犬のトリミングとは?被毛をカットして整えること
犬のトリミングは、ハサミやバリカンなどで被毛をカットして整えることですが、トリミングは見た目をきれいにするだけでなく、愛犬の健康管理にも役立ってくれる大切なものです。
犬によっては定期的にカットしないと被毛が伸び続け、毛玉ができて皮膚トラブルを起こしたり、被毛がジャマで前がちゃんと見えずにぶつかってしまう、滑って転んでケガをしてしまうなど、日常生活に支障をきたすこともあります。
トリミングが必要な犬は、基本的に長毛のシングルコートの犬種ですが、ダブルコートのシーズーやミニチュアシュナウザーも特殊な被毛を持つことからトリミングが必要です。
■トリミングが必要な犬
【シングルコート】
…トイプードル、マルチーズ、ヨークシャーテリア、ビションフリーゼ、パピヨン、コッカースパニエルなど
【ダブルコート】
…シーズー、ミニチュアシュナウザー
そのため、シングルコートの短毛の犬やダブルコートの犬はトリミングは必須ではありませんが、皮膚病の犬やシニア犬などではお手入れをしやすくしたり体の負担を軽減するためにトリミングを行ったほうがいい場合もあります。
犬のトリミングは何をするの?サロンでの流れや頻度、費用目安を解説
グルーミングとトリミングの違い|グルーミングは全ての犬種に必要
グルーミングとは、ブラッシングやシャンプーなどを含めた体全体のお手入れのことで、被毛の長さや被毛のタイプにかかわらず、すべての犬が定期的に行う必要があるものです。
■グルーミングの内容
・ブラッシング
・シャンプー
・足裏カット
・爪切り
・耳掃除
・肛門腺絞り
グルーミングもトリミング同様に愛犬の皮膚トラブルやケガを予防したり、健康管理に重要な役割を担っているため、必ず行ってあげましょう。とは言え、場合によっては自分でグルーミングをすることがおすすめできない場合もあり、プロに任せたほうが良いこともあります。
次章で詳しく見ていきましょう。
自分でトリミングやグルーミングをすることがおすすめできない場合
自分で愛犬のお手入れをしてあげたいと思う飼い主さんも多いと思いますが、以下の場合はトリミングサロンや動物病院にお任せすることをおすすめします。
■自分でしないほうがいい場合
- 慣れていない飼い主さんの全身カット
…飼い主さんが初めての場合や慣れていない場合、いきなり全身カットをするのは犬にストレスを与え、トリミングが嫌いになることも
- 暴れてしまう犬
…飼い主さんだと安心できるため、逃げ出そうとしたり暴れる犬もおり、安全に行うことが難しい
- 子犬やシニア犬の冬のシャンプー
…家庭用のドライヤーは乾燥に時間がかかり、濡れている時間が長くなり体に負担がかかる
- 耳掃除
…耳の中の掃除は鼓膜を傷つけてしまったり、汚れを中に押し込んでしまう可能性が高いため、動物病院にお任せする
- シニア犬の肛門腺絞り
…シニア犬になると皮膚が薄くなり傷つきやすいため、力加減が難しいのでトリミングサロンや動物病院にお任せする
また、デザインカットを自分でしたい場合も、慣れていればいいですが慣れていない場合ではトリミングサロンでお願いしたほうが仕上がりが綺麗なことは言うまでもないでしょう。
トリミングサロンにお任せするメリットや流れについては以下の記事で解説しています。
犬のトリミングは何をするの?サロンでの流れや頻度、費用目安を解説
【参考】犬のトリミングの料金相場
犬のトリミング料金は、犬の大きさや犬種、住んでいる地域やトリミングサロンによっても異なりますが、小型犬でだいたい5,000円~10,000円程度です。
■犬のトリミングの料金相場
メニュー |
料金目安 |
シャンプーコース
(グルーミング) |
3,500円~ |
トリミングコース
(グルーミング+カット) |
4,500円~ |
部分カット |
500円~※1ヵ所 |
足裏カット |
500円~ |
毛玉除去 |
500円~※かかる時間で異なる |
ハサミ仕上げ |
500円~ |
歯磨き |
500円~ |
爪切り |
500円~ |
耳掃除 |
500円~ |
肛門腺絞り |
600円~ |
その他オプション
(デザインカット、シャンプー指定など) |
1,000円~ |
※グルーミングには、シャンプー、足裏カット、爪切り、肛門腺絞り、耳掃除が含まれる
爪切りだけや足裏カットだけで利用することもでき、中には爪切りコースとして、爪切り+足裏カット+耳掃除+肛門腺絞りを1,500円程度の料金で行っているトリミングサロンもあるため、上手に活用しましょう。
愛犬を自分でトリミングする際に必要なものは?ハサミやバリカン、ブラシ類
自分で愛犬のトリミングをする際に、必要なものはブラシ類、ハサミ類、部分用バリカンと全身用バリカン。滑り止めマットです。
■犬のトリミングに必要なもの
- スリッカーブラシ
…普段使いにはソフトタイプがおすすめ
- コーム
…目が粗いものと目が細かいものの両方あるのが便利
- 獣毛ブラシ
…仕上げの艶出し用。なくてもOK
- カット用ハサミ
…トリミング専用ハサミ
- すきバサミ
…トリミング専用ハサミ
- ミニハサミ
…足裏やお尻周り、顔周りなど細かい部分のカットにあると便利
- 部分用バリカン
…足裏やお尻周りなど細かい部分に使用。ハサミよりも安全
- 全身用バリカン
…全身をカットしたい場合に使用
- 滑り止めマット
…カット中に犬が滑って動いてしまうと危険
自宅でサマーカットを行う分には、カット用ハサミではなくバリカンだけでも十分ですが、足の甲や顔周りなどバリカンが使用できない場所ではすきバサミで整えたりするため、長毛の犬や被毛が多い犬ではスキばさみを1つ用意していてもいいかもしれません。
また、カットに使用するバリカンは、ペットのトリミング用を使用したほうが犬に負担が少なく、かつ時間の短縮にもつながります。人間と犬では毛質も皮膚の厚さも異なり、同じバリカンでも刃の作りがまったく違うため、ケガのリスクを避けるためにもペット用の使用がおすすめです。ハサミも同様に、工作用ではなく犬の毛がしっかり切れるカット用を使用しましょう。
【徹底比較】犬用バリカンおすすめ10選|自宅で足裏カットができる【部分用・全身用】
愛犬を自分でトリミングする前に!事前にシャンプーをしておく
トリミングサロンではハサミやバリカンの切れが悪くなるのを防ぐ目的と、汚れを落として毛を真っ直ぐにして、毛の長さを揃えた仕上がりにするためにシャンプーをしてからカットを行いますが、自宅でトリミングを行う際はできる限り時間をかけないためにも、前日や前々日にシャンプーをしておくのがおすすめです。
■犬のシャンプーの手順
- ブラッシングする
…汚れ・抜け毛・絡まりを取り除いておく
- シャンプーを泡立てる
…泡立てることで泡が汚れを包み込んで浮かせてくれるのと、泡がクッションになって皮膚や被毛のこすれを軽減してくれる
- 36~37℃程度のぬるま湯で体を濡らす
…足→胴→顔の順番で。水流は弱めにして、シャワーヘッドを体に当てながらお湯をかけることで犬のストレスが軽減されやすい。顔周りはスポンジにお湯を含ませて濡らすほうが安全
- 肛門腺を絞る
…自分ですることができる場合はここで行う。1~2度で出ない場合はそれ以上せずサロンや動物病院に任せる
- シャンプーをする
…爪を立てずに優しく洗う。汚れがひどい場合は2度洗いする
- しっかりすすぐ
…顔→体の順番で。ぬめりがなくなり、キュッという感覚になるまですすぎ残しがないように。カットをする場合、基本的にリンスやトリートメントはしない
- タオルドライをする
…表面だけでなく、被毛の奥まで届くように拭く。できる限り水分を取ることでドライヤーの時間が短縮できる。耳に軽く息を吹きかけてブルブルしてもらうことで耳の中に入った水が出てくる。耳掃除をする場合はここで行っておく
- 少しずつドライヤーで乾かす
…子犬やシニア犬では内蔵が冷えないようにお腹から乾かす。顔や耳に直接風が当たらないように注意。ブラシを使用しながら少しずつ、毛の根本から乾かしていく
犬のシャンプーは優しく丁寧に行う必要がありますが、精神的、体力的に負担がかかるため時間をかけすぎないようにスピーディーに行うことが大切です。
また、通常犬のシャンプーは月に1回程度が目安ですが、シニア犬では2ヶ月に1回程度を目安にしてください。
【犬種別ランキング】犬用シャンプーのおすすめ112商品を比較!いい匂い・子犬向きのものは?
【厳選】犬用バスタブおすすめ5選|折りたたみタイプや中型犬・大型犬向けなど
手順①手で全身をチェック
愛犬の全身を触り、異常がないかチェックをしましょう。
皮膚に赤みや傷はないか、イボやしこり、腫れている場所がないかなど、しっかり確認します。
このとき、触られて痛がったりするような場所があったり、何か異常がみつかった場合はトリミングは中断して、まずは動物病院を受診してください。
手順②ブラッシングをする
スリッカーブラシを鉛筆持ちして、ブラッシングをしていきます。
鉛筆持ちをすることで力が入りすぎず、犬の皮膚を傷つけるリスクが軽減します。
部分的に場所を決め、毛をかき分けて根元にブラシをポンと一瞬軽く当てたら、そのまま毛先に向かってとかしてください。
少しずつ移動して全身をブラッシングしましょう。
この際、ブラシを皮膚に当てるのは最初の一瞬だけで、皮膚に当てたままブラシを動かさないように注意してくださいね。
また、足をブラッシングするときは、足元から足の付け根に向かって少しずつ移動するのがポイントです。
犬用のスリッカーブラシおすすめ5選|正しい選び方と使い方は?
手順③カットする
伸びすぎてしまった飾り毛や、気になるムダ毛をハサミでカットします。刃先は外に向けましょう。
お尻付近をカットする場合は、しっぽを一緒に切らないように片手でしっぽを持ち上げてください。しっぽを持つことで、見えやすくもなりますよ!
バリカンをかけるときは毛並みに沿って肌と平行に
バリカンでカットする場合は、毛並みに沿ってバリカンを当て、少し浮かすようにして肌と平行にお尻のほうに向かってゆっくり動かします。早く動かしてしまうと、バリカンの刃がちゃんと毛を掴むことができず、ガタガタになってしまうので注意しましょう。
足のバリカンをかけるときは、上から足先に向かって動かしてください。
■太り気味の犬はここに注意!
皮膚にたるみがある犬の場合では、片手で皮膚を軽く引っ張って平らにしながらバリカンを動かしましょう。皮膚にたるみがある状態のままでバリカンをかけると、綺麗に刈れないだけでなく皮膚が刃に引っかかってケガをさせてしまう恐れがあります。
また、毛並みに逆らうようなバリカンのかけ方は、短くなりすぎてしまうのはもちろん、愛犬が急に振り向いたときにバリカンの刃で顔を傷つけてしまう可能性があるため、危険なのでしてはいけません。
できるようなら足裏カットと爪切りも行う
愛犬が疲れていないようなら、足裏カットと爪切りもしておきましょう。
肉球を軽く押して爪を出し、爪切りで切っていきます。
足裏バリカンも同じ要領で、肉球を軽く押さえながら伸びた毛をバリカンで少しずつカットしていきます。
肉球と平行にバリカンを当てるのがポイントです。
犬の爪切りについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【徹底比較】犬用バリカンおすすめ10選|自宅で足裏カットができる【部分用・全身用】
【トリマーに聞く!犬の爪切りの方法】切らないとどうなる?嫌がる時の対策やおすすめの爪切りも紹介
愛犬を自分でトリミングする手順④コームで整える
トリミングが終わったら、細目のコームで整えて終了です。
頑張ってくれた愛犬をたくさん褒めてあげることを忘れないでくださいね。
自分で愛犬のトリミングをするときに注意すること|自宅でのセルフカットは危険がいっぱい
自分で愛犬のトリミングをする際は、安全面に十分に注意しなければいけません。犬は「慣れている自宅」で「安心できる飼い主」さんにされているということから、我慢できずに動き回ったり、逃げ出す、暴れるといったこともよくあります。
そのため、自宅でのセルフカットは危険がたくさんあるということを念頭に置き、以下のことに注意して行うようにしてください。
①愛犬の体調が悪い時はしない
犬にとってトリミングは精神的にも身体的にも負担がかかるもののため、愛犬の体調が悪い時にトリミングをすることはますます体調不良を悪化させてしまうことになるため、避けましょう。
もちろん、シャンプーも厳禁です。
持病がある犬では、かかりつけの獣医師にトリミングをしてもいいか確認してから行うことをおすすめします。
②時間をかけすぎない、何回かに分けるのもあり
トリミングは時間がかかるものですが、時間がかかればかかるほど負担となってしまうため、時間をかけすぎないようにしましょう。30分以上かかりそうな場合はシャンプーだけ、カットだけ、爪切りだけといったように数回に分けるのがおすすめです。
■ペットサロンの一般的なトリミング時間
- グルーミングコース(グルーミングのみ)
…45~60分
- トリミングコース(グルーミング+全身カット)
…120分
トリミングで犬が我慢できる時間は20分程度とされていますが、3年以上の経験があるトリマーが行うことでそれ以上の時間であってもストレスは軽減し、3年未満のトリマーでは、時間がかかるとそれに伴いストレスが増えるという研究報告もあります。(※)
慣れていないと時間が余計にかかってしまうため、愛犬の精神的、身体的な負担を考えて、1度にすべてを行うのではなく日を変えて行うといったように工夫をしてあげましょう。
※参考:東京農業大学リポジトリ「イヌのグルーミング作業に関する行動生理学的研究」
③無理はしない
愛犬のトリミングをすべて自分でしようとするのではなく、細かい作業が必要な難しい部位や自分では無理だと思った部位は、プロにお任せしてしまいましょう。
トリミングサロンの多くは、メニューには載っていませんが相談するとカットだけをしてくれたりと、臨機応変に対応してくれます。
無理をすることで愛犬にケガをさせてしまうリスクが高まるため、愛犬のためにも無理はしないでくださいね。
④テーブルから落ちないように目と手は絶対に離さない
愛犬のトリミングはテーブルやトリミング台などの上で行うことが多いと思いますが、リードで固定していたとしても、絶対に目を離さないのはもちろん、添えている手を離さないようにしてください。
愛犬が何かの拍子で飛び降りてしまって、ケガをさせてしまうことにもなりかねません。
犬は高い場所が苦手なので、高い場所に乗ってもらうと比較的おとなしくなる傾向にありますが、「自宅」「飼い主さん」という安心感から無茶なこともしてしまうため、十分に注意しましょう。
実際、私の愛犬の1匹はトリミングサロンや動物病院の診察台の上では固まっていますが、自宅ではどんなに高い場所からでも飛び降りようとジャンプします…(T_T)
⑤ブラシやハサミでケガをさせない
ブラシやハサミ、バリカンを置く際に、犬が踏んでケガをしないように、置く場所や置いたときのブラシの先端や刃の向きにも注意しましょう。
ブラッシングでは皮膚を傷つけないようにブラシの当て方や力の入れ具合に配慮するのはもちろん、カットをする際にも刃が目や耳に入らないか、バリカンで皮膚を巻き込んでないかなど、よく確認しながら行ってくださいね。
⑥自宅では嫌がることはしない
犬にとって自宅は安心できる場所であることから、必要以上に嫌がることをするのは避けましょう。
爪切りが苦手という犬では、トリミングサロンや動物病院で爪切りだけをお願いするなど、自宅を嫌なことをされる場所と思われないようにすることも大切です。
愛犬のお手入れを自宅でできるようにするのは理想ですが、トリミングサロンや動物病院も活用しつつ、徐々に自宅でのお手入れにも慣れてもらうように時間をかけてあげるといいでしょう。
終わったあとにたくさん褒めてあげたり、ご褒美をあげると我慢すればいいことが待っていると学習してくれますよ!
⑦声掛けを忘れない
一生懸命になりすぎて忘れがちですが、トリミング中は愛犬に優しく声掛けすることを忘れないでください。
アイコンタクトや声掛けをしてあげることで、愛犬も楽しい気持ちになってくれます。
また、気を配ることで愛犬が何をされるのが苦手なのかもわかり、その作業をするときは気を反らすといったこともできるようになるでしょう。
まとめ
自分で愛犬のトリミングをするためには、しっかりと準備をして、時間をかけて慣れてもらうことが何よりも重要なポイントです。
いきなりすべてを自分でしようとしても、愛犬にとっては負担となってしまうだけ。トリミングサロンや動物病院などを上手に活用しながら、愛犬に負担が少なく、心地よい時間になってもらえるようにしてあげましょう。
トリミングは犬にとって、健康管理の役割も担う大切なことです。
焦らずゆっくり、安全面に十分配慮しながら自宅でのセルフカットにチャレンジしてみてくださいね。
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執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー