公開 2020.11.02 更新 2021.03.12
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【獣医師執筆】犬の骨関節炎の症状とは?予防や治療に大切な8つのこと

【獣医師執筆】犬の骨関節炎の症状とは?予防や治療に大切な8つのこと

最近ワンちゃんが散歩に行くのを嫌がったり立っているだけで足が震えたりしていませんか?

そのような症状が見られたら、それは骨関節炎の可能性があります。

骨関節炎は、太ったワンちゃんや高齢なワンちゃんにとても多い関節の病気です。

骨関節炎にならないためには、予防が大切!予防法をしっかり学んで、生涯元気に走れるワンちゃんを目指しましょう!

獣医師 高橋 渉

執筆者

獣医師
高橋 渉

2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会比較歯科学研究会所属

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犬の骨関節炎とは?

①主に加齢によっておこる関節の病気

骨関節炎は、変形性関節症とも呼ばれ、骨の関節に様々な強い負荷がかかることよって、骨と骨がぶつかるようになり、関節の軟骨がすり減っていったり、関節の骨の形が変わってしまったりして慢性的な炎症や痛み、こわばりを起こす関節の病気のことです。

人でも加齢などに伴ってよく起こる病気ですが、ワンちゃんやネコちゃんにも多く発生します。

特に以前と比べるとワンちゃんもネコちゃんも平均寿命が延びていることもあり、より動物病院で相談を受けることが多くなった病気です。

②ゆっくり進行するため、症状がわかりづらく、発見が遅れてしまう

ワンちゃんは、四本足で歩く動物です。そのため、そのうちどれかの足が痛くても、他の足に負重をかけることで一見すると普通に歩けてしまいます。

しかし、時間がたつにつれて、その負重をかけていた足にも痛みが起こり、徐々におかしな歩き方になっていきます

そのため、この病気は、ご家族が早期の段階で発見することが難しく、多くの場合ひっそりと病気が進行し、歩き方がおかしかったり、痛みが出初めたりするなどの症状が出るほど病気が悪化してからご家族が気づきます。

③根治させることは難しい

そして、症状が出たときには、すでに骨は変形してしまっており、骨が変形してしまうとそこから治療を行っても完全に元の状態にもどすことができないです。

そのため、この病気はできるだけならないようにすることと、なってしまった場合も早い段階で進行を抑えることがとても大切です。

年齢のせいと思って様子を見て、徐々に悪化していってしまい、早くにワンちゃんが寝たきりになってしまったりしないようにご家族はしっかり対策しましょう。

骨関節炎の原因となりやすいワンちゃんの特徴

犬 病気骨関節炎の原因としては、下記のものがあげられます。

  • 加齢
  • 遺伝
  • 若い年齢で発症する骨の病気
  • 外傷
  • 肥満

若い年齢で発症する関節の病気の中でも特に膝蓋骨内方脱臼という骨の病気は、トイプードル、ポメラニアンなどの多くの小型のワンちゃんに多い病気です。

この病気は、膝のお皿の部分が内側にはずれてしまう病気で、外れることによってその都度関節がすり減っていき、関節に損害を与えます。

ゴールデンレトリバーなどの大型のワンちゃんでは、股関節に股異形成という異常を持っている子が多いです。

これは、股関節の骨と関節が次第に緩み、関節に傷害を与える病気で骨関節炎の原因となります。また、骨関節炎の原因と悪化させる要因として重要なのが肥満です。

肥満は、すべてのワンちゃんが気をつけなければいけませんが特に避妊や去勢をした後のワンちゃんは要注意です。

避妊と去勢を行うと代謝が低下し、今までと同じカロリーをとっていると急激に肥満になっていってしまいます。

骨関節炎の症状

骨関節炎は、初期の頃は症状が目立たず、ゆっくり進行することが多いです。また、加齢に伴っておこることが多く、ご家族は年齢によるものと考えてしまいがちです。

そのため、下記のような症状が出たらこの病気の可能性を考慮しましょう。

■骨関節炎の主な症状

  • 元気がない
  • 食欲がない
  • 遊びたがらない
  • 階段の上り下りを嫌う
  • ソファーなどに飛び乗らなくなる
  • 散歩に行きたがらない
  • 身体を触ることを嫌がる、怒る
  • びっこをひく

それぞれどこの部位にどの程度の骨関節炎が生じているかによっても症状が異なるので、異常を感じたら動物病院で診断を受けましょう。

骨関節炎の診断

骨関節炎の診断には、問診と身体検査、レントゲン検査などが行われます。骨関節炎以外にも関節の病気は、関節リウマチや感染性関節炎など多数あり、獣医師はそれらから鑑別を行い、病気を確定していきます。

そのため、下記以外にも必要に応じて、他の検査が行われることがあります。

① 問診

問診では、上記のような症状の有無を確認します。そして、その症状がいつから、どの程度の頻度で、どういったときに起こるかなどを細かく伺います。

症状の出方、歩き方などによって想定する病気や位置が異なることがあるので詳しく伝えてください

特に、骨関節炎の症状が軽度な場合、家では症状が見られても病院だとその症状を隠してしまう子も多いです。

そのため、病院で症状を隠してしまう子の場合は、症状が出ているときの動画などを撮影し、先生に見せるようにすると診断が進めやすいです。

② 身体検査

身体検査では、身体全身の骨や関節、筋肉を触れるとともに関節の可動域などを確認します。

特定の位置を触ると嫌がるかどうか、関節が腫れていないかどうか、筋肉は左右で不均衡になっていないか、関節を曲げ伸ばししてどこまで曲がるか、スムーズに動くかなどは関節の状態を教えてくれる重要な要素です。

また、地面を歩かせてその歩き方からどこの部位に痛みがあるかを推定します。

③ レントゲン検査

問診、身体検査で痛みの位置や病気を推定し、必要に応じてレントゲン検査を行ないます。レントゲン検査では、初期では関節の変形や異常を確認することはできません

しかし、症状が進行するにつれて関節の腫れや骨棘と言われる棘のような骨の変形などが見られている場合は、確認できる場合があります。

④ その他

関節炎の診断には、その他にも超音波検査、関節液検査、血液検査、関節内視鏡などさまざまのものがあります。その都度診断の必要に応じて獣医師が選択します。

上記の検査を行っても、骨関節炎がある子を骨関節炎ですと確実に診断することは難しいです。そのため、まず骨関節炎疑いとして治療を開始することもあります。

もし、治療を開始しても症状が緩和されない、むしろ悪化してしまうなどが起こる場合は再度検査を行う必要があるでしょう。

また、ねんざや打ち身など一過性の痛みのみのため、継続した治療が必要ない場合もあるかもしれません。そのため、症状に応じて定期的な検査を受けることをお勧めします。

骨関節炎の予防と治療

犬 病気骨関節炎の予防と治療を行う上で大切なことは、まず病気の原因となるものを早期に発見し予防すること、それとともにすでにある症状は治療し改善させること、そして更なる進行を予防することです。

骨関節炎は、加齢も原因となるため完全に進行を止めることは難しく、症状に合わせた長期的な治療が必要となります。そのため、その子その子の症状に応じて獣医師との相談の上、治療計画を立てましょう。

① 原因の整形疾患の治療

膝蓋骨内方脱臼や股異形成など早い段階で原因となる整形疾患の病気に対しての治療を行うことができれば、その時点で受けてしまったダメージは改善できませんが将来的な骨関節炎の症状の予防につながります。

そのため、若いうちに健康診断を受け、診断可能な整形疾患は見つけてもらい、早いうちに治療をすることをお勧めします。

② 消炎剤

びっこや痛みを示しているワンちゃんに対しては、痛み止めとして消炎剤を使用します。しかし、痛み止めの使用によって、痛みが落ち着くことでワンちゃんが通常通り活発に動いてしまい、さらに痛みが強くなってしまうこともあります。

のため、使用する際は、痛みがなくなっても病気はあることを忘れずにワンちゃんが安静にできるよう心がけてください。

③ 骨関節炎症状改善剤

これは注射タイプのお薬で、週に1回で計4回行うことで関節の血行改善やヒアルロン酸の生合成促進などの作用があります。

すべての子に確実に効果があるというわけではないですが、定期的に通院することに問題がなければお近くの獣医師に相談してみてください。

④ 体重管理

体重管理は、骨関節炎の治療と予防にとても大切な要素です。もしワンちゃんが標準よりも太ってしまっている場合、それは多くの関節にとって負担となり、骨関節炎の発症と悪化の原因となります。ワンちゃんをダイエットさせる場合に注意しなければいけないこととしては、単純に食事の量を減らすことです。

よく病院でも体重が増えたことをご家族に伝えると、ご飯を減らさなきゃと言われることがあります。けれど、単純に食事の量を減らすことは、ワンちゃんの満足感が落ち、強いストレスとなります。ダイエットするうえで重要なことは、消費するカロリーよりも接種するカロリー減らすことです。

そのため、ただ与える量を減らすとカロリー以外にも必要な栄養素が減ることとなるため、健康上良くありません。

そこで、総合栄養食でカロリーのみが低いダイエット用の療法食に変更することが大切です。

また、ワンちゃんにそのダイエットフードをどれくらいの量を与えればいいのか悩まれる方も多いと思います。その子に必要な食事量をよくペットフードの裏を参照することが多いかもしれませんが、実はそこに落とし穴があります。

ペットフードの裏に何キロの子は何グラムと書いてありますが、必要な食事量、カロリー量はその子の体重だけでなく、何歳なのか、避妊去勢をしているのか、どのくらい体重を減らしたいのか維持したいのかなどによって異なります。

例えば、避妊去勢後は、必要なカロリー量が大きく減り、避妊去勢前と同じ食事を与えていると太ってしまいます。その子その子に必要なカロリー量は、計算で求めることができます。

下記のページを参照に、今与えているご飯をご自宅のワンちゃんにどれくらい与えていいかを計算してみてください。

【獣医師監修】ドッグフードの正しい与え方!パッケージの推奨量はあくまで目安

上記の計算で得られる量は、あくまで目安です。人と同じで体質的なものも影響しますので、こまめに体重を計って適正な体重を目指しましょう。

また、適正な体重がわからないときは、定期的に獣医師に聞いてみることも大切です。

ダイエット用の低脂肪ドッグフードおすすめ16選!1番痩せる低カロリーな肥満犬用フードは?【獣医師監修】
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⑤ 安静と運動

骨関節炎の症状があるワンちゃんは、まず安静を維持させてあげるようにしましょう。

痛み止めの使用によって痛みが緩和されるといつも通り動きたがる子もいますが、多くの場合関節の炎症は残っており、痛み止めの効果がなくなってくると痛みが出てきてしまいます。そのため、獣医師の指示に従い、その子その子に合わせてしばらくの間安静を保ちましょう。

痛みや炎症が引いて、獣医師から散歩などの運動をしてもいいと了承が得られたら運動を再開しましょう。適度な運動は、筋肉や体重を維持するうえで大切な要素です。

しかし、骨関節炎のワンちゃんは、多くの場合関節の痛みや違和感から散歩や運動することを嫌がります。

そのため、運動で体重を管理することは難しく、体重の管理するためには運動よりも上記のような食事によるカロリーのコントロールをすることが効率的です。骨関節炎のワンちゃんに負担なく運動させるためには、トレッドミルという水の中を歩かせることがお勧めです。

しかし、実施できる施設は多くないことから、まずは通常の散歩をゆっくりとした歩調で状態や体の大きさに合わせて少しづつ行うとよいでしょう。

⑥ サプリメント

最近では、関節に対して人と同様多くのサプリメントが販売されています。

特にグルコサミンやコンドロイチン、緑イ貝抽出物などは関節に効果があるとされています。サプリメントのためすぐに効果が出るというものではないですが、長期的に使用することで痛みの緩和などの効果がみられるかもしれません。

ご希望の場合は、獣医師に一度ご相談下さい。

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⑦ 環境の整備と体のケア

ワンちゃんが病院で骨関節炎と診断されたら、ご自宅で下記のことを注意してみてください。

  • 段差はないかどうか…段差の上り下りは、骨関節炎の関節に負担をかけてしまいます。自ら上り下りを嫌うようになる子もいますが痛みがあってもいつも通り上り下りする子もいます。そして、時に失敗して事故につながるケースもあるので、ご家族はなるべく階段などには柵をして自ら上り下りができないように注意してください。
  • 滑る床がないかどうか…ご自宅がフローリングなどの滑る床の場合は、滑り止めのマットなどをひいてあげるようにしてあげてください。滑る床は、足に負担をかけることになってしまい、骨関節炎を悪化させるかもしれません。
  • 足の裏の毛が延びてないかどうか…足の裏の毛が延びてしまっていると、肉球が滑り止めとして機能せず滑りやすくなってしまいます。定期的に動物病院やトリミングサロンなどで短い状態を維持しましょう。

⑧理学療法と中医学

最近では、ワンちゃんの骨関節炎の症状の緩和や進行の予防を目的として、マッサージやリハビリを行う理学療法や鍼灸などを用いた中医学の治療を行なっている獣医師や施設もあります。

かかりつけの獣医師に相談、もしくは行っている施設や獣医師を紹介してもらい、検討しましょう。 マッサージやリハビリの中には、ご自宅でできるものもあるので、獣医師の指導のもと日々のケアとして取り入れていきましょう。

骨関節炎の治療費

骨関節炎の治療費は、そのワンちゃんの状態からどの予防や治療を行うかによって異なります。

骨関節炎の原因が膝蓋骨内方脱臼などの骨の疾患にあり、かつその治療を行うとすると外科手術が必要となるため、その場合の費用は施設にもよりますが十数万円からと高額となるでしょう。

しかし、原因が加齢や肥満などの場合においては、内科治療のみとなり内服薬やサプリメントなどの費用に月数千円程度かかるでしょう。

まとめ

骨関節炎は、ご家族が気づかぬ間に進行する多くのワンちゃんにおこる病気です。

もしご自宅のワンちゃんが最近散歩に行きたがらなくなったり、遊びをしなくなったりしたら、年のせいと思わず一度病院で検査してもらうことをお勧めいたします。

もしかしたら痛みを緩和してあげることで、また元気に散歩や遊びを楽しめるようになるかもしれません。

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獣医師 高橋 渉

執筆者

獣医師
高橋 渉

2011年北里大学獣医学部獣医学科卒後、都内と埼玉の動物病院に勤務。2018年東京都杉並区に井荻アニマルメディカルセンターを開院しました。犬猫に優しい病院作りを目指し、キャットフレンドリー、フェアフリーなどの取り組みを行っています。(所属学会:小動物歯科研究会比較歯科学研究会所属

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