2024.05.02
2024.05.03
ビションフリーゼは、ふわふわとした真っ白な毛が魅力的なフランス・ベルギー原産の愛玩犬です。体重は3〜6kg程度の小型犬で、活発で人なつっこい性格の犬種。比較的体が丈夫で、平均寿命は14.6歳と長めです。
愛らしい見た目に惹かれてお迎えを考えている人もいると思いまずが、「本当に飼いやすい性格？」「トイプードルとどっちがいい？」と迷う部分があるのではないでしょうか。
この記事ではドッグトレーナー監修のもと、ビションフリーゼの特徴・性格・飼い方を徹底解説します。子犬の値段やブリーダーのほか、お迎え後の後悔を防ぐ相性チェックも掲載しているのでぜひご覧ください。
この記事の監修者
麻布大学獣医学部動物応用科学科卒業。人と犬が互いに幸せに暮らす社会を目指し、犬の正しい知識や飼い方を広めるため、ドッグトレーナーの道へ。犬のしつけ方教室スタディ・ドッグ・スクールに所属し、毎週末行なうレッスンには多くの飼い主と犬たちが集まる。預かりや訪問など様々なしつけ/指導を行なう中、動物系専門学校の講師も務める。
目次
「ビションフリーゼという名前は知っているけど、どのような犬種なのかわからない」という方は多いのではないでしょうか。
ビションフリーゼがどのような犬種であるのかを知ってもらうために、まずは見た目の特徴や歴史を紹介します。
ビションフリーゼは、体重3〜6kg程度の小型犬です。個体によって体重差はありますが、小型犬の中ではやや大きい部類に入ります。
ボリュームのある巻き毛を持ち、「パウダーパフ（俗称：アフロカット）」というスタイルにカットすると、アフロヘアのように丸いフォルムになります。
しっぽは上にピョンと上がっており、全身がぬいぐるみのようなコロンとした見た目です。
ビションフリーゼの毛色は「純白」のみで、白以外のカラーはありません。ただし、JKCでは「生後12カ月前までは被毛に僅かなベージュ（シャンパン）の傾向があってもよい」としており（※1）、子犬の時期はやや茶色がかっていることもあります。
毛量が多い二重構造のダブルコートでブラッシングやカットには手間がかかりますが、抜け毛は少なめ。臭いが少ない犬としても代表的な犬種です。
ビションフリーゼの起源は、「バルビー」と呼ばれた大型犬とマルチーズなどの白い小型犬を掛け合わせた犬であるという説があります。
その掛け合わせの系統が「バービション」と呼ばれ、のちに「ビション」と縮まったことが名前の由来になっており、「フリーゼ」は「巻き毛」を意味するフランス語です。
「ビション」系統の犬のうち1種類がスペインのカナリア諸島に持ち込まれ、それが現在のビションフリーゼとほぼ同じ犬種であると言われています。
その後フランスに渡り、ヨーロッパ各地で上流階級の貴族に愛玩犬として飼われていました。第1次世界大戦及び第2次世界大戦で絶滅しかけたところをブリーダーたちによって救われ、1932年にベルギーにおいて初めて犬種として登録されました。それに続き、1934年にはフランスでも登録されています（※2）。
ビションフリーゼは、見た目のイメージと実際の性格に少し差があるといえる犬種です。性格について詳しく解説します。
ふわふわとした可愛らしいビションフリーゼですが、とても活発な性格でよく動き回ります。突然ものすごいスピードで走り回る「ビションブリッツ」（ブリッツは「電撃、猛爆」の意）と呼ばれる行動にもその特徴が現れており、意外にも激しい動きをする犬種です。
他の小型犬に比べて恐怖心を感じる傾向が少なく、明るく陽気であることも特徴と言えるでしょう。「喧嘩っ早い」と言われることもありますが、その場合はしつけの影響が大きいと考えられます。基本的には攻撃性が低い犬種で、他の犬や人に対して友好的な性格です。
ビションブリッツが起こったときは、落ち着くまで待ちましょう。ただ、壁にぶつかったり、高い場所からの飛び降りなどによる怪我に注意しなければいけません。頻繁に起こる場合は、日々の遊びや散歩などの運動量を増やすことをおすすめします。
ビションフリーゼはとても人なつっこい性格で、飼い主にしっかり愛情を向けてくれるタイプです。人への関心が高く、賢さもあるのでトレーニングも比較的得意。
甘えん坊でありながらも留守番の際に大きな不安を感じる傾向は少なく、一人で過ごすこともそこまで苦手ではないと言えるでしょう。
日々の飼い方や接し方で、飼い主と離れることができなくなってしまうこともあります。
ビションフリーゼに限ったことではありませんが、オスよりもメスのほうが縄張り意識や警戒心が薄い傾向があります。これによって、メスのほうがややおとなしい性格になりやすいと言えるでしょう。
しかし、性格には個体差があり、メスであってもトレーニングは欠かせません。
見た目が似ているトイプードルとビションフリーゼのどちらをお迎えするか、迷う場合もあるでしょう。2犬種の違いは以下のとおりです。
| ビションフリーゼ | トイプードル | |
| 画像 |  |
 |
| 体重 | 3.0〜6.0kg | 2.0〜4.0kg |
| 毛色 | 白のみ | レッド・アプリコット・ブラック・ホワイトなど |
| 毛の構造 | ダブルコート | シングルコート |
| 性格 | 活発だがトイプードルより穏やか、そこまで寂しがりではない | とても活発、かなりの寂しがり |
| カット | 必要 | 必要 |
| ブラッシング の手間 |
かなり手間がかかる | そこそこ |
ビションフリーゼのほうが体重がやや重く、毛のボリュームがあるためお手入れにはかなりの手間がかかります。しかし、性格はビションフリーゼのほうが少し穏やかといえるでしょう。どのようなところを重視するかを考えて、自分に合った犬種を選んでください。
他の小型犬に比べてトレーニングもしやすいと思いますが、やはりトイプードルのほうが得意です。
ビションフリーゼは比較的飼いやすいと言える犬種ですが、性格や特性に合わせたトレーニングは欠かせません。またお手入れにも手間がかかります。飼い方のポイントを詳しく解説します。
ビションフリーゼの被毛はお手入れにとても手間がかかります。1ヵ月に1回はトリミング（カット）が必要でコストもかかり、ブラッシングは毎日行わなければいけません。毛量が多くある程度の時間がかかるので、お手入れの時間を取りにくい人にはビションフリーゼはあまり向きません。
お迎えする際は、カットの技術があり信頼して預けられるサロンがあるか、通いやすい場所にあるかを事前にチェックしておくべきです。ふわふわのスタイルにするためには技術が必要で、理想どおりに仕上がらないこともあるでしょう。
また、抜け毛はまったくないわけではありません。そもそもの抜けづらさに加え、抜けた毛が巻き毛に絡まって落ちづらいために少なく感じますが、特に換毛期はその絡まった毛を取り除くケアが重要になります。衣服に毛がついたり、床に落ちたりすることもあるので注意しましょう。
しかし、スリッカーブラシのピンが皮膚に当たると痛がりますので注意です。難しい場合は玉つきのものを使用してください。仕上げにコームを使用して絡まりがないかチェックできると理想的です。
ブラッシングは全身すべてをきれいにできることが理想ですが、時間をかけすぎると犬は嫌がってしまいます。特にはじめは嫌がらない時間で終わらせてください。嫌がりやすい足先や顔周りは、食べ物をあげながら行うようにしましょう。
毎日のブラッシングはじっとしていないと難しく、トリミングの際は知らない人に慣れない環境の中で長時間体を触られることになるので、ケアに慣れるトレーニングも必要です。
特に、「体を触られることを受け入れるトレーニング」と「動きを制御されることを受け入れるトレーニング」は小さい頃から行わなければいけません。
ご褒美をあげながら体全身を触ることを繰り返していきましょう。また、首輪を持ってご褒美をあげること、抱っこをしてご褒美をあげることなどを少しずつ練習していきます。以下の記事ではしつけ・トレーニングについてさらに詳しく解説しています。
カットの形にもよりますが、口周りや足周りは汚れやすく、足も短めで地面に近いため散歩のあとはお腹まで汚れることが多いです。そのようなケアにも慣れさせるようにしてください。
ビションフリーゼは愛らしい見た目の小型犬ですが、実は運動量が多い犬種です。散歩は1日2回、1回につき15～30分程度を目安に行きましょう。
さらに、散歩に加えてボール遊びやロープでの引っ張りっこなどの遊びを行ってください。運動や欲求を満たす遊びが不十分だと、吠えたり突然走ったりという問題行動につながってしまいます。
散歩でただ歩くだけでは満たされないことも多く、匂いをかぐ、走る、動くものを追いかける、噛むなどの欲求はおもちゃ遊びを通して満たしてあげてください。
ビションフリーゼは毛量が多く、暑さが苦手な犬種です。夏は早い時期からエアコンを使用し、室内を快適な温度に保ちましょう。
散歩は日が昇る前と沈んだあとの涼しい時間帯に限定し、愛犬の様子を見ながら長時間行きすぎないようにしてください。草のある公園まではペットカートを使うなど、できる限り熱い地面を歩かせないようにすることも大切です。
小型犬であるビションフリーゼはパテラ（膝蓋骨脱臼）になりやすい犬種です。
床が滑るとさらにリスクが高いので、フローリングにはマットを敷きましょう。前述のビションブリッツが起こる可能性もあるので、走り回っても転んだり膝に負担がかかったりしないように対策します。
高いところからの飛び降りや激しいジャンプも危険なので、興奮させすぎないように意識し、高いソファなどにはステップを置くのがおすすめです。
やや高貴なイメージがあるビションフリーゼですが、他の犬種と比べて特別に価格が高いわけではありません。ビションフリーゼの値段とお迎え先選びについて解説します。
ペットショップポータルサイトの「petmi」によると、2024年3月に集計したビションフリーゼの平均価格は約311,772円です。人気の小型犬として平均的な価格と言えます。しかし、一部で50万円を超える子犬もおり、値段には幅がありました。
同時期の掲載頭数は224頭で少ないことはなく、ペットショップでも比較的出会いやすい犬種です。
「ペットショップは悪質なところがあるからブリーダーのほうがいい」と考えている方もいるかもしれませんが、そうとは限りません。
大事なのは生まれたあとによい環境で過ごしているかと、親犬の性格・病歴などに問題がなく、その情報をきちんと提供してくれるお迎え先であるかです。その点をクリアしていれば、ペットショップ・ブリーダーを問わずお迎え先の候補にしてよいでしょう。
「安い売れ残りの子がいい！」という場合は、その子犬がなぜ売れ残っているのか、狭くてストレスが溜まる環境で長期間過ごしていなかったかなどを確認しなければいけません。
◼︎ビションフリーゼのブリーダーの例
| 犬舎名 | 所在地 |
| GEMINIMOON KENNEL | 岐阜県 |
| GATSUO KAPILINA | 神奈川県 |
| ORIN | 北海道 |
| PUPUHOUSE | 静岡県 |
子犬を迎える際にブリーダーさんに見学に行くと両親を見られることが多く、成長後の大きさや見た目なども予想しやすいため毛質や見た目にこだわりたい方にはおすすめです。ただし、親犬の状態はあくまで参考ですし、ブリーダーさんから迎えたからといって必ずしも良い毛質というわけではありません。
子犬を購入するのではなく、誰かから譲り受けたいと考えている方もいるはずです。
しかし、掲示板などで個人が「譲ります」と投稿しているものは注意が必要。育った環境や親犬の情報を教えてもらえない可能性があるほか、やりとりに慣れていない場合はあとから「返してほしい」と言われるなどトラブルになるリスクもあります。
保護団体が行っている保護犬の譲渡もありますが、ビションフリーゼは頭数が少ないので犬種を絞って探すのは難しいでしょう。
ビションフリーゼのミックス犬には、以下のような種類があります。
| 商品 | ビショプー（ビションプー） | シュナビション | キャバション |
|---|---|---|---|
| 画像 |  |
 |
 |
| 体重目安 | 3.5〜4.5kg | 4.0〜8.0kg | 5.0〜8.0kg |
| 親犬 | ビションフリーゼ×トイプードル | ビションフリーゼ×ミニチュアシュナウザー | ビションフリーゼ×キャバリア |
| 性格 | 活発、賢い、人懐っこいなど | 活発、気が強いなど | 活発、人懐っこいなど |
| 毛質 | 巻き毛 | 巻き毛など | 長めの巻き毛など |
| 抜け毛 | 少ない | 多い | 多い可能性あり |
| 食いつき度 | 0.00 | 0.00 | 0.00 |
小型犬のミックスは人気ですが、全体で見るとビションフリーゼのミックス犬は珍しく頭数が少なめです。狙って理想の子を探すのは困難なことが多いでしょう。
また、ミックス犬は成長するまでどのような体重・見た目・性格になるかわからないことにも注意が必要です。
ビションフリーゼは比較的体が丈夫と言われることが多い犬種です。一方で、注意しなければいけない病気もあります。寿命とかかりやすい病気について紹介します。
「アニコム家庭どうぶつ白書2023」によると、2023年発表（2021年度）のビションフリーゼの平均寿命は14.6歳です（※3）。
掲載されている30犬種の中で上位に入る数字で、長生きしやすい犬種と言えます。遺伝性疾患も少ない犬種とされ「きわめて健康的な体質と健全な心を持つ稀な犬種」と言われています（※4）。
小型犬であるビションフリーゼは、パテラ（膝蓋骨脱臼）のリスクが高いと考えられる犬種です。
また「アニコム家庭どうぶつ白書2023」によると、ビションフリーゼの保険請求割合で最も多いのは皮膚疾患です。他の犬種に比べて多い疾患は「角膜ジストロフィ」ーと「流涙症（涙やけを含む）」なので、眼の疾患にも注意しなければいけません（※5）。
日頃の食事・ケアにも気を付けながら健康を保っていきましょう。
丈夫と言われる犬種ではありますが、万が一の大きな病気に備えてペット保険への加入も検討するとよいでしょう。
ビションフリーゼに関する、よくある疑問点を解決します。
ビションフリーゼは小型犬です。トイプードルのほか、スタンダードプードルにも見た目が似ています。
どこかで画像や動画を見て「ビションフリーゼって大型犬なの？」と思った場合は、アフロカットをした白いスタンダードプードルであると考えられます。
ビションフリーゼに純白以外のカラーはありません。茶色や黒のビションフリーゼを見たことがあるという場合は、おそらくトイプードルやミックス犬でしょう。
ビションフリーゼは、トイプードルよりも体が大きく、ブラッシング・カットなど毛のお手入れに手間がかかることから飼育頭数がそこまで多くないと考えられます。
一方で、性格はトイプードルよりもやや穏やかなので、その2点が気にならないのであればおすすめできる犬種です。
犬種選びにおいて大切なのは、自分の生活のスタイルやイメージする犬との関わり方に合う犬種を探すことです。以下の内容のうち、当てはまるものが多いほどビションフリーゼが向いています。
◼︎ビションフリーゼとの相性チェックリスト
◻︎小型犬にしては大きめでも問題ない
◻︎1日15〜30分×2回の散歩に毎日行ける
◻︎ボール遊びや引っ張りっこ遊びなどができる
◻︎毎日時間をかけてブラッシングができる
◻︎トリミングサロンが近くにあり、毎月連れて行ける
◻︎頻繁な毛のお手入れに対応できるようにトレーニングを行える
◻︎エアコンを惜しみなく使って暑さ対策ができる
◻︎家の中を滑らない環境に整えられる
特に子犬の頃は、トイレの頻度が高いうえ、色々なものに慣らす社会化トレーニングにかなりの時間を費やさなければいけません。経験が浅いまま成長すると恐がりな性格になりやすく、噛みつきなどの深刻なお悩みの原因になることもあります。
ビションフリーゼは、日々のお手入れに時間がかかりますし、トリミングサロンに預けることも必要になります。体を触る練習や他の人に慣らす練習は、重点的に行わなければいけません。パピークラスや幼稚園などのトレーニング施設も活用しながら、子犬のころからしつけを行ってください。
ビションフリーゼは、フランス・ベルギーで生まれた体重3〜6kg程度の小型犬です。アフロカットによるふわふわとした丸い頭と純白の被毛が特徴で、愛玩犬として愛されてきました。
見た目に反して性格はとても活発で、突然走り回る「ビションブリッツ」という行動が見られることも。しかし、とても人なつっこく友好的で、トレーニングも比較的得意です。
飼育の際は、毎日のブラッシングや毎月のカット、そしてそれに慣れるためのトレーニングが大きなポイントになります。また、運動量の多さに合わせて十分に散歩・遊びを行うことや、暑さ対策を行うことも大切です。
体が丈夫であると言われることが多い犬種で、平均寿命は14.6歳と長めです。一方で、パテラや皮膚疾患、涙やけには注意しましょう。
小型犬としては少し大きめで、お手入れの手間もかかるものの、初心者でも比較的飼いやすいビションフリーゼ。お迎えを考えている方は、この記事でもっと理解を深めてくださいね。
＜参考＞
（※1）一般社団法人ジャパンケネルクラブ「世界の犬 ビション・フリーゼ」
（※2）一般社団法人ジャパンケネルクラブ「世界の犬 ビション・フリーゼ」、Wikipedia「ビション・フリーゼ」
（※3）アニコム損害保険株式会社「アニコム家庭どうぶつ白書2023」
（※4）Wikipedia「ビション・フリーゼ」
（※5）アニコム損害保険株式会社「アニコム家庭どうぶつ白書2023」
