健康や美容面で注目を集める、天然の甘味成分のはちみつ。
甘くて美味しいはちみつを愛犬と一緒に楽しみたいと考える飼い主さんもいるのではないでしょうか。
持病のない健康な成犬であればはちみつを食べても基本的には問題ありませんが、高カロリーなため与えすぎないように注意する必要があります。
また、ボツリヌス菌による中毒を予防するために、子犬や体調が悪い犬に与えるのは避けるべきです。
今回は、犬にはちみつを与える際の注意点や1日に与えていい量について獣医師が解説します。
健康や美容面で注目を集める、天然の甘味成分のはちみつ。
甘くて美味しいはちみつを愛犬と一緒に楽しみたいと考える飼い主さんもいるのではないでしょうか。
持病のない健康な成犬であればはちみつを食べても基本的には問題ありませんが、高カロリーなため与えすぎないように注意する必要があります。
また、ボツリヌス菌による中毒を予防するために、子犬や体調が悪い犬に与えるのは避けるべきです。
今回は、犬にはちみつを与える際の注意点や1日に与えていい量について獣医師が解説します。
目次
健康な成犬であればはちみつを食べても大丈夫です。
後にご紹介する「犬にはちみつを与えるメリット・効果」で詳しく解説していますが、はちみつは疲労回復をサポートする、食欲不振に役立つ、腸内環境の改善が期待できるというメリットもあり、適量であれば犬にとっても嬉しい効果があります。
しかし、人間の1歳未満の乳幼児がはちみつを食べてはいけないと言われるように犬でもボツリヌス菌による中毒の可能性があるため、子犬の時期や体調が悪いときは避けるべきです。
ボツリヌス菌中毒とは?
また、はちみつは糖質が多くカロリーが高いので、エネルギーの補給になりますが与えすぎると肥満につながってしまいます。健康に良さそうだからとたくさん与えることは避け、少量にとどめることが大切です。
はちみつは高カロリーであり、与えすぎると肥満や栄養バランスの偏りを招く恐れがあるので、おやつやご褒美として与える場合は、愛犬が1日に必要なカロリーの約10%程度にしましょう。
また、下記は目安であり、犬の体質によっては合わない場合もあるので、愛犬の体調や便の状態、体型や活動量、ライフステージなどを考慮して与える量を調整することが大切です。
■【体重別】犬が1日に食べていいはちみつの目安量
(はちみつのカロリー:329kcal/100g)
※避妊・去勢済みの成犬で算出
体重 | 1日の目安量 | はちみつの目分量 |
---|---|---|
1㎏ | 3g | 小さじ半分 |
3㎏ | 7g | 小さじ1 |
5㎏ | 11g | 小さじ1半 |
7㎏ | 14g | 小さじ2 |
9㎏ | 17g | 小さじ2半 |
12kg | 21g | 大さじ1 |
15kg | 25g | 大さじ1半 |
20kg | 32g | 大さじ1と小さじ1半 |
25kg | 38g | 大さじ1と小さじ2 |
30kg | 43g | 大さじ2 |
■はちみつの保管方法
犬が1日に必要なカロリー計算は以下の記事で詳しく解説しています。
はちみつに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
■はちみつの主な栄養素
カロリー:329kcal / 100g(※1)
はちみつには犬の健康に役立つ様々な栄養素が含まれていますが、あくまでおやつやご褒美として適量与えるにとどめ、基本はフードやサプリで必要な栄養を摂取しましょう。
自然の優しい甘さが魅力のはちみつは、甘い物が好きな犬にとって喜んで食べてもらえるものでしょう。
そのため、以下のようなメリットがあります。
はちみつに含まれるぶどう糖や果糖は消化に時間がかからず、すぐに体に吸収されてエネルギーになる単糖類です。
即効性の高い栄養補給は、運動後や病後の疲労回復などに役立ちます。
おやつやトッピングとしての利用が基本ですが、少しでも高カロリーなものを食べてほしいときにはちみつを利用するのもよいでしょう。
はちみつの香りや甘味は、食欲が低下した犬の食欲を刺激してくれます。
フードを食べないときにはちみつをかけることで、食べるきっかけになる場合もあるでしょう。
ただし、食欲不振になる原因は病気が関係している場合もあるので、自己判断で原因を決めつけず食べない状態が続く場合は動物病院を受診してください。
はちみつに含まれるオリゴ糖やグルコン酸は、善玉菌を増やす働きがあります。
善玉菌が増えると腸内環境の改善、腸の蠕動運動の促進につながり、便通解消効果が期待できるでしょう。
はちみつを与える際には注意してあげなければいけないこともあります。
■犬にはちみつを与えるときの注意点6つ
犬の体質によっては、はちみつに食物アレルギー反応を起こす場合があるため、最初は少量から与え体調に異変がないか観察しましょう。
■犬の食物アレルギーの主な症状
食物アレルギーで見られる症状は犬によって異なりますが、上記のような症状が見られたら獣医師に相談してください。
また、はちみつに花粉が含まれている場合は、花粉アレルギーの犬で皮膚のかゆみなどの症状が出る可能性があるので注意が必要です。
犬の食物アレルギーについては、以下の記事で詳しく解説しています。
はちみつは糖質が多く高カロリーなので、太り気味の犬や肥満の犬には与えないようにしましょう。
栄養バランスの偏りを防ぐために、痩せている犬や食欲不振の犬であっても与えすぎないことが大切です。
はちみつには神経や筋肉にダメージを与えるボツリヌス菌中毒のリスクがあるため、子犬や体調不良の犬には与えないようにしてください。
はちみつには一切の加工処理がされていない純粋はちみつのほか、砂糖・添加物入りのものや成分調整が行われている加工はちみつがあります。
犬に与える場合はパッケージに記載されている原材料をよく確認し、砂糖や添加物が多く含まれている加工はちみつではなく、純粋はちみつを選んであげた方が安心です。
人用のはちみつ入り加工食品は、糖分や塩分などの添加物が多いため犬に与えるべきではありません。
■避けた方がよい人用の加工食品の例
ただし、手作りのはちみつレモンやプレーンヨーグルトにはちみつを入れたもの、「犬用」として販売されているはちみつ入りのクッキーやボーロなどのおやつを利用するのは良いでしょう。
何らかの病気にかかっている場合は、はちみつを食べても問題がないか獣医師に相談してから与えるようにしましょう。
特に糖尿病にかかっている場合は、血糖値に影響するためはちみつを与えるべきではありません。
なお、腎臓病ではちみつを避けた方が良いと言われる場合もありますが、体調が安定していれば与えてもよいでしょう。
ここからは、はちみつを犬に与える際によくある質問にお答えしていきます。
マヌカハニーもメープルシロップも犬に与えて大丈夫ですが、注意点もあります。
マヌカハニーとはニュージーランドに植生するマヌカという花からとれたはちみつのことで、一般的なはちみつと同じように健康な成犬であれば与えてもOKです。
ただし、マヌカハニーも子犬や体調が悪い犬に与えないようにしてください。
メープルシロップはカエデの樹木からとれる樹液のことで、ボツリヌス菌が含まれておらず犬に与えても問題ありませんが、はちみつと同じように糖分が多いため与えすぎないように注意しましょう。
「犬が1日に食べていいはちみつの量」の範囲内であれば、はちみつで薬を与えても大丈夫です。
とは言え、病気によって避けた方がいいケースもあるため、事前に獣医師に確認してから利用すると安心です。
はちみつを咳止めとして与えてもOKです。
はちみつに含まれるメルピロールと呼ばれる新規化合物が、鎮咳剤であるデキストロメトルファンと同等の咳止め効果を持つと報告されています。(※7)
また、東洋医学においてもはちみつは肺や腸の乾燥を潤す食材であり、咳止め効果や便秘改善効果があるとされています。
てんかん発作を起こすと多くのエネルギーを消費するため、脳の栄養補給としてはちみつを舐めさせるのは良いでしょう。
ただし、意識がしっかりしていないうちに食べ物や水分を与えると、飲食物が食道ではなく気管に入ってしまう(誤嚥)危険性があるので様子を見ながら与えるようにしてください。
はちみつは健康な成犬であれば食べても大丈夫ですが、ボツリヌス菌中毒のリスクがあるため子犬や体調の悪い犬には与えないようにしましょう。
また、はちみつは糖分が多く高カロリーなため、肥満や栄養バランスの偏りを防ぐために与えすぎないよう注意が必要です。
あくまでおやつやご褒美として適量にとどめ、初めて食べさせるときは様子を見ながら少しずつ与えてください。
はちみつの香りや甘味は食欲が低下している犬の嗜好性を高め、スムーズな栄養補給にもなるので正しい与え方を理解して上手に活用していきましょう。
<参考文献>
※1:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
※2:健康長寿ネット「三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量」
※3:味の素株式会社「アミノ酸とは?」
※4:一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所「ビタミンB群」
※5:わかさ生活 わかさの秘密「ミネラル類」
※6:健康長寿ネット「ポリフェノールの種類と効果と摂取方法」
※7:Identification of a New Pyrrolyl Pyridoindole Alkaloid, Melpyrrole, and Flazin from Honey and Their Cough-Suppressing Effect in Guinea Pigs