犬の歯茎は基本的にピンク色ですが、生まれつき歯茎が黒くなっている場合もあります。しかし、歯茎が黒くなる原因のなかには、病気が関係していることもあるので注意が必要です。
犬の歯茎が黒いときに、もともとの色なのか、病気で黒くなったのかわからず心配している方もいるでしょう。
この記事では、犬の歯茎が黒くなる原因や病院に行く目安、対処法について獣医師の私が解説します。
「愛犬の歯茎が黒いのは大丈夫?」「歯茎が黒いと何かの病気なの?」とお悩みの飼い主さんは、ぜひ参考にしてみてください。
犬の歯茎は基本的にピンク色ですが、生まれつき歯茎が黒くなっている場合もあります。しかし、歯茎が黒くなる原因のなかには、病気が関係していることもあるので注意が必要です。
犬の歯茎が黒いときに、もともとの色なのか、病気で黒くなったのかわからず心配している方もいるでしょう。
この記事では、犬の歯茎が黒くなる原因や病院に行く目安、対処法について獣医師の私が解説します。
「愛犬の歯茎が黒いのは大丈夫?」「歯茎が黒いと何かの病気なの?」とお悩みの飼い主さんは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
犬の歯茎は健康的なピンク色であることが一般的ですが、歯茎にも皮膚と同じようにメラニン色素を産生する細胞が存在しているため、先天的または後天的に歯茎が黒くなるケースがあります。
先天的とは生まれつき歯茎が全体的に黒い、あるいは黒いシミや斑点のようなメラニン色素沈着が見られることをいい、この場合は黒い模様というだけで身体に悪影響を与えることはほとんどないので心配いりません。
しかし、生まれつきではなく、何らかの原因で歯茎が黒くなる(=後天的)場合は、注意が必要です。もう少し詳しく見ていきましょう。
もともとはピンク色の歯茎だったのに後天的に黒くなったときは、外部刺激や老化によるメラニン色素沈着のほか、悪性腫瘍や歯周病といった病気が関係していている場合があるため注意が必要です。なお、成長過程で歯茎が黒くなっても、単なる色素沈着であれば問題ありません。
犬の歯茎が黒いときに、動物病院に行くべきなのか判断が難しい場合は、次章で解説する症状が伴っていないか確認してみてください。
犬の歯茎が黒いときに病院へ連れていく目安としては、口臭が強い、ヨダレが多い、歯茎や黒い部分が腫れているなど以下のような症状が見られるときです。
■病院に連れていくべき目安
後天的に犬の歯茎が黒くなっている場合では、早期治療が必要な病気の可能性があるため、早めに動物病院を受診してください。
また、犬の歯茎が黒くても上記のような症状が見られなければ色素沈着である可能性が高いでしょう。ただし、少しでも心配がある場合は、獣医師に相談することをおすすめします。
犬の歯茎が黒いときに考えられる主な病気は、歯周病と口腔内腫瘍が挙げられます。どちらも症状が似ている場合があるので、自己判断せず動物病院でチェックしてもらうようにしましょう。
ここでは、それぞれの病気について解説します。
歯周病が進行すると、炎症により歯茎が黒く変色することがあります。
3歳以上の犬のうち、約9割が歯周病にかかっていると言われており、例え綺麗な歯に見えても実は歯周病だったということもあるため、油断は禁物です。
歯周病とは、歯垢の中で細菌が繁殖し、歯茎に炎症を起こすだけでなく、歯の周りの骨も溶かしていく病気です。歯周病になると、口臭や歯茎が腫れるなどの症状が見られ、進行するとヨダレが多い、歯茎から出血する、歯がぐらつくといった以下のような症状が見られます。
■歯周病の主な症状
歯周病は多くの犬がかかりやすい病気で、愛犬がいつ歯周病になってもおかしくありません。
犬の場合は、2~3日で歯垢が歯石に変化し、歯の表面がザラザラになることで、さらに歯垢がつきやすくなります。すでに付着している歯石を飼い主さんが取り除くのは難しいため、動物病院での歯石除去の処置が必要です。
歯周病について、以下の記事で詳しく解説しています。
歯茎が黒くなる口腔内腫瘍として、色素細胞が腫瘍化する悪性黒色腫(メラノーマ)が考えられます。
メラノーマは口腔内腫瘍のうち、発生頻度も悪性度も高い腫瘍の一つです。色素細胞であるメラノサイトが腫瘍化してメラノーマとなり、黒色あるいは褐色の腫瘤(できもの・しこり)がつくられます。ただし、乏色素性といって、色素が欠乏しているタイプでは、黒色ではなくピンク色に見られるため、色だけでは判断できません。
メラノーマは歯茎だけでなく、舌や口唇、口蓋、爪の付け根、皮膚にも発生し、リンパ節や肝臓、肺などに転移することが知られています。メラノーマになると、口の中にしこりができる、口から出血する、口臭が強い、ヨダレが多いなどの以下のような症状がみられます。
■口腔内メラノーマの主な症状
メラノーマの症状は、歯周病の症状と似ているため、飼い主さんが判断するのは難しいです。腫瘍は早期発見・早期治療が重要なので、疑われる症状が見られたらすみやかに動物病院を受診してください。
犬の歯茎が黒い原因はどの年代でも色素沈着であることが多いですが、歳をとるにつれて歯周病や口腔内腫瘍のリスクが高くなります。歯茎の黒さに病気が関係しているときは、口臭やヨダレなど何かしらかの症状を伴うことが多いので、気になる症状があれば獣医師に診てもらいましょう。
■子犬・成犬・老犬で歯茎が黒いときに考えられる主な原因
日頃から愛犬の口腔ケアやチェックをすることで、異変があったときに気づきやすくなります。
後にご紹介する「愛犬の歯茎の異常に気づくために口腔内チェックが大切」でチェックするポイントを詳しく解説しているので合わせてご覧ください。
歯茎が黒くなるのは、どの犬種でも起こる可能性があります。ここでは、歯茎が黒くなりやすい犬種について解説します。
チャウチャウはもともと歯茎が黒い犬種です。そのほか、柴犬、ミニチュアダックスフンド、トイプードル、チワワ、ポメラニアン、ミニチュアシュナウザー、ゴールデンレトリーバーなどの犬種でも、生まれつきの色素沈着により歯茎が黒くなっているケースが見られます。
また、皮膚や被毛の色が濃い犬種は、歯茎も黒い傾向があると言えるでしょう。
歯周病は、どの犬種もなる可能性がありますが、とくに小型犬で起こりやすいと言われています。たとえば、ミニチュアダックスフンド、イタリアングレーハウンド、パピヨン、トイプードル、ヨークシャーテリア、チワワなどの犬種が代表的です。
小型犬は小さな顎に対して歯が大きく、歯間が狭くなるため食べカスなどがたまりやすいことなどが理由として挙げられます。
メラノーマも、どの犬種もなる可能性はありますが、好発犬種としてゴールデンレトリーバー、プードル、スコティッシュテリア、 ミニチュアダックスフンドなどの犬種が挙げられます。さまざまな年齢で発症が見られるものの、10歳以上の高齢犬で特に多いです。
歯茎が黒い原因が病気の場合は、それぞれの対処法を行うことが重要です。
単なる色素沈着の場合はとくに治療はしませんが、歯周病の予防のためにデンタルケアを行うことと、口腔内に異常がないかチェックすることを習慣にしましょう。
ここでは、歯周病と口腔内腫瘍の対処法について詳しく解説します。
歯周病が疑われる場合は、動物病院での歯科治療と自宅でのデンタルケアを行います。かかりつけの動物病院に相談するのもよいですが、犬の歯科専門病院や歯科に力を入れている動物病院を受診すれば、より詳細な検査や治療ができるでしょう。
一度付着した歯石は、歯磨きで取り除くことはできないため、全身麻酔下での超音波スケーリングで歯垢・歯石除去をする必要があります。また、重度の歯周病の場合は、抜歯を行うこともあるでしょう。
歯周病は、歯科治療に加えて自宅でデンタルケアを続けていくことが大切です。歯ブラシを使用したデンタルケアが基本となりますが、歯磨きシートや歯磨きガムなど愛犬に取り入れやすいものから行ってみてください。
歯磨きシートや歯磨きガムについては、以下の記事で詳しく解説しています。
口腔内腫瘍が疑われる場合は、動物病院での検査と治療を受ける必要があります。
さまざまな検査により口腔内メラノーマと判断された場合は、外科手術で腫瘍を摘出することが基本で、腫瘍の広がり具合に応じて放射線療法や抗癌剤を組み合わせて治療を行います。
■口腔内腫瘍が疑われるときに実施される検査例
腫瘍の範囲が広く手術の実施が難しい場合は、痛みの緩和や進行を遅らせる治療が選択されることもあります。
しかし、口腔内メラノーマの場合は、進行が早く急激に肺転移が起こり得るので、一般的に予後が悪いと言われているのが現状です。早期発見・早期治療が大切なので、愛犬の異変に気づいたら、すぐに動物病院を受診するようにしてください。
歯周病や口腔内腫瘍など愛犬の異常に気付くために、犬の口腔内をチェックする習慣が大切です。 デンタルケアのついでに、口臭の有無や歯茎、歯、舌のチェックを行いましょう。 異常が見られた場合は、早期に獣医師の診察を受けるようにしてください。
■犬の口腔内チェックのポイント
犬が口もとを触られるのを嫌がる場合は、いきなり口を開けず、優しく声をかけながらそっと触れるところから練習していきましょう。慣れてきたら唇をめくってみるなど、少しずつ口の中を見るようにしてみてください。どうしても口元を触らせてくれない場合は、犬がハアハアしているときやあくびをしたときなど、口を開けた時にチェックしましょう。
犬の健康状態や口腔環境に問題がなければ、通常気になる口臭は感じません。
犬に近づいて口臭があるかチェックし、臭いがある場合は、どのような臭いなのかも記録しておくとよいでしょう。
■注意が必要な臭い
上記のような臭いがしたときは、重篤な病気が隠れている可能性があるため早めに動物病院を受診してください。
ただし、食後すぐでは、食事のニオイが影響してしまうので、食後以外の時間に犬の口臭をチェックしましょう。
口臭については、以下の記事で詳しく解説しています。
犬の歯茎は通常ピンク色で、適度な弾力と湿り気があります。犬の唇を優しくめくって、歯茎の色が黒い、赤い、白い、黄色い状態でないかチェックしましょう。
ここでは、歯茎の色合いと考えられる原因の一例を紹介します。
■歯茎の色と考えられる主な原因
また、同時に歯茎や粘膜に傷や腫れ、出血、しこりなどがないかも見てください。
犬の歯並びや、歯の汚れ、歯石の付き方、歯の先端が欠けていないか、歯のぐらつきがないかなどをチェックしましょう。歯石は奥歯の方から付きやすいので、前歯の方だけでなく奥歯も確認することが大切です。
また、乳歯から永久歯に生え変わるときに乳歯が抜けずに残ってしまうケース(乳歯遺残)があり、トイプードルやチワワなどの小型犬の犬歯でよくみられます。乳歯遺残をそのままにしておくと、歯石がつきやすく歯周病の原因となるため動物病院で抜歯をすることが望ましいです。
犬の舌は通常ピンク色ですが、状況によってピンクの色合い(淡いピンク~濃いピンク)には個体差がみられます。普段と比べて舌の色合いに変化があるかどうかチェックしましょう。
愛犬の舌がどんな色合いなのか普段から見ておくと、舌の変化に気づきやすくなるでしょう。
舌の色合いと考えられる主な原因は、以下の一例を参考にしてください。
■舌の色合いと考えられる主な原因
また、もともと青い舌をもつチャウチャウや、部分的に舌斑と呼ばれる黒いシミをもつ犬もいますが、この場合は問題ありません。愛犬の舌の色だけでなく、舌の表面・裏側にしこりなどがないかも合わせてチェックしましょう。
ここからは、犬の歯茎が黒いときによくある質問についてお答えしていきます。
歯周病や口腔内メラノーマのような病気が原因の場合、かかる治療費は数万円~数十万円と幅があります。口腔内の状況や犬の全身状態、病院の施設により大きく異なるため、病院へ事前に確認をとるようにすると安心です。なお、歯茎が黒くても単なる色素沈着と考えられる場合は、通常治療を行いません。
歯茎が黒くなるのを完全に防ぐのは難しいものの、できる限り変色しないように努力できることはあります。たとえば、歯周病を予防するためにデンタルケアを日々行うことが大切です。また、歯磨きでの過度なブラッシングや、かたすぎるオモチャなどによる歯茎への刺激は避けるようにしましょう。
犬の歯茎が黒いときは、生まれつき・外部刺激・老化などによる色素沈着である場合が多いですが、歳をとるにつれて歯周病や口腔内腫瘍のリスクも高くなります。
口臭やヨダレなどの症状が見られる場合は、病気が関係していることも考えられるので、動物病院を受診するようにしましょう。愛犬の歯茎の異常に気付くために、日頃からデンタルケアを行い、ついでに犬の口腔内チェックもしてみてくださいね。