ミニチュアダックスフンドの特徴は?アナグマ猟のために胴長短足に作られた
ダックスフンドは、短い足と長い鼻を活かして地面の穴に住むアナグマや兎を狩猟していたドイツ原産の狩猟犬です。より小さな穴に潜り込みやすいように、中型犬のダックスフンドを小型に改良したのがミニチュアダックスフンドで、胴長短足の愛らしい見た目が特徴的です。
■ミニチュアダックスフンドの基本情報(※1)
分類 |
小型犬 |
用途 |
地上及び地下のためのハンティング・ドッグ |
サイズ
(胸囲) |
牡:32cm超~37cm以下
牝:30cm超~35cm以下 |
体重 |
規定なし |
一般外貌 |
細長い体長、短脚 |
被毛
バラエティー |
スムースヘアード、ワイアーヘアード、ロングヘアード |
毛色
(犬種標準) |
【単色】レッド。小さなホワイトの斑(直径3cm以下)は胸にある場合のみ許容。鼻、爪及びパッドはブラック【2色】濃いブラックまたはブラウンにタン・マーキングがある【ダップル(マール)】地色は常に濃いブラックまたはブラウン。レッド・ダップルは例外【ブリンドル】レッドの地色にダークなブリンドル(濃い縞)がある。鼻、爪及びパッドはブラック【マルチ・カラー(ワイヤーヘアーのみ)】ワイルド・ボア(イノシシ色)、ブラウン・ワイルド・ボア、ブラック・アンド・タン、ブラウン・アンド・タン
※タン・マーキングは目の上、マズル及び下唇の側面、耳の内縁、前胸、脚の内側及び後ろ側、足、肛門回りとそこから尾の下側3分の1もしくは半分 |
原産地 |
ドイツ |
歴史 |
ダックスフンドの繁殖に熱心であった最古のクラブは1888年に創立。非常に用途の広い有用な狩猟犬の一つとして公認。
正式名称はダックスフンド(DACHSHUNDS)だが、ダッケルやテッケルと呼ばれ中世の時代より知られる |
性格 |
生まれつき友好的。情熱的で辛抱強い。落ち着きがあり、攻撃的ではない |
通常、犬種標準サイズとして基準とされるのは体高(地面から肩の最高点まで)ですが、ダックスフンドは穴に潜り込むのが仕事という犬種のため、胸囲のサイズが基準になります。
アマグマ猟をするために作られたことから、胴が長く足が短い体型をしていますが、特殊な体型ゆえにほかの犬種に比べてかかりやすい病気も存在します。
次章からは、ミニチュアダックスフンドがかかりやすい病気を見ていきましょう。
ミニチュアダックスフンドがかかりやすい病気7つ【獣医師コメントつき】
人間同様にわんちゃんにもさまざまな病気があり、どの病気にもかかる可能性はありますが、ミニチュアダックスフンドがほかの犬種に比べて特に気をつけたい病気があります。
大手ペット保険会社アニコムが毎年発表している調査結果によると、他犬種に比べてかかりやすい病気は以下の通りです。
■他犬種に比べてかかりやすい病気(※2)
(対象:0~12歳のミニチュアダックスフンド / 45,831頭)
順位 |
傷病名 |
保険金請求割合 |
ミニチュア
ダックスフンド |
犬全体 |
1 |
椎間板ヘルニア |
5.7% |
1.7% |
2 |
歯根膿瘍/根尖膿瘍 |
1.0% |
0.3% |
3 |
乳腺腫瘍/乳腺腫瘤 |
0.8% |
0.3% |
4 |
脂肪腫 |
1.0% |
0.5% |
5 |
副腎皮質機能亢進症・
クッシング症候群 |
0.6% |
0.4% |
6 |
腰痛(原因未定) |
1.4% |
0.8% |
7 |
多飲多尿(原因未定) |
0.6% |
0.3% |
8 |
歯周病/歯肉炎
(乳歯遺残に起因するもの
含む) |
5.8% |
3.7% |
9 |
鼻炎/副鼻腔炎/上部気道炎 |
0.7% |
0.5% |
10 |
アレルギー(詳細不明) |
0.7% |
0.5% |
11 |
膵炎 |
1.1% |
09% |
12 |
尿の性状異常(原因未定) |
0.8% |
06% |
13 |
肛門嚢(腺)炎/肛門嚢(腺)
破裂 |
1.0% |
08% |
14 |
その他の肝/胆道系疾患 |
1.2% |
1.1% |
15 |
白内障 |
1.2% |
1.1% |
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対象が限られていることや12歳以上は含まれていないため、これらの病気以外にも注意する必要はありますが、こうした結果となっているのは参考にできるのではないでしょうか。
実際、私の愛犬たちは、椎間板ヘルニア、脂肪腫、乳腺腫瘍、クッシング症候群、原因不明の多飲多尿、歯周病、肛門嚢炎、胆のう粘液嚢腫、白内障など、ランキングに入っている病気の多くにかかりました。ミニチュアダックスフンドだからというわけではないですが、かかりやすい病気がわかっていれば慌てずに対処できるでしょう。
ここでは、ミニチュアダックスフンドがかかりやすい病気を獣医師のコメントとともにご紹介します。病気が疑われるときは、早めに治療を受けさせてあげてくださいね。
1.椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間でクッションような役割を果たす椎間板が変形して、飛び出して脊髄(神経)を圧迫し、痛みや麻痺などを引き起こす病気です。
腰だけでなく、胸部や頸部などどこにでも起こる可能性があり、重度の椎間板ヘルニアでは手術が必要になることもあります。
ミニチュアダックスフンドは「ハンセン1型椎間板ヘルニア」になりやすく、その場合ではグレードの進行が速いとされています。
■椎間板ヘルニアのグレード(胸腹部)
- グレード1(軽度)
…痛みだけが見られる状態
- グレード2(軽度)
…痛みに加え、歩くときにふらついたり足先を擦って歩いたりする。4本足で歩行できる状態
- グレード3(重度)
…後ろ足や前足を自分の意志で動かすことができない。立ち上がったり歩くことができなくなったり、後ろ足を引きずって前足だけで歩いたりする状態
- グレード4(重度)
…自分の意志で排尿できない。多少足の感覚は残っている状態
- グレード5(重度)
…麻痺した足の感覚がない状態。手術が必須
椎間板ヘルニアの原因
わんちゃんが椎間板ヘルニアを発症する原因は、以下の通りです。
- 加齢
…年齢の増加が原因。加齢により椎間板が変性することで発症
- 遺伝
…軟骨異栄養症という遺伝子が原因。生まれつき椎間板が固くなりやすく脊髄を圧迫することで発症
- 外傷
…外傷や激しい運動、無理な姿勢などで背骨に負担がかかり、椎間板が変性することで発症
ミニチュアダックスフンドのような胴長短足の体型では、滑りやすい床を歩く、階段の上り下りやベッドやソファに飛び乗る、後ろ足だけで立ち上がるといったことでも足腰に負担がかかりやすくなるため特に注意が必要です。
椎間板ヘルニアの主な初期症状
椎間板ヘルニアは軽度であれば内科療法となることが一般的なので、重症化する前に動物病院を受診することをおすすめします。
■椎間板ヘルニアの主な初期症状
- 動きたがらない
- 震えている
- 抱っこをしたときに「キャン」と鳴く
- 食欲が落ちる
■発症が多い年齢(※2)
発症が多い年齢は11歳頃ですが、ハンセン1型椎間板ヘルニアでは若いうちから発症しやすいため、普段から腰に負担をかけないように配慮してあげることが大切です。
椎間板ヘルニアはミニチュアダックスフンドの飼い主さんには必ず知っておいていただきたい、犬の脊髄の病気で最も多いトラブルです。
2.乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、乳腺組織の一部が腫瘍化してしまう病気で、良性と悪性があります。
1ヵ所だけでなく数ヵ所にできることもあり、事前に良性と悪性の判断はできないことや、良性でも悪性に変わることがあることから、基本的には手術による切除が第一選択です。
しかし、すでに転移していたり、手術をしてはいけない乳腺腫瘍の場合はその限りではありません。
■手術をしてはいけない乳腺腫瘍とは
- 炎症性乳癌
…炎症を伴っているように見えるのが特徴。非常に悪性度が高く、進行が速くて転移率も高い。手術をしてもすぐにより激しい炎症が起こり、傷口がくっつかないなど、傷自体がきちんと治らないため手術は不可能とされている
乳腺腫瘍の原因
乳腺腫瘍の原因は、女性ホルモンの影響を受けて腫瘍化すると考えられており、稀にオスのミニチュアダックスフンドでも乳腺腫瘍を発症することがあります。
わんちゃんの乳腺腫瘍は、初回発情、もしくは2回目の発情前に避妊手術をすることで発症率は低くなるとされていますが、若い頃に避妊手術を行っても乳腺腫瘍を発症することもあり、完全にわかっていないこともある腫瘍です。
乳腺腫瘍の主な初期症状
わんちゃんの乳腺腫瘍は、早期発見・早期治療で根治が可能なことも多いため、しこりに気づいたときは早めに動物病院を受診しましょう。
■乳腺腫瘍の主な初期症状
■発症が多い年齢(※2)
避妊手術を行っていない場合では特に、年齢が上がるにつれて発生率が高くなると考えられています。しかし、若いからと言って乳腺腫瘍にならないというわけではないため、日頃から愛犬の乳腺(脇の下から内股まで)にしこりがないかチェックするようにしましょう。
乳腺腫瘍はできる場所によっては命に関わる状況に繋がりかねないため、胴が長くお腹全体を観察しやすいミニチュアダックスフンドは、定期的に胸から陰部までしっかり触ってあげましょう。
乳腺腫瘍の手術費用については、以下の記事をご覧ください。
犬の手術費用の相場はどれくらい?実際にかかった手術費用や払えないときの対処法も合わせて紹介
3.脂肪腫
脂肪腫は、わかりやすく言うと皮膚の下にできる脂肪のかたまりで、良性の腫瘍です。全身のどこにでも発生する可能性はありますが、好発部位は胸部、腹部、四肢、脇の下があげられます。
良性腫瘍のため経過観察になることが多いですが、できた部位や成長スピードなどによっては手術が必要になることもあります。
脂肪腫の原因
わんちゃんの脂肪腫の原因ははっきりとわかっていませんが、肥満や体質、遺伝などが影響していると考えられています。
脂肪腫の主な初期症状
脂肪腫は良性腫瘍ですが、巨大化することもあります。また、できた部位によっては内臓などを圧迫してしまう恐れもあるため、自己判断せずに動物病院を受診してください。
私の愛犬は8歳の時に胸に小さな脂肪腫が見つかり、切除を希望しましたが「手術ができない」と言われてしまいました。どんどん成長して巨大化し、8年後にはここまで大きく…。
椎間板ヘルニアで後肢麻痺になるまでは、歩くときに脂肪腫が床で擦れないように滑りやすいシートを挟んだり、スカーフで吊ったりとそていましたが、擦れて出血してしまうことも度々ありました。何とかできないものかと、諦めずに切除してくれる病院を探したものです。見つけたときには愛犬はすでに高齢で持病もあったため手術は不可。
現在はわんちゃんの寿命も延び、動物医療も進歩していることから、かかりつけの獣医師と相談して、早めに対処してあげてくださいね。
良性の腫瘍は周りに広がったり転移しづらいというだけで、体に無害とは限りません。腫瘍が確認された場合は数カ月おきに動物病院で経過を確認してもらいましょう。
4.クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は、副腎という臓器から副腎皮質ホルモン(ステロイド)であるコルチゾールが過剰に分泌される病気です。
通常は、脳から副腎にコルチゾール分泌の指令が出され、副腎が必要量を分泌すると脳に再び指令がいってコルチゾールの分泌を止めますが、何らかの原因で指令が伝わらずに分泌し続けてしまうことで、体に悪影響を与えます。
免疫機能が低下するため、皮膚炎や膀胱炎をはじめとする感染症を起こしやすくなるほか、糖尿病や膵炎などを併発するなど命に係わることもあるため、適切な治療を受けさせてあげることが大切です。
クッシング症候群の原因
クッシング症候群の原因は、下垂体腫瘍や副腎腫瘍によるもの(腫瘍性)と、ステロイドによる治療を長期に続けていた場合(医原性)の3つあり、クッシング症候群の80~90%が下垂体腫瘍によるものと言われています。
下垂体腫瘍の場合では、投薬でコルチゾールの分泌をコントロールする治療が一般的ですが、副腎腫瘍の場合はわんちゃんの状態や腫瘍の状態によって手術が必要になることもあります。
クッシング症候群の主な初期症状
クッシング症候群の初期症状は一見病気とは思えないようなこともあり、見逃しやすいため注意しましょう。
■クッシング症候群の主な初期症状
- たくさん水を飲む
- トイレによく行きおしっこを多量にする
- 食欲が増加する
- 皮膚が薄くなる
- 毛並みが悪い
- 左右対称に脱毛する
- 皮膚炎が治りにくい
- ハァハァする
■発症が多い年齢(※2)
実際に、私の愛犬がクッシング症候群と診断されたとき、たまたま違う愛犬の尿の色がおかしいとトイレシートを獣医師に見せたところ、一緒にあった愛犬の尿の量が多い気がするから、トイレの回数や飲水量をチェックしてきて…というのがきっかけでした。後日ACTH刺激試験をしたところ、クッシング症候群だったことがわかったのです。
特に夏場ではいつもより水を多く飲んだりするため判断は難しいですが、上記の症状に1つでも当てはまる場合は獣医師に相談してみましょう。
なかなか気づきづらい病気ではありますが、そのままにしておくと他の病気にかかりやすくなり治療が難しくなることもありますので、日頃の健康チェックが大切です。
5.歯周病
歯周病は、歯垢中の細菌が歯肉についたり歯周ポケットに入り込むことで歯肉炎や歯周炎を引き起こす病気です。
この章の最初にご紹介したランキングの2位にもある歯根膿瘍(根尖膿瘍)は、主に歯周病の悪化によるもので、歯根周辺の骨や組織が細菌感染を起こし、膿が溜まって膨れ上がり皮膚を突き破って膿や血が出でくることもあります。
成犬の80~90%(※4)が歯周病に罹患していると考えられていますが、進行すると歯根膿瘍(根尖膿瘍)や下あごの骨折、さらには血液中に細菌が入り込んで敗血症など命に係わることもあるため、日頃から歯磨きで進行させないようにすることが大切です。
歯周病の原因
歯周病は、歯垢中の細菌(歯周病原菌)によって引き起こされます。歯垢の一部は歯石に変化して、歯にこびりつくことで更に多くの細菌を繁殖させます。
また、シニア犬では唾液の分泌量が減るため歯垢が蓄積しやすく、免疫機能も低下することから歯周病になりやすくなると言われています。
歯周病の主な初期症状
きれいな歯に見えても深刻な歯周病になっていることもあるため、初期症状を見逃さないようにしましょう。
■歯周病の主な初期症状
- 歯ぐきが赤くなったり腫れたりしている
- 歯磨き中や咀嚼中に出血する
- 口臭がきつくなる
- 歯茎が痩せてくる
■発症が多い年齢(※2)
日頃の歯磨きである程度は歯周病の進行を遅らせることはできますが、完全に予防することは難しく、定期的な全身麻酔下での歯石取りをすることが一番効果的と考えられています。
とは言え、歯石取りを頻繁に行うことは難しいため、毎日の歯磨きのほかに口内環境を整えるサプリメントなども活用して、口腔内の健康を保ってあげあしょう。
歯のトラブルはデンタルケアがうまくできないからとそのままにしておくと全身に悪影響が及ぶこともあります。お顔の長いミニチュアダックスフンドは奥の歯までケアするのは難しいため、歯磨きと併せてケアグッズも利用するのがオススメです。
また、歯周病の進行度チェック方法や無麻酔での歯石取りのリスクについては、以下の記事をご覧ください。
犬の口臭ケアグッズおすすめランキング27選!口臭の原因や対策は?【獣医師監修】
6.膵炎
膵炎は、何らかの原因で膵臓の中で膵酵素が活性化し、膵臓自体が消化されてしまって炎症を起こす病気です。
強い痛みを伴い、重症化すると命に係わることもあるため、早期に治療を受けさせてあげることが重要となります。
膵炎の原因
膵炎の原因はさまざまで、肥満や誤食、偏った食事や高脂肪食といった生活習慣によるものから、高脂血症やクッシング症候群などのホルモンの病気、糖尿病や肝・胆道系疾患といった病気によるもの、腹部の外傷や手術などによるものなどがあります。
また、シニア犬では消化機能の低下によって引き起こされることもあり、このようにさまざまな原因があることから、はっきりした原因が特定できないことも珍しくはありません。
膵炎の主な初期症状
膵炎には治療薬がないため、対処療法がおこなわれますが、1日様子を見ていただけで悪化するということもあるため、膵炎が疑われる場合は早急に動物病院を受診してください。
■膵炎の主な初期症状
- 食欲不振
- 元気がなくなる
- 嘔吐
- 下痢
- お腹を痛がる(祈りのポーズをする)
- 動きたがらない
■発症が多い年齢(※2)
膵炎では入院治療になることも多く、退院後は食事療法を指示されることがありますが、獣医師の指示を守り再発させないように注意してあげることが大切です。
食いしんぼのこが多いミニチュアダックスフンドでは、過食や肥満から膵炎が引き起こされることがしばしばあるため、日々のごはんや体重管理はとても大切です。
7.会陰(えいん)ヘルニア
会陰ヘルニアは、肛門の周りにある筋肉の隙間から、直腸や膀胱などの臓器が入り込んでしまう病気です。
飛び出している部位によっては排尿障害から腎不全を引き起こすこともあり、早急に手術が必要になることもあります。
アニコムの発表しているデータに会陰ヘルニアはありませんが、ミニチュアダックスフンドは好発犬種とされ、実際の現場では多く見かけるようです。
会陰ヘルニアの原因
会陰ヘルニアの原因は男性ホルモンが関与していると考えられており、未去勢のオス犬での発症率が高いですが、メス犬でも発症することはあるため油断はしないようにしましょう。
未去勢のオス犬の場合は、再発を防ぐために治療と合わせて去勢手術が行われることが一般的です。
また、慢性気管支炎や吠え癖のある犬はお尻に力がかかる状態が続くことから発症しやすくなる、クッシング症候群の犬では筋肉が薄くなることで誘発される、といったこともあります。
会陰ヘルニアの主な初期症状
会陰ヘルニアは飛び出す部位によって症状が異なりますが、発症初期では以下のような症状が見られることが一般的です。
■会陰ヘルニアの主な初期症状
- 肛門周りが腫れる
- 排便時間が長びく
- 何度もトイレに行くが便が出ない、もしくは出ても少量
■発症が多い年齢
根本的な治療法は手術です。飛び出した部位によっては命に係わることもあるため、肛門周りに異変を感じたら早めに動物病院を受診してください。
手術をしても残念ながら再発リスクのある病気です。しっかり筋肉を維持するための日頃の運動習慣や健康管理が本当に大切ですね。
ミニチュアダックスフンドとの生活で気をつけるポイント6つ
ミニチュアダックスフンドにいつまでも元気で健康に過ごしてもらうために、飼い主さんが普段の生活で気をつける6つのポイントをまとめてみました。
①体重管理|特に肥満に注意する
ミニチュアダックスフンドの体重管理は徹底しましょう。
痩せすぎや太りすぎはさまざまな病気を引き起こすリスクが高まるのはもちろん、足腰に負担がかかりやすくなるため、愛犬の適正体重を保ってあげることがポイントです。
特に、避妊・手術去勢手術後はホルモンバランスの変化から太りやすくなるため、食事内容や食事量を見直すことをおすすめします。
体重だけで判断するのではなく、がっちりしているのかぽっちゃりしているのか、定期的に専門家にみてもらいましょう。
ミニチュアダックスフンドの体重については、以下の記事で詳しく解説しています。
ミニチュアダックスフンドの適正体重は?太りすぎ・痩せすぎの判断方法も紹介!
②食事管理|体質やライフステージに合わせて変更する
ミニチュアダックスフンドの体質に合った食事はもちろん、食事の回数や食事の量など、愛犬の状態に合わせてあげましょう。
偏った食事や体質・年齢に合っていない食事は、肥満や病気のリスクが高くなる可能性があります。
■ミニチュアダックスフンドのライフステージに合わせた食事内容と回数
ライフステージ |
1日の食事の回数目安 |
食事内容 |
子犬 |
・生後2〜3ヶ月:3〜5回
・生後4〜6ヶ月 :3〜4回
・生後6ヶ月〜成犬:3〜2回 |
子犬用に栄養を考えられた
総合栄養食のフード |
成犬 |
2回 |
愛犬の体質や好みに合わせた
総合栄養食のフード |
シニア犬(7歳~) |
3~4回 |
老犬用に栄養を考えられた
総合栄養食のフード |
ハイシニア犬※ |
4~5回 |
・良質なたんぱく質を使用するなど消化に
配慮された総合栄養食のフード
・好みや気分、食欲の状態や体調に
合わせてフードを変更 |
※いつからがハイシニア犬という明確な年齢は存在しません。そのため、愛犬が高齢期に入ったかどうかは獣医師に判断してもらいましょう
ドッグフードを主食とする場合、年齢に合わせた栄養バランスで作られているものを選んであげることが基本です。
また、体質には個体差があるので、愛犬に合ったドッグフードを探すのはなかなか難しいですが、ミニチュアダックスフンドの健康を維持するために以下の選び方を参考にしてください。
■ミニチュアダックスフンドに合ったドッグフードを選ぶポイント
- 主原料が動物性タンパク質
…筋肉や被毛が生成されやすくなるほか、消化しやすい
- オメガ3・オメガ6脂肪酸が入っている
…皮膚や被毛のサポート、関節のサポートが期待できる
- 健康に不要な添加物が使用されていない
…着色料や保存料など胃腸に負担がかかりやすい添加物を避ける
- 食物アレルギーの原因となる食材が少ない
…アレルギー性皮膚炎などの発症リスクを避ける
- 関節サポート成分が入っている
…足腰に負担がかかりやすい体型のため、日頃からサポートする
どんなにいいものでも食べすぎてしまえば体の負担となります。体型や体重、便の状態をきちんとみてわんちゃんの健康をサポートしましょう。
食事の量やミニチュアダックスフンドのドッグフードの選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ミニチュアダックスフンド向けドッグフード(餌)おすすめ人気ランキング10選【専門家が厳選】
【獣医師監修】ドッグフードの正しい与え方!パッケージの給餌量はあくまで目安
③適度な運動|散歩は1日30分×2回を目安にする
ミニチュアダックスフンドはもともと狩猟犬の歴史があり、筋肉が立派な傾向にあります。そのため、散歩は1日2回、1回30分程度を目安に毎日行ってあげましょう。
適度な運動はストレス発散だけでなく筋力低下の予防にもなり、しっかり筋肉があることで関節への負担も軽減してあげることができます。
ただし、愛犬の体調が悪いときなどは、無理に散歩に連れ出すのは止めてくださいね。
散歩は生活リズムを整えるためにもぜひ毎日行ってあげましょう。とは言え、心にも体にも適度な刺激を与えるのが望ましいため、悪天候や体調が悪い時は必ずしも行く必要はありません。
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④生活環境の配慮|床や段差をなくす努力をする
ミニチュアダックスフンドは足腰に負担がかかりやすい体型なので、滑りにくい床にしたり、できるだけ段差をなくしてあげましょう。
滑りやすい床は、滑らないように常に踏ん張っている状態で関節や足腰に負担がかかるのはもちろん、転んでケガをしてしまう可能性もあります。
また、足の短いミニチュアダックスフンドにとって、段差の上り下りが負担となったり、転んでケガをする恐れもあるため、スロープを設置してあげることをおすすめします。
特にミニチュアダックスフンドは椎間板ヘルニアを発症しやすい犬種のため、できる限り床や段差にも配慮してあげることをおすすめします。
畳やフローリングで生活していると、関節トラブルの発生リスクが高まります。わんちゃんの生活範囲は、滑らないマットやラグなどで対策してあげましょう。
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⑤室内の温度管理も徹底する
個体差もありますが、ミニチュアダックスフンドが快適に過ごせる温度と湿度は以下を目安に調整してあげましょう。
■ミニチュアダックスフンドが快適な温度と湿度
室温:25℃前後が目安
湿度:50~60%
基本的には、愛犬の適温を探してあげることが大切ですが、夏場などではあまりにも室温が低すぎると体が冷えてしまったり、外の気温との温度差で自律神経が乱れてしまうことがあります。また、逆に高い温度や湿度は、熱中症のリスクを高めることになるだけでなく、心身に負担をかけることにもなります。
もちろん、お留守番をしてもらうときもエアコンをつけっぱなしにするなど、しっかり対策してあげることも忘れないでくださいね。
また、子犬やシニア犬では体温調整が上手にできないため、寒い時期は湯たんぽや毛布、服などで防寒対策をしてげましょう。
ご家族は快適でも、わんちゃんには暑すぎたり寒すぎたりすることもあります。わんちゃんの生活する高さに温湿度計を置いてみると、実際の環境がわかりやすくなりますよ。
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⑥些細なことでも獣医師に相談するクセをつける
愛犬にいつもと違う様子が見られたり、何か違和感を感じたり、気になることがある場合、どんなに些細なことでも獣医師に相談するクセをつけましょう。
わんちゃんは言葉が話せない上に、痛みや違和感を隠そうとします。特にミニチュアダックスフンドは辛抱強い一面を持つため、明らかに様子がおかしいと思う頃には病気やケガが悪化している可能性も。
些細なことでも獣医師に相談することが、元気で健康に過ごしてもらうためのサポートにつながるでしょう。
普段から病院に行き慣れておくと、具合の悪い時にかかるストレスが少なくなります。小さなことでも気兼ねなく相談できる病院との関係作りを、ぜひがんばってください。
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まとめ
胴長短足の見た目が愛らしいミニチュアダックスフンドですが、その特殊な体型から椎間板ヘルニアにかかりやすいです。
また、乳腺腫瘍や脂肪腫なども比較的発症しやすい傾向にあるため、日頃から体のチェックをして早期発見・早期治療を心がけてあげましょう。
飼い主さんがどんなに気をつけていても、病気になってしまうことは多々あります。
しかし、気をつけてあげることで、かからなくてもいい病気になるリスクが低くなるのは間違いありません。
■ミニチュアダックスフンドがかかりやすい病気
- 椎間板ヘルニア
- 乳腺腫瘍
- 脂肪腫
- クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
- 歯周病
- 膵炎
- 会陰ヘルニア
ミニチュアダックスフンドの平均寿命は14.8歳(※4)ですが、平均寿命以上に長生きしているミニチュアダックスフンドも多く見かけることができます。
ミニチュアダックスフンドの性格や体質などをふまえて、快適な環境を整えてあげてくださいね。
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<参考文献>
※:一般社団法人ジャパンケネルクラブ「犬種別犬籍登録頭数」
※1:一般社団法人ジャパンケネルクラブ「ダックスフンド」
※2:アニコム「家庭どうぶつ白書2022 第2部 第2章 品種別の統計」
※3:ペット栄養学会誌「犬の歯周病原菌数と歯肉の炎症の経時的変化について」
※4:アニコム「家庭どうぶつ白書2022 第2部 第4章 死亡と寿命」
執筆者
- ペットライター
-
たかだ なつき
- JKC愛犬飼育管理士 / ペットフーディスト / 犬の管理栄養士 / ペット看護士 / ペットセラピスト / トリマー・ペットスタイリスト / 動物介護士 / ホリスティックケア・カウンセラー