犬の生理(ヒート)とは?人間の生理とは異なるもの!
わんちゃんの生理は正確には「ヒート(=発情期)」と言い、避妊をしていない女の子のわんちゃんであれば何歳であっても必ず起こるもので、男の子のわんちゃんを受け入れられる状態(妊娠可能な状態)への準備のことです。
妊娠に備えて子宮が充血することで出血をすることから、「発情出血」とも呼ばれています。
人間の生理は、排卵後、妊娠が成立しなかった場合に妊娠に備えて準備していた子宮内膜がいらなくなることから、剥がれ落ちて血液と一緒に排出されるためドロッとした出血がありますが、わんちゃんの場合は子宮内膜の剥離ではなく子宮の充血によるもののため、最初はややネバッとした赤褐色の液体で、次第にサラッとした感じの赤色からピンク色の液体になります。
■人間の生理とわんちゃんの生理の違い
- 人間の生理
…妊娠しなかった場合に出血
- わんちゃんの生理
…妊娠可能な状態への準備の出血
また、人間の生理は痛みを伴うことが多いですが、わんちゃんの生理は痛みは感じないと考えられています。
犬の初めての生理の時期は?一般的に生後6ヶ月前後
わんちゃんが初めての生理を迎える時期は、一般的には生後6~8ヶ月頃です。
しかし、小型犬では5ヶ月前後や、大型犬では10~16ヶ月などわんちゃんによって差があります。
■初めての生理が起こる時期の違い
- 平均
…生後6~8ヶ月頃
- 成長が特に早い小型犬
…生後4~5ヶ月頃
- 大型犬の平均
…10~16ヶ月頃
- 成長が特に遅い大型犬
…1歳半から2歳頃
実際、私の愛犬の1匹(体重1.8kgのチワックス)は、6ヶ月を過ぎてもなかなか生理がこず、10ヶ月を過ぎてやっと生理がきました。かかりつけの動物病院の獣医師からは、「体が小さく成長が遅いから」と言われましたよ!
犬の生理(ヒート)の周期は?年に約2回
わんちゃんの生理は、基本的には6~7ヶ月に1回で年に約2回ほど起こります。
季節は主に春と秋ですが、大切なのは時期や回数ではありません。
ここでもう少し詳しく知っておきましょう。
生理の周期が一定であることが大切
生理の回数や時期よりも大切なのは、周期が一定であることです。
生理周期はわんちゃんによって差があり、1年に1回や1年に3回という場合があったり、真冬に生理がくるわんちゃんもいます。
特に大型犬は、小型犬に比べて生理の周期が長い傾向があり、時期や回数に捉われすぎないことが重要です。
しかし、「前回は6ヶ月周期、今回は1年」など、生理周期が一定でない場合はホルモン分泌が乱れていることも考えられるため、獣医師に相談することをおすすめします。
犬に閉経はない
わんちゃんには、人間のように生理が完全に終わる「閉経」はありません。
そのため、ハイシニア犬であっても避妊手術をしていなければ生理はきます。わんちゃんによって個体差はありますが、10歳前後を境に出血量は徐々に減り、間隔も長くなる傾向にありますが完全になくなることはありません。
また、わんちゃんはずっと生理があるとは言え、卵巣の活動が減退することや母体への負担を考えると、交配は5歳頃までが限界と考えられています。
犬の生理(ヒート)の出血期間は?最長約3週間
わんちゃんの生理の出血期間は、個体差もありますが最長で約3週間です。
出血期間はわんちゃんの発情周期の「発情前期」にあたりますが、出血量が少なかったり、わんちゃんが自分で舐めている場合では飼い主さんが気が付かないこともあります。
また、周期と同様に出血期間も一定であることが大切なため、「前回は2週間だったけど今回は1ヶ月」といった場合は病気の可能性があるので動物病院を受診してください。
わんちゃんの生理周期については、期間や症状と共に次章で詳しく解説します。
犬の生理(ヒート)の期間と症状
わんちゃんには4つの「発情周期」があり、現れる症状は時期によって異なります。
ここでは、わんちゃんの発情周期の各期間や現れる症状を、発情前期・発情期・発情後期・無発情期に分けて解説します。
発情前期|生理の出血が起こる期間
わんちゃんの子宮が、妊娠に向けての準備をする期間が「発情前期」です。わんちゃんの「生理」と呼ばれる期間は主にこの発情前期になります。
精神状態や食欲には個体差がありますが、この時期には、以下のような症状や行動が見られます。
■発情前期のメス犬に見られる症状
・陰部から出血する(生理)
・陰部が赤くふくらむ
・頻繁に少量のオシッコをする
・落ち着きや集中力がなくなる
・イライラする
・食欲が増す
・食欲が低下する
発情前期は、まだ交配に適した時期ではありませんが、メス犬からはオス犬を引きつけるフェロモンが出ます。
フェロモンの匂いにつられて発情したオス犬がメス犬にちょっかいをかけることもありますが、この時期のメス犬が相手にすることはありません。
発情期|交配に適した期間
生理の出血がおさまる頃に訪れる、交配に適した時期が「発情期」です。わんちゃんと一緒に利用できる施設で目にする「ヒート中のご利用はご遠慮ください」という場合では、この発情期も含まれます。
発情期のメス犬には、以下のような症状や行動が見られます。
■発情期のメス犬に見られる症状
・陰部が赤くふくらむ
・ソワソワと落ち着きがなくなる
・積極的にオス犬に近付く
・尻尾を傾けながら、オス犬に体をこすりつける
発情前期とはガラリと変わり、発情期のメス犬はオス犬を積極的に誘うようになります。
人間の目からは、メス犬とオス犬が仲良くじゃれ合っているだけに見える行動も、交尾前のご挨拶の可能性が高いです。
愛犬の妊娠を希望しない場合には、発情期のメス犬をオス犬に近付けないように注意してください。
また、発情期のメス犬の匂いは数キロ先のオス犬も察知できると考えられており、オス犬を興奮させてしまうためお散歩などは注意が必要です。
発情中のメス犬に誘発されたオス犬が実際にこんなことも…
私は去勢していないチワワと暮らしていましたが、ペットショップで売れ残りとなっていた生後7ヶ月の女の子のミニチュアダックスフンドを急遽迎えることになりました。
チワワの去勢手術の予約を入れ、去勢手術を終えるまでは柵で区切って生活させようと考えたのですが、新しく迎えたミニチュアダックスフンドは発情期真っただ中だったようで、体の小さなチワワがスチール製の柵を破壊してミニチュアダックスフンドと交配してしまったということが…。
これがきっかけで妊娠して、子犬が6匹生まれました。どこにそんな力があるのかとびっくりしましたが、メス犬の発情期はそれくらいオス犬を興奮させてしまうため、十分に注意してくださいね。
発情後期(発情休止期)|偽妊娠が起こりやすい期間
発情期に受胎したメス犬が、妊娠や出産を行う時期が「発情後期(発情休止期)」です。
一方、妊娠しなかったわんちゃんは偽妊娠という状態になり、以下のような症状や行動が見られることがあります。
■発情後期のメス犬に見られる症状(※妊娠していない場合)
・胸が張り、母乳が出る
・食欲が落ちる
・自分の小屋などにこもりがちになる
・ヌイグルミなどを子犬のように世話する
・ヌイグルミを守ろうとして攻撃的になる
まるで子犬を妊娠・出産したかのような偽妊娠の症状は、初めて目にする飼い主さんはとてもビックリするかもしれません。
しかし偽妊娠は、わんちゃんたちが子孫を残していくために必要なことです。
例えば、わんちゃんの群れの中で出産した母犬が死んでしまった場合に、他のメス犬が乳母として子犬を育てなければなりませんが、偽妊娠はこうした非常事態に備えて起こる自然現象です。
時間の経過とともに落ち着くことがほとんどですが、あまりにも重い偽妊娠の症状を繰り返す場合では避妊手術をしてあげたほうがいい場合もあるため、獣医師に相談しましょう。
無発情期|心身が最も安定する期間
発情後期の偽妊娠も落ち着き、次の生理がくるまでの期間が「無発情期」です。
無発情期は、わんちゃんの体と心が最も安定する時期であり、問題となるような症状や行動は現れません。
生理中の出血への対処ポイント
生理中の愛犬の出血は、飼い主さんの悩みの種と言えるでしょう。
家の中をキレイに保ち、お掃除の手間を省くためには、生理用のアイテムを利用するのがおすすめです。
①愛犬に合わせて紙おむつやマナーパンツを選ぼう!
出血が多いわんちゃんでは、紙おむつやサニタリーパンツを利用しましょう。
■向いているわんちゃん
- 紙おむつ
…特に生理中の出血量が多いわんちゃん
- サニタリーパンツ(マナーパンツでも可)
…出血量が普通~やや多めなわんちゃん
紙オムツはそのままわんちゃんに付けて、汚れたら捨てればいいのでとっても手軽です。血液を吸収する面積が広く、漏れる心配が少ないので、生理中の出血量が特に多いわんちゃんに適していまます。
一方、マナーパンツは、当てるパッド(わんちゃん用の生理ナプキンのようなもの)を交換するだけなので、紙おむつよりも経済的です。
動き回っておむつが外れてしまうわんちゃんや、特に活発なわんちゃんでは、サスペンダーを使っておむつやマナーパンツを固定してあげましょう。
また、わんちゃんの感染症予防のためにも、おむつやパッドは汚れたらこまめに取り換えてあげることが大切です。
②犬に人間用のナプキンや紙おむつを使ってもOK
サイズが合うのであれば、人間用の生理用ナプキンや紙おむつを使用しても大丈夫です。
人間用のナプキンや紙おむつは犬用のパッドや紙おむつよりも値段が安くて経済的と言えます。
ただし、愛犬のサイズに合わせてナプキンや紙おむつのしっぽを出す穴をカットすると、内部のポリマーや綿がこぼれて、わんちゃんが誤食してしまう危険性があるため、テープでポリマーが出てこないようにしてあげなければいけません。
また、人間用のナプキンでは大きすぎるチワワなどには、適したサイズの犬用パッドを用意してあげましょう。
■人間用紙おむつのサイズ目安
- 新生児用小さめ
…超小型犬
- 新生児用
…超小型犬~小型犬
- 赤ちゃん用S
…小型犬
- 赤ちゃん用M
…小型犬~中型犬
- 赤ちゃん用L
…中型犬
- 介護用S
…大型犬
犬の生理(ヒート)で注意するべき5つのポイント
わんちゃんの生理中は、注意してあげなければいけないことが5つあります。
普段は仲良しなわんちゃんたちも、発情期や発情後期などはケンカなどのトラブルが起こる場合があります。いつも以上に気にかけてケンカにならないように配慮してあげることが大切です。
また、去勢していないオス犬がいる場合では、完全に部屋を分けるなど交配しないための対策が必要と言えます。
愛犬の生理中は、ドッグカフェやドッグランなど、ほかのわんちゃんも集まる場所へ行くことは止めましょう。
もちろん、わんちゃんと一緒に泊まれるホテルなどの利用も避けてください。
オス犬はメス犬がオムツなどをしていても、発情期のフェロモンを察知して興奮してしまうため、ケンカやトラブルの原因となってしまいます。
基本的にわんちゃんの生理の出血期間は最長で約3週間です。3週間以上続く場合は病気の可能性もあるため、一度動物病院を受診してください。
また、出血量は徐々に減りますが、期間に関係なく出血量が変わらない場合も獣医師に相談することをおすすめします。
獣医師に質問!犬の生理にまつわるQ&A
ここでは、わんちゃんの生理に関するよくある疑問を解決していきましょう。
A.出血量はわんちゃんによって異なりますが、大型犬ほど量が多い傾向があります。
一般的には、大型犬ほど出血量が多い傾向があり、小型犬の中にはごくわずかしか出血しないわんちゃんもいます。
特に初めての生理の時には、出血量が少ないことが多いです。
わんちゃんが自分で血液を舐めてキレイにしてしまい、飼い主さんが生理だと気づかないケースも珍しくありません。
A.わんちゃんが自分で舐めてキレイにしているのであれば、拭いてあげなくて大丈夫です。
しかし、出血量が多くて血が固まっていたり、陰部の周りの皮膚がうんちやオシッコで汚れている場合では優しく拭いてあげましょう。
場合によってはぬるま湯で洗い流してあげても大丈夫です。
A.散歩は問題ありませんが、周囲のオス犬に配慮するためにもドッグランは基本的に連れて行かないようにしてください。
愛犬が生理中であっても、元気があれば散歩に連れ出しても大丈夫です。ただし、ほかのわんちゃんのいない場所や時間帯を選んで散歩させるようにしましょう。
また、ドッグランやドッグカフェなど、ほかのわんちゃんも出入りするスポットへの立ち入りは基本的には避けてください。
オス犬は、発情前期や発情期中のメス犬の匂いに大興奮してしまいます。トラブルを未然に防ぐことが大切です。
A.体調が良ければシャンプーをしても大丈夫です。
愛犬の体調が良く、嫌がらないようであればシャンプーも問題ありません。陰部周りを洗って清潔に保つことは、感染症の予防にもなります。
トリミングサロンでシャンプーをお願いする際には、生理中でも受け入れてくれるかを事前に確認してください。
サロンによっては、他のわんちゃん(オス犬)への影響を考えて、「生理中のワンちゃんはNG」と決められている所もあります。
A.避妊手術を受けたわんちゃんは、生理がこなくなり、妊娠できなくなります。
避妊手術は、メス犬の卵巣と子宮(病院によっては卵巣のみ)を取り、生殖機能を失わせる手術です。
生理中の出血による煩わしさの解消や、生殖器の病気の予防などのメリットもありますが、全身麻酔のリスクや術後に太りやすくなるなどのデメリットもあります。
愛犬に手術を受けさせるかは、獣医師とよく相談して決めましょう。
避妊手術については、以下の記事で詳しく解説しています。
【獣医師監修】犬の避妊手術を徹底解説!費用やリスク・メリットは?
A.膿(うみ)交じりの血液が出る、子宮蓄膿症(「パイオ」もしくは「パイオメトラ」)があります。
子宮蓄膿症とは子宮の中に膿(うみ)が溜まる病気で、発情中のわんちゃんの免疫力が一時的に低下した際に細菌が子宮内に感染することによって起こり、命に係わることもある怖い病気です。
出産経験のない5~6歳以上のわんちゃんに多く見られ、生理後に起こりやすく2~3ヶ月は注意しましょう。
■子宮蓄膿症の犬に見られる主な症状
・出血が1ヶ月以上ダラダラ続く
・陰部から膿交じりの血液が出る
・よく水を飲み、大量のオシッコをする
・下痢や嘔吐をする
・食欲や元気がなくなる
・子宮に溜まった膿でおなかがふくらむ(重症時)
上記のような症状が見られた場合は、迷わず動物病院を受診してください。治療法としては手術による子宮の摘出が一般的です。
また、わんちゃんによっては子宮蓄膿症になっても出血しないケースもあります。実際に出産経験ありの愛犬は特に症状はありませんでしたが、違和感を感じたので動物病院を受診して検査をしてもらったところ、子宮水腫(子宮蓄膿症の手前みたいなもの)で緊急手術となりました。
「生理期間は終わったのに、愛犬の体調が優れない」など、少しでも違和感を感じたら、獣医師に相談することをおすすめします。
犬の手術費用の相場はどれくらい?実際にかかった手術費用や払えないときの対処法も合わせて紹介
まとめ
わんちゃんの生理は人間の生理とは異なり、注意してあげなければいけないこともたくさんあります。
愛犬の発情の周期を知ることで冷静に対処できるのはもちろん、子宮蓄膿症などの病気を早期発見しやすくなるでしょう。
■わんちゃんの生理まとめ
・出血期間は最長で約3週間
・基本的に生理の周期は6~7ヶ月間隔で年に約2回
・周期や出血期間が一定でない場合は獣医師に相談
・わんちゃんの生理は妊娠可能な状態への準備
・メス犬の発情期のフェロモンは数キロ先のオス犬も察知できる
・わんちゃんの生理に閉経はない
愛犬の生理が初めての場合は特にわからないことだらけで不安もあるかもしれませんが、避妊手術をしていないわんちゃんであれば定期的に訪れるものです。
愛犬が生理期間を快適に過ごせるように、生理中は特に気にかけ、配慮してあげてくださいね。
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー