公開 2024.02.04 更新 2024.02.06
【獣医執筆】犬が痙攣(けいれん)したら病院へ!原因や症状、対処法を解説

【獣医執筆】犬が痙攣(けいれん)したら病院へ!原因や症状、対処法を解説

目の前で愛犬が痙攣していたら、ビックリしてどうすればよいの分からなくなってしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。

「まぶたや手足がピクピクしている」

「全身でガタガタとけいれんしている」

「ヨダレを垂らしながらふるえている」など、痙攣といっても、さまざまな犬の状態があります。

睡眠時のピクピクした動きなど痙攣のように見えても心配のいらないケースもありますが、痙攣を起こす原因には病気が関係している場合が多く、症状によっては早急に動物病院の受診が必要です。

この記事では、犬の痙攣の原因やすぐ病院に行くべき症状、治療が必要な痙攣と間違いやすい犬の様子、対処法について獣医師が解説します。

愛犬が痙攣を起こすと焦ってしまうかもしれませんが、痙攣時の対応について知っておくことで、落ち着いて行動できるようにしていきましょう。

痙攣(けいれん)発作とは?犬の意志に関係なくおこる筋肉の収縮

チワワ

痙攣(けいれん)とは、犬の意識に関係なく筋肉が勝手に動いてしまう状態です。全身の痙攣のほか、手足や顔の一部がピクピクと痙攣するケースもあります。

同時に意識を失う、ヨダレを垂らす、嘔吐・失禁するなど以下のような症状が見られることもあるでしょう。

■犬の痙攣症状の一例

  • 手足をつっぱらせて全身で激しく震える
  • 手足をバタバタさせる
  • 顔や手足がピクピクする
  • 意識がない・もうろうとする
  • ヨダレを垂らす・白い泡を吹く
  • 口をくちゃくちゃさせる
  • 嘔吐や失禁をする

※すべての症状が見られるわけではありません。

痙攣が起こってもたいていは、数秒~1分、長くても2~3分程度でおさまることが多いです。

また、犬が痙攣を起こすと「てんかん」だと思う方もいるかもしれませんが、てんかんは痙攣を起こす病気の一つであり、痙攣(症状)=てんかん(病名)ではないので、自己判断で決めつけないようにしましょう。

次章では、犬が痙攣したときにすぐに受診すべき目安を解説していきます。

様子を見てもいい?5分以上止まらない痙攣は早急に受診

犬 病院

犬が痙攣を起こしたときに、自己判断で様子を見ることは危険です。

とくに犬の痙攣が5分以上つづく場合や、痙攣が終わりそうなタイミングで次の痙攣が始まったとき、1日に2回以上痙攣が起こる場合は命にかかわることもあり、痙攣を止める処置が必要なのですぐに動物病院に連絡し受診するようにしてください。

痙攣が長くつづくと脳へダメージを与え後遺症を残したり、命に危険が及んだりするリスクがあるので注意が必要です。

■緊急受診が必要な犬の痙攣

  • 痙攣が5分以上つづくとき
  • 痙攣が終わりそうなタイミングで次の痙攣が始まるとき
  • 1日に2回以上痙攣をおこすとき

痙攣が1回のみで1分以内におさまり、犬の様子が回復すれば、ひとまず受診を急ぐ必要はありませんが、痙攣を起こす原因には病気が関係している可能性があるため、犬が落ち着いたタイミングで動物病院を受診してください。

次章では、犬が痙攣を起こす原因について解説していきます。

犬が痙攣を起こす原因は?頭蓋内もしくは頭蓋外の問題

床に伏せるレトリーバー

犬が痙攣をおこす原因は、特発性てんかんや、脳腫瘍、脳炎などの頭蓋内の問題(以下の原因①~⑥)、もしくは低血糖や肝不全、中毒など頭蓋外の問題(以下の原因⑦~⑫)に分けられ、主に以下のような病気が挙げられます。(※1)

今回紹介している原因はあくまで一例のため、安易に自己判断せず獣医師による診察を受けるようにしてください。

血液検査や尿検査、レントゲン検査、エコー検査などで頭蓋外の問題(低血糖や肝不全、腎不全など)が除外された場合は、頭蓋内の問題を鑑別するために、MRI・CT検査、脳脊髄液検査、脳波検査などが行われることもあります。

ここからは、各原因について詳しく解説します。

原因①特発性てんかん

てんかんは、神経細胞が異常に興奮することにより、痙攣をはじめとするんかん発作を繰り返す脳の病気です。

発作の種類は、脳全体の興奮である「全般発作(全身の発作)」と脳の部分的な興奮による「焦点性発作(部分的な発作)」の2つに分けられ、それぞれ以下のような症状が見られます。

発作のパターンは犬により異なり、焦点性発作から全般発作に移行するケースもあるため、犬の様子をよく観察するようにしてください。

■特発性てんかんの主な症状

【全般発作】(全身の発作)

  • 全身の筋肉を硬直させる
  • 全身をガクガク震わせる
  • 意識がない
  • 犬かきのような動きをする

 

【焦点性発作】(部分的な発作)

  • 四肢や顔の筋肉を痙攣させる
  • ヨダレがたくさん出る
  • 口をクチャクチャさせる

全身性の発作は飼い主さんも容易に分かりますが、部分的な発作は気づきにくいため、いつもと様子が違うと感じたときは、獣医師に相談することをおすすめします。

特発性てんかんは犬に多く見られる病気で、遺伝的な素因が疑われるものの原因の特定が難しい場合も多く、6歳ごろまでに発症することがほとんどです。(※2)

てんかん発作が頻繁に起こる場合は、抗てんかん薬の服用によるコントロールが必要になります。

また、特発性てんかんは検査で明らかな異常が見られない場合を指し、脳腫瘍など脳に明らかな異常があれば「構造的てんかん」となり、通常のてんかん治療に加え、原疾患に対する治療も必要です。

原因②脳腫瘍

脳腫瘍は脳に腫瘍(良性・悪性)ができる病気ですが、脳にできた腫瘍が刺激となって痙攣を起こす場合があります。痙攣は脳腫瘍で見られる最も多い症状とも言われており、痙攣をきっかけに発見されるケースが多いです。

脳腫瘍は老犬に多い病気ですが、5歳以上で発症することがほとんどで、犬によく見られる脳腫瘍においては8歳頃から診断に至る場合が多いため、「高齢ではないから違うだろう」という自己判断はやめましょう。(※3)

脳腫瘍ができている部位や大きさによって症状は異なりますが、以下のような症状が見られます。

■脳腫瘍の主な症状

  • 痙攣
  • 性格が変わる(攻撃的になるなど)
  • 歩き方がおかしい
  • 視力低下
  • 首が傾く(捻転斜頸)
  • 眼球が揺れる(眼振)
  • 認知症のように徘徊する

中高齢で痙攣が繰り返し見られる場合では、脳腫瘍の可能性が高いです。

脳腫瘍はもともと脳に腫瘍ができる「原発性脳腫瘍」と、他の臓器の悪性腫瘍から転移する「転移性脳腫瘍」があり、抗てんかん薬による治療のほか、外科手術や放射線治療、抗ガン剤治療などが適応となる場合もあります。

原因③脳炎

脳炎は脳組織に炎症が起こっている状態で、病原体の感染(ジステンパーウイルスなど)による感染性脳炎と、免疫が関係する非感染性脳炎に分けられます。

脳炎になると、ふらつきや痙攣、視力低下など以下のような症状が見られ、さらに感染性の場合は病原体によりさまざまな症状が現れます。

■脳炎の主な症状

  • ふらつき
  • 痙攣
  • 視力の低下
  • くるくる回る(旋回)
  • 呼吸器・消化器・皮膚症状(ジステンパー)

犬では非感染性脳炎が多く、若齢の小型犬にみられるパグ脳炎が代表的といえるでしょう。また、ワクチン未接種の犬では、ジステンパーウイルスによる感染性脳炎にかかるリスクがあるので注意が必要です。

パグ脳炎では免疫を抑える治療や、抗てんかん薬による発作のコントロールを行います。感染性脳炎の場合は、病原体ごとに治療が異なりますが、ジステンパーウイルスの場合は対症療法が中心になります。

パグ脳炎については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【獣医師執筆】パグ脳炎(壊死性髄膜脳炎)とは?原因・症状・治療法|発病を防ぐ予防策

原因④水頭症

水頭症は、脳脊髄液が何らかの原因で循環できなくなり、脳内に過剰にたまってしまう病気です。

犬では先天性水頭症が多く、典型例ではドーム状の頭や両目の斜視が見られ、以下のような症状も見られます。

■水頭症の主な症状

  • 物覚えが悪い
  • うまく歩けない
  • 元気がない
  • 視力の低下
  • ふらつき
  • 痙攣

水頭症の治療は脳脊髄液の流れを改善し、脳の圧迫を軽減する治療を行い、痙攣がある場合は抗てんかん薬を使用します。

症状が重篤な場合や、内科療法の反応が悪い場合は手術を検討する必要があるでしょう。

原因⑤脳梗塞

脳血管障害(脳梗塞)は、老犬に多く脳に分布する血管の破綻や詰まりにより、脳の壊死が起こって発症します。脳梗塞が起こる部位により症状は異なりますが、主に以下のような症状が見られます。(※4)

■脳梗塞の主な症状

  • ふるえる
  • くるくる回る(旋回)
  • 麻痺がおこる
  • 首が傾く(捻転斜頸)
  • 眼球が揺れる(眼振)
  • 痙攣

梗塞により脳組織のむくみや炎症、てんかん発作などが生じるため、症状に合わせて利尿剤や消炎治療の薬、抗けいれん薬などを使用して治療を行います。

原因⑥頭部の外傷

高いところからの落下、事故などの外傷により大脳皮質が重度のダメージを受けると痙攣の原因になります。頭蓋骨の陥没や脳内出血など命にかかわる危険な状態になり得るので、たとえ元気に見えても早急に動物病院を受診してください。

■頭部外傷の主な症状

  • ふらつく
  • 麻痺
  • 視力の低下
  • 意識がない・もうろうとする
  • 痙攣

症状は頭部を外傷した状況や犬によって異なりますが、いつもと違った様子がないかよく観察しましょう。

また、頭部の外傷は、回復した後にてんかん発作を繰り返す原因となることもあるので、注意が必要です。

原因⑦低血糖

低血糖はとくに3か月齢以下の子犬に多く、空腹や栄養不良、下痢、ストレスなどにより容易に起こります。インスリノーマ、肝疾患、アジソン病など、さまざまな病気でも低血糖は起こるため、子犬だけでなく成犬や老犬でも発症するケースはあると言えるでしょう。

脳は糖分をエネルギー源としているため、低血糖になると、ふるえや元気がないなど以下のような症状が見られます。

■低血糖の主な症状

  • 元気がない
  • ふらつく
  • 嘔吐
  • ふるえる
  • ぐったりする
  • 痙攣

低血糖の自宅での応急処置は、フードが食べられるようならフードを与え、難しい場合は砂糖水やガムシロップを舐めさせます。

応急処置の後に改善しても、再び低血糖になる可能性があるので、動物病院に連絡をとって受診するようにしてください。また、低血糖の原因に病気が関係している場合は、原疾患に対する治療も必要です。

原因⑧肝不全

肝不全や門脈シャントなどの肝疾患では、正常であれば肝臓で解毒されるアンモニアなどの毒素が血液中にたまり、脳に障害を与えて痙攣を生じます。

食欲や元気がない、ヨダレをたらすなど主に以下のような症状が見られ、特に食後のタイミングで顕著になるのが特徴です。

■肝不全の主な症状

  • 食欲不振
  • 元気がない
  • ヨダレをたらす
  • ふらつく
  • 壁に頭を押し付ける行動
  • 痙攣
  • 黄疸(粘膜や皮膚が黄色くなる)

肝性脳症の治療は、アンモニアの産生を抑える薬や抗菌剤、療法食などの内科療法のほか、門脈シャントの場合は手術が行われます。

原因⑨腎不全

腎不全の末期の状態である尿毒症になると、毒素を尿として体外へうまく排出できなくなるため、毒素が蓄積して脳を障害し痙攣を生じる原因となります。

尿毒症では、食欲不振や嘔吐、下痢、ぐったりする、痙攣など以下のような症状が見られます。

■腎不全(尿毒症)の主な症状

  • 食欲不振
  • 嘔吐や下痢
  • ヨダレをたらす
  • ぐったりしている
  • 痙攣
  • 尿が少ない(乏尿)・出ていない(無尿)

点滴を中心とした治療が必要で、尿毒症の場合は数時間でなくなることもあるほど命の危険性が高いため早急に動物病院を受診するようにしてください。

【獣医師執筆】犬の腎不全とは?腎臓病の原因・症状・治療|日常で気をつけるべきこと

原因⑩中毒

殺虫剤や除草剤、チョコレート、タバコ、キシリトール、エチレングリコール、鉛などの中毒物質を犬が摂取し、中毒症状として痙攣を引き起こすことがあります。

摂取した毒物により症状は異なりますが、嘔吐や下痢、食欲の低下、痙攣など主に以下のような症状が見られます。

■中毒の主な症状

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 食欲の低下
  • ヨダレをたらす
  • 不整脈
  • 痙攣

急激に発症して、重篤な状態へと悪化することがあるので、中毒が疑われる場合はすぐに動物病院を受診しましょう。摂取した中毒物質に合わせた治療が必要ですが、主に催吐処置や点滴、毒素吸着剤の投与などによる治療が行われます。

犬が食べてはいけないものについては、以下の記事で詳しく解説しています。

犬が食べてはいけないものを徹底解説!症状や対処法、加熱調理が必要な食材も紹介
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原因⑪熱中症

熱中症は、夏場における高温多湿の部屋・車内での留守番や、暑い時間帯の散歩などで起こりやすいです。

ハアハアする、体が熱い、ヨダレがたくさん出るなど主に以下のような症状が見られ、重度になると痙攣や昏睡、死亡するリスクがあります。

■熱中症の主な症状

  • ハアハアしている
  • 体が熱い
  • ヨダレがたくさん出る
  • ぐったりしている
  • ふらつき
  • 痙攣

涼しい場所に移動させてからだを冷やし、水分が取れるようであれば与えてから、動物病院で適切な治療を受けるようにしてください。熱中症の治療として、体温管理や脱水、ショック状態に対する処置が行われます。

熱中症については、以下の記事で詳しく解説しています。

熱中症の対処法
愛犬の熱中症を予防!暑さ対策が必要なのは夏だけじゃない?症状や対処法、おすすめ対策グッズも

原因⑫低カルシウム血症

低カルシウム血症は、栄養不良や出産後のほか、副甲状腺機能低下症などの病気から起こり、ふらつきやふるえ、筋肉の硬直、痙攣など以下のような症状が見られます。

■低カルシウム血症の主な症状

  • ふらつき
  • ふるえ
  • 筋肉の硬直
  • 痙攣
  • 脱力

低カルシウム血症に対して、カルシウムやビタミンDの補給などが行われますが、病気が関係している場合は原因に対する治療も必要です。

年代別に見て多い原因(子犬・成犬・老犬)

パグとボストンテリアの子犬

どの年代でも痙攣が起こる可能性はありますが、それぞれ起こりやすい原因があります。

■犬の痙攣の年代別に多い原因

  • 子犬
    …低血糖、水頭症、脳炎、特発性てんかん、中毒
  • 成犬(小・中型犬~6歳、大型犬~4歳)
    …特発性てんかん、脳炎、肝不全
  • 老犬(小・中型犬7歳~、大型犬5歳~)
    …脳腫瘍、脳梗塞、腎不全

上記はあくまで年代別に見て多い原因であり、その他の病気が原因となる場合も十分あるため、自己判断せず動物病院を受診することが大切です。日頃から愛犬の様子をよく観察し、異変に早く気づけるようにしましょう。

治療が必要な痙攣と間違えやすい犬の様子5つ

チワワ

治療が必要な痙攣と間違えやすい犬の様子は、寝ている時のピクピクする動き、筋肉疲労、老化による後ろ足の震え、寒さによる生理的な震え、しゃっくりなどです。

ここでは、それぞれの犬の様子について詳しく解説します。

犬の様子①寝ている時のピクピクする動き

犬の睡眠時に目の周りや耳、手足がピクピク動くなどの様子が見られることがありますが、この場合は眠りが浅くなったときに見られる行動なので病気ではありません。

しかし、いつもと様子が異なり、体をのけぞる、激しく痙攣しているなどの場合は、病気が関係している可能性が高いので動物病院を受診してください。

犬の様子②ハードな運動後の筋肉疲労

ドッグランで走り回るような激しい運動の後は、筋肉が疲労して足がピクピクするなど痙攣していることがありますが、この場合は生理現象なので心配いりません。犬は疲れているはずなので、ゆっくりと休ませてあげましょう。

しかし、意識を失うような痙攣をする場合は、筋肉疲労によるものではないため動物病院の受診が必要です。

犬の様子③老化による後ろ足のふるえ

老化による後ろ足のふるえは老齢性振戦(ろうれいせいしんせん)と呼ばれるもので、通常は痛みはなく起立時のみ見られ、動いているときには見られません。基本的に治療を必要とするものではありませんが、心配な場合は獣医師に相談しましょう。

なお、老犬になると筋力が低下することにより足のふんばりがきかなくなるので、滑りやすい床にはマットを敷くなど家の環境にも気を付けましょう。

犬の滑り止め対策は、以下の記事で紹介しています。

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犬の様子④寒さや恐怖、緊張など生理的な震え

犬の意識や体調面に問題がなく、外にいて寒い、慣れない環境にいるなど思い当たる理由があれば、生理的な震えの可能性が高いため、心配いりません。

しかし、食欲元気がない、嘔吐や下痢をするなどの体調変化が見られる場合は、病気の可能性があるので動物病院を受診してください。

犬の震えについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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犬の様子⑤しゃっくり

しゃっくりは横隔膜の痙攣による症状で、人間と同様に犬でも起こります。早食いや、ストレスなどの精神的な影響によるものが原因と考えられており、様子を見ていれば数分で止まることがほとんどなので特に心配はいりません。

ただし、1時間以上続く、何日にもわたって頻繁に起こる、呼吸が苦しそうといった場合は病気の可能性もあるので動物病院を受診してください。

しゃっくりについては、以下の記事で詳しく解説しています。

犬のしゃっくりは動物病院に連れていくべき?原因や止め方を獣医師が解説【動画付き】

犬の痙攣中の対処法は?まずは犬の安全確保から!

チワワ

犬が痙攣を起こしたときは、安全な場所を確保し様子を見るようにします。高いところや危険な場所から犬を遠ざけるようにし、周囲をクッションなどでガードするなど犬がケガをしないようにするとよいでしょう。

発作中は犬が混乱しているため、不用意に触ると噛まれてしまう可能性があるので注意してください。痙攣がどれくらい続いているか時間を記録し、痙攣の様子を携帯電話などの動画に撮っておくと、獣医師が診察する際に役立ちます。

また、痙攣が終わった後は、しばらくふらふらしたり、ぼーっとしていたりすることもあるので、落ち着くまでそばで見守りましょう。

つづいて、犬が痙攣を起こしているときにNGな対処法について解説します。

犬の痙攣中のNGな対処法

犬が痙攣を起こしているときに、顔をなでる、無理やり押さえつけて止めようとする、大きな音を出す、犬の口にタオルを入れるなどの行為はやめましょう。

愛犬が痙攣していると、なんとか早く止めたいと思うものですが、これらの方法は飼い主さんがケガをするリスクや愛犬を窒息させる可能性があるので大変危険です。

犬の痙攣の予防方法

犬 注射(3)

痙攣を完全に予防することは難しいですが、犬が中毒物質を誤食しないように気をつけるワクチン接種で感染症を予防するなど、できるだけ痙攣が起きないように対策することが大切です。

■犬の痙攣の予防方法

  • 犬が中毒物質を誤食しないように気をつける
  • ワクチン接種でジステンパーなどの感染症を予防する
  • 子犬は低血糖にならないように食事や体調管理をする
  • 熱中症にならないよう夏場の留守番や散歩に気を付ける
  • 抗てんかん薬で治療している場合は忘れずに投薬する
  • 定期的に診察を受けて健康チェックをする

既にてんかんと診断されている場合では、大きな音や光などの刺激やストレスが引き金となって発作を起こすことも珍しくないため、できるだけ刺激を与えないようにすることも予防策になります。

犬の痙攣に関するQ&A

Q&A

ここからは、犬の痙攣に関してよくある質問についてお答えしていきます。

よくあるQ&A

    老犬に痙攣が起こった場合は、老衰で死が近いの?

    老犬に痙攣が起こった場合、必ずしも死が近いとは言えませんが、痙攣を起こす病気を抱えているかもしれません。

    動物病院で痙攣の原因を調べ、適切な治療を受けて老犬の状態が改善すれば、より長く生きられる可能性があるので、様子見をせず受診するようにしてください。

    痙攣と震えの違いは?

    痙攣も震えも筋肉の異常な動きのことを指していますが、それぞれ違うものです。痙攣は筋肉の収縮がおこり、全身の激しい動きや意識を失うなどの症状が見られる場合があります。

    一方、震えは振戦(しんせん)とも呼ばれ、プルプルと筋肉の細かい振動が見られ、意識を失うような状態にはなりません

    ただし、実際には、二つを見分けるのが難しい場合もあるので、動画をとって獣医師に確認してもらうようにしてください。

    痙攣などのてんかん発作が起こりやすいのはいつ?

    痙攣などのてんかん発作が起こりやすいのは、休息時や寝ている時と言われていますが、犬によっては金属音や強い光による刺激、雨天など天候の変化、ストレスなど精神的な影響があるときに発作が見られる場合があります。

    発作が起こったときの状況を記録しておくと、発作につながりやすいタイミングが分かることもあるでしょう。天候の変化など防げないものもありますが、苦手な音や光、ストレスなどをできるだけ避け、犬にとって負担の少ない生活を心がけることも大切です。

    また、老犬の飼い主さんの多くがてんかんの発作対策や体調管理に役立つと利用している気象予報のアプリ「頭痛ーる」なども活用してみるとよいでしょう。

    ■気象予報アプリ「頭痛ーる」

    Google Play
    App Store

    犬のてんかんによい食事はある?

    難治性てんかんの食事療法として、中鎖脂肪酸(MCT)を配合したケトン食がてんかん発作を減少させるとの報告があり、日本でもフードが販売されています。(※5)

    中鎖脂肪酸は、グルタミン酸受容体を阻害することで、てんかん発作の発生を抑えると考えられており、犬のてんかん治療の一環として効果を期待できるでしょう。

    まとめ

    【獣医師監修】ミニチュアダックスフンドがかかりやすい病気は?普段の生活で気をつけたいポイントも

    今回は、犬の痙攣について原因や症状、対処法を解説しました。犬の痙攣は激しい症状も見られるため、愛犬がこのまま亡くなってしまうのでは、と心配する飼い主さんも多いです。

    痙攣を起こす原因は、頭蓋内あるいは頭蓋外の問題に分けられ、実にさまざまな病気があります。それぞれの原因によって治療法も異なるため、自己判断せず動物病院を受診するようにしてください。

    犬が中毒物質を誤食しないように気をつける、ワクチン接種で感染症を予防するなど、日頃からできる痙攣の予防対策を行っていきましょう。

     

    参考一覧

    ※1:Cornell Richard P. Riney Canine Health Center 「Managing seizures」

    ※2・5:日本医科大学医学会雑誌第18巻第4号「犬猫のてんかん」 

    ※3:Andrew D Miller, C Ryan Miller, John H Rossmeisl. Canine Primary Intracranial Cancer: A Clinicopathologic and Comparative Review of Glioma, Meningioma, and Choroid Plexus Tumors. Front Oncol. 2019 Nov 8;9:1151.

    ※4:鳥取大学農学部「犬にもある脳梗塞」

    獣医師ライター 吉田 菜々子

    執筆者

    獣医師ライター
    吉田 菜々子
    獣医師国家資格

    日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。その後、臨床獣医師として動物病院に勤務。現在は漢方や鍼灸など中医学にも興味を持ち学んでいます。これまで犬や猫、うさぎ、ハムスターなどさまざまな動物を飼育してきました。実家で雑種犬を飼い始めたのをきっかけに、今ではその可愛さに魅了されています。飼い主さんのお役に立てるよう、動物に関する情報を分かりやすくお届けします。保有資格:獣医師国家資格

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