小松菜はビタミンCやβ-カロテンが豊富で、犬が食べることができる野菜です。ほうれん草に比べて格段にシュウ酸が少なく、えぐみも強くないのでわんちゃんにも与えやすいでしょう。
実際、ドッグフードに小松菜を使用しているものもあるように、小松菜はカルシウムやビタミン類、食物繊維などの栄養素がバランス良く含まれていて栄養価が高いのも特徴です。
小松菜は上手に活用すれば犬の健康維持に役立てることができますが、そのためには正しい与え方を知っておく必要があります。
そこで今回は、獣医師でペット食育上級指導士でもある藤井ちひろ先生監修のもと、犬に小松菜を与えると期待できる効果や注意点、1日に与えていい量について解説します。
小松菜に含まれる主な栄養素と期待できる働き
葉物野菜である小松菜は、栄養があまりなさそうなイメージを持たれやすいですが、カルシウムや鉄、ビタミン類が豊富な野菜です。
小松菜のカルシウムは牛乳の1.5倍、ほうれん草の3倍と、野菜の中でもトップクラス!ほかにも、さまざまな健康維持に役立つ栄養素が含まれており、小松菜に含まれる主な栄養素と期待できる効果は以下のようになります。
■小松菜の主な栄養素と期待できる働き(こまつな 葉 茹で)(※1)
カロリー:14kcal / 100g
- カルシウム
100g中:150mg
…骨や歯を形成するミネラル。ごく一部はカルシウムイオンとして血液凝固を促し出血の予防、心筋の収縮作用増進、筋肉の興奮性を抑える働きをする(※2)
- 鉄
100g中:2.1mg
…全身に酸素を運ぶ大切な働きがある。赤血球中や筋肉中にあるタンパク質の構成成分でもある。適量摂取は運動能力や学習能力の向上が期待できる(※3)
- ビタミンC
100g中:21mg
…毛細血管、歯、軟骨などを正常に保つ。抗酸化作用で体内の活性酸素を除去する働きも。(※4)犬は体内で合成できるが、合成が追いつかないこともあり摂取するのが望ましい(※5)
- ビタミンK
100g中:320μg
…血液凝固に大きく関与。丈夫な骨づくりにも不可欠。コラーゲン生成を促進し骨質を改善する働きもあり、骨粗しょう症の治療薬にも使用される(※6)
- β-カロテン
100g中:3100μg
…体内で必要な量だけビタミンAとなる。体内でほかの栄養素の働きを促進するほか、抗酸化作用で体内の活性酸素を除去する働きなど(※7)
小松菜は健康維持に摂取したい栄養素がバランス良く含まれており、実は結構優れた野菜なんですよ!
また、小松菜はほうれん草と似ているイメージも強いかもしれませんが、小松菜は葉の丸みや根元が白いなどほうれん草にはない見た目があり、栄養素も異なります。
シュウ酸やカリウムなど気になりやすい栄養素を比較してみました。
■小松菜とほうれん草の栄養素の違い(※8)
※100gあたり
|
シュウ酸 |
カリウム |
カルシウム |
鉄 |
ビタミンC |
β-カロテン |
食物繊維 |
小松菜(生) |
50mg |
500mg |
170mg |
2.8mg |
39mg |
3100μg |
1.9g |
小松菜(茹で) |
ー(※9) |
140mg |
150mg |
2.1mg |
21mg |
3100μg |
2.4g |
ほうれん草(生) |
700mg |
690mg |
49mg |
2.0mg |
35mg |
4200μg |
2.88g |
ほうれん草(茹で) |
500mg |
490mg |
69mg |
0.9mg |
19mg |
5400μg |
3.6g |
ほうれん草のほうが食物繊維やβ-カロテンは多いですが、カリウムやカルシウム、鉄、ビタミンCは小松菜のほうが多くシュウ酸も少ないと、異なる点は多いです。
ほうれん草はシュウ酸が多いですが、気にならない場合では摂ってもらいたい栄養素によって使い分けてもいいでしょう。
犬が1日に食べていい小松菜の量
小松菜は健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれていますが、与え過ぎは栄養バランスの偏りや体調不良の原因となってしまうため、おやつやトッピングで小松菜を与える際は犬が1日に必要なカロリーの10%程度にしましょう。
とは言え、小松菜のカロリーは100gあたり14kcal(茹で)と低く、計算上では体重5kgの犬で267g(約一束)とかなりの量になってしまいます。小松菜でお腹がいっぱいになってごはんが食べられないといったことになる可能性があるので、以下の量を目安にしてください。
■犬が1日に食べていい小松菜の目安量(茹でる場合:14kcal / 100g)
体のサイズ |
1日の目安量 |
超小型犬(体重4kg未満) |
5~25g |
小型犬(体重4~10kg未満) |
25~50g |
中型犬(体重10~25kg未満) |
50~90g |
大型犬(体重25kg以上) |
90~140g |
また、犬の体質に合う合わないもあるため、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなども考慮して与える量を調整することが大切です。
生?茹でる?犬に小松菜を与えるときの注意点
小松菜は、適量を上手に活用すれば健康維持のサポートが期待できる野菜ですが、犬に食べさせるときは注意してあげなければいけないこともあります。
ここでは、犬に小松菜を与えるときの注意点を見ていきましょう。
食物アレルギーに注意する
※実際に食物アレルギーによって左右対称に目の周りの赤み、目の下の脱毛、激しい痒みが出た愛犬
小松菜にも微量のたんぱく質は含まれているため、初めて与えるときはほんの少量にして、食べた後は48時間ほど様子を見てください。
小松菜に食物アレルギーがある場合、食べてから30分~48時間以内に以下のような症状が見られます。
■犬の食物アレルギーの主な症状
・皮膚の赤みや痒み
・目の周りや口の周り、耳を痒がる
・脱毛
・足先や皮膚を執拗に舐めたりかじる
・下痢や軟便
・嘔吐
症状は犬によって異なりますが、上記のような症状が見られた場合は獣医師に相談しましょう。
犬のアレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています
犬のアレルギー(食物・アトピー・ノミ)原因・対策を徹底解説【皮膚科医取材】
茹でてから与える
小松菜は生でも食べられる野菜ですが、犬に与えるときは茹でてから与えるようにしたほうが安心です。
小松菜のシュウ酸は少ないので心配することはありませんが、消化の負担を考えるとサッと茹でてから与えたほうが消化しやすくなります。
長く茹でてしまうと水溶性のビタミンが流れ出てしまうため、沸騰したお湯に小松菜を入れて30秒程度茹でたら取り出しましょう。
もちろん、アツアツのままではなく、人肌程度に冷ましてから食べさせてあげてくださいね。
細かく刻む
犬が小松菜を消化しやすいように、細かく刻んでから与えましょう。
また、小松菜はしっかり洗えば根っこを食べることもできますが、根っこは硬いので切り落としてあげることをおすすめします。
持病がある犬は獣医師に確認してから与える
小松菜には少量のシュウ酸が含まれているほか、アブラナ科野菜特有の甲状腺ホルモンの分泌を阻害する「グルコシノレート(主にゴイトロゲン)」という成分も含まれており、結石症を起こしたことがある犬や甲状腺疾患がある犬など、持病がある犬は獣医師に確認してから与えたほうが安心です。
まとめ
小松菜は犬の健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれる野菜です。
■犬が小松菜を食べるメリットまとめ
・抗酸化作用による老化の予防
・運動能力や学習能力の向上が期待できる
・骨質の改善が期待できる
・歯や骨、軟骨、血液、皮膚などの健康維持
・全身の健康サポート
小松菜はクセのない味なので、おやつやトッピング、手作りご飯の食材としてなど、さまざまな場面で使用することができるでしょう。
ただし、犬によっては小松菜が好きではない場合もあるため、その場合は無理に与える必要はありません。また、食物アレルギーや消化への配慮、持病がある犬は獣医師に確認してから与えるなど、注意点もあります。
正しい与え方で小松菜を上手に活用してくださいね。
<参考文献>
※1:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※2:厚生労働省 e-ヘルスネット「カルシウム」
※3:大塚製薬 栄養素カレッジ「鉄」
※4:健康長寿ネット「ビタミンCの働きと1日の摂取量」
※5:ペット栄養学会誌「柴犬における血漿中ビタミンC濃度」
※6:大塚製薬 栄養素カレッジ「ビタミンK」
※7:わかさの秘密「β-カロテン」
※8:文部科学省「食品成分データベース」
※9:駒沢女子短期大学「シュウ酸およびミネラル類含量の比較」
執筆者
- ペットライター
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たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー