーダーの例
保護犬の里親になる場合は、長く待つつもりで探す
里親募集サイトでイタリアングレーハウンドを検索したところ、現在募集中の子は1頭のみでした。保護犬のイタリアングレーハウンドを迎えたいという場合は、数年は待つ必要があると考えられます。
どうしてもイタリアングレーハウンドを飼いたいという場合は、購入や他の犬種の保護犬も視野に入れて探すのがよいでしょう。
保護犬を迎え入れてみたい人は60%以上!知ったきっかけや迎える時の不安など徹底調査
イタリアングレーハウンドに関するQ&A
イタリアングレーハウンドは大型犬?
イタリアングレーハウンドは体重5kg以下の小型犬です。
イタグレに似た犬として中型犬のウィペットや、大型犬のグレーハウンド(=イングリッシュグレイハウンド)が挙げられます。「大きなイタグレを見たことがある」という人はおそらく上記のどちらかでしょう。
ミニチュアピンシャー(ミニピン)との違いは?
個体にもよりますが、イタリアングレーハウンドに比べてミニチュアピンシャーのほうがやや体高が低く、気が強い性格です。
さまざまなものに対して敏感に反応し、大きな犬にも強気で向かっていく傾向があるため、イタリアングレーハウンドのほうが穏やかな犬種と言えます。
また、イタリアングレーハウンドは単色やハチワレ猫のような模様のカラーが多いのに対し、ミニチュアピンシャーはいわゆるマロ眉のブラックタンがメジャーです。
ミニピンは、人に対しても犬に対しても警戒心が強い傾向があります。その結果、噛むことや吠えることもよく見られる犬種です。ミニピンは機敏・活発で気が強いので、骨折のリスクなどを除いて性格だけで考えると、イタグレのほうが飼いやすいと思います。
イタリアングレーハウンドとの相性をチェック!
@dantetito_iggy0820(Dante & Tito)
犬種選びにおいて大切なのは、その犬種が自分の生活スタイルや犬との理想の関わり方と合っているかどうかです。イタリアングレーハウンドのお迎えを後悔しないために、以下のチェックリストを確認しましょう。
1つでもチェックできないものがあった場合は、一度他の犬種も検討してください。
◼︎イタリアングレーハウンドとの相性チェックリスト
◻︎1日2回、20〜30分の散歩に行ける
◻︎ボール遊び・引っ張りっこなどで運動欲求を満たせる
◻︎興奮してケガをしないようにきちんとしつけができる
◻︎骨折対策のためにステップ・マット・ゲートなどの設置ができる
◻︎骨折した際の治療費を問題なく支払える
◻︎寒さ対策のために暖房を惜しみなく使える
◻︎洋服を複数枚用意でき、着せるためのトレーニングもできる
まとめ
@entsuka__17(tsukasa,end -遠藤 司)
イタリアングレーハウンドはイタリア原産の犬種で、スラッとした体型となめらかな短毛が特徴です。
狩猟犬と愛玩犬という2つの役割を持っており、狩猟犬らしい運動量の多さはありますが、比較的温厚で攻撃性はあまり高くありません。飼い主への愛情も深く、甘えん坊な性格です。
飼育の際は十分に運動させることと、骨折・寒さへの対策をすることが大きなポイントです。骨折を防ぐためにはしつけによって興奮させないことが大切で、万が一の場合に備えてペット保険への加入も検討しましょう。
平均寿命は14.6歳と小型犬のなかでも比較的長く、20年近く一緒に暮らす可能性がある犬種です。
ユニークな見た目と穏やかさが魅力のイタリアングレーハウンド。この記事を参考にして、お家にお迎えする準備をしてくださいね。
<参考>
(※1)一般社団法人ジャパンケネルクラブ「犬種別犬籍登録頭数 2023年(1月~12月)犬種別犬籍登録頭数」
(※2)一般社団法人ジャパンケネルクラブ「世界の犬 イタリアン・グレーハウンド」
(※3)一般社団法人ジャパンケネルクラブ「世界の犬 イタリアン・グレーハウンド」、Wikipedia「イタリアン・グレイハウンド」
(※4)アニコム損害保険株式会社「アニコム家庭どうぶつ白書2023」
(※5)アニコム損害保険株式会社「アニコム家庭どうぶつ白書2023」